バカ次元ゲイムネプテューヌ   作:浮雲

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続いたよ、愛してる!主にギャルゲーを!


第2話 出会いとプリンとゲイムギョウ界

 思えば僕の人生っていったい何だったんだろうか。この世に生まれて16年と数か月。いろんな人に愛されついでに馬鹿だなんだと言われ続け、高校生活では三途の川を見る苦労の毎日。友人に、クラスメイトに、肉親に、愛する人に(これは悪意0。その分たちが悪いけど……)身体的に社会的に殺されかけ、また僕もこの手で何人もの同級生を手にかけ、常識という学校以前に人として大事な部分が欠如した人達に囲まれて、臨死体験した日を生きられている喜びとして残すためカレンダーに丸を書いて行く日常。どこをどう謙虚に取り繕っても、平和なんて言葉が似つかわしくない生活だろう。もはやドキュメンタリーとして二時間以上の特番ができるのではないか。いや、それならば秀吉の水着PVなんかも取り入れれば視聴率は他局の追随を許さないほどの数値を叩きだすことだろう。そしてゆくゆくは『舞い降りた天使・秀吉』というタイトルでDVDを一千万枚以上の売り上げを打ちだし、ゴールデンでの人気も鰻登り。秀吉は一躍時の人となろう。………ん? 待てよ。そうなると僕らとはもう会えなくなってしまうのでは? そっ、そんなのイヤだ! あんな死と隣り合わせの世紀末みたいな学園にある数少ない僕の癒しが遠くに行ってしまうだなんて、到底認めてはならない! そう! できることならずっと一緒に―――そうさ! 秀吉と共に幸せな家庭を築き上げる! これこそが最高のシナリオではなかろうか!? 海辺に建つ綺麗な木造一軒家! そしてそこで愛らしいペットを飼い、共に砂浜を駆ける! 素晴らしきかなアットホーム!

 

「お~い。君、大丈夫ー? まるで混乱しすぎて夢の世界に逃げてるみたいな顔してるけど、わたしの声聞こえてる?」

「あははは~。こらまて~秀吉~。つかまえちゃうぞ~」

「うわっ! ホントに現実逃避しているよこの人! わたし初めて見たかも! 現実逃避している人!」

 

 はっ! 僕はいったい何を言っているんだ!? 僕には姫路さんという心に決めた子がいるじゃないか! なのに僕というヤツは……! ああでも! 二人とも僕にとっては癒しであり、潤いでもある! そうか! つまり三人で幸せに暮らせば万事解決ということか!? なるほど! そうすれば天使たちと素敵な毎日が―――!

 

「さあ僕の胸に飛び込んでおいで! 僕の天使たちよーーーーー!」

「ねぷっ!? とうとう壊れた!? しっかりしてよ君! ようやく見つけたのがこんな頭がおかしくなっちゃった残念な人だなんて、わたしとしては鬼畜ボスラッシュレベルの拷問でしかないよ!」

「遅れてすみません。お待たせしました―――って、何やっているんですか?」

「ねぷっ!? こんどは声っ!? 誰なの!? てか遅れたってなに!? もしかして冥界へのお誘い!? まってわたしまだ死にたくないよっ!」

「そうそう。冥界へ僕を―――って、えっ!? なにっ!? ホントに天使来ちゃった!? ちょっ、ちょっとタンマ! 来週には通販で買ったゲームと(ちょっといやらしい抱き)枕カバーが来るのに、ここで死んだら買ったのが姉さんにバレちゃう!」

 

 そうなったら地獄の野辺にだってあの人は追いかけて殴る蹴るの暴行の後、チューをして僕を社会的に抹消しちゃうよ!? 地獄でさらなる地獄を味わうなんて死より恐ろしいじゃないか! って、あれ? この声……どこか聞き覚えが……。

 

「そんなに混乱しないでください。すみません…驚かせてしまいましたね」

「だぁー! 思い出した! さっきのおばさんの時に聞こえてきた声だ!」

「ねぷ!? なに!? こんどはなに!? さっきからわたしを驚かせてなんなの!?」

「いや、だから…落ち着いてください……。―――私は史書イストワール。ネプテューヌさん、明久さん。下界に落ちたあなたたちにお願いがあって、こうして呼びかけているのです」

