バカ次元ゲイムネプテューヌ   作:浮雲

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遂に第二章突入です。あの女神に、あんな人まで登場するかも?なお話がこれから繰り広げられる……のだろうか?わからん。というわけでどうぞ。


第9話 ぷちことロリコンと新大陸

 人は生きている限り、道に迷うことはままあるだろう。

 なにがベストなのかを見極めるために、どの方向が一番己の信念に基づくものか、中には自分に降りかかる損害がどれ程のものになるのかを考え、知恵を振り絞って進路を決めていく。

 それでも人間が浅はかである以上、道を間違え、歩んできた道を振り返ることだろう。そして思うんだ。ああ、どうして僕はこの道を選んでしまったのだろうかと。悔やみきれない後悔の念に頭を痛めていく。

 

「いや~、楽しかったね~。プラネテューヌ観光」

「……そうだね。楽しかったと言えば確かに楽しかったね」

 

 頷く半面、はたして楽しいという感情だけが人のすべてと言えるのだろうかと、疑問に思う僕がいる。今一度僕は人の在り方について考えなくてはいけないようだ。

 

「トラックに積荷乗せてた作業員の人たちとかすごかったよね」

「……そうだね。大きさも形もバラバラな荷物を隙間なく綺麗に載せていたのはすごかったね」

「さすがは、あの有名な落ち物パズルを作った会社なだけあって、運送部門の人までも達人だったとは!」

「……関係ないと思うけどね」

 

 人とはいったい、どうして道をあやまたぬことが許されないのだろう。どこで人は、思慮深くもなんとも滑稽な結末をたどるのか。

 

「いろんな国の人が混ざってる変な集団が、ドラム缶とか車とか壊してたりもしてたし」

「……あれは…うん。触れない方向で行こうか」

「可愛いカンフーの女の子とか、力士とかもいたよね。ホンモノって見たの初めてだった」

「……だからあれは触れないで行こう。もう一回ネタにしてるし」

 

 他人の振り見て我がふり直せとは言ったのものだけど、まさに人は他者の悲惨な最後を何度もいろんな場面で見てきたのに、それを自分の時の教訓として活かせないでいる。学んできたはずだというのに、いざ自身がその境遇に立たされた時、自分は大丈夫だと根拠のない自信を疑わずに結局は取り返しのつかない事態に陥ってしまう。

 

「いや~、いろんな人がいて楽しかったよね~」

「……そうだね」

「こんぱやあいちゃんも一緒にくればよかったのに」

「……そうだね。二人と一緒にいれば、良かったのにね」

 

 本当に、人とは不思議な生き物だ。

 僕は己の過失に頭が痛くなりそうになる。

 

「…えっと……。アッキー?」

 

 そして隣りに立つ可愛らしい少女、ネプテューヌを見て、さらに僕自身の無力さが恨めしく思えてくる。

 

「…………………ネプテューヌさん?」

「……な、なんでございやしょう、アッキー?」

 

 ああ、本当に……。僕たちはいったい……。

 

 

 

 

「……ここ、どこ?」

「………………」

「………ネプテューヌ?」

「――――――迷子だね、わたしたち」

「ネプテーーーーュヌーーーーーーーーーー!」

 

                            ☆

 

 と、いうわけで絶賛迷子になりました、僕ら。

 

「もう、大きい声出さないでよ。大丈夫だって。ほら、プラネタワーは見えてるわけだし」

 

 天に向かってそびえ建つ街の中心街の巨大な塔を指さし、一切の憂鬱すら感じていないご様子のネプテューヌを見て、盛大にため息が出てしまう。

 

「その見えてるプラネタワーに向かって僕ら、かれこれ一時間ぐらい歩いてるよね?」

「あれ? そうだっけ?」

「なのに全然近づいている気がしないんだけど」

「気にしない気にしない! 上を向いて歩いて行こう!」

「その結果で迷子だからね!? いい加減に学ぼうよ!?」

 

 こう言っちゃなんだけど、まさか僕の口から学について他人に説く日がこようとは。

 だけど、かれこれ一時間も歩き続けて到着する気配もなければ嫌でもこうなってしまうは仕方ないだろう。上だけ、てかプラネタワーだけ見て歩いてもそら着くはずがない。というか一時間もネプテューヌに主導権を許してしまった僕も僕だ。我ながら何をしていたんだと自責の念に涙が出そうだ。

 

「はぁ……こんなことならコンパたちにも来てもらえばよかった…」

「もう、そんなこと言って。本当はアッキーの気持ちなんてわかってるんだから」

「僕の気持ち? わかってるって、なにが?」

「わたしと二人っきりで内心ドキドキだったくせに♪ 言わせんな恥ずかしい♪」

「………………………」

 

