バカ次元ゲイムネプテューヌ   作:浮雲

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前回と違って妙に長いサブタイトル。どうでもいいですけど予兆と歩調って響きが似てる。凄くどうでもいい事なんですけどね!


第4話 女神化と鍵の欠片とこれからの予兆

「こんぱ! アッキーをお願い! こいつはわたしが引き受ける!」

「わっ、わかったです! 頑張ってくださいです、ねぷねぷ!」

 

 こんぱの声を軌道に残して、わたしはクモ型のモンスターの懐に飛び込む。モンスターは雄叫びを上げて剣を荒々しく横薙ぎに振るい、進行の阻止と、明らかにまだの残るアッキーへの恨みを晴らすべく向かってきた。

 姿勢を低くしたわたしは暴風が如く辺り一帯を抉り切断する剣を潜り抜け、どてっぱらにまず一撃。

 一瞬怯んだモンスターに数倍に跳ね上がったスピードで翻弄しながら、脚、腕、胴、それぞれに剣で確実にダメージを与えていく。

 されどモンスターもやられるだけでは終わる気はないらしい。こちらに対抗するように剣で空を薙ぎ払い、大地に叩き付けて粉塵を巻き上げる。

 一気に悪くなった視界に敵がどこからくるかわからず、剣を構えてその場で周囲に気を張り巡らす。そして、右斜めからモンスターの剣が襲い掛かってくるのを紙一重で避け、その動作の勢いを殺さぬまま攻撃に転じ、強力な剣技を一閃。

 派手に吹き飛ぶモンスターは壁に打ち付けられ、めり込んだ数秒後、重力に従って地面へと崩れ落ちていく。

 相当のダメージを与え筈だけど、モンスターはそれでも立ち上って未だこちらに敵意をギラギラと光らせている。いいわ……そっちがまだその気なら……。

 

「これで決める!」

 

 溜め込んだ力を剣に乗せてわたしは渾身の斬撃を放ち、ダメージが溜まって動きが鈍くなったモンスターは回避もできず、遂に苦悶の叫びをあげて倒れていった。

 それを見届けたわたしはようやく動かなくなったモンスターを一瞥して、握った剣を下ろした。

 

「ま、こんなところね…」

「凄いですねぷねぷ! あんな大きなモンスターさんをあっという間に倒したです!」

 

 穴にすっぽりとハマったアッキーの腰を掴みながらこんぱは称賛の声を浴びせてくれる。わたしはそれに対して笑って答え、ゆっくりと張り詰めていた力を抜いて、変身を解除した―――。

 

「ぷはぁ…疲れたぁ」

 

 目線が低く戻ったわたしは一息つくと、どこからともなく天の声さんが話しかけてきた。

 

『お疲れ様でした、ネプテューヌさん。コンパさん、怪我はありませんか?』

「はいです。ねぷねぷのおかげで怪我はないです」

 

 こんぱにも天の声さんは優しく訊くと、こんぱも笑顔で答える。いや~わたしのおかげだなんて、照れちゃうな~。

 

「…あれ? ねぷねぷ、この声の人は誰ですか? どこから話しかけているですか?」

「あぁ、この声? 天の声ことイスト……あれ? なんだっけ?」

『イストワールです』

「そうそう、いーすんいーすん!」

『…まぁ、いーすんでもいいでしょう。ご挨拶が遅れてしまいましたね、コンパさん。イストワールと申します』

「いーすんさんですね。これはこれはご丁寧にありがとうございますです」

『あ、あの…コンパさん?』

 

 戸惑った様子のいーすんの声が聞こえるけど、どうしたんだろう? こんぱはいーすんって呼んでお礼言っただけなのに。

 なんてことをわたしたちがやっていたら、急にゾンビみたいな濁声がどこからともなく聞こえて―――

 

「…あの~……自己紹介とか結構なんですけど……こっちを先に助けてください~……。マジで頭に血が……」

 

 ―――あ、ごめんねアッキー。そういえばまだ引っこ抜いてなかったよ。

 

                             ☆

 

「「いっせっえの、せーっ!」」

「ぐふっ!」

 

 二人の掛け声が重なって、一気に僕の腰に二人分の負荷がかかり真っ暗だった世界が一瞬で眩しく変わる。

 

「あいだだだ……た、助かったぁ。ありがとう二人とも」

「どういたしましてです。それよりアッキー、また怪我しちゃったです…。前のも酷くなってたら、家に戻ってまた包帯巻きなおすですよ」

「派手にふっ飛ばされてたもんね。痛くない?」

「まぁこれぐらいなんてことは―――あだだだだだッ!? や、やっぱちょっと痛いかな…」

 

 やせ我慢しよとした途端に激痛が走り、思わず涙目になって正直に言ってしまう。

 実際、服の下に巻いてある包帯は緩んで解けつつある。その下の傷も、ズキズキと痛みが再来して割とマジでキツイ。せっかくコンパが治してくれたのに、あのモンスターめ……! って、そうだ!