「…ししょ? ししょ…シショ…司書…もしかして死書!? うわっ! やっぱりわたし死んだんだ!?」

「なんだって!? じゃあ一緒にいる僕も死んでるってこと!? ちょっと待ってよ! それじゃ僕が秘密裏に隠している思春期男子のいけない秘蔵お宝コレクションはどうなるのさ!? あれには僕の汗と血と涙と血の努力によって手に入れることができたムッツリーニすらうならせた一品物ばかりなんだよ!」

「てか下界ってどこ!? 冥界とか地獄のもっと下の方!?」

「ちくしょう! なんで僕ばかりがこんな目に! 冥界や地獄に落ちるのは僕よりまず雄二やムッツリーニ達みたいな犯罪者予備軍であるはずなのに……!」

「うぅ……こんなことだったらHDDのデータ消したり、未練がないように積みゲーを崩しとくんだったよーっ!」

「まったくもってそうだよ! 溜め込んだアニメはいったい誰が消化するというのさ!? ジャ◯プや◯ンデー、マガジ◯だって一週間見逃すと微妙に内容わかりづらくなるし、それにこうしている間にも新作ゲームの製作は次々と進められているのに、積まれていくゲームの恐怖を知らないのか!?」

「あ、あの……お二人とも? お願いですから、一度深呼吸して落ち着いてください」

「あわわわわわっ! 誰かに秘蔵のHDDコレクションを見られるかもしれないのに落ち着いてなんかいられないよ!」

「ああもう! こうなるぐらいならもっとエロ本を買っておけばよかった! こうなるならゲームをもっとやっておけばよかった! こうなってしまうなら姫路さんに告白しておけばよかったよっ!」

「二人とも死んでなんかいません。今はただ、気を失っているだけなんです」

「「へ? そうなの?」」

 

 僕って死んでない? ホントに? な、なんだ…よかった~。

 認めかけてしまった死を否定してくれて思わず安堵の息が零れる。隣りにいる女の子も、同じようにホッと胸をなでおろしていた。

 

「よかったーぁ……これで一安心だよ。てか、天の声さんは何でわたしの名前知ってるの? もしかしてわたしのファン? サインいる?」

「………………。確かに、天の声に聴こえるかもしれませんが、私は史書イストワール。ゲイムギョウ界の歴史の記録者であり、女神様の補佐をする者です」

「あ、流した」

「すみません。いちいちツッコむのが面倒くさかったので、つい……」

「そして面倒くさいってぶっちゃけられたー!?」

 

 意外とぶっこんでいく歴史の記録者である史書さんだこと。

 でも、確かに僕の名前を知っているのも不思議だ。

 

「ねえ、君はいったい何者なの? さっきも僕を助けてくれたし……」

「すみません……今ここで全てを説明するには時間がありません。私がこうして話しかけているのも、大事な事をあなたたちに伝えるためなんです」

「大事な事?」

 

 同じ言葉を繰り返し、尋ねる。すると天の声さんは緊張をはらんだ声色で伝えてきた。

 

「―――お願いです、ネプテューヌさん、明久さん。私に力を貸してください―――」

 

 その声には切なる想いが込められているとヒシヒシと感じた。けど、同時にどこかすまなそうにする声に、僕は一瞬言葉の意味を理解できなかった。

 

「あれ? ねぇ、なんか聞き取りづらいよ! ねぇってば!」

 

 横にいる女の子が叫ぶ。天の声はどんどん目の前から離れていくように、なにかに遮られていくように確かに消えて行く。

 そんな消え入りそうな声で、最後に耳にしたのは――

 

「お願いです。彼女を…マジェコンヌを止めてください! そして、あなたたちの運命を操る守護女神戦争(ハード戦争)を―――」

 

 ―――必死に助けを呼ぶ、女の子の声だった。

 

                         ☆

 

『―――――!』

『―――――!』

「んん……。なんだ……?」

 

 どこからか聞こえる騒がしい物音を聞いて、僕は重りでも付けてるんじゃないかってぐらいの上体を起こしてそう呟いた。

 

「ん……? あれ……? ここ、どこ……?」

 

 気がつくと、そこは誰かの部屋だった。

 毛先の長い花柄カーペットに、ペンギン柄のクッション。他にもよくわからないぬいぐるみや、ハートマークが散りばめられているピンク色のカーテンと、暖色系のなかでもピンクとか黄色とかをふんだんに使われている女の子らしい小物でいっぱいの部屋。僕はその部屋の中央にひかれている布団の中にいた。ちなみにその布団も僕が使うには気が引ける可愛らしい感じのもの。

