そんなことより、ただいま絶賛ネプテューヌ総選挙やってるみたいですね。途中経過でホワイトハート様が一番だったのは割と驚きました。え?僕は誰に入れてるかだって?僕はもう日ごとに違う子にいれてる優柔不断男ですから。ネプテューヌV2やるために今プレステ4買おうかどうかも迷ってますし。だってプレ4高いんだもの……。経済的に考えるって……。
なんて深刻な問題に直面している僕ですが、本編をどうぞ!(無理やり感が酷いとか言わないで!)
…………はぁ、ホントに買おうかどうしようか迷うわ。
イストワール先生の、問題集!
化学
【第二問】
問 次の空欄に適切な言葉をあてはめなさい。
『物質が状態変化すると、[ ① ]は変化するが、[ ② ]は変化しない。』
アイエフの答え
『① 体積 ② 質量』
イストワールのコメント
正解です。アイエフさんにとってはこの問題は簡単だったようですね。これからネプテューヌさん、コンパさん、明久さんと旅をするわけですが、アイエフさんのようなしっかりした方がいれば安心できそうです。
吉井明久の答え
『① 興奮 ② 性欲』
イストワールのコメント
どうやら明久さんは六回じゃ逮捕されたりないようですね。
ネプテューヌの答え
『① トラ◯スフォーマー ② ◯ランスモーファー』
イストワールのコメント
ネタがマニアックすぎです。…………おや? アイエフさんから回答がもう一枚きてますね? もう正解しているので大丈夫のはずなんですけど………
アイエフの答え
『①
イストワールのコメント
一瞬、アイエフさんへの信頼が揺らぎました。
☆
「はぁぁぁぁぁ……酷い目にあった……」
げんなりもげんなりで、僕はありったけの堪っていた息を吐き出した。
街中でコンパを襲った(ように誤解された)ことで御用だされてしまい、ついさっき、ようやく警察の人に誤解だとわかってもらって釈放されて念願の自由の身を太陽の下で味わっている最中だ。
「酷い目にあった、じゃないわよ」
「痛っ」
街中を歩く僕の後頭部に強めの衝撃がきた。
衝撃の正体、アイエフの小っちゃいグーが、振り返った鼻先に点在していた。
「人が稼ぎに出かけてるあいだ、あんたたちときたらゲーム買ってるわ、挙句の果てにまた逮捕されてるわで、しかもなんで私があんたを引き取りに行かなくちゃいけないのよ」
「いや、本当にありがとうございます……。アイエフ様の慈悲のおかげです…」
お昼ちょっと前に出かけたはずなのに時刻は午後。もうすぐ夕焼け小焼けの時間になってしまうころだ。身内受け取りが必要とのことでアイエフがきてくれなかったら、下手すれば僕は明日まで鉄格子の内側で枕を大量に濡らしていたことだろう。いや、本当にアイエフ様のおかげでございます…。
「感謝してるなら今夜のおかずは貰うわよ」
「え!? そ、それは……今日のコンパ特性ハンバーグを明け渡せと……?」
「そういうこと。そうね、明日の分のおかずも貰おうかしら」
「なっ!? お、鬼ッ! 悪魔! コンパのハンバーグが美味しいの知ってるくせに! そのうえ明日の分までだなんて……。僕から癒しを奪おうって言うの!? それでも人ですか!」
「なら、この釈放の代わりに突き出された依頼はあんた一人でやるのね?」
「…………献上させてくださいアイエフ様」
「うん、よろしい♪」
ヒラヒラと突き出された一枚の紙の前では僕の涙など風前の居ぬまの洗濯。
「いろいろとごちゃ混ぜになってるわよ」
……もとい無意味。
アイエフの尽力もあって警察の人たちには今回の件が誤解だとわかってくれたんだけど、でも前科(これも不可抗力というか前科ってなんやねん)がある僕をただ解放するだけじゃ納得しかねたらしく(それもそれで僕としては不本意だけど)、結果としてクエストを一つ罰としてやるようにと用意されてしまった。警察も面目上とかあるんだろうけど、無実である身としてはまったく遺憾な限りである。
僕はなにも悪いことしてないのになぁ……。酷い話もあったものだよ。
「それにしても、コンパを押し倒すって何をどう不可抗力でしたらそうなるのよこの変態」
「……………」