 

「あのモンスターは!? どうしたの!?」

「モンスターならねぷねぷがやっつけてくれたです。だからもう大丈夫ですよ」

「へ? ネプテューヌが倒した?」

「はいです。ほら、モンスターさんのびちゃってるです」

 

 予想外の事実を聞かされて、コンパが指差す先に倒れるモンスターの姿を見て、ネプテューヌの顔を見る。

 

「どやぁっ!」

 

 ドヤ顔でふんぞり返るネプテューヌに呆然とさせられて、しばらく熟考。そしてコンパと向き直って、

 

「こんぱ、ウソは良くないよ?」

「あれ!? わたしたちのきずな関係ってまだ完璧に信頼されてない!?」

 

 嘘は泥棒の始まりと昔の人はよく言ったものだ。

 

「ほ、ホントです! ねぷねぷが変身して、あっというまにモンスターさんを倒したんです!」

「変身?」

 

 そういやなんか変身したとかなんとか聞こえたけど、う~ん……あ、そういうことか。

 

「コンパ。ちょっと頑張りすぎたんだよね。看護学校通ってるぐらいだし大変なんだよね。でも良かったじゃないか。すぐに診てもらえせそうな場所で」

「現実と妄想はきちんとわかってるですよ!?」

「こら、ネプテューヌ。コンパはいい子なんだからあんまりネプテューヌみたいにしちゃダメだよ? わかった?」

「関係ない話をしないで、わたしの話しを聞いてほしいです! わたしはちゃんと正常です!」

「いやいやこんぱ待って!? 今わたしさり気に酷い言われようしてたよ!?」

 

 まったく、ボケと天然が加わると大惨事になるんだから気を付けてほしいよ。出会った時から薄々感じていたけど、このメンバーじゃ僕がしっかりしなくちゃいけないようだ。よしガンバロウ。

 

『……明久さん、実はまだ混乱してませんか?』

がるごばびぶふをめなみげぼばばぺぽ(何を言っているのさ僕は至って冷静だよ)

(((完璧に混乱してる……)))

 

 さすがの僕もこれまで連続して続く異常事態に舌がうまく回らなくなってしまったようだ。

 

『…ともかく、一応明久さんも平気そうですね』

「一応、ですね……」

 

 なんか含みがある言い方ですね、お二人とも。

 しかし、モンスターが倒されて良かった。ネプテューヌが倒したかどうかはわからないけど、まさかこの洞窟にこんな奴がうろつていたなんて堪ったもんじゃない。今はのびちゃってるけど、なんだか今にも起きそうで近づきたくもないよ。

 

「あ………」

「あ………」

『あ………』

「ん? なに、どうしたの? いきなり素っ頓狂な声を上げて……」

「ア、アッキー…う、うしろー…! うしろー…!」

「? ネプテューヌ? なに? 僕の後ろなんか指差して? ネタ振り?」

「ち、違うです…! アッキー! 後ろですー!」

 

 鬼気迫るようなコンパの表情に訝しげになりつつ、示された通りに背後に振り返る。だから後ろって、何かあるの? まさかモンスターが復活したなんてベタなオチじゃないでしょうし……

 

 

 

『ガァァアア……ッ』

 

 

 

 あらあら、うふふ。そのベタなオチな如く起き上がっていたのねモンスターさん…………って!

 

『グォオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

「「「いッ、生きてたあああああぁぁぁーーーーーーーーーーーーーー!!?」」」

 

 ちょちょちょっ!? 倒したんじゃないの!? めっさピンピンしてらっしゃるよっ!? 明日の朝までやってるけんのって感じでピンピンしてらっしゃりますよ!? 自分でなに言ってんのか意味わかんないけどだいたいそんな感じに元気じゃないですか!?

 

「逃げるよ! 二人とも!」

「言われなくとも!」

「はいで―――きゃあっ!」

「ああ! 走って早々躓いて盛大に転ぶのね君って!?」

「ここにきてこんぱの中に眠るドジっ子属性が開花しはじめてる!?」

「そんなものこんな時に開花しなくてもいいでしょうに!」

 

 なんて言ってるそばから転んだこんぱに迫るモンスター。ヤバい! こうなったら……!

 

「おら頑張れ僕ー!」

「ひゃわ!?」

「ついでに!」

「ねぷっ!?」

 

 転ぶコンパを拾い上げて、途中でネプテューヌも担ぎ上げて二人を抱えて走りだす。

 逃げるって意味でなら、僕は元の世界で散々鍛えてきたんだ。三人別々に走るよりこうして逃げた方がやりやすい。モンスター退治で役に立てなかったのもあるし、ここは男の見せ場だろう。

 ………なんてちょっとカッコつたのが失敗だった。そういや僕、怪我してんだよね。

 

「おお! 凄いよアッキー! なんか男の子って感じだよ!」

「けど、すぐ後ろにモンスターさん来てるですぅっ!」

「あわわわわっ! 来てる来てる! 逃げてアッキー! そこまで来てるよ! 走れ! 明日に向かって走るんだ少年よ!」

 

 ああもうダメだわこれ……。体がフラフラで、今にも倒れちゃいそうだ……。もう、ゴールしてもいいよね……?

