Ace Combat ~INFINITE STRATOS~ 作:QAAM_M1911
「相棒、ここのところ稼ぎが減って来てるな……」
「そりゃそうだ。ISが出てから戦闘機の出る幕がほぼない。しかもまだ発展途上ときた。」
「……どうする?クロウ隊の連中も難儀してるって聞いたぞ。」
とあるPMCの所有していた小さな基地。していた……というのは事業縮小により基地を自ら手放したのだ。最初は国……に対してだったのだが、立地や維持費などを鑑みて国すらも買い取りを拒否。結果、多くの傭兵の溜まり場となった経緯がある。
だが、傭兵の集まりにしてはやけに結束が強い。この傭兵部隊の名は「アローズ」。まぁ言うなればどこの国からも認可されていないPMC、と言う形なのだ。まぁどこにも所属していないのだから全ての国が敵になりかねないが、その分責任を全部このアローズに押し付ける事が出来る。最高責任者は“グッドフェロー”。指揮官も務める。
さて、アローズはその戦力を空に特化させている。航空部隊の数は6つ。第一部隊、“ガルム”。第二部隊、“ボーンアロー”、第三部隊“アンタレス”、第四部隊“ライジェル”、第五部隊“クロウ”。第六部隊は……少々特殊だが、一応“スモッグ”という部隊名はある。
全ての部隊が選りすぐり、末席となるクロウですらもアメリカのアグレッサー部隊と戦えば圧勝する……と言われればその異常性が分かるだろうか。そもそもの話だが、基本的に現代戦はミサイル一本撃てば終わる事が多い。だが、それを掻い潜って接近戦にまで持ち込んでしまうのが彼ら。その一因が、第六部隊“スモッグ”。彼らは電子戦機を操り、ミサイルの誘導を打ち消したり
空の戦場に盗賊の様に乱入し、獲物を狩って金を奪い取る。この様相から“空賊”と呼ばれたりもした。
「ISか……グッドフェローの読みは正解だったか。」
「空の戦場が完全に変わる。となれば俺たちの商売が完全につぶれた訳だな。」
愛機のF-15を前に、少なくない感情を空に向ける。ここに居る全員が空に魅せられた狂人、もしくは学歴ばかりでまともに働けず傭兵などという職業に就いた阿呆だ。食うに困るのは想像に違わない。
「サイファー、ピクシー。20:15にブリーフィングルームで集合だ。」
「グッドフェロー、やっと仕事か?」
「いや、それを取りに行くんだ。」
ふらりと現れたグッドフェローの後ろ姿に首を傾げる。とは言え最高司令官である以上従うのが道理だ。
「……面白くなりそうだぞ、ピクシー。」
「どうかな。危ない橋を渡る羽目になりそうだ。」
「あの司令は案外強かだ。もう手は打ってるだろうぜ。」
「よし、集まったな。」
「整備班の連中は?」
「もう話をした。これはブリーフィングになる、心して聞いてくれ。」
その言葉に、歴戦の勇士たちはお茶らけた雰囲気から張り詰めた様相へと変貌する。
「先日ISが発表され、恐らくだが俺たちの仕事がなくなった。秘密裏ではあろうが、既に殆どの国がISの軍事導入を決定。とすれば真っ先に狙われる存在は?」
「……どこの国にも所属しないテロリスト。」
「そう、俺たちになる。どこの国とも上手く調整して、俺たちに金を積めば勝てると確信させてきた訳だが……もう戦闘機云々の騒ぎじゃない。」
プロジェクターに示されるのは、白騎士事件……日本に弾道ミサイルが殺到したものの、IS単騎でその悉くを粉砕した、という事件。その前に束博士により行われたプレゼン。ここで、ここに居る全ての戦士が疑問符を持った。その中の、ライジェル隊隊長“スレイマニ”が口を開いた。
「おい、可笑しいだろ。確かにその機動性やら加速力、なんならその他諸々の性能は既存兵器を圧倒する。だがどう考えても発表された当時の装備は戦闘用じゃない。」
「その通りだ。恐らく、という枕詞はつくが発表時は偵察……いや探索用の装備だったかと思われる。あくまでこの初代は自衛用の装備に留まっているからな。機動性も今と比べてしまえば全くの標準……だが探索用と考えてみれば機動性もあまり気にならないはず。スピードと加速力も今と同じと考えれば、なおのことだ。」
「なるほどな。ジェット噴射機構でもなくPICとか言う意味不明な力で動いてるのも宇宙を想定していた為か。そりゃ宇宙ならいくら加速しても問題ねぇ。」
「……逆に、これを軍事活用しない手はなかったか。皮肉なもんだ。」
