自身の初戦を勝利で飾り片手を上げてピースをしつつ会場を後にする鈴仙。
鈴仙のウサミミもブンブンと千切れんばかりに回転しており『やったやったぁ』という気持ちが溢れていた。
そうして、他の試合も観戦しつつクラスメイト達と試合運びや個性の扱い方、それぞれを俯瞰した位置から学んで……そうして鈴仙の出番が回ってくる。
次なる対戦相手は拳藤一佳であった。
控え室に行って時間ギリギリまで瞑想をして精神統一を行い極限まで雑念を削ぎ落とす。
そうして……鈴仙はフィールドへと移動する。
割れるような大歓声が響き鈴仙のウサミミはビクゥッと撥ねる。
相変わらず鈴仙のウサミミは口よりもモノを言う。
ウサミミを見れば大体の鈴仙の調子を推し量ることが出来るのは今やクラスメイト所かB組も周知されていた。
気恥ずかしさからウサミミがピンッと張り詰めておりよくよく見れば純白のウサミミはほんの僅かに赤く染まっていた。
対するは入学試験の時に知り合った友人、拳藤一佳である。
その個性は両拳を巨大化させる『大拳』であり拳藤一佳も鈴仙同様に近接格闘術を収めている為に近接戦闘、と言うよりは一撃の威力や範囲、重さでは拳藤一佳に軍配が上がる為にやや分が悪い。
しかし、拳藤一佳から見れば近接格闘術を収めて尚且つ指先からレーザーを放ったりおおよそ汎用性の塊である個性、ほぼ全ての事が一定以上の水準で出来る鈴仙も大概だろと思っているらしく、実際鈴仙がその眼を通して見ると如実にその様な波長が見て取れる。
実況のプレゼントマイクが開始宣言をする前に互いに語り合う。
鈴仙は笑顔を浮かべて、一切の油断なく告げる。
「一佳、思えば貴女と私、一緒にトレーニングしたり休日に模擬戦をした事はあったけど本気で戦った事はなかったね……今日、今ここで白黒付けよう、どっちが強いのかを、本気で行きます」
それを伝えた後に独特の構えを取り臨戦態勢を取る鈴仙。
それに応えるかの様に拳藤一佳も
「そうだね、私と鈴仙……どちらが強いのかを決めよう……手加減抜きで本気で行くよ」
どちらも近接格闘戦に置いては一家言ある為にトレーニングや模擬戦の度に互いに互いの短所や欠点、弱点などを語り合い切磋琢磨を続けてきた。
そして、今この瞬間は……互いに鍛え上げた近接格闘術と個性をぶつけ合える瞬間故に……開始の合図が始まるのが待ち遠しい、鈴仙も拳藤一佳も心臓が早鐘の様に打ち鳴らすのを感じ、始まりの合図が為される僅か5秒ほどが鈴仙と拳藤一佳からしてみれば永遠にも感じられる長さであった。
両者共に極限まで意識を研ぎ澄まして眼前の相手のみに集中する。
そうしてプレゼントマイクによるスタートの合図が為された。
合図と同時に拳藤一佳が5mはある距離を1歩で潰して鈴仙の懐へと潜り込む。
そして鈴仙の鳩尾に掌底を打ち込むが打撃の直前に半歩後ろに下がった鈴仙。
半歩下がった事により威力が上手く伝わりきらず伸び切った腕を掴まれて引っ張られ体勢を崩される。
そうして崩れた体勢を立て直そうとした拳藤一佳であるが鈴仙の鋭いサマーソルトキックが繰り出されたのを察知してギリギリのところで避ける。
こと近接格闘戦に置いては一家言ある2人の戦い。
それを解説の相澤先生が観客達にも分かりやすい様にマイクを取って語る。
『両者共に近接格闘戦に置いては一家言あるからな……拳藤一佳は見た所中国武術や空手、柔術よりで、鈴仙は軍隊式格闘術と言った所か、練度は互いにほぼ互角……『個性』の使い方次第で勝敗を分けるだろう、2人が行ってきた鍛錬と絶え間ない反復練習もその一要因になるだろうがな』
『おおぉー‼︎ 拳藤一佳もサマーソルトキックをギリギリで回避して逆に鈴仙に対して背負い投げを行った‼︎ あぁ!? 鈴仙が地面に叩きつけられる前に体勢を立て直して両足で着地して拳藤一佳の襟首を掴んで……寝技へと派生させたァ!?』
鈴仙が寝技へと持ち込み拳藤一佳の頸動脈洞を締めに掛かるが近接格闘戦に置いては一家言ある拳藤一佳。
そんなものはお見通しとばかりに自身の首を今まさに締め落とそうとしている鈴仙に対して身体の柔軟性を生かして脚を動かして巴投げの要領で脚を伸ばして鈴仙の顔面に蹴りを入れる。
顔面に蹴りを入れられた事で一瞬だけ呼吸が止まり悶える鈴仙。
それを好機と捉えて拳藤一佳は鈴仙の懐へと入り込んで今度こそ自身の個性で鈴仙の意識を刈り取る為に鳩尾へと自身の個性で巨大化させた『拳』を叩き込む。
だがしかし、叩き込んだ拳は鳩尾に吸い込まれる寸前にガキィンッとまるで金属で出来た壁を殴った様な鈍い音が響き渡る。
鈴仙の鳩尾と拳藤一佳の拳の間には見えない透明な壁が創られたのだと拳藤一佳は即座に理解して次の打撃を叩き込もうとしたが鈴仙は壁を蹴って跳躍し3次元立体機動で動きを悟らさずに撹乱してくる。
あまりの速さに追いつかずに一瞬、背後を取られて脚を蹴られてよろめいてしまった拳藤一佳。
即座に体勢を整えて立て直しつつ振り返って打撃を叩き込むもギリギリの所で、まさに紙一重で躱されて遅かった。
「チェック……メイトです‼︎ 一佳‼︎」
そう叫ぶ鈴仙。
頸動脈洞を裸締めで完璧に極められ、もがき続ける拳藤一佳であるが数秒もすればストンッと眠る様に気絶する。
それを確認したミッドナイト先生により勝ち名乗りを受けた鈴仙。
勝ち名乗りを受けている最中に拳藤一佳が意識を取り戻し、自身が気絶したのを理解して一筋の涙を流しながら呟く。
「……負け……か」
ゴシゴシと涙を拭い去って拳藤一佳はフィールドを後にしようとしている鈴仙へと、友人へと告げる。
「鈴仙‼︎ 次は勝つ‼︎ 絶対に‼︎」
その言葉を聞いた鈴仙は拳藤一佳の方へと振り返って叫ぶ。
「えぇ‼︎ 楽しみにしてる‼︎」