トリニティはトリニティでも、違う作品ですよねコレ? 作:ペルフェクティ
鏡に映った自分の姿に思わず悲鳴を上げそうになって、
さっきのドローンのような警備システムに気づかれると不味いと、咄嗟に押し殺す事が出来た。
落ち着け、落ち着けと、小さく自分に言い聞かせ、息が整うのと同時に、もう一度鏡を見る。
「……?」
鏡に映る自分の姿に、既視感を覚える。
…俺はこの見た目をどこかで…?
そんなことを考えた瞬間、脳裏にある言葉が浮かぶ。
「…『ハヤト』?」
ハヤト――――それは記憶にあった『クライマキナ』というアクションRPGに出てくる
キャラクターの名前、最初に見た時は、男のような名前だなぁと思ったこともあったか。
「!もしかして…」
ハッとして、鏡に映る自分を見ると、頭上には薄く光る天使の輪のようなものが浮かんでおり、
本来耳のあるべき位置には金色のヘッドホンのような機械が備わり、
両目の下にはうっすら発光するラインが付いている。
袖をめくって腕を見れば、肘の部分が機械のジョイントのような関節となっており、
足も同じく関節部分がそうなっている。
「あー…だから、か」
そりゃあ、機械の身体なんだから銃撃を受けても傷つかないよなぁと、
しかし、なんでハヤトに成ってるんだ?と考え――――
「……あ、れ?」
…自分の事が、殆ど思い出せないことに気が付いた。
「いやいやいや、俺は元々男で…男、で…?」
かろうじて引き出せたのは、自分が元々は小太りの冴えない男性と言う事だけ、
クライマキナの事に関しても、ハヤトというキャラクターと背負ってる剣の名前くらいしか思い出せない。
それ以外はまるで
「嘘、だろ…!?」
この短時間?でどれだけ驚愕と困惑を繰り返すのか。
ざわつく思考と精神を落ち着かせる事が出来ず、息が上がる。
それは次第に、恐怖へと変わり、蝕み始める。
――――自分は一体?
「う、うわああああああ!」
怖くなって、訳も分からず走り出す。
警備に見つかるかもしれないと、抑えてた声を上げて、
ただ、恐怖を振り払いために、走る。
そんな、彼の姿を、一台の監視カメラが写してるとは知らず。
『あら、これは面白そうな…ふふっ』
…
「ゼー、ハー、コヒュー…あ”ー!」
肩で息をする程に走って、走って、口の中で鉄のような味がし始めるくらいに疲れて立ち止まる。
頭を上げ、吐きそうになりながら、僅かに薄らいだ恐怖をどうにか頭から追い出そうとする。
「…駄目だ、夢だって思いたいのに、痛みと疲れでこれが夢じゃないってわかってしまう…」
夢であればどれだけ良かったか、自分が自分じゃないこの感覚が恐怖でしかない。
どうして自分はこの身体になっているのだろうか?
どうして自分の事を、なにも思い出せないのか?
どうしてこんなところに居るんだろうか?
どうして、どうして、どうして。
恐怖と疑問が脳を埋め尽くし……
「あ…」
キャパオーバーで、俺は意識を手放した。
…
『よいしょ…むーん…。部長の指示とは言え、人ひとり運ぶのはやっぱり…暑い…』