クリアするまで出られないホラゲーに、なぜかVチューバーがいる件について 作:プロトタイプ・ゼロ
「しゃおらぁ!!」
涎を垂らして噛みついてくるピエロを蹴り飛ばし、背後から襲ってくるピエロは振り向きざまに刀で斬り刻む。そのまま壁を蹴って空中で回転しながら刀を振り回しピエロ達を倒していく。
「……終わりが見えねぇ」
仮面越しにため息を吐き、まだまだ出てくるピエロ達を睨みつける。腰を落とし刀の切っ先を相手に向け、その峰に軽く右手を添える。
これは牙突。
ジャンプ漫画の作品「るろうに剣心」に登場する新選組三番隊組長斎藤一が得意とし最も信頼する必殺技。一撃の威力がバカ高いが一直線に突進するこの技。下手すれば痛い反撃を食らうかもしれないが狭い空間で使用するにはうってつけだ。
「……すぅ、はぁ」
深呼吸し息を整える。真っ直ぐ前だけを見据え、後ろは気配だけで感じ取る。明真から殺気が溢れ足で床を蹴り、風となってうじゃうじゃといるピエロを突き刺していく。
数メートル進みふと後ろを振り返れば、切断された先から再生していくピエロの姿が見える。明真が今まで相手にしていたピエロはすべてドロドロと溶けたりしていたのに対して、今そこにいるピエロだけは再生している。
「へぇ」
狐面の複眼が赤く光った。
「この部屋……今までとなんか違う」
何度も見つかりロッカーに引き籠もりながらも5階の最奥に何故か着いたいろは。大泣きしながら走り回っていただけなのに確実にストーリーを遂行している。
扉を開けようとドアノブを握ろうとするが
「あれ? ドアノブがないでござるよ……?」
スカッと手はなにも握ることなく終わった。
「えっ、これどうやって開けるの……???」
見ればおそらくドアノブがあっただろう場所は綺麗に斬り落とされており、床にはボロボロになったなにかと千切れた鎖付きの錠前が落ちている。
そっとドアを押してみればギギィと錆びついた音が響き、いろはの肩が跳ね上がる。
扉の奥を進んでいくと何故か床の音がギシギシと鳴り始める。進むまでは綺麗だった茶色は錆びついたように霞んでおり、素材が古いためか少しの足の重さで凹んだりする。よく見れば真っ白だった壁や丈夫なはずの扉さえもボロボロであり、まるで旅館から幽霊屋敷に迷い込んだのではと錯覚するレベルで雰囲気が一変した。
「怖くて進みたくないけど、ここから出るためには進むしかないでござる」
誰かが聞いているわけでもないのに独り言を呟く。だって怖いから。
「道がない……あ、扉だ」
まっすぐ進んだ先には一つの扉があり、これまたドアノブも何も無い形状である。違いがあるとすれば、ドアノブが斬り落とされているわけではないということだ。
「こっちには階段がある……行ったほうが、いいのかな」
普段の言葉遣いさえ出てこなくなるほど不安で押し潰されそうになる。勇気を持って階段を登ろうとした、その瞬間
「ぎ、ぎぎぎ……ぎひぃ!! あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
半分ほど欠けたピエロの仮面を被った長身の男がナイフをクルクルと遊ばせながら降りてきた。それも不気味な笑い声をあげて。
男の肌は少しドロドロに溶けかけており、歩くたびに服やズボンから零れている水のような液体が音をびちゃびちゃと響かせる。
いろはの姿を目線に入れると指で回転させていたナイフを握りしめ、
「い、嫌な予感が、追いかけてきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
まっすぐ一直線に走り出した。当然いろはは回れ右して逃げ出した。
「いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 追いかけてこないでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「あひゃあひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
必死になって追いつかれないように全力で走る。たった数分ではあるが、古びたエリアから出るための扉を見つける。だがなぜか閉まりかけている。
「なんでぇ!?」
そして無情にも扉はがちゃんと音を立てて閉まってしまった。
ドンドンと叩きつけてもうんともすんとも言わない。振り返ればピエロの仮面を被った男がニタニタと笑いながらゆっくりと歩いてきた。獲物がもう逃げられないことを知ったからだろう。
「いや……いや!! 来ないで!!」
扉に背を預け座り込む。体が震え、涙が止まらない。
「ひひひ、あひゃひゃ!」
とうとうピエロの仮面を被った男――殺人鬼はいろはの目の前で足を止めると確実に命を奪おうとナイフを振り上げる。
「うおぉらぁ!!」
だがそれは突然開かない扉をぶっ壊して現れた狐面の少年によって妨害された。狐面の少年こと明真が飛び込んだ体勢で殺人鬼を蹴り飛ばし、そのままいろはをお姫様の扱うように抱きかかえると走り出した。ぶっ壊した扉の方へ。
「ほえぇ!?」
あまりのことに混乱して状況が追いつけない。だが助かったことだけは理解できた。
「……遅くなった」
仮面の奥から聞こえる少年らしい少し低めの声音に、なぜか安心感を抱く。そして、この少年明真こそがノートに書かれていた存在だと気づいた。
「しっかり捕まってて。危ないから」
思わず首に腕を回し、それにより顔が近くなったことに心臓の鼓動が早くなる。顔が熱いのが自分でもわかるほど、真っ赤になっているだろう。
明真は走るのに集中しているため全く気づいてすらいないが。
どうだったでしょうか?良ければ感想などくれると嬉しいです。