酷いことは……してないが……。事実は事実なのも変わらないわけで……。へっ、変態じゃないやい! 僕のいた世界にはもっと酷い変態だっていたんだから! 盗撮やってるムッツリスケベとか、ゴスロリ女装する丸ボウズ先輩とか、同性愛に走って妖怪化してる女の子……と…か…………僕の周りって改めて危険な変態がいっぱいだなぁ……。
しかもその大半が知り合いという現実。亡くなった僕のおじいちゃんも孫の周囲がそんなので埋め尽くされてると知ったら号泣ものだろう。
「と、とにかく、さっさとクエストなんて済ませて帰ろうよ」
「そうね。コンパが美味しいご飯作って待ってくれてるみたいだし、仕事なんて早めに片付けちゃいましょうか。内容も見たところ簡単そうだし」
「どういった内容なの? 僕まだ知らないんだけど」
「報せてないもの。私も警察の人も」
「そっすか……」
この際アイエフはまだいいとして。捕まった当事者の僕に情報が行き届いていないのに警察の人はそれを良しとしたのか。法の下で動くのにそれでいいのだろうか公務員さんたちよ。
「中身は言っちゃえばモンスター退治ね。どうやら最近、食品用運搬車がモンスターに襲われる被害が続出してるらしいわ。で、そのルートに生息しているモンスター退治してくれって話ね」
「ふ~ん。なら早速そのルートの所に行こうよ」
「それはダメ。依頼は一度、ギルドに行って正式に受理しないといけないのよ」
「なんだか手間だね、それって」
「あんたが逮捕された時点でもう手間よ」
それは言っちゃいやん。
「まぁ被害を出してるモンスターはそこらのザコだし、少ないわけじゃないけど二人だけでも十分にこなせる数ね。一応聞くけど、明久は戦えるのよね?」
「戦える……のかな? 召喚獣は出せるし、たぶん問題ないと思う」
「あんたの思うは妙に頼りない感があるけど……仕方ないか。私がフォローするから、しっかりしてよね」
「オッケー。よろしくねアイエフ」
うんうん。やっぱりアイエフに来てもらって正解だった。ネプテューヌやコンパに来てもらっても良かったんだけど、クエストがあるならとアイエフに来てもらったのは間違いじゃなかった。こういう時こそ旅人として経験豊富な彼女に頼るのが一番だ。………ま、ぶっちゃるとコンパは夕飯の準備があるとやんわり断られて、ネプテューヌにいたっては買ったばかりのゲームをやるのに忙しいと断られたからアイエフになっただけなんだけど……。てか、ネプテューヌはダメでしょ。あの子が元凶なのに、ゲームって。いや、買ったばかりですぐにやりたい気持ちはわかるけどさ、ネプテューヌはダメじゃん。絶対に後でプリン奪ってやる……。
なんて、帰った後の決戦に気合を込めながら歩くこと数分。目指していたギルドホールに到着した。
まだまだ新鮮な光景にはそこそこの人が行きかっていて、ちょっと賑やかになっている。アイエフいわく旅人や賞金稼ぎ、果てにはストリートミュージシャンとかがこうしてギルドとかで生計を立ててるらしい。んで、アイエフもその一人だったとか。
「それじゃ私、ちょっとクエスト受けとってくるから、あんたはここで待ってて」
「了解~」
受付に向かう背中を見送り、ヒマつぶしがてら待合室の椅子で一息を付く。すると、天上のスピーカーから可愛い声が突然聞こえてきた。
『5pb.の『ふぁいらじっ♪』。みんな、今日もよろしくね。この番組は、リスナーから電波を通して誰かに伝えたいことを募集してボクが代わりに伝える番組だよ―――』
どうやらこの世界のラジオ、なんだろう。声からしてだいぶ若い感じがするけどこの世界の芸能人か何かなんだろうか。廃品回収の仕事を見たときもそうだったけど、近未来みたいに科学が発達していても実際のところ中身は僕らの世界とあんまり変わらないみたいだ。
どれどれ。どうせ少しのあいだ暇だし、せっかくだからこの世界のラジオがどんなものか聴いてみよう。
『じゃあ、さっそく番組に送られてきたハガキを読んでいくね。PNいーすんさんからのハガキです』
なんかのっけからすっごい知ってる名前が出てきた。き、気のせいだよね……? ペンネームだし、似てるだけだよね? 封印されてハガキとか、送れないよね……?
