ハイすいませんでした遅れましためちゃくちゃごめんなさい!これには訳があるんです!ちくわとグラタンの戦争にベイゴマの新手地にマグマの噴火が実はサンマの遺伝子を受け継いだ伝説のサイボーグまんじゅうを恨んだガールフレンド(ガチ)に踏み潰される運命ノーの世界の歪みが大変なことに
大変遅れえてすいませんでしたーーーーーーーーーーーー!!!!!
では、本編どうぞ(真顔)。
イストワール先生の、問題集!
古文
【第一問】
問 『やんごとない』の意味を書き記しなさい。
コンパの答え
『貴い』
イストワールのコメント
正解です。コンパさんはこれから旅をして、貴重な体験をたくさんするでしょう。触れていく一つ一つの物事に対して、常に貴いということを忘れず、見聞を広めていってください。それが後に、看護学校でも活かされることを祈っています。
吉井明久のの答え
『ヤバくない』
イストワールのコメント
明久さんの頭がヤバい気がします。
ネプテューヌの答え
『ぱない』
イストワールのコメント
ネプテューヌさんの頭がぱない。
☆
「それじゃ、アッキー。新しい包帯巻くですよ」
「うん。お願いするよ」
シュルルルと古い包帯が解け、僕の上半身が露わになった。隠れていた大きな傷が二つ、胸と、お腹部分にあるそこに、コンパは優しい手つきで包帯を巻いてくれる。
女の子の目の前で上半身だけとはいえ、裸になるのはちょっと恥ずかしい。包帯を巻いてくれるのだから贅沢は言えないけど、やっぱりそこは健全な男していろいろとあるんだ。
「ぐーるぐーるぐーる♪」
こっちが照れてるのなんてつゆ知らずのコンパは、恥ずかしさの欠片も微塵とも感じさせず、ちょっぴり傷つく。
でも、さすがは看護学校に通ってるだけあって、その手際の良さは流石の一言。傷もそれだけで治るってものだ。しかも包帯を巻くという名目上、お互いの体が急接近するものだから、たわわに実った二つの果実が触れそうになる。これはもう男としては最高の業褒美だ。おかげで傷の痛みなんてお腹の傷と骨とがミシミシと引き締まってる程度のとてつもない激痛が駆け巡るだけで、
「あいだだだだだだっ!? ちょっ、ちょっ! コンパっ!? 痛い痛い痛い! 包帯締めすぎ締めすぎィっ!?」
「あ、あれ? ええっと……そしたら一旦解いて……えい!」
「おぐぅっ!? ちょっ!? よっ、余計に絞まってるって! おっ、折れる折れる! もういいもういい! あとは自分でやれるから! 大丈夫だから!」
「まっ、待ってくださいです! ここをこうすればいいだけで……! とおです!」
「ご、ごふっ……!? コンパ……! ホントに、もういいから……これ以上はやめて……骨が…骨がァ……!」
「大丈夫です! これで~……」
はっ!!? すっごく嫌な予感が!?
「まっ、待つんだコンパ! なんかそれはまずい気がするんだ! いやっ、何するかわからないけど―――イヤッ、やっぱりわかるからもうマジで本当にいいから―――!」
「決まりです!」
…………………ボキュッ…………………あ。
「…あ、あれ? アッキー……? アッキー、どうしたですか? アッキーッ? アッキーーーー!?」
☆
先日でのおばさんとの戦い後、すぐ旅立つはずだった僕らは傷だらけということで出発を延期。数日間、療養のために一時の休息を取ることとなった。
特に、僕はパーティーの中でも一番の被害を受けていて、コンパが付きっきりで看病をしてくれることになって、心の中で何度もガッツポーズをするほど嬉しかったんだけど……。
「な、なんとか生きてる……」
「ううぅ……ごめんなさいです…」
「あはは……いいよ。気にしてないから……」
止め刺されるかとは思ったけど……。
でも、実際こんなこと元の世界でたくさん経験してきた所為か、それほど体に悪影響はない。ふむふむ、後は外れているここの部分を押しこめばっと……。
「よし、外れた関節も元に戻った。ほら、大丈夫でしょ?」
「いや、全然大丈夫じゃないことが今起きたですけど……。み、見なかったことにするですね……」
どうしたんだろう? コンパの顔色が悪いような。気のせいかな?