 

「帰ったらこんぱがナース服で看病してくれるって!」

「よっしゃぁああああーーーーーーーーー! 僕のゴールは明日なんじゃーーーーーーーーーーーー!」

 

 こんなところで変態グモに捕まって堪るか! この後のお楽しみの為にも僕は敗けるわけにはいかない! 走れ僕! 敗けるな僕! 欲望の赴くままに駆け抜けろーーーーッ!

 

 

「看病するのにナース服、着るんですか?」

『コンパさん。ツッコむところはそこじゃないかと……』

 

                        ☆

 

 そんなこんなで、無事帰宅。

 

「つ、着いたぁ」

「九死に一生ですぅ…」

「死ぬかと思った……」

 

 三人とも(主に僕だけだけど)乱れる呼吸を整えながら部屋の中でへたり込む。さすがに尻に剣が何度か突き刺さりかけた時は終わりじゃないかと思ったよ……。

 

『まさかあそこまでダメージを与えてまだ生きているなんて……』

 

 天の声さんもモンスターが起き上がったのには想定外だったらしく、声色に驚きが交じっているのが聞き取れた。

 っと! そうだ! 天の声さんには話があるんだ!

 

「そんな事より天の声さん! 一体コレはどういうことなのさ! あのゲートを潜れば助かるって言ったのに、説明してよ!」

『……すみません』

「そうそう、説明は大事―――って、はい?」

 

 説明を要求したのに、いきなりの謝罪で面をくらう。

 い、いや…謝ってくれるのはいいけど、そんな口頭第一で謝られると…こちらも微妙に困るわけで……。

 

『こんな事に巻き込んでしまって…本当にすみません…。緊急であったとしても、何も知らない明久さんに危ない橋を渡らせてしまいました。謝ってどうなるものじゃありませんが、本当にすみませんでした……』

「いや、だから……そんな謝られると、その……」

 

 相手が女の人の声だからか、いきなりの謝罪だった所為か、出ばなをくじかれたみたいに調子が狂う。日頃から恨み妬みの学園生活だったからか素直に謝れ慣れてないし、なんかこれじゃあ僕が相手を責めてるみたいになっていていい気分がしない。

 

「ねぇ、説明してくれないかな? 僕っていったい、どんな状況なの?」

 

 今僕が欲しいのは謝る姿勢より自分が置かれている状況の説明だ。経緯や理由はどうであれ、天の声さんは僕を救ってくれた人だということは変わりないのだし、いつまでも謝られては話が進まない。

 天の声さんもそれをわかってくれたのか、申し訳なさそうに質問に答えてくれた。

 

『簡潔に言いますと、明久さんが知っての通りここは明久さんのいた世界とはまったく異なる世界、ゲイムギョウ界です』

「それって、あのゲートを潜ったから?」

『はい……。あの時、私にはああするしか明久さんを助ける方法がありませんでした…』

 

 そのことに関しては、感謝半分、突然の別世界への不時着への驚き半分といったところだろう。状況が状況だったわけだし、勝手にこっちが天の声さんを信じたのもあるんだ。全部の責任を押し付けるのはできない。

 僕はまた謝罪モードに入りそうな天の声さんにさらなる疑問を尋ねてみる。

 

「あそこってなんなの? 僕の学校によく似てたけど人が誰もいなかったし、代わりにこの世界のモンスターが沢山いて、変てこな壁を抜けたら全然知らない場所に出たりして…」

『あの空間は次元と次元の狭間にある異空間。隣接する、この場合明久さんが通っていた学校に酷似している、似て非なる世界。その曖昧な線引きで、壁を超えると別の場所に繋がっている、一種の迷路のような所です』

「じゃあモンスターに、あのおばさんは?」

『モンスターに関しては明久さんとは逆で、あのゲートをこちらから潜り抜けていったのだと思います。そして、それを行ったのが恐らく彼女……』

 

 ハキハキとしていた言葉が途中からしぼんでいく。なにか言いずらそうに、気まずそうに口ごもってしまったのか、結局最後の方は聞き取ることができなかった。

 天の声さんの言う彼女ってのは、僕の言うところのあのおばさんのことだろうか。じゃあモンスターをあの場所に呼び込んだのはおばさんってことになる。僕のこと襲い掛かってきたり、召喚獣の力を自分の物にするとか言っていたけど、何者なんだろう? 天の声さんもなんか知ってそうだけど……。

 

「あ、あのー…」

 

 と、そんな事を考えていると、横から手を挙げているコンパが割って入った来た。

 

「よくわからないんですけど、アッキーといーすんさんのお話じゃあ、アッキーはまるで別の世界から来たみたいに聞こえるんですが…」

「アッキーって異世界人?」

『…明久さん、もしかしてまだお二人には……』

「あー…そういえばまだ詳しく言ってなかったね」

 

 ネプテューヌの記憶喪失をどうにかしてからと思っていたから、まだ二人には僕の事情を説明していなかった。その間も、ここがゲイムギョウ界って別世界だったり、モンスターだったりと驚いてきちんと話すタイミングを失ってたんだっけ。

 

「えっと、実はね―――」

 