 

「学校に工場…森におばさんに、記憶喪失の女の子の次は……女の子の部屋? いったいどうなってる……ッ!!」

 

 『どうなってるんだ』と最後まで言い切る前、突然走った背中の痛みに思わず顔を歪める。その時初めて知ったけど、着ていたはずの黒のブレザーはなく、白ワイシャツのみとなっていた上半身には包帯が巻かれていた。あの時、おばさんにやられたときのか、これ……。痛いはずだよね、そりゃ…。すごい飛ばされて黒板に叩き付けられたんだし。

 背中だけじゃない。よく見れば腕や脚、あちこちにシップや包帯が巻かれている。これ、誰がやったんだろ? すごく綺麗にできてるし、たぶんこれ、痛み止めとかも塗られてる。

 病院なんかでやってもらう時みたいに随分としっかりできている治療にちょっと驚き、首だけ動かして周りを確かめる。

 この部屋には僕一人しかいないようだけど、扉一枚隔てた向こうから、人の声が、しかも2人分の声が聞こえてくる。

 

『―――――!』

『―――――!』

「叫び声? 誰かいるのかな?」

 

 ともかく今の状況が知りたい。その一心で僕は痛む体に鞭うち、よろよろになりながら扉のドアノブを握りしめ、緊張を覚えながら扉の向こうに踏み出した。するとそこには―――!

 

「ねぷっ!? ぐ、ぐるしい…骨が折れちゃうよーーーーっ! ―――ガクッ」

「ね、ねぷねぷ!? どうしたですか!? 気をしっかり持つです! ねぷねぷ! ねぷねぷーっ!」

 

 ―――なんだか見覚えのある女の子がなぜか裸でフワフワのピンク髪の女の子に包帯を巻かれていた。そして巻かれている方が丁度息絶えたところだった。

 

                        ☆

 

 数分後。騒乱が静まり、落ち着きが戻った一室にて、僕と二人の女子はテーブルを挟んで向かい合っていた。

 

「あ、危なかったぁ…。危うくあの世に行くところだったよ…」

「ちょっと包帯を強く締めすぎただけなのに大袈裟ですよ、ねぷねぷ」

「いやいや、あれは誰がどうみてもちょっとってレベルじゃないよ。ねぇ、キミもそう思うでしょ?」

「え? ああ、うん……そうだね」

「? どうしたの顔赤くして? 熱でもあるの?」

「え? お熱あるですか? それなら水枕用意するですよ」

「い、いや…そういうわけじゃないよ。大丈夫だから。ただちょっと、刺激の強いものを見てしまって……」

 

 ヤバッ、裸を思い出すと紫のこの子を直視できない……。

 

「??? 最後の方なんて言ったかわからないけど、大丈夫ならよかったね」

 

 笑顔でそう言ってくるこの子にちょっと罪悪感。気を失っていたとは言え、大事な部分は隠れていたとは言え、見知らぬ男の僕に裸を見られていたと知ったらこの子はどう思うだろか。や、やめよう……世間的にこの事は知らせないままでいる方が、彼女も傷つかなくて済むし、僕も平和に過ごせる…。けっ、決して刑務所が怖いとかじゃないんだからね!

 

「でも、あなたも元気そうでよかったです。ねぷねぷが地面に突き刺さっていたのもビックリしましたけど、あなたが木に突き刺さってるのを見たときも、本当にビックリしたですよ」

「ちょっと待って。なんか今サラッとすっごいこと言わなかった?」

 

 え? 僕、木に突き刺さってたの? どうやって刺さってたの? どういう状況なのそれは?

 

「いやーまさかこんな近くに突き刺さり仲間がいるなんて、世間は狭いんだね」

「突き刺さり仲間って…あんまり仲間で括られたくないなぁ……。ん? じゃあ君も突き刺さってたの?」

「そうらしいよ。で、この子、こんぱサマが看護学校で鍛えた技術でわたしたちをここまで運んでくれたんだって!」

「二人は大変でしたけど、なんとか運べてよかったです」

「そうなんだ。どうしてそうなってたかわからないけど、この包帯とかも君が巻いてくれたんだよね? ありがとう助けてくれて」

「いえいえ、困った時はお互い様ですよ」

 

 僕のクラスメイトにも見習ってもらいたいほどの優しさを見せながら、こんぱと言われた少女が笑顔で答える。うわっ! すっごい破壊力! 改めて見て思ったけど、この子すごく可愛い! これは未来、きっと素敵な看護師さんだよ!