『えーっと、〈5pb.ちゃんこんにちは。いつも楽しくラジオを聴かせてもらっています。ところで、5pb.ちゃんはどの女神様が好きですか? よろしければ、教えてください〉。うーん、そうだなぁ~、みんな個性的な女神様だからなぁ……。ごめん、ちょっと1人にはしぼれないな。けど、どの女神様も個性的だし、みんな大好きだよ』
すごい。一つの議題に個性的って言葉が二個も出てきた。どんだけ個性的なんだろうか、女神様って人たち。
しかし、思っていたほど意外と普通だ。声もカワイイし、これは無実の罪で捕らわれて荒んでしまった僕の心を癒してくれるんではなかろうか。
『さてさて、次はPN核兵器はマヨネーズさんからのハガキです』
これまたすごいペンネーム。全国のマヨラー歓喜ものだ。
『〈5pb.ちゃんこんにちは〉。はーい、こんにちは! 〈5pb.ちゃんは知っていますか? 今プラネテューヌ全土に『スカート男』っていう噂が広まっています。まだ高校生ぐらいの子みたいなんですけど、ボロボロの面積の薄いスカートを穿いて街中を歩き、連続で五回も逮捕されたらしいんです。信じられないような話だけど、本当なんです。私は実際この目で見ました。そんな変態もいるから、5pb.ちゃんも気をつけてください!〉。わ、わぁ……これまたすごい珍事件だね…。たぶんその高校生さんは青春をはき違えちゃっただろうね…。うん、ボクも気をつけるね。みんなもこういう危ない人にあったらすぐに警察に連絡してね。それじゃ次のお便りだよ! PNウィリー通勤さんからのお便りです―――』
………………………。
「―――あったあった。クエスト受け取ってきたわよー。ご丁寧に明久って名前が……って、なにやってんのよ? 青い波線に黒いカーテンみたいなの出して露骨に落ち込んでますよ空気なんか出して」
「いや、なんかもう……癒されるどころか古傷抉られた気分で……」
「はぁ? なにわけわかんないこと言ってんの。ほら、さっさと立つ。簡単な仕事なんだからちゃっちゃっと終わらせるわよ」
「う、うぃ~す……」
なんだろう…。知らない方が良かったことを知ってしまったけど、知らないままでいたらもっと傷ついていたであろうけど、やっぱり知らない方が良かったと思えるこの複雑な気持ち……。というかほんのちょっと前のできごとなのに、もう国全体に噂として広まってるのか。どんだけ情報伝達能力に飛んでいるだこの世界……。
若干ブルーニなりつつも現地に向かう脚を止めず、アイエフにまた、ビシッとしろと背中を叩かれると、不意に僕らの耳に気弱な声が聞こえてきた。
「あの、すいません…」
でもそれは声にしてはか細く、聞き間違いかと思って、
「ん? なんか言った明久?」
「え? 僕はなにも」
「あ、あの…すいません…」
また聞こえてきた。
「誰? てか、どこ?」
「確かに声は聞こえたわよね?」
周囲には声の主らしき人は見当たらない。ん? 気のせいか? それか新手の嫌がらせ? もしくは幽霊でも出た? まだ明るくて人がたくさんいるこの中に?
「あ、こっちです。後ろです」
「「後ろ?」」
後ろ後ろ……。背中側ってこと……って…いた。
「ど、どうも……」
振り返った先にいた声の主は、ペコリと頭を下げてきた。
……なんか知らないけど、木の姿……ていうか木のキグルミ(?)で。
「は、初めまして……。あの、僕、お願いがあって……」
「で、アイエフ。討伐するのはどんなモンスター?」
「リストによるとスライヌとチューリップ、あとひまわりんね」
「あー、あの変態花モンスターか」
「変態はあんたでしょ。ま、手こずるような相手じゃないわ」
「サラッと傷つくこと言わないでよ……」
「あ、あの……だから…」
「さ、行きましょ。せっかくの夕飯が冷めちゃったらコンパに悪いわ」
「僕はその夕飯のメインウェポン的おかず取られるから正直どうでもいいけど」
「あら、じゃあコンパが作ったご飯を食べずにコンパを泣かすわけ?」
「その時は舌を噛み切って自害します」
「やめなさい。それでコンパが泣くでしょうが」
「―――あのっ!!!」
…………スルーは、できないようだ。
「「はい……なんでしょうか…?」」
ぎこちない笑みを持ってして二人で声の主というか大樹の主様というか、ともかく話しかけてきた人らしき物体に振り返る。
なんか人工物に溢れたギルドにはあんまり合わない自然植物は、二メートル強は普通にあった。上の枝の方なんて天上にガサガサと当たってる。そんな異彩な気配を放ってる所為で周りの人の注目を集めること集めること。なんなんだ、この人……? 新種の変態……? お願いがあるとかって言ってたけど……。一緒に光合成しましょうとかの誘いだったら絶対に断ろう。
「あの、お二人はこれからダンジョンに向かうんですよね?」
「は、はぁ…そうですけど。それが、どうかしました?」
「実は、僕、今度、す、好きな女の子にプレゼントしようと思ってて……」
「あ゛、殺すよ?」
「「なんでっ!?」」
はっ!? しまった、ついFクラスの癖が!