 ここまでに至った出来事全部を話すのは面倒なので、掻い摘んで、必要な部分だけを二人に話す。

 僕がある日突然不可思議な空間にいたこと。そこでモンスターとかおばさんに襲われたり、そして天の声さんの助言でゲートを通って別世界からこの世界に来たこと。

 包み隠さず伝え終えて一息入れる頃には、

 

「「ポカーン……」」

 

 二人は目を点にしていた。まぁ急にこんなことを言われたらそうなるよね。でも、そうされるとどうしたもんかと―――

 

「「えええええーーーーーっ!?」」

「うわっ! ビックリした!? なに!? いきなり大声出さないでよ!」

「アッキーってホントに異世界人なの!? どうする! 写真とっとく!」

「す、すごいです! わたし、異世界から来た人はじめて会ったです!」

「え? 驚くところそこ?」

 

 二人とも感性が若干明後日の方向に向いている。

 

「と、とにかく、そういうわけなんだよ。なんか内緒にしてたみたいでごめんね」

「そんなこと全然ないよ。ねぇこんぱ!」

「はいです。アッキーもいろいろと大変だったんですね」

「大変な目に遭うのは慣れてたけど、流石に苦労はしたかな……」

 

 優しい二人は秘密にしていたことを咎めるでもなく笑顔で労ってくれたことに、僕は心の中で有難いと思いながら、改めて天の声さんに問いかける。

 

「それで、天の声さん。助けてくれて悪いんだけど、僕を元の世界に戻してくれないかな?」

『そのことなんですが……。すみません、今の私では明久さんを元の世界に戻すことができないんです…』

「……………」

「あ、アッキーが(゜д゜)みたいな顔でよだれを垂らして妄想の世界に入った」

「いーすんさん。マジで、なんですか?」

『マジで、です。こうしてみなさんに話しかけるのが今のところ精一杯なんです』

「今はってことは、今じゃなければできるですか?」

『はい。私の封印を解いてくだされば』

「いーすんさん、封印されてるんですか!?」

「あははは~。こら待て~、秀吉~」

「『……………』」

「ねっぷねぷチョップ!」

「あべし!?」

 

 はっ!? 僕はまた何をしていたんだ!?

 

「天の声さん! つまり君の封印を解かないと僕は元の世界に帰れないってことなの!?」

『あの状態でも話は聞いていたんですね……』

「すごいです……」

 

 何やら驚愕しているようなコンパと天の声さんだけど、僕にはもっと大事な事があり、天の声さんには応えてもらわないといけない。

 

「そんな事より、どうなの天の声さん! というか封印って何!?」

『確か、洞窟で明久さんは鍵の欠片を拾ったはずです』

「か、鍵の欠片?」

 

 なんだそのRPG定番の重要アイテムみたいなの。僕、そんなもの拾った憶えは……。

 

「あ、もしかして、あれじゃないかな」

 

 身に覚えがあったのか、ネプテューヌがいきなり僕のズボンのポケットに手を突っ込んでモゾモゾとしはじめた。あ…いや……ちょっと、そこはらめぇ……!

 

「ほらほら、いーすんこれでしょ?」

 

 ネプテューヌが取り出したのは、洞窟に落ちてすぐに見つけた訳の分かんアイテムだった。ああぁ、それね。モンスターに襲われたり、穴に突き刺さったりしてすっかり忘れてた。

 

『そうです。それが、鍵の欠片。私に施された封印を解くための鍵の一つです』

「鍵の一つってことは……もしかして他にもあるの?」

『はい。4つの大陸に一つずつ隠されています。―――お願いです。鍵の欠片を集めて、わたしの封印を解いてもらえませんか』

「え? 封印を解いてって……」

 

 いきなりの申し出に少し戸惑い、コンパとネプテューヌと顔を合わせる。

 

「別にいいけど…今みたいなモンスターと戦わなくちゃいけないんだよね? それって危なくない?」

 

 代表してネプテューヌがさっきのモンスターを含めて言う。

 封印ってだけでもただ事ではないのに、あんな凶暴なモンスターとまた戦わなくちゃいけないとなると、いろいろと踏み切れない部分も出てくる。

 

「とても危険な旅になると思います」

 

 天の声さんもあくまでそこは承知の上らしく、真剣な雰囲気でいる。うま味のない案に乗るようでは、それこそ貧乏くじとも呼べる。危険をしてでもやり遂げるものなのか疑問に思ってしまう。

 そうやって困惑している僕らに、ですが、と付け加えて天の声さんは続けた。

 

「お礼というわけではありませんが、封印を解いてくれれば明久さんは元の世界に、ネプテューヌさんには記憶喪失を治してあげることができます」

「ほんと!?」

「はい。明久さんもそうですが、どのみち、ネプテューヌさんには記憶を取り戻していただかなければいけませんし」

 

 ん? 記憶を取り戻していただかなければいけない? 変に引っかかる言い方だな。

 

「それなら、例え火の中でも水の中でも草の中でもわたし頑張っちゃうよー」

「そうだね…。僕もそうするしか帰る方法がないなら、そうするしかないか」

 

 今の僕に贅沢いえる選択肢なんてない。それなら、天の声さんは助けてくれた人なんだし、封印されているのなら助けてあげたい。ギブ&テイクってわけじゃないけど、人間は助け合いでしょ。