 そうなったら是非僕も看てもらいたいものだと一人思っていると、もう一人の、確かネプテューヌって名前の子がテーブルに手を付いてグイッと近づいてきた。

 

「それよりキミって、もしかしてさっきわたしが夢の中で会った人だよね?」

「え? 夢の中って……アレって夢の中、だったの? というか君も覚えてたんだ」

 

 正直忘れてほしかった部分もある。押し倒したところとか特に。

 

「やっぱりキミだったんだ! 夢の中でみた残念そうな顔をみたときビックリしちゃったよ!」

 

 天然なのか、それともボケなのか。誰が残念だ、とだけはツッコんでおこう。

 

「会ったこともないわたしたちが同じ夢見るなんて、なんか運命ってやつ!? キャー! どうしよう、わたしは皆のヒロインなのにー!」

 

 なんだか妙にテンションが高い子だな、この子…。

 

「夢の中って、ねぷねぷとあなたは夢の中で出会ったですか?」

「ああ、うん…。正直記憶が曖昧で定かじゃないんだけどね……」

 

 こんな症状はいつか出るんじゃないかとは思っていたけど、過酷な生活を送っていた所為でついに僕は記憶喪失を幾重にも起こす体質になってしまったのだろうか。やっぱり一番の原因は鉄人の地獄の補習かな……、いや、大穴でこの前食べた姫路さんの手作り肉じゃがかもしれない。あれは木製のテーブルを溶かして突き抜けていたからな……。そんなものを食べればこうなってもおかしくはない……。

 

「ひゃっ!? ねぷねぷ! 急にこの人、唇を真っ青にして震えだしたです!?」

「いきなり何事!?」

 

 と、愛する人の必殺料理のことは今は考えないようにしよう。そうそう。それより忘れる前に言っとかないと。

 

「そういえばまだ名前、言ってなかったよね。僕は吉井明久っていうんだ。よろしくね」

「何事もなかったように進めるめるんですね……」

「こんぱ、こういうのはスルーしてあげるのがお約束ってやつだよ」

「そ、そうですね。えっと、わたしはコンパっていうです。よろしくです」

「わたしはネプテューヌ! って、わたしはもう知ってるよね。でも一応改めてよろしくね!」

 

 穏やかに言うコンパと元気に言うネプテューヌ。

 コンパにネプテューヌ? ちょくちょく気になってたけど、外国人みたいな、いや、外国人でもこんな名前使わないよね? というか日本語使ってるんだし、日本人で間違いない?

 服装もなんだか普通っぽそうで、ゲームの中に出てくるような衣装だったりにも見える。その子の性格を表しているかのように、ネプテューヌはフードのついたパーカー型ワンピースに、膝より少し上にあるフリルの付いた白と水色の縞々ニーソックス。コンパはどこかの制服にも見えるチェックのスカートに、柔らかそうな生地をしているニットのセーターは腕の部分とは切り離されていて、腕を上げれば腋が見える仕様となっている。…………んでもって二人とも、スカートの丈が結構際どい。それこそジャンプだったり屈んだりしたら、角度次第ではモロ見えになりそうな長さだ。うぐっ……! ヤバい……! ネプテューヌのさっきのを思い出してしまう……!

 

「ん? どうしたの? 具合悪いの?」

 

 僕がいきなり俯いたから心配してくれたんだろう。ネプテューヌが顔を近づけて訊いてくる。だけど僕としては今、ネプテューヌの顔を見るのが非常に辛い! ここは別の場所に視線を移して煩悩を退散させねば!

 

 

「(バッ!)」←僕は勢いよく別方向へと目を向ける音。

「?(ポヨン)」←見てしまった方向に揺れるたわわな果実の音。

「(ババッ!)」←微妙に前かがみになって戻る音。

 

 

 くそぉぉっ! ここには僕の心を揺るがす兵器しかないのか!? このままでは出会って早々彼女たちに変態という印象を与えかねん行動をしてしまいそうだ! 堪えろ僕! 立ち上がるんだ理性よ! そして立ち上がるな僕の欲望よ! というかコンパって結構、姫路さん並にあるのね……。なんといか、素晴らしいです、ハイ。

 なんて素直な感想を抱かさせる本人が僕の異常を気に留めたのか、小首を傾げて尋ねてきた。

 

