クリアするまで出られないホラゲーに、なぜかVチューバーがいる件について 作:プロトタイプ・ゼロ
「……ここまでくればいいか?」
殺人鬼から風真いろはを助け逃げ出した俺は、最上階にある『特別な部屋』に入った。ここはこのゲーム世界唯一の休憩スポットであり、バグによって生み出されたイレギュラーだ。
なぜこの部屋のことを知っているのかはわからない。急に知識が頭に浮かんできたからな。本来なら、バグを除いた正規のゲーム知識のみが情報として俺の頭に入るはずだ。俺がホラゲーのサポートキャラという役割がある以上は知識無しで動けないからな。
まぁ、今回みたいに異常が起きてる場合は使いもんにならないときが多いし、裏技なんて当然知識としては認められてないらしいから使えない。
問題なのは異常なほど再生する殺人鬼やそのクローン体。どんだけ殺しても斬り裂いた矢先に再生されたら切りがねぇ。
俺だって無敵じゃねぇんだ。疲れて動けない隙を疲れて殺される場合がある。まぁ、死ぬことはないけどよ。呪いの効果だから。
(どうしたものか)
「あ。あのぉ……」
「……なんだ?」
「そろそろ、降ろして欲しいでござる……」
そういやいろはをお姫様抱っこしたままだったな。高校生くらいの年齢だろうし、やはり恥ずかしかったか?
駄目だな、いかんせん……他人と関わる機会が少ないせいもあって距離感がわからない。元々コミュニケーション能力ないけど。
「悪かったな」
一言だけ伝えていろはをベッドに降ろす。何故か顔を真っ赤にしてワタワタしているがどうしたのだろう?
「ここはどこなんでござるか?」
「休憩用の部屋だ」
なんとなく思っていたが、この子は侍の血筋なのだろうか? そもそも俺はそこまでホロライブについて詳しいわけじゃない。俺の友人はホロライブの箱推しらしいがな。俺はメンバーの名前と顔くらいしか情報持ってないんだよな。たまに動画とかで流れてくるのを少し見る程度かな。
「あ、風真は風真いろはというでござる!」
「……」
ヤバい。なんて答えよう。本名名乗るわけにはいかねぇし。だからといって黙ったままでいるのもなぁ。どうしようか……あ、いい名前あったわ。
「……ギーツだ」
「ギーツ? なんだか仮面ライダーみたいな名前でござるな!」
チラッと見ただけだけどな。特撮番組で日曜日に放送している番組に、狐をモチーフとした仮面ライダーがいた。取り敢えずこれからはこの名前を借りて活動しよう。
「それでこれからどうするでござるか?」
「この世界を出るためのキーアイテムを探しに行く」
「キーアイテム?」
コテンと首を傾げ聞いてくるいろは。やめろよその仕草。可愛すぎて悶えそう。
「俺もどこにあるのかまではわからない。というか忘れた……だから探しに行く」
「なるほど!」
「安心してくれ。君は俺が必ず守る」
「ふぇ!?」
ん? なぜそんなに顔を赤くする? 熱があるようには見えないが念の為確認するか。
「わわっ!?」
いろはのおでこに手を乗せ熱くないのを確認する。
「ん……顔が赤いから熱の可能性もあると見たが、そうでもなしか」
「こ、この人無自覚女たらしでござる……」
なんか酷いこと言われてるような気がするが、声そのものは小さかったこともあってうまく聞き取れなかった。
まぁ、そこまで気にしなくてもいいだろう。今は彼女を無事に現実世界に帰すほうが優先事項だし。
「そ、そう言えばキーアイテムってどんな見た目なのでござるか?」
「……見た目、か。ちょっと古臭いおもちゃの鍵と、子供が描いたなにかの絵だよ」
「2つも……」
今までとそう変わらない。ゲームクリア条件が多いなんて。ただ、最近のゲームはボス系はいてもラスボスがいない。不思議には思っていた。
まぁ、考えたからと言ってわかるものじゃないが。
「こんな不気味な世界にはいたくないだろ? 早く出るためにも探しに行こう」
そう言って扉に向かう。外に出る前にいろはの方に向き、
「なんなら、俺が探しに行ってきてやる。この世界が……奴らが怖いなら、ここにいていい」
俺のやるべきことは「プレイヤーの生存」と「プレイヤーのゲームクリア」。その2つさえ達成できれば一時的に現実世界に戻れる。故に俺はプレイヤーを守らなければいけない。しかし問題点としてプレイヤーの心も守らないといけないことだ。最近ホラーゲームに捕らわれる人は多くなってきた。
ホロライブだけじゃない、ただの一般人でさえもホラーゲームにプレイヤーとしてやってくる。俺はいつもどおり守るだけだ。だけど守れない命や心だってあった。
心が壊された人は現実世界でも壊れてしまうし、死んでしまえばゲームオーバーだ。その時のみ俺の不死身設定が解除され、俺を殺すためにその世界のラスボスが現れる。
俺も俺で死にたくない。だが一番の優先順位はあくまでも「プレイヤーの命」だ。特殊な条件以外で死なない俺の命なんぞ軽いものだ。
「か、風真も行くでござる!」
だから、本当なら彼女にはこの部屋に残ってほしかった。死んでしまったらなんのために助けに来たのかわからなくなるし、あの時だって扉を蹴り破ったのもかなりギリギリだった。