 どうしよう。むしょうにコンパとアイエフが恋しくなった。

 そもそも、二人でプラネテューヌを観て回ろうっていうのがまず失敗だった。僕の怪我も完治してようやく旅に出ようってなったまでは良かったのに。旅立つ前にネプテューヌが完治祝いとかなんとかでプラネテューヌを隅々まで探検しようと誘ってきたのがことの発端。

 アイエフたちも一緒に連れて来ればよかったのに、ネプテューヌが探検なのに街中に詳しいコンパたちを連れては意味がないと、結果二人で来てしまった。一応待ち合わせ場所は一番わかりやすいプラネタワーと決めてたとはいえ浅はかすぎた。このネプテューヌが僕一人で手におえるほど扱いやすい子じゃないと重々知っていたはずなのに。あの時の僕が恨めしい。

 

「ほらほら、そんなの落ちこまないでって。わたしが悪かったから」

 

 と、さすがに僕の様子を見て悪気を感じたらしいネプテューヌの言葉。

 

「そうだ! こういう時こそ市民の味方おまわりさんに聞けばいんだよ!」

「たぶん無理じゃないかな。僕がいる時点で」←計6回ほど逮捕された人間

 

 そして古傷を抉るネプテューヌの言葉に軽くトラウマがよみがえる。

 いや、ネプテューヌが聞く分にはなんも悪くはないんだけど、なんというか僕の立場っていうか、経歴がヤバいっていうか、うん。ともかくおまわりさんはしばらく見たくないです。

 そんなうまく言葉にできない気持ちを察してくれたネプテューヌは静かな声で『あー……』とこぼし、

 

「それじゃ街頭インタビューしかないかぁ。あ、あの子なんてちょうどいいんじゃない」

 

 指をさしながら(人のことさしちゃダメ、ぜったい)言うネプテューヌにならって、あの子という人物を確かめる。そこにいたのは、見た目ネプテューヌ以上に幼い女の子―――というかものすごく小さい。五歳か、六歳ぐらいだろうか。ネコだか虎だかのネコ耳付き帽子をかぶっている。あと、なんかよくわからない物体に乗って浮遊中。ほうほう、これはこれは、また……。

 

「こんにちはー。ねね、ちょっとお話いいかなー?」

「待ってネプテューヌ!? 明らかに関わってはいけないタイプの子だよ、その子は!?」

 

 なんの躊躇もなく行っちゃったよ!? え!? もしかしてこっちの世界じゃ小さい子がネコ耳つけて空飛んでるのは日常茶飯事!? いや、確かにこの世界にきていろんな変な人ていうか物体は見てきたけど……これはまた違うインパクトが…!

 とにかくこれはいかん。ともかくネプテューヌを引き戻さなくては。これ以上彼女に主導権を握らせていてはいけない。

 

「ネプテューヌ。僕の話をよく聴くんだ。他の人にしよう。道を聞くなら普通の人にしよう」

「すいませーん。ヘッドフォーメンションってどこで売ってるの?」

「お願いだから僕の話を聞いてよ!? というかまったく関係のない話だし、言葉もおかしいから!」

 

 友情のってかバカ! わかりづらいネタやめて! ツッコミに迷う!

 

「ちょっとネプテューヌ。こっちきて」

「えっ? 告白? ごめんなさい。わたしは愛などいらぬ!」

「ネタ使うならもっと丁寧に使いなよ……。雑すぎだって……じゃなくて、いいから聞いて」

 

 ネプテューヌを謎の物体と共に浮く少女から離し、屈んで向き合う。

 

「百歩譲ってあの子に聞くのは良しとする。だけど会話が突飛すぎるでしょ」

「まずは場の空気を和ませようかと思って」

「だとしたら方向性だいぶ間違ってる気がするんだけど……」

 

 明らかにファーストコンタクトは失敗している。変人と思われても否定しょうがない。あ、それはもともとか。

 

「なんだかアッキー、わたしを見る目が最初と少し変わったよね。なんか失礼な感じで」

 

 人とは時間の流れりに乗って変わるものだよネプテューヌ。

 ともかくこれから挽回するにはこの僕の活躍が必要ということだろう。やれやれ、ネプテューヌみたいな手のかかる仲間を持って僕も大変だ。しかしその仲間の失態を自然とフォローすることこそが聡明な僕の役割だろう。ふっ、苦労人として生まれながらも健気に頑張るとは、自画自賛に値する……!