(ちょ、ちょっとあんた……いきなり何言ってるのよ。ただでさえあんたは誤解とはいえ逮捕されて釈放されたばかりの身なんだから、もう少し言動には気をつけて)
自然と動いていた自分の口に驚く僕の裾を引っ張って、ボソボソとアイエフが耳打ちをしてくる。
(ごめん……。元の世界の習慣で、彼女持ちになりそうな奴を見てうっかり……)
(あんたって、いったい元の世界でどんな生活送ってたのよ…)
(えっと。朝女の子と登校してきたやつをまず簀巻きにして…)
(うん。もう心の底から言わなくていいから)
なにやら急に頭を抱えだしたアイエフ。どうしたんだろ? 偏頭痛持ちなのかな? なら今度よく効く頭痛薬を貸してあげよう。半分が優しさでできてるからきっとアイエフにもあうことだろう。
(そんなことより、あれよアレ)
小さく指をさすのは無視できないいでたちの彼。みんなは人を指さしちゃダメだぞ☆
(あの人(?)なんなんだろうね。こういう生物? この世界に人面木なんてのもいるの?)
(いるわけないでしょ。私だって初めて見るわよ、あんなの)
(あれって、木だよね?)
(木、ね)
やっぱり実態の生物なんだ。できれば目の錯覚でいてほしかったんだけど。
なんて思ってたら、あっちから不安そうな声で話しかけられてしまった。ナイショ話をし過ぎたかな?
「あの、どうしました…? 僕、何か悪いことしちゃいましたか……?」
「それはした……じゃなくて。どうしましたっていうか……、どうしたんですかっていうか……。なんなんですか、その格好?」
「あ、これは僕……。自分で言うのもアレなんですけど、内気な性格で、人前に出るのが恥ずかしいからこうしてキグルミを着てるんです」
今の彼にもの凄く目立っていますよと言いにくくなってしまった。
「恥ずかしいですよね……。すいません、でも僕、こうでもしないと人目に出ることができなくて……。はは、恥ずかしい奴ですよね?」
きちんと恥ずかしいと自覚してるのになぜそんなのを着る。というツッコミはダメなんだろうか。
「こんな性格を直そうとも思ったんですけど、全然ダメで……。すみません、いきなり語りだしちゃって」
「い、いえ……」
とりあえず性格直す前に今の自分を見つめ直すことが君のすべきことだと思います。とはとうてい言えない雰囲気。本当に何なんだろうこの人。新種のドMかなにかなら、もう勘弁してください。変態は元の世界で満腹なんです。
「そんな内気なのに、よく好きな子にプレゼントしようなんて思ったわね……」
と、これは僕と同じく変態に対して辟易した様子のアイエフの台詞。………………なんで、変態って思ったあたりでこっちを見て『お前が言うな』的な視線を送ってきたのかは、僕にとっては永遠の謎だ。
「で、あなたはその女の子にプレゼントしたいって話を私たちに聞かせて、どうしたいの?」
「その子、チューリップの花が好きだから…。だから、チューリップの花束をプレゼントしたいと思っているんです。あ、この場合のチューリップはモンスターの方じゃなくて、モンスターの落とすチューリップであって、普通に咲いてるチューリップでもありません」
ややこしいわ。普通に言え。
「ふ~ん。ロマンチックね。……って、もしかして、それをクエストとして私たちに依頼したいってこと?」
「は、はい…。あの、花束を作るの手伝ってくれませんか? 僕じゃ、モンスターは相手にできないんです」
あなたの今の姿ならモンスターといい勝負ができそうだけどね。
「ん~、依頼としては簡単そうだけど……。悪いわね。私たちもう別の依頼で忙しいのよ。他の人、当たってちょうだい」
「お、お願いしますっ! 報酬としては少ないかもしれないんですけど、僕のお小遣い全部払います! だからお願いします!」
必死になって頭を下げる相手。ここでおさらいをすると、彼の今の姿は木のキグルミだ。ものすごくシュールな光景になる。というか当たる当たる! チクチク痛いから!