しかも逃げ出した殺人鬼を探して時間を食ったし。いやだってさ、まさかある程度殺し続けたら突然殺人鬼が瞬間移動するなんて思わないじゃん。
「……なら、できるだけ近くにいてくれ。死なれると困る」
「死ぬ……?」
「知らないのか……? この世界は確かにホラーゲームだ。だが遊びじゃなく一つの現実世界でもある。この世界での死は、現実世界での死と同じ意味なんだよ」
真実を語れば顔を真っ青にして後退る。そうだ、それでいい。俺に全部任してくれれば、あとは君を現実世界に送るだけになるんだ。
「わかったなら……ここに「それでも付いて行くでござる!」……正気か?」
思わず問いかけた言葉に、彼女は力強く頷いた。顔はまだ青い。死ぬのだって怖いだろう。それなのになぜ……いや今はいい。
「わかった……」
結局根負けしたのは俺だった。過去にも無謀にも着いてきた奴はいたし、俺の言葉を無視して勝手なことをしてくれたプレイヤーはいた。そいつ等は……俺の目の前で死んだ。時間が足りなかった。何もかも。
だから、絶対に死なせない。
最上階の『特別な部屋』から出て数分。目的のキーアイテムは割と簡単に見つかった。というか向こうからやってきた。
なんとまさかで、キーアイテムはそれぞれの怪物が持っていた。おもちゃの鍵は殺人鬼が、子供が描いたなにかの絵は時雨が。
最初時雨の姿を見た時は驚きで言葉が出なかった。だって背中を床に向けた四つん這いの状態で顔だけは普通に向いてるなんて誰が思うかよ。しかもホラーゲームの怪物のくせに肉付きはそれなりにいいのがなんか気に食わなかった。
見た瞬間蹴り飛ばした俺は悪くない。後ろでいろはが苦笑いしてたが。え、殺人鬼はどうしたのかって? 簡単だよ。殺人鬼の再生スピードが追いつかない速さで斬り刻んでおもちゃの鍵を盗んできた。そしたらめちゃくちゃ怒り狂って追いかけてきたから、偶然近くにいた時雨を踏み台にして逃げましたがなにか? ちなみに時雨は理由のわからない表情をしたまま殺人鬼に滅多刺しにされてた。何も同情はしません。
そんなこんなで最初の入口についたわけなんだが……
「マジか……」
「そ、そんなことって」
出口となるはずの扉が消滅していた。もしや場所を間違えたかと脳内マップを久しぶりに開き確認してみるも、ホラーゲームの出口となる場所がわからなかった。
「…………どうしたものか」
「こ、これじゃあ出られないってこと!?」
「そうだな……流石に想定外だよ。バグで出口が消滅するなんて」
だがしかし、必ずどこかに出口はあるはずだ。そうじゃなきゃゲームとしてはクソもいいところだし。忠実にこの世界が再現されているならば……
「裏口しかないな」
「裏口……でござるか?」
「あぁ、裏口だ」
ホラーゲーム「灰村」には2つのエンディングがある。1つ目はキーアイテムを見つけて正面から出口を出ること。
2つ目は裏口へ行きその外にある庭から逃げることだ。
もしもバグの影響で裏口が消滅していれば完全に詰みになるが、僅かでも可能性があるかもしれない。
「裏口のルートは覚えている。向かうぞ」
「りょ、了解!」
そうしてついた裏口。
場所は最上階にある隠し扉からエレベーターを使って降りる先にある。だが俺はエレベーターを使っていない。じゃあどうやって降りたのか? 簡単だよ。飛び降りたんだ。だってエレベーター使えないし。これもバグの影響なのかはわからなかったが、エレベーターが稼働していなかった。そのため渋々刀でエレベーターの床を斬り裂き、いろはを抱きかかえて飛び降りたのだ。その際いろはが俺の鼓膜が破れるんじゃないかって思うほどの悲鳴をあげていないが。
「も、もうちょっとマシな降り方はなかったでござるか!? ってか、本当にエレベーター以外に移動方法はないのでござるか!?」
「ないな」
「そんなぁ……」
じゃなかったらわざわざ最上階にまで来てねぇよ。エレベーターだって斬ってねぇよ。面倒だもの。
「此処から先を進めば君は元の世界へ戻れるはずだ」
「ギーツさんは……」
「俺の心配はいらない。次のゲームへ行くだけだ」
そうだ。俺が休めるのなんてほんの数分だけ。なぜならホラーゲームに捕らわれる人はたくさんいるから。そのすべてを守り助けることはできないが、せめて手の届く範囲は助けたい。
いろはは複雑な表情を浮かべたまま、それでも俺にペコリと頭を下げると庭に向かって走り出した。そしてしばらくすれば彼女の姿がぼんやりと薄れてこのゲームから退出したのがわかった。
「これでまた……さて」
後ろを振り返り胴体と切り離された時雨の長い髪を掴んで引き摺ってきた殺人鬼の姿を確認し、腰の鞘から刀を抜き放つ。
「悪いがお前をこの先に行かせるわけにはいかないんだよ。お前らはホラーゲームの怪物だ。現実世界にはいらないし、存在してはいけない」
現実世界で怖い話の元となる怪物がいる。アレはホラーゲームから出てきた怪物だ。だからこそ……
「俺が止める」
ホラーゲームに呪われた俺のやるべきことなんだ。
どうだったでしょうか?
良ければ感想などをくれると嬉しいです。
それでは皆様、また次回
ヒロインにするなら?
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