 

「そこのバカ面はいきなり、なに笑ってるにゅ? 頭大丈夫かにゅ?」

「う~んどうだろう? とりあえず笑えばいいと思うよ」

 

 メイジ◯ごめんなさい。頑張れって他人に送るエールの言葉だけどこの時だけは自分に言い聞かせていいですか? 頑張れ、僕。というか、

 

「初対面の相手になんて言いよう……。君、そんな言葉使いしちゃダメだよ。今からそんなんだと、ろくな大人にならないからね?」

 

 僕の通っていた学校にはそうしたクズがいっぱいいたからよくわかる。口汚いどころか他人の幸せを文字通り横槍で妨害する程の底辺っぷりなんだ。あいつらほど人間の醜悪を表してるバカもなかなかいない。

 見た感じこの謎の物体に乗って浮遊するあの子はまだ十歳にも満たない幼児だ。これからの教育次第で良くも悪くも変わることができる。ならば日頃からクズに囲まれて生きてきた人生の先輩として、ここで彼女の将来を悲惨なものしないため優しく教えるのが責務だろう。アイツらみたいになったら目も当てられないし。

 

「いいかい? よく聴いて。初めて会った人にはまず挨拶。そして年上には敬語が必要なんだよ? わかった?」

「そんなの知ってるにゅ。当然にゅ」

「知ってるならやろうよ……」

「別にやらなくてもいいにゅ。敬語は敬う相手に使うモノだにゅ」

「やーい、アッキー敬われてなーい」

「お前も同類にゅ」

 

 こ…この子、けっこう毒吐くな……。子供が故にザクってくる……。

 

「ところでいきなりなんだにゅ? ブロッコリーに用かにゅ?」

「へぇ、ブロッコリーっていう名前なんだ。思わず、ぷちこ、って呼びたくなるね」

 

 穴にでもハマってたんですね、わかります。

 

「ぷちこじゃないにゅ、ブロッコリーにゅ」

「そんな細かいこと気にしない気にしなーい」

「細かくないにゅ」

 

 初対面にも崩さないネプテューヌクオリティ。そこに痺れる憧れるぅ! ………なに言ってんだ僕?

 

「えっと……ごめんね。僕たち道に迷っちゃって。プラネタワーってところに行きたいんだけど、今どこにいるのかもわかってなくて……」

「それなら、この道をまーっすぐ行くにゅ。そうすると看板が出ているはずにゅ」

「おおっ! 親切にありがとう!」

「助かったよ。ありがとうね!」

 

 小さな指で道を教えてもらい、思わず安堵する。これで二人に合流できる。一時はどうなるかと思ったけど、なんとかなりそうで良かった。この子も毒は吐いても根は良い子みたいだし、人生の先輩とか余計なお世話だったな。

 

「じゃ、アッキーいこっ! ぷちこ、それじゃあね!」

「だからぷちこじゃないにゅ」

「あははは……なんかごめんね。でもありがとっ。じゃあね」

「にゅ」

 

 走り出したネプテューヌに続き、ポンとブロッコリーちゃんの頭を撫で、僕も後を追いかけるように走り出した。

 そうして、小さな女の子と別れた後―――

 

 

 

 

 

 

「「また迷ったぁあーーーーーー!!」」

 

 

 目的地には、すぐに付くことはなかった。

 

 

 

 

『…………そういえば、今の人どこかで会ったような気がするにゅ…。誰だったか考えるにゅ…』

 

『……………(考え中)』

 

『……………(考え中)』

 

『そうだにゅ! ネプ子にゅ! ―――あれ? もう一人は……誰にゅ?』

 

                             ☆

 

「おおーっ!? なんか大地が割れてるよっ!? まさか、これが古の戦いの傷跡ってヤツなんだねっ!? きっと遥か昔に、ここで女神と邪神が互いを無数の剣で封印しあったと言われている、壮絶な戦いがあったんだーっ!!」

「テンション高いね、ネプテューヌ」

 

 しかもそれなんてフェンサー? パートナーの女の子が武器に変わる系?

 

「ほら! アッキーも見てみなって! この興奮は少年なら誰しもが覚えるリビドーなんだよ!」

「ちょっ、服引っぱんないで! 柵があるとはいえ危ないから!」

 

 何がそこまでネプテューヌのテンションを高めるのか、ものすごい力で引っ張られてしまう。

 道に迷い、変てこな子供に道を尋ね、再び道に迷うこと、ようやくコンパとアイエフと合流をはたすことができた僕とネプテューヌは今、言葉通り『大地の端』らしき場所に来ていた。

 

「わぁ……すごいなぁ……。下が見えない……」

 

 そっと眼下に視線を落とせばそこには空がある。比喩とかじゃなく、本当に青い空に、いくつもの白い雲が浮いているあの大空だ。

 底がまったくわからないのもあるけど、遠近感が狂うというか、空が下にある所為か、平衡感覚がめちゃめちゃになりそうで目眩がしそうだ。

 