 

「わたしもお手伝いするです。記憶喪失のねぷねぷをほっとけないですし、アッキーが元の世界に帰れるように」

「ありがとうこんぱ。…けど、学校はいいの?」

「学校ならモンスターさんのせいで休校中なので大丈夫です」

「この世界でもモンスターは異常なんだもんね」

「モンスターさんは元々はいなかったですから」

 

 コンパも助力を尽くしてくれるらしいし、この世界で僕は一人じゃない。それだけでも十分な後押しの材料となる。

 本当のことを言えば、できれば危険なことなんてしたくないけど、やるっきゃないならやるしかないか。

 

『ありがとう…ござい……ます。皆さ…ん……』

 

 と、急に天の声さんの声が途切れ途切れの壊れかけのテレビみたいになる。こ、今度はなんだ? ノイズみたいなのも混じってる?

 

「あれあれ? いーすんの声がまた聞き取りづらくなってきたよ。電場状態悪いの?」

「携帯じゃんないんだから違うでしょ。……え? 違うよね?」

『鍵の欠片が……持つエネルギーを…媒体に話し……かけていたのですが…どうやら時間のよ…です…。大変申し…訳…ありませんが…鍵の欠片をよ…ろしく……お願いし…ます……』

 

 僕が不安になって声をかける間にも、天の声さんの声はみるみるかすれて消えて行く。鍵の欠片を媒体にという事は、四つある内のこの一つだけでは不完全な更新しかできないのかもしれない。あながち携帯って意味じゃアンテナ揃ってないってことかな? あ、携帯だと三本だ、アンテナ。すごくどうでもいいけど。

 

『明久さん……最…後に…あなたに…伝えなくては…いけな……いことがあり……ます……』

 

 電波が最悪な中、天の声さんは一生懸命話し続ける。

 

『まだ……可能性の…段階ですが……もしかし…たら……この世界に…明久…さん同様に迷い込んできた…人が…い…るか…もしれ…ません…』

「え? 僕いがいにも……この世界に?」

 

 言われた内容に素直に驚いて訊きかえす。それって……僕の他にも、ゲートを潜ってゲイムギョウ界に来ている人がいるってことだよね? じゃ、じゃあもしかしてあそこの空間には僕とおばさんとは違う、別の誰かがいたってこと……?

 

『今の状態の…私からでは……絶対…とは言えませんが……もしそうならば……それは…明久さんの…よく知る……人だと思います…』

「…え? えっ? ちょっ、ちょっと待って! 僕の知る人って……それってまさか、文月学園に通ってる皆……とかじゃないよね!? あの場所には他の人がいたの!?」

『すみません……今……わかることはそれ…だけな…ん……です……。で…すが……もし…同…じよ…うに…飛ばされて……来た人…が……いたならば……その人……は…もしかしたら……―――――』

「…………え?」

 

 最後の言葉は、おそらく僕にしか聞こえないほどに小さかった。隣りで聞いていたコンパにネプテューヌが消える声に不安そうな表情を浮かべているだけだったから、たぶん絶対にそうだ。そしてただ一人、聴いていた僕はあり得ない現象を見た気分で、固まってしまう。

 天の声さんはそんな僕をどう思ったのか、こちらを窺うような逡巡を見せ、全てを告げられたと、鍵の欠片の力を使い切ったようで声はいつのまにか消えていた。

 

「聞こえなくなっちゃった…。いーすん大丈夫かな」

 

 静かになった部屋の中央で、ポツリと零したネプテューヌの言葉が異常に響いたような気がした。それ程に、部屋の中は嵐が過ぎ去った見たな静寂に包まれていた。

 

「けど、2人ともどうにかなりそうでよかったです。ねぷねぷも、記憶を取り戻す手がかり見つかってこれから頑張らないとですね」

 

 しばらく虚空を眺めて、消えた声が残してくれた一筋の希望にコンパが自分の事のように笑顔で静寂に割って入った。本当に優しい子なんだなと感慨深く見守り、横で腕を伸ばすネプテューヌを見て、さらに身に燻るやる気が焚き起こる。

 

「うん! わたし頑張るよ!」

 

 気合十分! とはまさにこんな感じなんだろうと思い眺めながら、僕は天の声さんの残した言葉を脳内で反芻していた。

 それから、一気に騒がしさを取り戻したネプテューヌに感化されて、僕も一旦考えるのはやめて、その日は怪我したところを治してもらったり、この世界のことを聞かせてもらったり、あとはゲームなんかして、この世界での初めての夜を迎えることとなった。

 あ、いや、昨日の夜に僕とネプテューヌは流星のように降ってきたらしいんだから、初めてじゃないか。

 

 

 

 

 なんて騒々しく過ごした日の夜、女の子二人が寝静まった後に、僕は一人ベランダに立ってゲイムギョウ界の夜景というものを眺めていた。

 

「うひゃー…ホントに未来都市みたいだなぁ……」

 

 視界を埋め尽くす、僕のいた世界にはない、それこそまるで◯ラえもんに出てくる22世紀みたいな建物がきらびやかに光っている夜の街並み。景色なんかに興味を持つほど雅な人間じゃないのは間違いないのに、二年生の新学期に見た桜といい、ここまで綺麗だと目が自然と奪われてしまう。