「どうしたですか。さっきからいろんな所に首を回して?」

「なんでもないよ、なんでも…ッ。ちょっと素敵なお部屋だなって思って。あははは……」

 

 二人のスカート部分と胸を見ていたなんて言った日には明日の朝日は鉄格子のはめられた牢屋の窓で見なくてはいけなくなる。ここは無難な回答を出すべきだろう。

 

「そうですか? そう言ってくれると嬉しいです」

 

 コンパ自身も喜んでくれているし、僕の判断は間違いではなかった。見事、犯罪者ルートを避けることに成功したぞ。

 しかしここで油断はせず、さらに話をそらすために別の話しで畳み掛ける。

 

「えっと、それじゃあ僕は二人のことを、コンパとネプテューヌちゃんって呼べばいいかな?」

「え? こんぱはこんぱなのに、わたしはなんでちゃん?」

「え? だって君、見た感じ…その方がいいんじゃ……」

「ああ! 今わたしのこと小さいって思ったでしょ! 女の子に向かって失礼だな! わたしも普通にネプテューヌでいいよ。わたしもアッキーって呼ばせてもらうし!」

「あ、アッキー…? それってもしかして僕のこと?」

「それ以外に誰がいるってのさ。明久だから、アッキー! 我ながらニックネームのセンスに驚きだね。褒めてくれてもいいんだよ?」

「すごいすごい。さすがねぷねぷです。アッキー、とっても言いやすいですね」

「でしょでしょ~!」

 

 親に褒められるかのように撫でられるネプテューヌに、子供を微笑ましく思っているように笑うコンパ。よくわからないけど、この二人の関係ってなに?

 

「ま、まあ僕も別にいいよ、それで」

 

 友達の一人である美波にもアキとか呼ばれてるし、友好的に接してくれているんだ。無下にする理由はどこにもない。

 とにかく自己紹介も済んだところだし、本題に―――

 

「ところで、二人はどうして空から降ってきて突き刺さってきたんですか?」

「ちょっと待とうコンパ。さっきから君は凄いことをサラリと言うな」

 

 度肝抜くわ、空から降ってきて突き刺さるとか……って!? 空から降ってきたぁッ!?

 

「えっ!? ちょっとホントに待って!? 僕ッ! にネプテューヌって空から降ってきたの!?」

「そう、それは昨日の夜のことですぅ」

 

 えええっ!? なんか始まった!? 唐突に回想的な事はじまった!?

 

「ベランダで夜空を見上げていたら、一筋の流れ星が落ちたです。そのすぐ後に、もう一つの流れ星が落ちてきて、それが、ねぷねぷにアッキーだったです」

「だったですって……」

「一気に展開はしょられた気分だよね」

「それで、突き刺さっていた二人を抜いたら、気を失っていたので、ここまで運んだんです」

「だってさ」

「いや、だってさって……」

 

 一応ここまでのいきさつはわかったけど、もう少し…なんというか……ああ、やっぱいいです……なんかもう……これ以上聞くと僕の頭がダメになりそう……。

 突飛すぎる話だし、理解するのはすぐには無理そうだ。けど一連の流れはなんとなく、あのおばさんのところから察することができる。よく無事だったな僕……。

 

「いろいろと他にも言いたい事とか訊きたい事があるけど、とりあえず、僕はまずいいとして。ネプテューヌは空から降ってきて突き刺さってたって、いったいどうしてそんなことになったの? 普通じゃありえないけど……」

「実はそのことなんだけど、わたしも気になって思い出そうとしてるのに、ここで起きる前の記憶が全然思い出せないんだ」

「ねぷねぷ、それってもしかすると記憶喪失ですか?」

「うん、たぶんそうじゃないかな」

 

 しまった。そういえばこの子、夢の中で記憶がないとか言っていた。気分を悪くさせちゃったかな……。

 こういう事はデリケートな問題だろう。僕みたいなのは日頃から記憶喪失になるような致命傷を負う事をしているから全然へっちゃらだけど、女の子の、しかもまだ僕やコンパよりも小さいネプテューヌにはショックかもしれない。

 コンパも心配そうに声をかけていく。

 

「大変です。なんとかしてあげたいですけど、記憶喪失の治療までは……」

「もう、こんぱが気にすることなんてないよ。だから落ち込まないで」

「けど……」

 