それにしても、日頃やられていたおかげか僕も随分と医療関係に詳しくなったものだ。それもこれも、鼻血を毎日の如く出す変態と、毎日のように目を見張る体技を放ってくる帰国子女たちのたゆまない異常行動のおかげか。…………素直に喜べないなぁ。
「どうしたんですかアッキー? 急に顔色が悪くなってるですよ。やっぱり痛かったですか?」
「あ、ううん。ちょっと自分の学園生活を見つめ直したら寒気がしただけで……」
「???」
よく伝わらなかったんだろうコンパは頭の上に何個も愚問ふを浮かべている。まぁ、伝わったらそれはそれでヤバいんだけど。君はそのまま純粋でいてください。
「それより、ネプテューヌにアイエフはどうしたの? いないみたいだけど」
「あいちゃんは、旅立つ前に資金を貯めておくってギルドにお仕事探しに行ったです。ねぷねぷは、ゲーム屋さんに新作を買いに行くって言ってたです」
「なるほど。プラマイ0ということだね」
これは帰ってきたらネプテューヌにアイエフの雷が落ちるのは必須だ。
「帰ってきたら僕にも遊ばせてもわらなくちゃ(まったく、ネプテューヌにも困ったものだね)」
「アッキー、本音と建前が逆になってるですよ」
僕らは決してそんなに裕福じゃないんだ。これからの旅が長くなるにしろ短くなるにしろ、ゲームにお金をつぎ込む事は控えさせないといけない。そこのところは後で僕からも注意しておかないとダメだろう。そしてもちろんゲームに関してはグッジョブと言わざるを得ないからここは僕も土下座でのフォローも視野に入れておかないといけない。今夜は忙しいぞ。
「なんだかよくわからないですけど、アッキーからもの凄い熱意が溢れてるです…」
「それはそうだよ。こっちの世界のゲームも面白くて……ネプテューヌには今後のこともふまえて叱っておかなくちゃいけないんだから」
「もう本音がただ洩れです……。元気なのはいいですけど、怪我人なんであんまりはしゃぎすぎないでくださいね?」
心配そうにズイッと顔を近づけて、母親みたいに優しくそう言うコンパに『はーい』とだけ答えて、内心ではネプテューヌや僕に対して怒らないところは流石は甘いというか優しいというか、コンパの人柄に苦笑いを浮かべてしまう。
なんて思われているとは微塵とも感じていない様子のコンパは目の前で立ち上がり、丈の短いスカートの中が見えそうになると……、
「??? アッキー、突然姿勢を低くしてどうしたですか?」
「いや、なんでもないよ……」
本人は至って無意識での行動なのかもしれないけど、ここまでくると僕って男として見てもらえていないのかと不安になる。この前のスカートの件とか特に。
「よくわからないですけど、無理はしないでくださいね。アッキーは怪我人なんですから。わたし、これから買い物に行ってくるんで、お留守番お願いしていいですか?」
「それなら僕も一緒に行くよ」
「ダメです。アッキーは怪我人なんですよ。お家でゆっくりしててくださいです」
若干強気で応えるコンパ。こういうところは看護学校に行くだけの人の反応だ。
「これぐらい平気だよ。もうだいぶ良くなってるし、家に一人ってつまらないから。無理はしないからいいでしょ。ほら、なんならコンパだって一緒なわけだし」
少々強引な感じに説得を計るけど、一人家で待つっていうのは退屈で耐えられそうにない。ゲームでもやっていれば違うかもしれないけど、ここ数日お世話になっているコンパに対して恩返しもしたかったところだし、丁度いい口実だ。
「う~ん…そう、ですね。なら、一緒に行くです。一人より二人の方がお買い物も楽しいですし。ちょっと待っててくださいです。すぐにお出かけの準備をしてくるですね」
「あ、うん。じゃあ先に玄関で靴、変えてるね」
駆け足で消えていく背中に、聴こえているかどうかも確認することもできないまま、コンパは部屋に向かってしまった。買い物袋もお財布もここのリビングにあるのに、何を準備することがあるのだろうかと考えたけど、女の子はちょっとした買い物にも身だしなみを気にするんだろう。
これ以上詮索するのも失礼だろうしと考えるのをそこまでにして玄関先で待っていると、言ったとおりちょっとしてコンパはやってきた。見た目の変化は見受けられなかったけど、気にせず僕はそのままコンパとの買い物にプラネテューヌの街へと向かうこととなった。
☆
「で、また随分と買いこんだね。アニメの定番よろしくネギが飛び出てるんだけど」
「出先や家での蓄えを考えておくと、これぐらいがちょうどいいってあいちゃんが言っていたんです。ネギは仕様です」