「いつもと逆だぜ。軍事技術が民間技術に払い下げられたのが、今度は民間技術から引っ張り上げられただけだ。」
そんな言葉がブリーフィングルームに響き渡るが、グッドフェローはそれを手を叩いて制止する。すぐに静まり返った戦士を見て頷くと、話の続きを始める。
「まぁそんな事もあって、俺たちは拠点を移す事にした。」
「拠点を移すって……どこにだよ?」
「大国の中で、唯一ISを配備していない国がある。」
「……ユージア大陸。エルジアか。」
「そう。技術者連中やらも全員連れていく。兵站用のC-17に全部乗っける……事は出来ない。人員だけだ。」
「ユージアに亡命するって事で良いのか?」
「もう話は付けてある。大歓迎だとさ。」
「なら良かった、金は弾むんだろうな?」
「安心しろスレイマニ。正規軍と同等の扱いだそうだ。ただし、戦時には歩合制だ。」
改めてデータを開示するグッドフェロー。距離は非常に長いが、とある兵器が迎えに来てくれるとの事。
「しかしC-17でさえも迎えにくるとはな……」
「昔っからユージアの連中の技術は頭一つ抜けてんだ、今更な話だろ?」
「……まぁな。俺らの戦闘機も、大抵がユージア製だ。」
「しかし面白い場所だ。外装こそ違うが大抵の部品が共通規格……整備がし易くて助かる。」
「その部品は殆ど取り寄せだけどな。要するに、そのツテを使わせて貰ったわけだ。」
ユージアのみならず、世界を席巻するノースユージア・グランダーI.G.。数多くの兵器を生み出し、PMCどころか金さえ積めばテロリストにさえも武器を売る……そんな組織だ。
「で、その……何だ?空中航空母艦?が迎えに来るんだろ?燃料はどうする?」
「途中でタンカーが重巡航管制機から乗り継いでくるらしい。心配は要らないな。」
「なるほどな。ランデブーポイントは?」
「大西洋に出て、互いに通信を取り合って流れで合流するそうだ。」
「空中空母とは言え、積載には制限があるだろ?誰が今回出撃するんだ?」
「いつも通り、ガルム隊で……」
アローズのブリーフィングが終わったのは、それから1時間後の事だった。
「しかし、あれからもう4年。早いもんだな。」
「あぁ。食うに困る俺らを引っこ抜いた上さんは先見の明があった。どこもかしこもISだらけなんだよ、世界は。」
旧“アローズ・エア・ディフェンス&セキュリティ”は現在、ユージア連合軍自部により正式に雇用。と言うより、世界中の腕利きの傭兵団がこぞってユージアへと渡っている。彼らはその先駆けと言う存在か。今の名前を“第116航空部隊”、通称“アローズ大隊”。長年やった通りグッドフェローが大隊指揮官、そしてその下に数々の部隊が付けられる形だ。
「まぁ食うにも弾薬にも困らなくなったのは良いが……まぁ弾は使わないんだが。」
「確かに、暇ではあるな。あってスクランブル……新型の慣らしには持ってこいだが、基本相手は情報戦用のIS、すぐ逃げちまう。」
「そろそろ分かって欲しいんだがな。俺たちの情報を集めようとしても無駄だって事をな。」
上空を通る、一機の飛行機雲を見上げた。音に気付いたころには、もう飛行機雲の主の姿は見えていなかった。
“第0特殊技術実験飛行隊”、という言葉はユージアの軍人であれば誰もが知るところだ。何せ、2年前に突如設立された挙句半年も経たずにユージア空軍の戦闘能力を4倍以上にまで底上げしたのだ。だが、具体的に何をしているか、までは重役以外ならファイターパイロットや戦闘機の技術職くらいしか分かっていない。
端的に説明するとするなら--ISの技術を搭載できた、というのが適切か。
より加速性能が向上し、より最高速度は速く。より燃費はよく、コストも対費用効果を見れは許容できる。剛性も心なしか上昇している……そんなマネが出来るのは、恐らくこの世界中を振り回した女性しかいない。
「ねぇねぇ!しゅーくんの機体にレーザー機関ポッド搭載したいんだけどどうかな!?」
「ばっか外せ!!機体が重くなる!」
「だいじょうぶい!
「そうか!もっと早くならないか?」
「もっと!?もうマッハ5だよ!?」
「まだだ!もっと空力を追求するんだ!!」
「えぇ……」
「
篠ノ之束。ISの開発者その人である……ほらそこ、振り回されてるとか言わない。
シュナイダー良いよね、あの頭空力っぷり。