「お願いしますって言われても……。と、というか痛いっての! 枝とか葉っぱが当たってるし! 一先ずそれを脱いでくれない?」
「えっ!? 僕に死ねと!?」
「誰もそんなこと言ってないわよ!? キグルミ脱ぐだけでしょ!」
「僕にとっては恥ずかしくて死も同然です!」
「どんだけ内気なのよ!」
「……………………そのまま死んでしまえばいい」
「アンタもアンタで静かだと思ったらいつになく攻撃的になってんじゃないわよ!」
……チッ。くたばってしまえばいいのに。
「お願いします! 僕、こんなんのだから人に声をかけるのも一苦労で……! お二人にやっと話しかけられたんです!」
「なんで僕らには普通に話しかけられたの?」
「お二人は優しそうだったから……。もしかしたらこんな依頼でも受け入れてくれると思って……」
こんな依頼、って言い方されるとまたアレだなぁ……。人柄が良いと彼が言ってくれてるんだから、そこは人として悪い気分ではない。でも、助けてあげてもいいかもしれないけどアイエフの言うことももっともだ。僕らはもう受けている依頼で手いっぱい。僕個人としても釈放されたばかりでさっさと仕事を済ませて家でゆっくり休みたいし、これ以上仕事の量を増やすのは正直イヤって気持ちがある。
…………あるんだけど、
「お願いします! あの子にチューリップを渡したいんです!」
頭まで下げられて、こうして内気な所為で人前に出るのもキグルミを着なくちゃダメで、人に話しかけるのも苦労してるみたいなのに、ここまで必死に頼まれたら、ねぇ…?
「―――いいよ。花束作るの、手伝うよ」
「本当ですか!?」
「えっ? ちょっと明久、あんたなに勝手に決めてんのよ」
木の姿の彼が喜びの顔を上げると、アイエフが驚いた様子でこちらに振り向く。僕はそんなアイエフに対して両手を前に出してなだめる。
「まあまあ。僕らの討伐するモンスターにその変態……もといチューリップってモンスターもいるんでしょ? ならついでに集めていけばいいよ。できなくはないでしょ?」
「それは……! できないわけじゃないけど……わかってる? 誤解かどうかは知らないけど、この討伐依頼はあんたの所為で仕方なく私が付きあってんのよ?」
「うん。だから花束の方は僕がモンスターを倒していく中で集めていくから」
「そういうことじゃなくて! あんた一人にそんな余裕はないでしょってこと! ケガ人の癖に」
「なんとかなるでしょ。召喚獣もいるし」
「だから……!」
これは少々強引な決断だったかな、と気づいたときには時すでに遅し。さすがにここまでのことでアイエフのイライラが堪っていたみたい。
あちゃー、ちゃんと相談してからの方が良かったかな? でも、きちんと対策もあるんだけど。
そんな旨を伝えるためにこっちこっちとアイエフを引っぱり、コショコショと一言。
(大丈夫だよ。いざってときは花の葉を重ねて『ハイ、“花束”』って渡せばすべて丸く収まるから)
「あの…普通に聞こえてるんですけど……」
「出会ったときから薄々思ってたけど、あんたバカでしょ……」
好きな女の子にプレゼントだなんて……そんな羨ましい…―――羨ましい展開を許すほど僕は人間できてませんから! えっへん!
「いばるなバカ……。はぁ…、仕方ないわね…。ここで断ったら、私は悪役じゃない」
「お、それじゃあ?」
「手伝ってあげる。もうここまで付き合っちゃってるわけだし、あんたたちのパーティーに入った時点で苦労するのは予想できてたし」
「さすがアイエフ! ありがとう!」
「あっ、ありがとうございます!」
「ハイハイ。わかったから。新しい依頼者さんは正式にクエスト発注してギルドホールで待ってて。なんにもなければ夜前に戻るわ」
面倒そうに手を振ってクール(気取ってる?)けど、やっぱり持つべきものは頼れる&優しい仲間だね! 元の世界の僕の
「あの! よろしくお願いします!」
そうそう、こうやって感謝の気持ちも忘れずに頭を下げて……って、痛い痛い! 木のキグルミの枝が当たる!