 

「別の世界なんだよね……、これ」

 

 信じられない事ばかり起きて、終着したのがこのゲイムギョウ界とかっていう別世界。自慢じゃないけどそこまで回転数の良い頭脳ではない僕の頭はとうにオーバーヒートしてるし、落ち着いていそうで内心まだまだ軽いパニック状態になっている。だからもうこれ以上のことはそうそう起きず、何にも驚くことはないだろうと思ったんだけど……

 

「あんなこと言われたら、またわけがわからなくなるよ……」

 

 天の声さんこと、いーすん(コンパ達いわくそう呼べばいいらしい。あれ? イストワールじゃなかっけ?)。彼女が置いていった爆弾はさらに信じられないものだった。

 

 

 

『―――その人……は…もしかしたら……明久さんの“敵”と…なっているかもしれません……』

 

 

 

 思い出して、盛大に溜息を付く。

 

「意味がわからないよ……。僕の知ってる人って誰? なんでその人もこっちに来て、しかも僕の敵になるのさ……?」

 

 もういーすんはいないから、言っても答えてくれる人なんていない。それでも、溢れてくる疑問を吐きださずにはいられなかった。

 あの世界で走り回って探し回っても僕の知っている人なんていなかった。けれどいーすんの言うとおり、もし僕と同じようにこうしてこの世界になんらからのルートでこちら側にきているとしたら、それはいったい誰なのか。知っている人ってことは、少なくとも僕の住む街にいる人か、海外にいる両親までが範囲になる。けどそうなると、人物を絞り込む事なんてできるわけもなく、

 

「はぁ……学校のテスト範囲だってもう少し絞ってくれるのに……」

 

 初めてじゃないだろうか。こんなにも学校のテストの方が何かと良いなんて比べるなんて。

 本音としては嘘と思いたい事なんだ。それでも助けてくれたいーすんが嘘を付くとは思えないし、思いたくもない。まだ見ぬ声だけの存在だとしても彼女は悪い人には思えない。だけどこんな別世界に自分以外の何物かが来て、敵となるっていう話ならまた思うところもあって、今日一日胸の奥に引っかかるイヤな感触にさいなまれていた。

 

「そういや、皆どうしてるんだろ? 急にこっち来ちゃったし、あっちの方はもしかしたら行方不明なんてなってたりするのかな?」

 

 僕の知人というワードで浮かび上がった元の世界が今、どうなっているのか。疑問に思うこともあれば、心配事がまったく絶えない。

 

「はぁ……どうなるんだろ、僕。これから……」

 

 まるで果てもない迷路に迷い込んだ気分だ。敵となるかもしれない知り合いもそうだけど、このまま元いた世界に戻れるのか。出口があると知っていても、いつ着くのか、どう進めばいいのか。見えない壁に阻まれて、不安ばかりが募っていく。

 もう何度目だろうか。考えただけでも憂鬱になって、また深い溜息を溢してしまいそうになる。そんな直後のことだった。

 

「シリアスブレイカー!」

「あいだー!?」

 

 突然襲ってきた後頭部の痛みに思わず叫び声をあげてしまう。だっ、誰だ!? 人が暗い気持ちで思い耽っていたのに! いや、もうだいたい犯人は予想つくけど!

 

「やっほー、アッキー」

「やっぱり君だったのね……」

 

 振り返った先には予想通り、お天道様もビックリの笑顔を満点に咲かせてネプテューヌが立っていた。まぁだよね。こんなことするのはこの家じゃきみぐらいだろうし。

 

「あれ? あんまし驚いてない?」

「驚いたよ。そして痛かったよ、何するのいきなり」

「いや~アッキーが一人でシリアス展開を繰り広げてたから、シリアスキラーであるわたしとしては壊さずにはいられなくて~!」

「……それで後頭部に打撃を?」

「あ! きちんとグーっでやったらから!」

 

 何がきちんとなのか知らないけど、ブレイカー=グーパンって風潮ってどうなんですかね? いや、ヒーローさんはカッコいいと思うけどね。

 後頭部を擦りながらネプテューヌのテンションに当てられて怒る気力も出ず、思い詰めるのが馬鹿らしく思えてきた。

 

「それより、どうしたのネプテューヌ。コンパと一緒の部屋で寝てたんじゃないの?」

 

 さっきまで寝ていた事もあって今のネプテューヌの服装はパーカ型ワンピースではなく、少し大きめのピンク色の可愛らしいパジャマに身を包んでいる。きっとコンパにでも借りたんだろう。今日一日いろいろとあって彼女はすぐに眠りについていたし、相当疲れていただろうから起きるなんて何かあったのだろうか。

 

「それがお腹が減っちゃったって☆」

「……………」

 

 なんというか、本当にこっちがシリアスになってたのにこの子はもう……。

 

「はぁ……冷蔵庫に僕用ってコンパが作ってくれたプリンがあるから、それ食べていいよ」

「えっ! プリン! いいの!? わーい、ありがとアッキー!」

「後で歯磨きした方がいいよ。コンパに次の日怒られるから」

「もがほぎゅうあぼ(わかってるって)!」

「食べるの早!?」

 