「これいったいどうなってるんだ? この世界って、空が下にあるの?」

「もうちょっと覗いて見れば?」

「え? でも危ないんじゃ…」

「大丈夫だって。柵だってあるんだし」

「ん~、それもそうか」

 

 ネプテューヌの指摘通り、崖には人の何倍もある巨大な門と、門の両柱から伸びる鉄柵によって危険防止を図ってるようす。これなら柵部分の隙間から顔を出すぐらいだったら落ちることもないみたいだ。ちょっとだけだし、ためしに覗いてみても大丈夫そう。あ、でもその前に……

 

「絶対に押さないでよ」

「おっけーおっけー」

「あ、いや。フリじゃないからね? 一応言うけどフリじゃないよ。マジでここから落ちたら死んじゃうからさ。わかってるよね?」

「だーいじょうぶ大丈夫。それぐらいわたしだってわかってるって。わたしのこの目を見て! 無垢で純粋な穢れなき瞳の持ち主が嘘をつくと思う!?」

「……………」

 

 さーて、見てみよう。下はどんなことになってるんだろうなぁ~っと……。

 

「ひゃ~……真下も青空だ。これ、大地が浮いてるの? また絶景だなぁ。もうちょい乗り出してもいけそうだ……」

「アクセラレーションでドーン!!」

「だからフリじゃないってーーーーーー!!!?」

 

 突然の衝撃が背後から襲いかかり、乗り出した柵の隙間から体がポンッとはみ出そうになって―――死に物狂いでなんとか策にしがみ付く。

 

「大丈夫アッキー?」

「大丈夫ではないよ!(泣) 僕、フリじゃないって言ったばかりだよね!? なんで押したの!?」

「え? それもふまえてのフリだったでしょ? さすがは芸人魂を燃やすアッキーだよね。大丈夫、わたしとアッキーの仲だもん。それぐらいわかってたよ♪」

「なんにもわかってないですよ!!? 落ちたら死ぬんだってのっ! 見て! 今の僕の生きるのに必死な姿を! 心臓口から出ると思ったわ!!」

「b(グッ)」

「グッ! じゃねえよ!! サムズアップやめ―――ああっ、ドヤ顔やめい! 純粋に腹立つよ!」

「あいちゃん、こんぱ、二人も来てよー! 大地の端っこいい眺めだよー? もしかして怖いー? 怖いんだー!!」

「無視しないで助けろーーーー!!」

 

 ワイワイ、ギャイギャイ。キャーキャーと、一種のカオスがこの場を支配する。そんな僕らを遠くで見ていてコンパたちはと言うと……、

 

『まーた随分と仲良いわね、あの二人。おバカちゃん同士、波長が合うのかしら?』

『なんだか兄妹みたいですね。とっても仲良しさんです』

『兄妹っていうより、どっちかというと兄弟ね。あの調子だと』

『あははは…。でも、ねぷねぷを独り占めされてるみたいで……ちょっと妬けちゃうです』

 

 なんかわけのわからんことを言っていた。どうでもいいから君達も見てないで助けてよ! 落ちるって! 死んじゃうから!

 と、いう僕の思いを敏感に受け取ってくれた、こちら側(ツッコミ側)のアイエフがなんやかんやで助けてくれた。暴走中のネプテューヌにはコンパが当たり、一先ず落ち着きを取り戻す。

 

「えーと、ねぷねぷ。このあたりは接岸場といって、大陸と大陸の陸地が時々くっつく場所なんです。別に一つの大陸が割れてるわけじゃないですよ?」

「へーそうなんだ」

「な、なるほど。だから空があるわけか…」

 

 そういえば最初にこの世界に来たとき、コンパの説明の中に今いるプラネテューヌを合わせた四つの大陸は浮いているとか言っていた。ここは所謂、大陸と大陸を行き来するゲートということか。

 

「でもさ、コレってどうやって渡るの? 見たところ単なる門にしか見えないけど……」

「そうだよね。このまま行けばアッキーみたいに落っこちちゃうもんね」

「突き飛ばしたのネプテューヌだけどね」

「あ、わかった! やっぱりジャンプ? イヤッフー! とか言ったほうがいいかな!?」

「オーバーオールに赤い帽子でもかぶれば、ネプ子なら渡れるかもね? けど、他の大陸に渡るには教会で申請して、跳ね橋を下ろしてもらわないといけないの。手続きさえ済めば、今後は自由に通れるようになるわ」

「へ~そういう風になってるんだ」

 

 僕の世界でいう、飛行機で国外に行くようなものなんだろう。手間と言えば手間だけど、最初の一回だけで充分ならまだこっちでのパスポートとかよりも楽なのかも。

 