アイエフの了承を受けてもうすでに花束をゲットしたみたいに喜んでいる依頼者さんは、何度も頭を下げてくるから作り物の枝先や葉っぱが当たる当たる。キグルミのわりに作り込まれてるのか普通にチクチクと痛い。感謝してくれるのは依頼を受けた側としても嬉しいけど自分の姿を考えてほしいもんだ。
でも、こうして感謝されてるのなら応えてあげるべきだろう。
「よし! どんと任せて!」
僕なりの精一杯で胸を張り、言葉どおりどんと拳を叩きつけてちょっとだけカッコつける、と。
「~~~~~~ッ!!?」←悶えるバカ
「だ、大丈夫ですか……?」
「ケガ人なんだからそんなことしたら当たり前でしょ」
さっきから、というか正確には警察から解放された辺りからずっと感じていた、アイエフの僕を見る目がバカを見る目になっていることを、僕はいつまでも忘れることはないだろう。
……とりあえず、どんとはやめて…そっと頑張ろう……。
☆
で、そっと頑張ろうと決意した結果―――
「うぎゃああああああーーーーーーー! なんでアイエフもいるのに僕だけ狙われてんのーーーーーっ!!?」
何体ものモンスターに囲まれ追われ、まるで台風の直撃を受けたみたいな惨事に。ケガなんかもうどうでもいいぐらいに疾走。あっちに逃げてこっちに逃げて、顔は開始四秒ぐらいで泥んこの鼻水だだ漏れ状態。それでも走る脚は止めない。だって恐いんだもん! 痛いけど逃げなきゃ死ぬであれホンマに!?
「ちょっとなに遊んでのよ! きちんと働け!」
「この状況を見て鬼すぎないいいぃ!? いやぁああーーーー! きたあああーーーーー!?」
「召喚獣出してさっさと戦え! こっちだって手一杯なんだから!」
「りょ、了解! 見て驚け! 聞いて驚け! これが僕の究極無比のシグマ7の遺志を継いだ―――!」
「まじめにやれッ!!」
「ごめすっ!? な、殴ったね!? 僕のほっぺをグーで殴ったね!? 曾々々おじちゃんにも殴られたことないのに!」
「ふざけてんのが悪いんでしょうが! てかソレ生きてないんだから殴られてないで当然でしょ! いいから召喚しろ!」
「お、おっす! ―――
毎度おなじみ魔法陣から喚び出した召喚獣に武器を構えさせ、果敢に立ち向かう。が、
「ありゃぁぁああ~~~~~~!? 流される~~~~~~~!」
「弱ッ!? 戦闘力ゴミか!」
モンスターの群れの波にのまれてあわや溺死に追い込まれてしまった。こ、この……! うっとしい!
「だらっしゃああーーーーー!」
膨れ上がった塊の一部が弾けて、ボフッと僕と召喚獣が飛び出して転げ落ちる。このとき、落ちどころが悪くて怪我をしてる部分を強打してしまって悶えた。
「ちょっと大丈夫なの! やっぱりソレの件は諦めた方が……!」
「だ、大丈夫! なんとかする! これぐらい平気だって!」
強がっていても、なんとか召喚獣の力で一点突破して脱出はできたものの、まだまだモンスターはたくさんいる。これはまた、骨が折れそうだなぁ……。けど、やらなくちゃやられるだけだ! こっちだっていくつもの死線(主に仲間内によるもの)を通ってきたんだ! 敗けるわけにはいかない!
目の前に群がるモンスターを前に、折れそうになる決意を鼓舞して立ち上がる。そして召喚獣には木刀を、僕自身は手に握った花束を掴む力をより高め、しっかりと握り、モンスターたちにアイエフと共に走り出す。
「よし! もういっちょだ―――!」
そんなこんなで、とっぷりと夜になりました。
「お、終わったぁ……」
討伐依頼を完了して街に戻ってきてようやくひと段落しての一言はすべてを物語っていた。
全身が泥まみれのズタズタで、今すぐにもで力尽きてぶっ倒れたい衝動を抑えながら街中を歩き、何回も漏れるため息とすれ違う人全員に驚かれて振り返るほどの“腹の虫”を聞いて、目的の場所に向かう道中。
同じように泥まみれのアイエフが若干イラだった様子で警察からの依頼書を指ではじき、
「なにが二人で対応できる数よっ。おもきっし苦労したじゃない、あのポンコツ警官どもめ。情報ぐらいまともに提供しろっての」
ちょっち怒気が怖いけどアイエフの怒りもごもっとも。
本来の討伐するモンスターの数が渡された情報の数より倍以上にいたんだ。おかげで時間も体力も想像を超えるほどに消費して、今現在倒れる寸前あたり。僕もアイエフもすっかりへとへとになっていた。
「ホント、とてつもない数だったよね……(ぎゅるるるるーーーー)」
「数もそうだけど、あんたもあんたでもうちょいしっかりしてよ。結局私が大半やっつけることになったでしょ」
「そんなこといったってさ、あれじゃ僕にはどうしようもないって…(ぐごごごごごご~~~)」
「はぁ……。もうこれっきりにしてよ。また今回みたいに捕まってクエスト行くことはないように!」
「はーい(ずもももももぐごごごぎゅるるるる~~~~~!)」
「あとその音! どうにかしなさい! 一緒に歩いてる私が恥ずかしいでしょうが!」
そんなこと言ったって鳴っちゃうもんは鳴っちゃうんだからしょうがないじゃないか。それに、僕の腹の音が大きい所為で周りには聞こえてないけど、間違いなくアイエフのお腹からも『ぐ~……』っていう音が……
「……………なにか言った?」
「何も言っておりませんから喉元のカタールを収め下さいアイエフさま!」
本当に何も言ってないのになんで僕が考えてることわかるの!? エスパー!? 中二病が一周してホンモノの能力開眼してるんじゃないの!?
