「クリエティ‼︎ 力押しではもはや止められない……麻酔薬で強制的に眠らせる、ヒーローに麻酔を手渡してすぐに退避を……プロヒーロー・ミッドナイトに与えられた権限によりクリエティ……貴女の判断の全ての責務を私が請け負います‼︎」
通信機越しに教え子にそう叫ぶミッドナイト……ギガントマキアが動き出した。
それは即ち蛇腔側が失敗したと言う事、八意先輩が割り出した死柄木弔の蘇生リミット、それが何らかの手で2ヶ月は速く強制起動された。
その事実に歯噛みしながら、連合がギガントマキアの背中にいた事に気付けなかった為、攻撃に被弾して15mの高さから地面に叩きつけられた痛みを堪えながら……背後から迫り来る
しかし、落下の衝撃と
荒い息を何とか整えながら指示は出した。
……八意先輩は今は蛇腔の方で死柄木弔の対策に当たっている、蛇腔から此処までは80km程。
この通信は八意先輩にも届いているのだろう、この作戦の前に配備された通信機器は八意先輩が作成した特殊な物だ。
如何に距離が離れていようともノイズが混じる事なく、電波対策が為されている為にEMPの被害を受ける事もない。
通信機器から流れる八意先輩の焦った様な声音が聞こえてくるが如何に稀代の天才と賛美されている八意先輩といえども決して自由に出来ないのが時間だ……到底間に合わない、
凶刃が自身の首目掛けて振り下ろされるのを急に遅くなった感覚のまま……ミッドナイトは未練があったと思い返す。
あの子達と……雄英の卒業式を出来なくなるのと、壊理ちゃんとの約束が果たせなくなってしまう、七五三にミッドナイトが子供の頃の和服を着せてあげると約束しており……実家から送ってもらったのだった、珍しい林檎の柄の和服……それを着た壊理ちゃんの姿を見れないのが最大の心残りと言えよう。
あと2秒程で自身の首に到達する凶刃。
そして、散り行くであろう自身の命……その恐怖にギュッと眼を瞑り現実を背けるがいつまで経っても衝撃は襲ってこない。
恐る恐る眼を開けるミッドナイト。
「よかった……間に合った、通信を傍受して、まさかと思いましたが……此処まで危険な状況だとは、後はお任せください、香山先生」
ミッドナイトが眼を開けると、其処にいたのはタルタロスに収監されている筈の……鈴仙であった。
しかし……彼女のヒーロー仮免許は現在剥奪されている、にも関わらず個性を行使するならばそれは重大な法律違反となる。
それは1番、他ならぬ鈴仙が理解していよう。
しかし、そんな事はどうでも良いと言わんばかりの屈託のない笑顔をミッドナイトに向けて鈴仙は語る。
「あぁ、心配なくミッドナイト先生、退学届はお師匠様を通して根津校長に渡してあります……多分受理されているでしょうから、みんなに迷惑を掛ける事はありません、何せ私は今……タルタロスの脱獄囚で、個性不法行使の
そう告げながら鈴仙は容赦なくミッドナイトの周囲に居る
全員を気絶させると鈴仙はミッドナイトの怪我を見て即座に判断し胸ポケットから医療用の鎮痛剤を取り出してミッドナイトの太ももに注射する。
そして、止血帯で両脚の付け根をギュウッときつく縛り上げると波長で作った壁を担架代わりにして仮設救急救命所へと運ぶ鈴仙。
其処にいた医師に完璧な説明を行うと即座に反転しギガントマキアを追いかける。
ミッドナイトは鎮痛剤により遠のく意識を振り絞って……霞む声を振り絞って叫ぶ。
「むーんらびっと……わたしは……与えられた権限により貴女の行いを肯定する‼︎」
ミッドナイトがそう叫ぶと鈴仙は一瞬だけ立ち止まりサムズアップしながら泣き笑いの様な表情を見せると粒子に変換されて消えていった。
八百万は悔しかった……ミッドナイト先生のあの言葉の真意を理解できない程、八百万はバカじゃない。
拘束に最も長けた個性であるミッドナイト先生があの場で、あの状況下で自身に策を託したと言う事は……ミッドナイト先生は……。
しかし、泣くのも悔しがるのも今は全部後回しにしなければならない。
指示を出すのは司令塔たる自身の務め。
しかし、八百万は思ってしまう。
こんな時に鈴仙さんがいてくれたら……そう思わない時はない。
広域制圧も、広域殲滅も、作戦立案も、作戦の失敗した時の立て直しも……鈴仙の方が遥かに上手である。