「じゃあさっそくその教会ってところに行こうよ。この近くだよね?」

「はいです。歩いて十分もかからないところにあるです」

「それじゃレッツゴー!」

「さっきからそうだけどテンション高いわね、ネプ子。二人で探検してたときにでも何かあった?」

「さあ? ただ僕は振り回されてただけだけど。というかネプテューヌがテンション高いのいつものことじゃない?」

「それもそうか」

「アッキー、あいちゃん。早くー」

「二人とも、早くですー」

 

 先頭を走るネプテューヌにコンパに手招きされ、アイエフと共にいそいでおいかける。どうやら突き落された事実がなかったことにされてるみたいだけど、この恨みはいつか晴らすつもりでいるから、ネプテューヌは憶えていてほしいものだ。

 で!

 

「こんにちはー!」

「ちょっとネプテューヌ。教会なんだから静かにしないと」

 

 教会到着後、ネプテューヌが扉を開けて突入して思わず冷や汗が出る。ここだけ見ると単に遊びきた子供みたい。

 なんて思っていると、教会の奥からここの職員らしき人が出てきた。

 

「ようこそ、プラネテューヌ教会へ。当協会になんのようだい?」

「ラステイションへの渡航手続きをお願いできるかしら」

「ラステイションへは君たち四人で?」

「はいです」

「なら、この書類に必要事項を記載したあと、ここにサインをお願いします」

 

 慣れたような手さばきで進める職員さん。教会っていうぐらいだからもっと堅苦しいイメージがあったけど、意外とオープンな感じのよう。建物の外観もそうだったけど、内装も豪勢な感じがして正直すごい強面な人が出てくるんじゃという予測は、いい意味で外れた。

 そうしてホッとしつつサインを書いていたら、教会職員の人が僕の方を見て、

 

「あれ? 君はどこかで……あー! 君は確か今、モンスター退治に貢献してる少年くんじゃないか!」

「え? 僕のこと知ってるんですか?」

「知ってるも何も今プラネテューヌじゃ噂になってるよ。まだ若い少年少女がクエストで張り切ってるって。いやー、まさかこうして出会えるなんてね。見たところ学生なのに偉いね。奉仕活動が好きなのかい?」

「あ、いえ……。別にそういうわけじゃ……」

「人の役に立ちたってことなら、教会で働いてみるのはどうだい。やりがいはあるよ。今の世の中、プラネテューヌにすらボロボロのスカートを穿いて街中を歩き回る変態や、女の子を押し倒す変質者もいるらしいんだ。君のような若い力はそういう最低な奴らにはうってつけだ」

「だ、大丈夫です。今のやり方で十分なんで……」

 

 言えない。そのボロボロのスカート穿いていたのが自分で、街中で女の子を押し倒して、その反省から始まったクエスト活動だとは口が裂けても言えない。というか教会にまでその噂広まっていたのか。どんどん追い詰められてるみたいで心臓に悪いな……。

 

「はーい。お兄さん、書いたよーって、どうしたのアッキー。ブルーになっちゃって?」

「いや、なんでもない……」

 

 噂も七十五日って言うし、今は噂が消えるのを耐えるしかない。……できるだけ早く消えますように…。

 

「ええと。アイエフさんと明久さん、コンパさんに、そしてネプチューヌさんだね」

「お兄さん、わたしの名前間違ってるよ。ネプチューヌじゃなくてネプテューヌだよ」

「あぁ、すまない。僕としたことが君の様な可愛らしいロリっ子の名前を間違えるなんて…」

 

 目の前のコイツはいきなり何を言っているんだ。

 な、なんだ……? 僕の聞き間違いか…? 今教会という神聖な場所で働いている人間の口から聞こえてはいけない言葉が聞こえた気がしたんだけど……。き、気のせいかな…?

 

「ネプテュースさん…ネプティーヌ…………ネプチュー…テュー…」

 

 しかもこの人ネプテューヌって言えてないし。

 

「うぅ…もしかしてやっぱり、わたしの名前って言いづらいのかなぁ…」

「あはは、言いづらくはあるかもね」

「まっ、待ってくれ。今日はたまたま滑舌の調子が悪かっただけなんだ」

「滑舌って日にちによって良いも悪いもあるものなの……」

 

 無理して変なフォローせんでも。

 

「ところで、コンパはネプテューヌって言える?」

 

 と、これは職員を見ていたアイエフのコンパに向けた台詞。それに対し、コンパは少し困ったように笑って答える。

 

「実はわたしも言えないんです。だから、ねぷねぷって呼んでるです」

「あ、そうだったんだ。意外だね」

「つい、噛んじゃうですよ…」

 