 あくまでも気にした様子もなく笑顔でいるネプテューヌが、無理をしているんじゃないかと優しいコンパは思ったんだろう。それでも、ネプテューヌは本当に気にした様子も見せず、笑顔を崩さない。

 

「…あ。そういえば、今日はなんにも食べてないんだった。ごめん、こんぱ。何か食べ物あるかな?」

「そうだ…。僕も姉さんから逃げるのに朝食べてなかったし、時間がどれだけ経ったかわからないけど、お腹減ってるんだった……」

 

 思い出したように腹の虫が鳴って、二人に笑われる。うぅ……飲まず食わずで逃げ回ってたから、尚更腹の減り具合が酷い……。

 

「食べ物ですね? えーっと…ご飯はないですけど、おやつのプリンならあるです」

「おおっ、いいね。走り回って疲れてたから、甘い物は丁度いいよ」

 

 しかもプリンなんて結構久しぶりに食べる気がする。率先して食べる物といったら、やっぱりどうしても肉とか、そういうガッツリ系ばかりだし。

 などと久しぶりのプリンによだれを垂らしそうになる僕の横で、ネプテューヌが驚きの言葉を発した。

 

「…プリン? ねぇ、プリンってなに?」

「プリンを知らないんですか?」

「え? マジで?」

「うん。初めて聞くかも。美味しいの?」

 

 どうやら嘘をついているようじゃない。マジでこれは知らない顔だ。ていうか、マジで?

 

「ちょっと待ってるです。今、持ってくるです」

 

 そう言って台所に消えて行くコンパは、ほどなくして手に二つのプリンとスプーンを持って戻ってきた。

 

「へぇ…。この黄色いのがプリンって言うんだぁ。おおっ! スプーンでつつくとぷるんぷるんだ!」

 

 見た目通りの子供特有の無邪気さを、手元のプリンで表すネプテューヌに僕とコンパは自然と顔を合わせてしまう。

 

「ねぷねぷ、もしかして食べ物の記憶もないですか?」

「だとしたら、他の食べ物も忘れてたりするかもしれないね」

「んー…っと、多分わたしが知らないだけっぽいね。ケーキとかカステラとか、他の食べ物の名前は覚えてるから」

 

 それは余計に、なんというか、またもコンパと顔を合わせてしまう。

 プリンって結構おやつの中じゃ主流な方じゃないの? いや、男の僕からしたら甘いお菓子よりポテチとかだから、よくわからないけど、ケーキもカステラも知っててプリンは知らないって、ネプテューヌっていったいどんな場所で過ごしてきたんだ?

 些細なことから、ネプテューヌの存在そのものに疑問が浮かび上がって、コンパ共々首をかしげる。そんなネプテューヌ本人はマテを繰り返されて、ようやく主人に許しをもらった犬みたいにプリンを口にいれるところだった。

 

「それじゃ、いっただっきまーす!」

 

 ぱくっ、と言いながらプリンを方張り、もぎゅもぎゅとプリンの味を確かめるネプテューヌ。そしてしばらくすると、フルフルと身体を震わせて、

 

「んんー! 何これ!? 口の中に入れると舌の上でとろける甘くて不思議な食感ー!」

 

 砂漠の真ん中でオアシスを見つけた人みたいに目を輝かせて言った。

 

「そんな大袈裟な…」

「大袈裟なんかじゃないって! この味と食感は三ツ星シェフが作ってるに間違いないよ!」

「うん。三ツ星とかはわからないけど、確かにコレ、すっごく美味しいよ! こんな美味しいプリン初めて食べるかも」

 

 ネプテューヌの美味しそうに食べる姿に触発されて僕も一口食べてみたけど、これは驚き。今まで食べてきた中で一番じゃないかって思うぐらいに美味しい。少なくとも、そんじょそこらの市販物じゃ到底及ばない味だ。

 

「実はそれ、わたしの手作りなんです」

「なんですと! まさかこんぱにこんな隠れた才能があったとは…」

「だね~…手作りかー。手作りでこんな美味しいのができるんだなんて、すごいねコンパ」

「褒めすぎですよ、ねぷねぷにアッキー。そうです、おかわり持ってくるですね」

 

 褒められたのがよっぽど嬉しかったのか、照れた後いそいそとキッチンからコンパはお手製プリンのおかわりを持ってやってくる。疲労が溜まり、お腹も空いていた事もあって、僕にネプテューヌはあっという間にそのおかわりプリンも耐えらげてしまい、すっかりコンパのプリンの虜になってしまっていた。