だが……思い返せば授業が後期に入ってからと言うもの、鈴仙は作戦立案も、作戦の失敗した時の立て直しも自身では行わずに主に八百万に投げる事が多く……ほぼ全てを八百万が行っていた。
とある訓練で失敗を連続してクラスメイトを危険に晒した際の記憶が鮮明に蘇る八百万。
鈴仙から告げられた言葉を思い返す。
『訓練だからやり直しがきく……なんて甘っちょろい事考えてませんか? これが実戦なら仲間を見殺しにしていた所何です……良いですか? 司令官と言うのは部下の命を預かる存在です、司令官が指示を出さない事には部下は動けない……ましてや失敗の立て直しができない司令官は仲間を殺すだけです、失敗には必ず原因がある』
其処で一度言葉を区切り鈴仙は八百万の眼を見て語った。
『弱い者が負ける理由にはパターンがありますが……強い者が勝つ理由は千差万別なのです……だから強くなりなさい、八百万百……私よりも司令塔として盤石の務めを果たしなさい』
あの時言われた言葉は意味がわからなかった、しかし……今ならわかる。
心の何処かで拠り所にしていたのだ、自分も……鈴仙の事を。
そして……鈴仙さんは読んでいたのだろう、雄英に居られなくなるであろうと。
だからこそ司令塔としての振る舞いを八百万に教え込んだ。
それを思い返して……奮い立たせて指示を出す八百万。
指示を出すのは司令塔たる自身の役目故に。
「イヤホンジャック‼︎ テンタコル‼︎ 音と振動から対象の距離と此処までの到達時間を割り出してください‼︎ 目測でいいのでギガントマキアの大きさを‼︎ 皆さん動く準備を‼︎」
そう叫び準備に取り掛かる八百万。
2分で準備を終えるとギガントマキアが到着した。
先んじてマッドマンが地面を柔らかくした為に一気に腰まで沈み込むギガントマキア。
それを好機と見た皆はギガントマキアを拘束しに掛かるが単純に力も何もかもが足りない。
25mと言う体躯は怪獣映画に出てくる怪獣程度の大きさである。
足元の蟻が幾ら身体に群がろうとも人間は意にも介さないだろう、無意識で払い除けるだけで蟻の状態なんぞ気にも留めない。
ほんの少し身動ぐだけで拘束など解かれかけており柔化した地面からも抜け出ようもしていた。
そして……くしゃみ1つで前方30mの木々や罠が吹き飛ばされくしゃみに乗じて荼毘がばら撒いた蒼炎で山火事が起きる。
……もはや壊す獣……壊獣と定義しても良い程であった。
ギガントマキアは歩く災害、全てを壊す獣……壊獣であり、災害に立ち向かえどもそれを鎮圧など不可能ではないか……そんな思いが過ぎる。
柔化した地面に設置した爆弾を起爆してギガントマキアを更に深く埋没させるが既に拘束は95%が意味を成しておらず時間稼ぎにもならない。
麻酔薬を直接経口投与させる事で眠らせる案を取ったが……成功したのは50本生み出した内、切島さんと芦戸さんの2本のみ。
常人ならば確実に動きが止まる成分量なのだが今相手にしているギガントマキアには体躯から考えるに足りない。
しかし……。
コイツが街に降りれば未曾有の大災害となる。
それだけは断じて防がねばならない。
芦戸と切島が命懸けで投げ入れた麻酔薬を飲んだのは視認できた。
凡ゆる策を弄した、凡ゆる個性を行使した、マウントレディも必死にギガントマキアの脚を掴んで速度を落としているが僅か程度の誤差でしかない。
しかし……止められる算段が見当たらない。
絶望と虚無が八百万を包みそうになり……無意識で、無意識のうちに八百万はポツリと呟く。
「鈴仙さん……助けて……」
そう呟く八百万の耳元に……友人の声音が聞こえた。
「よく頑張った……後は任せて、クリエティ……」
その声に……八百万はハッと振り向くと冷徹な眼差しでギガントマキアを睨みつける鈴仙が其処には居た。
感想・ブクマ・特に評価。飢えております。 低評価をもらったら少し傷つきますが、傷も創作のプラスになることはある(私の場合です)。でも無評価=虚無は創作のマイナスにしかならないッス(私の場合です)! なので、無言で投げれるので、ぽちぽちっと☆を頂けると嬉しいです。多い分には困りませんよ‼︎
評価付与 お気に入り登録 感想
新作投稿しました、よければ拝読してください
https://syosetu.org/novel/356480/