 まぁ、わからなくもない。微妙に『テュー』ってとこが噛みやすいんだよね。

 

「じゃあ、プラネテューヌって言ってみて」

「プラネテューヌ、ですか?」

「……なんでプラネテューヌ言えて、ネプテューヌが言えないのかしら」

「もうネプテューヌって名前、呪われてるんじゃない?」

 

 本名を言いづらくする的な怨霊でも憑りついてるんでしょ(適当)。

 

「ともあれ、これで君たち四人の手続きは終わり。これでラステイションとプラネテューヌが自由に行き来できるようになったはずだ」

「……あ、ありがとうございます」

 

 まるでRPGみたいなやり取りだなぁとかツッコミかけた。ゲーム仕様って大変だ。

 

「そうだ。お兄さんに訊きたいんだけど、女神様って今いるの?」

「すまない。パープルハート様は天界にいるみたいで、まだプラネテューヌには降りてきていないんだ」

「そっかぁ…。もしかしたらいると思ったんだけどなぁ」

「風の噂では、他の大陸の女神様たちは、それぞれが守護する大陸に降りて来ているというのに…。パープルハート様の身に何も無ければいいんだけど…」

守護女神戦争(ハード戦争)で何かあったのかしら?」

「まさか、パープルハート様が他の女神様に敗れるなんてそんなことありえないよ」

 

 神妙な表情で、今までの穏和とは違いはっきりと強気な姿勢を初めて見せる教会職員さん。

 コンパから前聞いた話では、人々は大陸ごとに信仰する女神は異なり、住んでいる国を守護している女神様を基本信じているらしい。

 なにに感情の導火線に触れたのかはわからないが、この人もこの大陸の女神様を思っているってことだろうか。何かあったなんて疑うつもりはないようだ。

 

「ねぇねぇ、守護女神戦争ってなに?」

 

 ネプテューヌの質問が飛ぶ。これは僕も話の中で気になっていた単語だ。勝手ながらに元の世界の試験召喚戦争に親近感を懐いてしまう。

 

「守護女神戦争っていうのは、遥か昔から行われている、このゲイムギョウ界の覇権をかけた戦いのことだよ」

「ゲイムギョウ界の……覇権をかけた戦い? 天下統一みたいな…感じですか?」

「そんなところだね。他の女神を倒し、最後まで勝ち残った女神様はゲイムギョウ界を総べる神様になれると言われているんだ」

「で、女神様たちは天界って場所で長年戦い続けているってわけ」

 

 職員の人からアイエフが説明を続け、ほへーと耳を傾ける僕とネプテューヌ。

 まさに今のゲイムギョウ界は戦国時代! みたいな感じなんだ。センター狙ったり、黄金の果実狙ったり、最近の世の中は戦国時代がブームなのか?

 

「へぇ…なんだかよくわかんないけど、みんなで仲良くすればいいのに」

「確かに、ネプ子の言うとおりね。けど、昔から戦ってるんだし、引っ込みがつかなくなっているのかもしれないわね」

「けっこう、女神も人間みたいなとこがあるんだ」

 

 長い年月戦い続けるってのはどういう気分かはわからない。女神ってだけで普通の人とは感性も生き方も価値観も違うかもしれないんだ。一介の高校生である僕には理解するのは難しい話になる。ただ、こういうときに仲良くすればいいのにと自然と出るネプテューヌには好感が持てる。こういうとこがネプテューヌらしくて、僕は好きなんだよなぁ。絶対に言うつもりはないけど。

 

「さて、いつまでもここにいちゃ仕事の邪魔だし、そろそろラステイションへ行きましょ」

「それもそうだね。お世話になりました」

「お兄さんばいばーい」

「あぁ、気をつけて」

 

 労いの言葉を背に受け、そうして別れを告げた僕らは教会を後にしてラステイションへと向った。

 

 

 

 

『―――それにしても、さっきのネプチューヌって子、小さくて可愛かったなぁ。また遊びにこないかなぁ。……けど、どこかで見たことがあるんだよなぁ……うー…ん……』

 

 

 

「って、やっぱりロリコンだった!!?」

「うわ、アッキーどったの急に?」

「あ、いや……ツッコまないといけないと思って」

 

                             ☆

 

 ―――てなわけで、やってきました新大陸。

 

「うわぁ! なんか鋼鉄島ーって感じ!? あいちゃん見て見て! あれすっごいよ!」

「ちょ、服引っぱるな!」

 

 新大陸ということもあって、テンションフルマックスのネプテューヌ。あーあー……ありゃ危ない。絶対にいつか転ぶな…………あ、言ってるそばから盛大に転んだ。しかもアイエフも巻き込んで。