「仕様って……言っていいの?」
「深くはツッコんじゃダメです。細かい事を気にする男の子はモテないですよ、アッキー」
「も、モテない……?」
お日様みたいなニッコリを一つ浴びて、地味にグサッと突き刺さる。
細かいというか……ツッコミなんだけど……僕ってモテないのか……? 確かに学校じゃどっちかというとモテている方ではないかもしれないけど……。い、いや、あまり嫌なことを考えるのはよそう。このままいくと心の傷がどんどん広がって二日間寝込んでしまいそうだ。
「??? アッキー、顔を伏せてどうかしたんですか?」
「ううん、なんでもないよ……」
そしてやっぱりこの天使さんは自覚なしのトゲだったようだ。ある意味アイエフのはく毒舌よりたちが悪い。
…………でも、最後にはどれだけ酷い言われようでも許しちゃうんだよね。
「そうですか。無理しちゃダメですよ? 傷が痛かったらすぐに行ってくださいね」
また、お日様みたいな可愛い笑顔を見せるコンパに、思わずドキッと胸が高鳴る。……なんというか、コンパの相手ってネプテューヌとは違った意味で疲れるというか、どんなことされても許してしまうというか、本当に天使なんじゃないかって思えるぐらいに、コンパって子は純粋なまでにいい子で心臓に悪い。
しかもこんな可愛い子と僕、一緒に暮らしているうえに看病までしてもらってるんだよなぁ……。なんだろ、元の世界より幸せでいるって、複雑な気分……。
なんて思いながらコンパの顔を見過ぎていたのか、
「何かついているですか?」
「あ、いや、別にそんなじゃないんだ! あ、あははは……!」
「???」
見惚れていたなんて口が裂けても言えるわけがない。言ったら引かれる、は優しいコンパだからありえないとしても、ようやく仲良くなれた関係性に余計なヒビが入ってしまいそうだし、ここは黙っておくのが吉だ。ていうか普通に恥ずかしいし、ムリムリ。
できるだけ自然かつ適当に笑いながら流しつつ、話題を逸らしていく。あまり気にしていないコンパも別の話題を上げて、僕は静かなる大ピンチを切り抜けると、ちょうど目の前に一台のトラックが停車した。
「なんだろう?」
「廃品回収の車さんですよ。ほら、荷台に家具みたいなのを乗っけてるです」
荷台を指をさすコンパの言うとおり、車の後ろにはアンティーク家具のようなものが縄で固定されている。それも一つだけじゃなく、三つ、四つと小さなトラックに乗せられるだけの分が積み込まれていた。停車した所も、ゲーム会社のビル手前に置いてあった、これから回収するらしき同型の廃品の前だ。こんな科学が発展している世界でも、僕のいた世界の仕事とあまり変わらないみたい。
「見たことのない家具ですけど、冷蔵庫ですかね?」
「違うと思うよ。たぶんアレ、ジュークボックスっていうやつだよ」
「じゅーくぼっくす? って、なんですか?」
「音楽の自動販売機みたいなものだよ。お金を入れれば中にあるレコードが聴けるんだって。確か百から2000枚ぐらいだったかな? あの箱にたくさん入ってるらしいよ」
「レコードって……ビニールでできたあれですか? ということは、あの機械さんもかなりの骨董品ですね」
「……その通りだ」
低く渋めの声が突然会話に飛び込んでくる。声の元は、トラックから降りてきた結構な年齢のおじいさんからだ。
「あ、すいませんです。作業のお邪魔、だったですか?」
「いいや、構わんよ。どうせ係りの者が来なければ荷物が載せられないからな。ひと休みしようと思っとったところさ」
どうやら気立てが良い人みたいで、笑みこそ浮かべたりはしていないけど気にした様子も見せず、近くのベンチにゆっくりと腰を掛けた。係りの人ってのはきっと廃品を積み込む人のことだろうか。さすがにこのおじいさんだけじゃ無理だろうし、ならばと思い、単純に気になったことを尋ねてみる。
「そのジュークボックス、もう使えないんですか?」
「ああ。修理しようにも、その辺の電気屋には部品がないだろうからな……。使えない物はすぐに捨てられちまう。この会社だって元々はジュークボックスから商売始めたってのに冷たいもんだ」
「え? でもここって、ゲーム会社じゃなかったでしたっけ…?」
改めてビルを見上げる。
聞いた話だし、僕自身中に入ったりして確かめてるわけじゃないから自信はないけど、教えてくれたのは他でもない隣りにいるコンパだ。あのコンパが嘘つくわけないし、このオジサンが嘘ついているのかな?