いったい彼女にはどんな秘めたる才能が眠っているのか。身内の驚異の能力に戦々恐々としてしまう僕。当のアイエフは恥ずかしさからか、ほんのりほっぺを赤く染めて腕を組み、そそくさと歩き出す。
「たくっ……。ほら、もう夜になっちゃったし早くクリア達成だけギルドに報告して帰りましょ。コンパたちが待ちくたびれてる頃よ」
「そうだね。ネプテューヌあたり、待ち時間長いーとか言いだして暴走してそう」
「容易にありそうね…。そうなる前に帰るわよ」
「うん。その方がいいよね。あ、あとコレ! あの内気な変な人に渡さないと!」
「さすがにもういないわよ。こんな遅くなってるんじゃ、もう帰って…………」
言いかけた言葉が止まった。見ればアイエフの顔面も固まってる。
「? どうしたのアイエフ? 急に止まって」
「…………あれ」
刺された方向を、軌道をたどるようにツツーと目線を動かし、目視できる所までたどり着いていたギルドの前までいって、気がついた。
見覚えのある木がギルド前にそびえ立っていた。
「あ、あれ……もしかしてずっと着て待ってた……?」
「もう五時間ぐらい経ってるわよね……?」
二人して引きつった表情で向き合って、変な間が僕らを包む。ま、まっさかぁ~! そ、そんなことあるわけないじゃん! あはッ、あはははは~! …………ない、よね?
「と、とりあえず渡してあげましょう。ずっと待ってたみたいだし…」
「う、うん…。そうだね―――おーい! そこの木くんー!」
「傍から聞くと血迷った人間みたいね」
それは言わない約束だよ、アイエフ。……僕もそう思うけども。
なんてこっちの心情も知らない木のキグルミを着た状態の依頼主がこちらに気づき、どういう原理かスライドして走ってきた。……もうそうそうツッコまないぞ。
「よっ、よかった! お二人とも無事だったんですね! あまりに遅いから何かあったんじゃないかと……!」
「あ、う、うん…。ちょっといろいろと想定外があってね。でも、君もこんな時間まで待ってくれてたんだね」
「当たり前ですよ! お願いしたのは僕の方なんですから! それより二人ともよく見れば全身泥だらけじゃないですか! やっぱり何かあったんですか!?」
「大丈夫だよ。それより、ほら。『約束のチューリップの花束』。確かにお持ちしました、依頼者さん」
泥んこになりながらもこれだけはと死守した綺麗な花束を渡す。木に花をあげるって変な構図だけど、一応キグルミなだけあって枝の部分が腕として機能し受け取る依頼人はみるみる表情をほころばせ、
「あっ! ありがとうございます! こんなにいっぱい……! 本当にありがとうございます! ありがとうございますっ!」
手にした花束が散るんじゃないかってぐらいにブンブン頭を下げて何度もお礼の言葉を述べてくる。だから枝とか葉っぱが刺さるって……。嬉しいのはわかるから。
「あのっ! これっ! 報酬とはまた違うんですけど……ほんのお礼です! 受け取ってください!」
そう言ってキグルミの枝(手)で差し出されたのは、見たことのないゲームソフトだった。こっちの世界にきて、プラネテューヌのゲームショップはだいたい行ったけどこんなのあったかな?