 

「すごいところですねー…煙突がいっぱいです」

「そうだね。ここまでくるとまったくの別世界だよ」

 

 コンパの言葉に賛同しながら、ぐるりと一周して新しい景色を見ていく。

 いたるところに工場やら煙突が煙を吹きだし、鉄塔にレンガ造りの歩道に煙幕を張る。街灯や建物のの街並みからしてレトロな雰囲気があり、その中に未来の科学を示唆する物がそこらじゅうに溢れている。こういうのってなんて言うんだっけ…? スチームパンクだっけかな。まーそんな感じ。

 プラネテューヌがデジタルで埋め尽くされた近未来だとするなら、ラステイションは重機に埋め尽くされた発展途上の国という外見。文字通りプラネテューヌから出たら別世界にきてしまった感じがする。元の世界からこのゲイムギョウ界にきてる時点で別世界もクソもないけど。

 

「『重厚なる黒の大地』。守護女神ブラックハート様が治める大陸、ラステイション。重工業が盛んで、工場なんかが多いのがこの国の特徴ね」

 

 辺りを観察していたら、ボロッとなっているアイエフが横から説明を入れてくれた。隣りでは頭に大きなタンコブを作ってるネプテューヌがいたけどあえてスルー。代わりにアイエフに質問して会話を続ける。

 

「大陸ごとに街並みが違ってるんだね。これって信仰する女神様の違いなの?」

「違うと思うわ。確かに大陸を守護するのは女神様だけど文明を築くのは、あくまで人だから」

「えー、女神様とかの趣味じゃないの? こういう……ティテールってやつ!」

 

 頭を押さえていたネプテューヌが復活と同時に会話に参戦。しかしやっぱり彼女の感性はどこかずれていた。

 

「残念だけど。女神様の趣味ではないでしょうね。どっちかっていうと人間の趣味ね」

「むぅー……あいちゃんは夢がないね。こんぱはどう思う? この大陸」

「工場とか煙突とかが目立ってて産業革命って感じがするです。でも、わたしにはちょっとマニアックな感じかもですぅ」

 

 困った笑顔で答えるコンパにアイエフも苦笑を浮かべた。

 

「まぁ女の子が食いつきそうな感じではないかもね。私は割と好きだけど……って、そりよりも一度教会に行きましょ」

「教会? って、ラステイションの?」

「そうよ。まずはそこで鍵の欠片の情報集めから始めるわ」

「なるほど。りょーかい」

「教会へごー!」

「ごー! です!」

 

 一先ず最初の目的も決まり、ラステイション教会を目指すことに満場一致。

 ネプテューヌとコンパが先を行き、後ろから僕とアイエフが付いて行く。右も左も見たことのない景色に道だけど、旅慣れたアイエフもいるしなんとかなるだろう。

 そう考えながら歩き出そうとして―――ふと、視界の端に『とある後姿』を捕らえた。

 

「……え? あれ……」

「どうかした? 何かいたの」

「えっ? あ、ううん。なんでもない……」

 

 立ち止まっていた僕にアイエフが話しかけけてきて、視線を一度『その場』から外してしまい、笑って誤魔化してもう一度見直して、その時にはもう見つけた後姿はどこにもなかった。

 あれ? いない……。気のせいだったのかな……?

 

「??? よくわからないけど。ほら、早くしないとおいて行くわよ」

「あ、うん…」

 

 アイエフに急かされ、きちんと確認もしないまま―――単なる見間違いだと思って―――結局そのままみんなと教会に足を運ぶ。

 最後にもう一度振り返ってみたけど、やっぱりあの後姿はどこにもなかった。

 そう…だよね…。こっちの世界にいるわけ…ないか……。

 

                             ☆

 

 そこは、深い森の奥地。太陽の光さえ遮断してしまう濃密な緑は、昼前なのに不気味なまでに暗かった。

 女神たちの果てしない闘争が繰り広げられている間、モンスターが大量に発生し、人の手が及ばなくなった未開拓の地では鳥のさえずりさえも聞こえない。ただ、モンスター達の遠吠えに、風で木々がガサガサと揺れる、恐怖を駆り立てるような圧の音が森を支配していた。

 だが、その日は、それだけではなかった。

 ガキンッ。ガキンッ。ガキンッ!