「アンタらは知らんだろうがね……世の中のゲーム会社の多くが、創業当時はジュークボックスをメシの種にしとったものさ」
「へー……そうなですかー」
疑ってすんませんでしたおじいさま。やっ、やっぱり長生きしている過去の偉人たちは物知りだね! そこはもうどんな手段でも超えることのできない博識っていうの!? さすが人生の大先輩! 素晴らしいですハイ!
「それにしても、君は若いのによくジュークボックスのことを知っていたな」
「あ、そうです。アッキー、なんで知ってたんです?」
「すいませんすいません! ……って、はい? あ、ああ……。いろんなゲームやってるといろんな言葉とか、物とか出てきて、ジュークボックスがちょっと前にやった育成ゲームで家具として出てきたんだよ。それで憶えててね」
「そうか……。皮肉なもんだ。切り捨てられた場所から出してるゲームで名前が知られるなんてな」
思い耽るようにつぶやくおじいさん。あ、なんかマズイこと言っちゃったかな……? 眉間にシワ寄せてるし……。
このおじいさん今のゲーム会社とか嫌ってるみたいだし、もっと慎重に言葉を選ぶべきだったかもしれない。
(おじいさん、ジュークボックスにすごい思い入れがあるみたいですね)
(う、うん……そうみたい)
それはコンパも敏く気づいたようで、顔を近づけてこっそりと僕にしか聞こえない声でボソボソと言う。って、顔が近い……! コンパって本当に僕のこと男だと思ってないのか……!
おじいさんも気になるけど、無防備すぎるコンパにドキドキしっぱなしでそれどころじゃない。こんな公然の場で衝動的な間違いを起こせばそれこそ僕の旅は出発する前に終わりを向かえてしまうだろう。別世界で逮捕沙汰なんて大人になっても笑い話にできやしない。……あ、僕もうおまわりさんに五回ほど逮捕されてたや。ははっ、おかしいな。今日は天気予報で一日中晴れって言ってたのに急に雨が降ってきたぞ。まったくお天気お姉さんめ、天気予報を外したな。あははは……!
「君……大丈夫かい? お嬢ちゃん、連れがいきなり泣き出してるが……? よく見れば包帯を巻いているな。どこか痛めているんじゃ……」
「大丈夫です。怪我はきちんと治ってきてるので、違うと思うです」
「でも、唐突に泣きだして……」
「大丈夫です。アッキーは時々こうなるです」
「それは大丈夫と言わないと思うんだが……。っと、電話のようだ。いいかね?」
「はい、どうぞです」
あー……今日はどしゃ降りになりそうだなぁ……。折りたたみ傘をもってくるべきだったよ……。いや、このさいカッパの方がフードもあるし―――
「なにっ? これなくなった?」
―――身を包めるから……って、なんだ?
いきなりおじさんの会話に不穏な空気がにじみ出てきて、僕にコンパが顔を見わせる。おじさんはさっき以上に眉間に眉を寄せて、電話先の人に強めの口調で質問を投げかけたり、微妙そうな、納得のいっていない表情で返事を返してる。内容がわからない僕らでもその電話は何か良くない事を話しあっているのがわかった。
しばらくすると、渋々とした面持ちでおじさんは電話を切った。
「どうかしたんですか?」
「ああ、いや……。なにやら係りの者が今すぐ来れなくなったそうでね」
「え? それじゃコレ、どうするんです?」
「どうもこうも、一人で積み込むしかないさ。ここであまり時間をかけると後がつっかえるからね。それにここで回収しないと、こいつはそのままスクラップ行きになる。修理すらされずに処分されるんだ」
「でも一人でって……」
ジュークボックスは僕の身長ほどの大きさがある。どう見たっておじいさんみたいな年寄りが、しかも一人でなんて運べそうな代物ではない。
無茶だと注意するよりも早くにおじいさんはテキパキと準備を始め、乗せていた台車を活用するのか、ジュークボックスの下側を持ちあげようとする。けど、やっぱりご老体にはとてつもない負荷がかかるわけで、苦虫を潰したような渋面へと表情を変えた。あれじゃ体にも悪い。やっぱり一人じゃ無理だ。
「おじいさん無理しないで。僕が―――」
「わたし、手伝うです!」
手伝いますと僕が言おうとすると、コンパがそれより先に前に出ていた。
って、え……?