 ちょっと物理的にどうやったのか気になるところだけど、ネプテューヌが美味しそうにプリンを食べているのを見ると、それ以上のツッコミは無粋だとやめることにした。本当に美味しそうに食べてるなぁ、あははは。

 

「そういえばアッキー、なんでシリアスになってたの?」

「はい?」

 

 こちらの視線に気づいたのか、ネプテューヌは一心不乱にプリンを食べていた口を止めず、器用に質問を投げかけてきた。

 

「だから、どうしてショボン状態だったの?」

「どうしてって……僕が何に落ち込んでるかわかっててシリアスブレイカーしたんじゃないの?」

「ううん。なんとなくシリアスだったからやっただけ」

 

 なんとなくでグーで後頭部殴られたんだね僕は。

 

「ほらほら、もし悩みがあるならこのねぷねぷがアッキーのお悩み相談役してあげるよ」

 

 そしてなんだかノリノリでいるこの子はなんなんだ。

 実際ネプテューヌに今の僕の悩みを打ち明けたところで解決なんてしそうにない。むしろ余計に偏頭痛が起きそうで、できればさっさとプリン食べきって歯磨きして寝てほしいところ。

 ………なんだけど、聴いてくれるだけでも少しぐらい肩が軽くなるかもしれない。

 

「まぁなんというか、無事に帰れるのかなぁ……なんて思っててね」

「帰れるんじゃない? あ、プリンもうなくなっちゃった。もう一個ない?」

 

 心の底から言うんじゃなかったと後悔しだしている自分がいるのはおかしい事ではないと信じたい。もうホントになにこの子? コンパ同様に天然? いや、違う。これは明かに狙ってるよ……。僕のお悩みなんて所詮ボケの礎でしかないんだ……。いいよ、わかってたんだ……。どうせ僕にシリアスなんて似合わないなんて事ぐらい知っていたさ……あはははは……。

 

「おおっ!? どうしたアッキー!? 急に泣き出して!」

「いや、幸せそうな君が羨ましくなってね……」

「ん? アッキーは幸せじゃないの?」

「こんな別世界に来て幸せになれる人ってまずいないと思うよ…」

 

 幸せになれるとしたらそれは元の世界で相当いやな立場でいた人ぐらいだろう。悪いけど僕はそんな酷い境遇じゃ―――ありはしたなうん。

 ともかく僕は無事に元の世界に戻れるのか今からもう不安で押し潰されそうだ。なんかモンスターとかにあっさり殺されるんじゃない僕なんて……。

 などとネガティブ思考に薄志がかかる僕にネプテューヌは少し口を尖らせ、

 

「えー! わたしはアッキーと友達になれて良かったと思ったんだけどなー……」

 

 どこか拗ねた子供のような思いを吐露した。

 

「へ? ネプテューヌ?」

 

 僕は不意なことに驚いてネプテューヌを凝視しする。ネプテューヌは空になったプリンをスプーンで弄びながら、こちらの視線も気にした様子もなくいつもの調子で続ける。

 

「一緒に冒険したり、ゲームしたり、夜ご飯はこんぱの美味しいから揚げとか食べて楽しかったんだけどなー。こんぱもきっと同じだと思うよ?」

「……………」

「だから~、そんな寂しいこと言っちゃうと―――またねぷねぷチョップしちゃうぞー! なんて!」

 

 茶目っ気たっぷりに笑う彼女はからかうように、それでいて無邪気なまでに明るくそう振る舞っている。そしてその言葉の端端に伝わる本心を耳にして僕は固まってしまって、自然と口が動きだす。

 

「ネプテューヌは凄いね、記憶喪失でなんにも憶えてないのに……。そんな風にいられるなんて……」

「なんだかそこはかとなくバカにされてる?」

「ははっ、してないしてない。本当にすごいって思うんだ……―――でもね、僕にはネプテューヌやコンパみたいに戦う力もないし、今日だって二人の後ろに付いて行くだけで、あの洞窟のときだってコンパを助けるつもりが結局助けられて……、やっぱり不安になっちゃうんだろうね……。こんなのでやっていけるのかなって……」

 

 溜め込んでいたものを爆発させるみたいに次々と言葉が勝手に口から零れていく。ネプテューヌに言っても仕方のないことばかりなのに、それでも溢れる想いをせき止めることもできないで、情けない自分を止められないでいく。

 僕が帰る道も、ネプテューヌの記憶喪失を治すのも、ヒントはあっても雲を掴むような事なんだ。それに僕はどこまで付いて行けるのだとか、いつまでやっていけるのだとか。敵になっているかも知れない、どこにいるかもわからない僕のよく知る人物に至ってはそれこそ真っ暗なトンネルの中で石ころを探せと言うような荒唐無稽な話になる。

 愚痴なんていくらでも吐き出せる。弱気になるのなんて簡単だ。そして僕はそんなどうしようもない事を、自分よりも小さな記憶喪失になっている女の子にぶつけているんだ。情けないと弾かれてもしょうがない。笑われても言い返しようが―――

 

「なーんだ、そんなこと気にしてたんだアッキー」

「…………へ!? そ、そんな事?」

 

 雰囲気ガン無視の呑気な声と言葉に圧倒されて目が点になる。ね、ネプテューヌさん?