「僕の父親がゲーム会社に勤めてて、たまに発売前の新作を持ってきてくれるんです」
「それが、これってこと?」
「はい。まだ店頭にも並んでないやつなんですよ」
「くれるのは嬉しいけど、これっていいの? 会社の部外者である私たちが貰っちゃって?」
「もちろんですよ! まだ売ってないとはいえ発売はもうじきですし、むしろ受け取ってください!」
「それならありがたく頂くよ」
「はい!」
これは思わぬ収穫。帰ったら楽しみが一つできたね。
「それじゃ僕はこれで失礼します! 本当にありがとうございました!」
「うん。キグルミ、脱げるようになるといいねー」
「せめて好きなこの前ではやめておきなさいよ」
某機動戦士にでてくるド◯みたいにものすごいスピードで夜の街に消える樹木に、僕らの放った声が聞こえたかどうかはわからないが、喜んでくれたのなら良かったと言えよう。
「どうやら内気なだけで悪い子じゃないみたいだし、うまくいくといいわね」
アイエフも依頼者のあんな顔を見たからか、さっきまであった疲労をかき消す笑みを浮かべていた。うんうん、アイエフの言うとおりこのままうまくことが運ぶと切に願うばかり。
「あのまま全力で振られてしまえばいいよね」
「そっちのうまくじゃないっての……」
え? 違うの? 同士だと思ったのに……。
「―――ま、いっか。さあ、さっさと達成報告して帰ろー。もうあちこち痛くて……うわ! 手めっちゃかぶれてるし皮が破けてる!?」
「たぶん、チューリップの花を握りしめ続けたせいね。帰ってコンパに薬塗ってもらえばそれぐらいすぐ治るわ」
「そうなの? よかったぁ……」
「………………」
モンスターに襲われたときとか絶対に落とさないように強く握りしめてたりもしてからなぁ。よく見れば巻いてもらった包帯もほどけてるし、また擦り傷とか付けちゃってる。あとでまたコンパにお願いしよう……って、それだとまた心配かけちゃうから罪悪感がハンパないんだよね……。どうしたもんか…………ん?
「なに、アイエフ?」
コンパの笑顔を守るためにいい方法がないか模索していたら、不意にアイエフがこっちをジッと見ていたことに気がついた。僕の顔が泥まみれなのはわかるけど珍しくないよ。アイエフも同じ顔だし。
「いや、あんたってバカのうえに損するタイプよね」
「えっ!? なにいきなり!? ていうかバカじゃないよ僕!」
「はっ―――!」
鼻で笑われた!? な、なんなんだ! なんでいきなり僕は罵倒されてしかも鼻で笑われたんだ!?
「……でも、その手はかっこいいんじゃない?」
と、僕が唐突の仲間の罵りに驚愕する横で、原因のアイエフが何か言ったようだけど、ボリュームも小さくて意識も乱されていて聞き取れることもできず、訊きかえそうとしてアイエフはスタスタと歩き出してしまった。
「―――さ、ギルドにクリア報告しに行きますか」
「ちょっ、ちょっとアイエフ!」
「あ、そうそう。今晩のおかず、貰うの半分までにしてあげる」
「えっ!? マジですか!? さすがアイエフ! その胸に秘めた大きな器は大平原のごとくの地平線だね!」
「…………やっぱり全部貰うわ。というか二週間分のおかず貰うわ」
「なんで!?」
僕の思い当たる限りの褒め言葉を使ったのになんてこったい。さらば、二週間分のコンパの愛情よ。幻想の永久に。……あ、ちょっとアイエフの中二病うつったかも…。
二重の意味で涙が零れそうなまま、クリア報告を済ませた僕はこれから先の日々をひもじい思いで過ごすんだなぁと思い耽りながら、アイエフと共にネプテューヌとコンパの待つ家へと早足で歩きだした。
はい、どうでしたか?アイエフが明久のことを本格的にバカだと認識しましたね。うん、すごく今さらだ。バカが二人と天然と中二病という珍妙なパーティーですがうまくやっていけることでしょう。主にアイエフが奮闘する形で。ガンバってあいちゃん。今回に関しては、誤字脱字ならびに文章がおかしい等、ここをこうした方がいいんじゃないかとありましたらテケトーかつ気軽に書いていただけたらありがたいです。次回の投稿は未定です。今年中にはラステイション編までいきますが、カメ更新なんで気長に待ってくれると嬉しいです!ではまた次回に続け!(これはプルコギですか? いいえ、おまかせで)