「こ、コンパ? 手伝うって、まさかジュークボックスを運ぶの?」
「そうです! 困ってる人を放ってはおけないです!」
「気持ちは嬉しいが、お嬢ちゃんには無理だよ。こいつは相当重いんだよ」
「心配無用です! わたし、看護学校で重い物を持ったりしてますし、モンスターだって倒したんですよ。これぐらいなんとかなるです」
「いや、さすがにモンスター退治とか関係ないんじゃ……」
「細かいことを気にしたらダメです。あと、アッキーは治りかけですから、そこで見ててくださいね。病人さんは絶対に手伝っちゃダメですからね」
「え、ちょ、ちょっと、コンパ?」
僕やおじいさんの忠告なんて聞く耳持たず、コンパは袖をまくってジュークボックスに手をかけた。自分よりも大きいそれを必死に持ち上げようと力を入れて―――当然と言うか、予想どおりジュークボックスはピクリとも動きはしない。
いくらコンパが看護学校の実習で重い物を持っていたとしても、それってたぶん人の重さを想定しての重量だと思うから、それ以上の重みがあるジュークボックスを持ち上げるのは難しいはず。モンスターを倒したってのも、純粋な力比べをして勝ったわけじゃなくあくまで武器を使用して、しかもネプテューヌとかアイエフとかがいた状態で戦ったんだ。
「お嬢ちゃん。気持ちはありがたいけど、無理だよ。もう大丈夫だから、怪我をする前にやめな。こいつの回収は諦めるとするから」
「だっ、大丈夫ですぅ! まだまだ全然へいきです! 本領発揮は、ここからです!」
「本領発揮と言ってもね……」
はんば呆れた様子でいるおじさんなんか意に介さず、コンパは顔を真っ赤にして奮闘する。でも、圧倒的な重量のジュークボックスはビクともせず、時間だけが過ぎていく。
「コンパ、無理だって。本当に怪我するからやめなよ」
「だ、ダメですよっ……。おじいさんは困ってるんですっ。なら、助けてあげないとです!」
「けど、それはコンパがやらなくても……」
「『他の誰かがやるから、わたしはやらなくていい』なんてもっとダメです! それじゃあ本当に困ってる人を助けられないです!」
思わず、空いた口が閉じなくなった。それはおじいさんも同じようで、驚いて見開いた目でコンパを見つめていた。
「ううぅっ……! だっ、大丈夫ですよっ。おじいさん、すぐ運んじゃうですね……! だからこのジュークボックスさん、直してあげてくださいね」
ジュークボックスを必死に持ち上げようとしながら、コンパはおじいさんに一切の不平不満も感じさせない優しい微笑みを投げかけた。
それはまさに、人を助けることが当たり前と言っているようだった。困っていたら助ける。人助けに間違いはない。親切心と真摯に向き合い、疑いすら抱かず悩む人に手を伸ばす。一見すれば良い行いかもしれないけど、それは指をさされて馬鹿にされる行いでもある。
このまま放って置いたって別にこのジュークボックスが処分されるだけで、今初めて見た僕らにとってはなくなっても特に惜しいわけでもなく、悲しむとしたらこのおじいさんぐらいだろう。そのおじいさんですら、今会ったばかりの関係なんだ。無理してまで親切にする義理はない。
もしかして、このおじいさんがジュークボックスを大切にしているから、たったそれだけの理由でここまでやっているのだろうか。だとしたら、それこそバカと言われてもしょうがない。
―――本当に、どうしようもないお人好しのバカと呼ばれても。
「ふにゅぅ~~……! もう少しでぇ……!」
「コンパ。もういいよ」
「ダメですぅ! 絶対に運ぶんですぅ!」
「うん。だから、運ぶからどいてて。危ないから」
コンパの肩を引き、ジュークボックスから引き離す。ふむ、これぐらいの大きさならなんとかなるな。
