ダビダンス
「鈴仙……さん?」
鈴仙は泣きそうになっている八百万さんの頭をポンポンと優しく撫でながら拘束からもう僅かで逃れようとしているギガントマキアを睨みつける。
そして……腕を八百万の頭から離してその手をギガントマキアへと向けて指鉄砲を形作ると銃弾を撃ち込む仕草を取る。
刹那……ギガントマキアの動きが止まり倒れ込む。
ギガントマキアが如何に巨躯といえど、ギガントマキアが如何に膨大な時間の戦闘に耐え得る幾重もの個性を有していようとも……人間の枠組みから外れていないならば……脊椎動物の範疇に収まるならば……脳から脊髄に指令を通して動いていると言う事。
つまり……神経伝達という電気信号のやり取りを行っていると言う事。
ならばそれを止めてしまえば良い。
「……取り敢えず、240時間は動けない様にしています、八百万さん、後はお任せします、私は蛇腔の方へ飛びますので……後はマジェスティックやプロヒーロー達に従ってください、……ミッドナイト先生はご無事です」
鈴仙の眼はしっかりと捉えていた、ギガントマキアの動きを停めるコンマ何秒かの一瞬で……ギガントマキアの背に乗っていた連合が蛇腔へと持って行かれた……最も、トガヒミコだけは別の場所に移動したが。
一呼吸置いてそう手短に伝えると鈴仙は自身を粒子に変換してワープして行った。
光の速度は光速c=2.99792458×10の8乗m/秒。
光は直線のみでしか移動できないが……粒子となっている自身は回折も行う事が出来る。
コンマ何秒かで既に蛇腔市全体が更地と化した……そんな状態の蛇腔市へと到達した鈴仙……。
建物も何もかもが消えてなくなっており被害は甚大……物的損害のみで人的損害が0なのが唯一の救いと言った所か。
其処では群訝山荘に向かう前に脳無のサイコキネシスで腕と脚を失う直前に救出した5体満足で暴れ回るミルコや崩壊に巻き込まれる寸前に救出したクラスト、エンデヴァー、リューキュウ、お師匠様、緑谷に爆豪、焦凍が死柄木弔を相手取り交戦状態に縺れ込んでおり被害も甚大。
後方ではロックロックとマニュアルさんが相澤先生の『抹消』が途切れない様にサポートに徹していた。
……俯瞰しているからこそ気づく事と言うものはある。
鈴仙が辿り着いたと同時……死柄木弔が誰にも見えない位置から相澤先生に向けて個性消失弾を撃ち込もうとしているのに……鈴仙だけが気づいた。
そして……凄まじい身体能力と膂力を用いてエンデヴァーやリューキュウ、ミルコの束縛から脱出し……相澤先生の両眼を抉ろうとしている事に。
苛立ちと怒りが鈴仙を包み……自身の肉体を粒子に変換し弾丸を回り込んで摘み取り相澤先生への着弾を阻止し今まさに相澤先生の顔面にその手を触れようとする死柄木弔の顔面に真横から膝蹴りを叩き込み50m程蹴り飛ばす。
粒子変換時、鈴仙の速度は光と同等の速度……故に、光の速度で膝蹴りを叩き込んだが一瞬だけ相澤先生の視界が切れた事により超回復が起動。
治癒が始まるが不完全に終わる。
鈴仙が波長操作で死柄木弔を気絶させようとするもマスターピースにする身体改造により波長操作が効きづらい身体となっている。
もう一度見られた事を理解した死柄木弔は相澤先生を殺そうとするが鈴仙が守護する。
その隙をついて爆豪がクラスターを、緑谷がワン・フォー・オール95%を、焦凍が赫灼熱拳を……同時に撃ち込むが効いていない。
正確に言うならば効いてはいる、効いてはいるのだが……死柄木弔の個性に拠らない改造体故の回復力の方が微弱ながら上回りつつある。
再度、死柄木弔が相澤先生を襲おうとするが鈴仙が構築した
鈴仙は動けなくなった死柄木弔の鳩尾を蹴り飛ばし……睨みつけて呟く。