 

「もうわたしにプリンあげたこと後悔してるのか思っちゃったよ~。というか↑の文が長すぎ! わたし三行超えちゃうと全然わからないんだから気をつけてほしいな」

「いや、あの…え? ごめんなさい?」

 

 なんだろう。悪い事したつもりはないんだけど。てかいろいろ台詞が際どいというか、なんというか……。

 

「大丈夫大丈夫! アッキーが戦えない分はきちんとこの主人公であるわたしが戦っちゃうんだから! 気にする必要なんてないって!」

「で、でも僕は何の役にも……」

「わたしのゲーム相手してくれるじゃん! アッキーって意外とゲーム得意だし、対戦系とか張り合いがあるって感じがしたよ。あっ! あとあと! 今日だって洞窟でこんぱがモンスターに襲われてるの助けに行ったときだってカッコよかったよ! こんぱもカッコよかったって言ってたし!」

 

 は、はて? そんなこと言われた記憶が僕にはないんだけど。もしかして寝るときとかにでも話してたのかな? いや、どっちにしろ僕は助けられる側になっちゃったんだよね……。

 

「何よりわたしにプリンを恵んでくれた! めちゃくちゃアッキーのおかげだよ!」

「恵んでって、そんな大袈裟な……」

 

 なんだかどれも頼りない事ばかりで、むしろどんどん惨めな気分になっていきそうだ。

 でも、なんとなく落ち込んでいた自分が消えていくのがハッキリとわかる。ネプテューヌの言葉に悪気もなければ特別な気遣いなんてのもないんだろう。だからこそ、底抜けに明るく、楽しく今をやっていけているネプテューヌを見ていると笑顔が込み上げてくる。

 幸せかどうかは、傍から見れば僕の境遇はどう映るのかわからないけど、こうして別世界にきても友達ができたってことは僕はすっごく幸せ者なんだろう。いや、きっとそうなんだ。

 

「―――だから大丈夫ー! アッキーが元の世界に帰れるよう、いーすんも助けちゃうだから! このねぷねぷにどんと任せんしゃい!」

 

 コンパよりも全然ない胸を張ってドンと握り拳を叩くネプテューヌの顔はそうも変わらずとてつもないドヤ顔。流れ的にはツッコミ部分にもなるんだけど、どことなくその顔が頼もしくて、それでいてバカっぽい愛嬌もあって、僕はいつのまにか笑ってしまっていた。

 

「笑ったー!? このねぷちゃんの顔を見て笑っちゃったねアッキー!? 人の顔見て笑うなんて酷ーい!」

「ご、ごめんごめんっ。ついおかしくて」

「ぶー! アッキーのバカー」

 

 両腕を上げて抗議するネプテューヌはプリプリと可愛く頬を膨らませている。それを見るとまた笑ってしまいそうで、もう不安で途方に暮れていた自分はどこにもいなかった。

 ―――そうだよ、何を柄にもなく怖気づいていたんだろう。確かに問題は山積みだし、怖くないといえばウソになる。不安なんて簡単に消えないかもしれない。だけど僕にはこうして別世界でできた友達がいる。孤独じゃないのなら、きっとなんとかなる―――!

 

「……ありがと、ネプテューヌ」

「ふぇ? なんか言った?」

「ううん、なんでもないよ。それよりもう寝たら。夜遅いんだから」

「う~ん……そうしたいのは山々なんだけど~」

「けど?」

「なんだかゲームって言ったらゲームしたくなってきちゃった! だからアッキー対戦やろ、対戦!」

「えー、僕は別にいいけど……。明日コンパに怒られちゃうよ?」

「大丈夫だ、問題ない!」

 

 なにが問題なんだろうか。仮にも居候の身なんだからちょっとは気を使った方がいいと思うんだけど。

 

「あっ! それとアッキーさっきわたしの顔見て笑ったからプリンもう一個ね!」

「えー!? それこそコンパ怒られるって」

「ダメー! 笑ったのはアッキーなんだから」

「そんなぁ……」

 

 これは明日コンパに土下座が必要になってくるかも。

 …………まあ、でも。

 

「よーし! 今夜は朝までやるぞー!」

 

 ネプテューヌが楽しそうだし、それも悪くない、かな……?

 なんて思いつつ、ベランダから部屋へと入る途中、視界に入った夜空を最後に見上げて、これからのことを考えながら僕はネプテューヌに続いて部屋の中へと戻っていった。




ハイ!どうでしたか!?汚い駄文でしたでしょ!?もう罵声を投げかけてやってください!そしたら僕の活力に―――なんでもないです!とりあえず第一章の折り返し地点の今回でここまでです!誤字脱字している部分など、お話についてなど、ここをこうした方が良いよなどのアドバイスなどありましたらお気軽に感想等に書いていただけると有難いです!次回の投稿は九月の半ばを予定しています!基本カメ更新なんで気長に待っていただけると嬉しいです!よろしくお願いします!
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