「運ぶって……アッキーは大人しくしてないとダメなんですっ。せっかく治りかけてる傷がまた開いちゃうです」
「お嬢ちゃんの言うとおりだよ。見たところ随分と大きな怪我をしたと見る。いくら男の君でも、そんな状態じゃ無理だ。もう本当にいいから、無茶をするんじゃない」
なにやら二人とも、“僕”が運ぶものだと思っているらしく、両方に強く言われてしまった。でもまぁ、普通はそう考えても仕方ない。だから説明するのもいいけど、ここは実際にやって見せた方が早いだろう。
「別に僕が運ぶんじゃないよ。これが代わりに運んでくれるから―――
キーワードを叫ぶと、足元に馴染みある幾何学模様が浮かび上がった。魔法陣とも見れるそこから光が漏れだし、次の瞬間には木刀に学ランを装備した僕をそのままデフォルメしたような召喚獣が顔を表した。
ノートに書いてあった通りだ。この世界じゃ、召喚獣はどこでも召喚できるらしい。初めて見る存在におじいさんを静かに驚き、一度見ているコンパは、
「アッキーの、お人形さんですか? 可愛いですね」
ズコッ。
「そ、そういえばコンパたちが見た召喚獣はまだ大きい姿だけだったね。これが本来の召喚獣の姿なんだよ」
「こんな小さいのが、あの時の強いアッキー召喚獣なんですか?」
「そうだよ。あのノートに書いてあったんだ。意識を移していないときはこの普通の状態で召喚されるって」
「あんなに怖くなっちゃったりしてた召喚獣さんは本当はすっごく可愛かったんですね。本当のお人形さんみたいです!」
興味津々に屈んだコンパは召喚獣の頭を撫でながらあちこちをさわりだした。もちろんそれら全てはフィードバックとして僕本体にも返ってきて、なんとも言えない柔らかな感触が全身を包み込む。あ、ちょっ、そっ、そこは……! 頭を撫でられていろんな所をさわられて……! やっ、ヤバい! いけない何かが目覚めてしまいそうだ!
「こ、コンパ!」
「? なんですか、アッキー?」
「できればもっと撫でてほしい―――じゃなくて! ジュークボックス運ぶから、召喚獣から離れてくれると嬉しいな…」
「あ、ごめんなさいです。つい可愛くて撫でたくなっちゃったです」
「う、うん。それはいいんだよ。むしろありがとうございますというか、後でいっぱいしてくれて構わなくて―――そうじゃなくて! じゃ、じゃあさっさと運ぼうか」
でないと邪念という純粋な欲望が暴走してしまいそうだ。衝動的な間違いだけは起こしてはならない。例えすでに誤解で五回も逮捕されていようとも! これ以上の前科が付けば間違いなく僕は日の本を歩けなくなるから! ボロボロのスカートを穿いて街中を歩いた時点でもう後戻りできるかどうかはわからない、というのは考えない方向性で行こうと思ってます!
「ま、待っておくれ。よくわからないが、そんなので運べるのかね?」
と、今度はおじいさんが召喚獣を見ながら作業を遮断する。初めて見る人にとって、召喚獣は弱いイメージが強いようだ。見た目が見た目だし、仕方のないことだろうけど。
「大丈夫ですよ。見ててください……ほいっと」
手馴れた感じで命令を送り、召喚獣に今までビクともしなかったジュークボックスを持ち上げさせた。
「ね? こいつ、見た目以上に力がありますから。ちょっと待っててください。すぐ運んじゃいますから」
「お、おお……す、すまないね…」
小さい召喚獣が軽々と身の丈以上の物を運んだのがそんなに衝撃的だったのか、生返事だけが返ってくる。ジロジロとおじいさんの視線が召喚獣に集まって、そこまで驚かれるのも僕からしたら新鮮であり、妙にやりづらい感じもしたけど、長年操って慣れている雑用作業をパパッと済ましていく。
あれだけコンパが苦戦したジュークボックスは、あっというまに荷台に乗せられ、ロープでしっかりと固定される。よし! ざっとこんなものだろう!