 何かが、まるで金属同士がぶつかり合うような、自然の世界では滅多に聞かない音が、森の深層部で聞こえてくる。

 暗闇の中で瞬く光に呼応するかのように削り合う音は次第に苛烈さを増し、モンスター達の遠吠えが次第に消えていく。音の正体に怯えているようだ。仕舞いには金属音だけが響き―――

 森の一部が爆発したように弾けとんだ。

 地面がめくり上がり、重力に逆らい、空へと大地が吹き飛ばされる。

 緑全体が震え、モンスターの悲鳴らしき咆哮があちらこちらからあふれ出てくる。

 しかしそんな雄叫びも、中空に投げ出された大地が地上に戻ってきた衝撃音によってかき消され、大量の砂塵が森を覆い、空の日光を閉ざしてしまう。

 立ち込める煙の中、ガキンッ、ガキンッ、とぶつかり合う音は未だ聞こえてくる。

 きらめく“何か”が微かに降りそそぐ日の光で銀色に輝くと、そこに向かって巨大な影が跳びだした。

 目の前すらまともに見えない世界で、人間には真似できない動きをする存在が、二つ。確かにその二つは、“戦っていた”。

 激しく交差し、衝突しあい、互いに弾丸のように正面からぶつかり合うと、二つの影を中心に砂塵が衝撃波で吹き飛ばされる。そこで、ようやく二つの正体の姿が明瞭化する。

 立ち上る煙幕の一点を穿ち、太陽の光が降りそそぐ場所で、あまりにも現実味から離れた光景があった。

 息を呑む姿を、一言でいうなら、まさに女神と―――野獣。

 腰まで届く銀髪が輝く女の子と、赤い毛に全身を覆われた三メートル強はある巨大なオオカミが、剣と爪を交えて競り合っていた。

 

「……あなた! いきなりどういうつもりか知らないけど……この私に挑もうなんて随分と威勢がいいわね? 私が誰だか知っての行い?」

 

 剣と爪がガリガリと消えずりあい、大気が振動している。怒りが間接越しに伝わっていた。

 銀髪の少女が問いかけたオオカミ―――でなく、オオカミの背後に立つ少年は静かに、ポッケに両手を突っ込みながらただ黙って佇む。

 それを挑発と受けた銀髪の少女は顔を歪め、

 

「そう……。あくまで、問答は必要ないってこと…。いいわ、なら……叩きのめすまで!」

 

 少女が手にした剣に力をさらに籠め、オオカミを吹っ飛ばす。

 吹き飛ばされた相手を追いすがるように空を滑空し、一気に追い詰めにかかる。が、オオカミは一転、姿勢をグルリと立て直し、鋭い牙でカウンターを仕掛けてきた。

 とっさに、間一髪で避けきるも、二撃目の対応に遅れた。

 オオカミが大きな口を開け、“先程大地を抉り弾き飛ばした”、脳にまで轟く咆哮を撃ちだした。空気を押し潰し、重力を呑みこみ、不可視なそれは地形を変動させ、銀髪の少女に襲いかかる。

 少女は苦しげにしながらも己の武器でもって凛然と立ち向かう。過激さを一層に強める攻防は森の姿を様変わりさせていく。

 ドゴンッ! とまた地面がめくり上がり、砂が空へと舞った。

 一人の少女の、一体のオオカミが、果てのない戦いを見せる。そんな最中に、少女が問いかけていた少年は、砂塵で見えなくなっていく空を仰いでいた。

 何秒そうしていたのだろうか。しばし呆然とした様子でそうして、戦闘に視線を戻す。

 旋風が巻き起こり、立つことさえままならない異形者同士の近くで、少年がポッケから右手を前へと突き出した。するとオオカミの全身から異常なまでの圧力が湧きたち、遠吠えを上げれば、付近に転がっている木々の残骸に石ころなどが浮き始めた。

 圧倒的な威圧感が、その場を支配する。あらゆる生物の脳髄に頂点を叩きつけるみたいに、報復だけをうながす。

 緊張が走る。強気でいた少女の額に一筋の汗が伝った。

 咆哮はビリビリと空間に広がりを見せ、風を巻き起こすと、少女の綺麗な銀髪がなびく。

 同様に、虚ろな瞳でいる少年の炎のように真っ赤な髪が、たてがみとして強風の中で絶対的な風格を、野性味を見せていた。

 戦いはまだ始まったばかりだ。




ハイいかがでした?ガンダムビルドファイターズトライとか仮面ライダードライブとか夜ノヤッターマンとか最近めちゃくちゃ見ててテンションが上がってるので書くときはスラスラ何だけど、やはり駄文ですね。仕方ないね。悲しいけどこれ、駄文なのよね。みたいな感じですよ奥さん。
次回の投稿はもう未定です。宣言しません。僕は学びました。宣言すると後々後悔すると。もう僕はリアルを信じません。リアルなんてクソくらいで紺チクショー!スク水は紺いがい認めないぞー!あ、でも白も結構すきかもー!
てなわけで2015年もねぷねぷでよろしくお願いします。
ではまた次回に。
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