 

「それにしても美味しかったね、こんぱの手作りプリン」

「うん。ここまで美味しい物ができるなら、お菓子屋さんとか二もなれるよコンパは」

「おっ! アッキー、さっそくこんぱを褒め倒してフラグを建てにいったか!」

「フラグって、そういうじゃないって! 僕は純粋に美味しかったって思っただけで……! 決してそんな意味は…!」

「慌ててる慌ててる~。お顔が真っ赤だよ、アッキー?」

 

 ニヤニヤとしながら僕の肩をツンツンするネプテューヌに指摘され、どんどん顔が熱くなる。ぐぬぬ……さっき胸を見て意識してしまったのがいけなかった……!

 

「ふふっ、そう言ってもらうと作った甲斐があるです」

 

 幸いなのが、コンパは嫌な顔を一つせず笑って流してくれたことだろう。まったくネプテューヌは、出会った当日に友好関係に亀裂が走るようなことしないでほしいよ。

 

「ところで、これから二人はどうするんですか?」

 

 からかってくるネプテューヌに、それから逃げようとする僕らとは違い、安全地帯にいるコンパがそう穏やかな声で話を本題に戻す。

 すぐにネプテューヌはヒョコッと僕から離れ、コンパの方に向き直ると指を一本立てて言う。

 

「捜査の基本は現場から、って言うし、わたしが突き刺さってたところに行けば何かわかるかも、って思うんだ」

「そうだね…。そこに行けば、何かしらの手がかりがあるかもしれないし」

 

 僕の場合、いろいろと調べなくちゃいけない事がある。一気に全部を紐解くのは無理でも、一つ一つ謎を解いて行かないと。

 

「それなら、わたしが案内するです!」

「え? いいの?」

「いいもなにも、アッキーにねぷねぷは自分が突き刺さっていた場所を知らないですよね? なら、わたしが案内するですよ」

 

 柔和な笑みを浮かべて安心させるように諭してくれるコンパに、渋る考えが揺らぎ、理屈としても納得してしまう。

 

「ん~……。もう結構なぐらいに迷惑かけているんだけど……。そうだね。じゃあもうちょっとご厚意に甘えさせてもらうよ。よろしく」

「任せてほしいです!」

 

 まぁ協力者は多いに越したことないだろう。それに頼れるところには頼れる時に頼うのが一番だ。

 

「さっすがこんぱ。こんな良い子に育ってあたしゃ嬉しいよ」

「君の子供じゃないでしょに」

「あっ、それじゃ、出かける前に……。これ、渡しておくです」

「僕の制服?」

 

 差し出されたのは、失くしたと思っていた文月学園指定の黒のブレザーだった。

 

「ところどころ切れてたり汚れてたりしていたですから、直しておいたです」

「おっ、おお! コンパありがとう! ホントに何から何まで助かるよ!」

「すごいねコンパ。なんでもこいじゃん!」

「えへへ、お役に立ててるのなら良かったです。じゃあ改めて出発するですよ?」

「了解」

「オッケー」

 

 渡されたブレザーをちょっとだけワザとらしく羽織り、カッコよく決める。うん、見事にピッカピカ。新品みたいだ。

 これを着ていると、なんだか馴染むのはどんだけ苦労していようと、やっぱり僕が文月学園の生徒である証拠なのかもれしない。だからこそ、早く皆のところに帰らなくちゃいけない。ココがどこであろうと、ここまで訳の分からない事ばかりだったとしても、地球は丸いんだ。どこにいようと必ず皆のいる場所へと僕は戻ってみせる!

 玄関前にそれぞれが靴を履き、ネプテューヌが先頭に出て玄関扉のドアノブに手をかけた。

 

「と、そうだ。最初に聞こうって思ってたんだけどさ」

「はい、なんですか?」

「―――ではでは! ネプテューヌご一行」

 

 横で僕らが付いて行きながら、ネプテューヌが高らかに声を上げ、勢いよく扉を開き、その一歩を大きく踏み出す。

 

「ここって日本、じゃないよね? アメリカとか?」

「日本? アメリカ? よくわからないですけど、ここは―――」

 

 

 開けられた光続くその先に、僕らは、飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――4つの大陸がある、ゲイムギョウ界ですよ」

「しゅっぱーつ!」

 

 

 

 

 とりあえず一度家の中に戻った。




三話に続く―――かもしれない!
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