「いっちょあがり! これでどうです?」
「あ、ああ…ありがとう。すごいな、君のそれは…。モンスター……のようでもないし、いったい君は……」
「あははは、まぁいいじゃないですかそんなこと。それより、これでコイツも処分されないんですよね?」
「そ、そうだな。助かったよ」
「良かったです! ジュークボックスさん、また音楽が聴けるといいですね!」
未だ動揺を隠せないでいるおじいさんだけど、心から安心したような息をつく。諦めると言ったり、表面では気にした素振りはなかったけど、本音としてはやはりスクラップにならずに済んで嬉しいんだろうか。コンパもすっかり自分のことのように喜んでるし。
それにしても、まさか元の世界で嫌々やらされていた召喚獣の雑用がこんな所で役に立つとは思わなかった。人生何が起きるかわからないもんだなぁ。
なんて感慨深く思っていたら、おじいさんは今しがた載せられたジュークボックスに手を当てて、過去を振り返るようにポツリと言葉を零していく。
「……昔の若者たちは皆、コイツが吐き出す音楽で踊って恋に落ちたもんだよ」
「なんか、ロマンチックです! 恋のキューピッドってわけですね!」
さすがは女の子。その手の話しになった途端、妙にエキサイト気味だ。
そしてこのおじいさんには、ジュークボックスというのはやっぱり大切な、しかも思い出の一つのよう。うんうん。人助けした甲斐があったもんだ。気分がいいね。
「きっと、キラキラしてたんでしょうね。その時代の人たちの踊り」
「その通りさ。現代に敗けないぐらいの輝きを放っていたよ。……さて、と。だいぶ時間をくったし、そろそろ行くかな。今日は本当にありがとう。助かったよ」
「いえ、僕はコンパの―――この女の子のお手伝いをしただけですから」
「わたしだって看護師を目指す者として、困ってる人を助けただけです。……といっても、わたしは結局なにもできなかったんですけど…」
コンパの最後の方は、声が萎んでよく聞き取れなれなかった。ただ日の光みたいな笑顔がちょっとだけ苦笑となって曇っているのは見て取れた。
おじいさんはそんなコンパを数秒見つめて、初めてその顔に笑顔を浮かべた。
「古いロックロールが聴いてみたくなったらウチの店へおいで。もっとも、直るのはいつになるのか分からないがね。忘れた頃にフラっと寄ってくれるぐらいが丁度いいさ」
「はいです」
「わかりました」
「……それとお嬢ちゃん。“コイツ”を助けてくれてありがとう。……じゃあな」
ゆっくりと背中を向けて歩きだし、トラックに乗ると窓から手の甲をヒラヒラと見せて、おじいさんとジュークボックスは去って行った。
「……きっとあのおじいさんも昔、恋人さんと踊ったですね……」
残された僕らはしばらくトラックの荷台に乗る“過去の宝”を見送り、誰にでもなくコンパがポツリとそう言った。
「―――よし。それじゃあ僕らも帰ろうか。そろそろネプテューヌたちも戻ってくるだろうし」
「そうですね。生ものとか牛乳あるから急がないとです!」
クルリと二人で回れ右。喚び出した召喚獣も『アウト』とつぶやき消して、手にしする買い物袋をしっかり握って帰路を目指す。
と、その前に突然コンパが何かを思い出したように『あ、』と立ち止まる。
「? どうしたのコンパ?」
「あ、いえ。まだアッキーにお礼まだだったです」
「お礼?」
「はいです。ありがとうです、アッキー」
はて? コンパにお礼を言われるようなことを僕はしたっけかな?
「なんかしたっけ、僕?」
「さっき召喚獣さんで助けてくれたです」
召喚獣で助けた? もしかしてそれって、あのジュークボックスのことだろうか? だとしたら別にコンパが僕にお礼を言うのは変なきがする。元々助けでたのはコンパの方だ。おじいさんにも言った通り、僕はその手伝いをしたにすぎない。
そうコンパに伝えてみると、
「でも、アッキーは助けてくれたです。だから、ありがとうです!」
今日三度目のお日様の笑顔がはじける。う、ううむ……何度見てもすさまじい威力だ……。直視がつらいッ……。
無防備な、それでいて純真な女の子の笑顔に流されて、とりあえずコンパのお礼は素直に受け取って置くことになってしまった。というか今のコンパと目を合わせるのがすごく恥ずくて、そうするしか僕には道はなかった。
にしてもここまでの無防備さ……。なんかもう僕って男として見られてない気がする……。
「あの時も、今日も、カッコよかったですよ」
スカートを手渡されたときが分岐点だったのかなぁ……。あそこで断っていればまだ可能性は残ってたかもしれない……と信じてみても時すでに遅しか……って、
「え? コンパ今、なんて―――」
「ねぷちゃんストライーーーーク!!」
突然の背中への衝撃!
「アバラがッ!?」
「えっ? きゃあ!」
いきなり襲ってきた物体に耐え切れず、コンパ共々盛大に倒れ込む。というかアバラが!? アバラが大変な深刻的ダメージが!!? この気配……! 間違いない! てか声でまるわかりだ!
「―――ネプテューヌ! いきなりなにするの!」
「いやー。アッキーの姿が見えたからつい。どうだった、ねぷちゃんストライク? こんな可愛い子に押し倒されて、アッキー的にはドキドキしちゃった? ドキドキしすぎちゃった!?」
「今まさに骨が大変なことになりかけてドキドキしてるよ! 僕怪我人だからね!?」
「あ、ところでコンパは?」
無視ッ!? 全面的に無視された!? 突っ込んで来たのそっち側なのに!
相変わらずゴーイングマイウェイというか、ハイテンションの化身というか、いつもいつも彼女には度肝を抜かれる(物理的にも)。
けど、コンパの無事も気になるのは事実なため、そこはネプテューヌに同意。さっきの玉突き事故にコンパも巻き込まれてしまったのだし、怪我でもしていたら大変だ。すぐに近くで転んでいるであろうコンパを捜索―――しようとして、ふと、両手に違和感を感じた。
何か、とてつもなく柔らかい感触がする。しかも柔らかいだけじゃない。少しだけ弾力があって、包み込まれるような気持ち良さが指の先から掌にまで伝わってる。
なんだろうと思いつつ、自分の手元に視線を落としていく。すると、結果的にコンパを発見することができた。どうやら僕の下敷きになっていたようで、痛みの所為か目じりに涙を溜めこんでいる。でも幸いしたことに、それ以外の怪我は見当たらず、尻餅をついただけのよう。
そして、僕の両手の違和感の正体も同時にわかった。わかって、しまった。
「あ、ひゃ……! やっ……!」
状況を呑みこみだしたコンパの顔がどんどん真っ赤に変わる。背中に乗るネプテューヌは、『あちゃー……やっちまった』という溜息を付く。
二人の反応は至極納得するものだ。なぜなら僕の両手は今、コンパのたわわに実る二つの果実の上に、ピッタリと乗っていたのだから。
「きゃっ、きゃああああーーーーーーーーー!」
絹を裂くような乙女の声が街中に響き渡り、辺りは騒然。数分後、そこには凄惨な状況が生まれていた。
「えー……公然のわいせつをしたらしき少年確保。これより連行します」
「……じゃ、詳しい話は署で聞こうか」
「ちがっ、違うんです! 僕は無実です! あれは事故なんです! 不可抗力なんです! 僕の目を見てください! この澄んだ犯罪を忌み嫌う正義の瞳を!」
「ふむ……確かに濁りのない目をしているね。まるでバカ正直さを表したようなカラッポのような眼だ……」
「でしょう! ていうか誰がバカ正直ですか!?」
「わかったわかった。―――ところで君は、この前ボロボロのスカートを穿いて街中を歩いていた人物と似ているが、気のせいかな?」
「あ、それ僕です」
「連行」
「なぜだッ!? ちょっ、まっ!? 待ってください! 話を……! 僕の話を聞いてッ……! こっ、コンパ! ネプテューヌ! 助けて! あれは悲劇の事故だとッ! 僕は無罪だと! ちょっ! 待って待って!! お願いだから! 逮捕だけは……! 逮捕だけはどうかご勘弁を! 僕は……! 僕は……僕はちゃんと衝動を抑えていたんだーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
その日、わかったことが三つあった。
一つ目は、コンパはやっぱりいい子であり、時々強情だけどそれは人を助けたいがための彼女なりの信念の現れであって、とっても素敵なお人好しバカだということ。
二つ目は、そんなコンパに男として見られていないと思ったけど、そんなことはなかってこと。
そして三つ目は、僕の逮捕数が今回で六回目だということだった。
▼明久とコンパのリリィランク(笑)が1上がった!
▼明久のアバラが1本減った!
▼明久の黒歴史にさらなる悲しみの1ページが刻まれた!
つまりまとめるとこう言うことです。よかったね明久。コンパと仲良くなれて。そのまま牢屋にぶち込まれて死んでしまえばいいよ。
てなわけで、改めて投稿が遅くなってしまって申し訳ありませんでした。読んでくださってくれる方を待たせてしまって、本当に情けないばかりです。これからはもっと精進致します。もう一度改めまして、投稿遅くなりすいませんでした<m(__)m>。
今回に関しては、誤字脱字および、ここの文章がおかしいなど、ここをこうした方がいいなど注意点がありましたら、遠慮くなくご指摘して頂ければ今後の勉強になります。よろしくお願いします。
次回の投稿は未定になります。でも、今年中にラステイション編まで行きたいので、気が向いたときにチェックしてくれれば丁度いいかと思います。
それではまた次回に。