「……やらせねぇよ、死柄木弔……緑谷、爆豪……焦凍、視野広く持ってろ馬鹿ども、1番失ったらダメなのは相澤先生なんだよ、頭冷やせ……」
そう呟いて……ルナティックガンを構えて前線へと押入る鈴仙。
「何でテメェがここに‼︎ タルタロスに幽閉されて居るはずだろうが‼︎」
光の速度で移動する鈴仙を捉え切れずに蹴りや拳打を喰らい吹き飛んだ瞬間に虹色の弾幕をその身に浴びて、身体に無数の穴を開けながらそう叫ぶ死柄木弔。
肉が不自然に盛り上がり回復しているが先程より遅い。
オール・フォー・ワンの個性を移植された故に絶対に触れられない様に気をつけつつ鈴仙はルナティックガンを撃ち込みながら波長操作を自身に適用して性格を好戦的な性格へと改変しながら叫ぶ。
「んなもん‼︎ 脱獄したからに決まってるだろうがボケぇ‼︎」
鈴仙は死柄木弔の顎に蹴りを入れて爆豪や焦凍、エンデヴァーの方向へと蹴り飛ばしつつ脳を揺らすが決定打に欠ける。
刹那……泥ワープによりスピナーやコンプレス、荼毘が蛇腔に現れた。
エンデヴァー以上の火力を有する荼毘の焔により回避を余儀なくされる面々。
最悪なのは……焔により視界が遮られた事。
鈴仙は舌打ちを1つ行うと個性行使が自由になった死柄木弔が地面に触れる前に手を打つ。
波長操作で壁を作り上げてこの場に居る全員を空中へと無理矢理に誘導する。
個性行使が自由になった死柄木弔は邪悪な笑みを浮かべており崩壊を起こされる前に擬似的な空中戦へと縺れ込ませたが状況はヒーロー側が圧倒的不利である。
「邪魔だ……羽虫どもが、
それを聞いた鈴仙はオール・フォー・ワンによる意識の侵喰が強まったと理解した。
刹那……
4体はミルコにより脳を潰された為に2度と動く事は無いがそれでも多い。
施設に残っていた脳無は全てテスト段階を終えており、また崩壊の波及を抑えた事により脳無は全て無事。
1体でも殺すのに苦労した
鈴仙を含めた全員が歯噛みした瞬間……スケプティックが操作したパソコンで流れる映像を波長で見て背筋が凍る鈴仙。
映像を遮断したい所だが今はそっちに波長操作を回す余裕などない。
トゥワイスが死柄木弔や脳無を増やし始めた、生み出した瞬間に鈴仙はレーザーで頭部を撃ち抜くが映像の処理までは文字通り手が回らない。
幸い……馬鹿げた耐久力は無いが無限の軍勢を生み出せるとあっては最悪。
そして……世間に流れる荼毘もとい燈矢の暴露映像。
荼毘が轟家長男、轟燈矢であると暴露、そして轟家の地獄の内情を世間に露呈させた。
極め付けはホークスがトゥワイスを殺害しようとしているワンシーンとヒーロー公安委員会とタルタロスの刑務官が行った鈴仙・優曇華院・イナバに対する人権を完全に無視した、冤罪と知りながら行ったタルタロスへの幽閉行為の暴露。
ヒーロー公安委員会とタルタロスの信頼は地の底まで堕ちた。
鈴仙が捕まって以降、表舞台に立たない鈴仙を、鈴仙のファン達は躍起になって探していた為に今回の映像の出回る速度が尋常じゃなく速い。
鈴仙の爆発的な人気が此処に来て最大の裏目となった瞬間であった。
それを知ってか知らずか荼毘は鈴仙が構築した宙に浮いた壁を足場にして嬉しそうに踊りながらた語る。
「俺は忘れなかった‼︎ 言われなくてもずううううっとオマエを見ていた……皆が皆清廉潔白であれとは言わない、お前だけだ……事前に録画していた俺の身の上話しとホークスの所業、そして鈴仙に行ったとんでもない冤罪が今全世界の電波とネットを走ってる‼︎ ははは‼︎ いけねぇや……何だか楽しくなってきた‼︎ どうしたらお前が苦しむのか、お前の人生を踏み躙れるのか
そこで一度言葉を区切りクルクルとダンスを踊りながら叫ぶ荼毘。
「九州では死んじまわねえか肝を冷やした‼︎ 『星のしもべ』や『エンディング』を誘導して次々にオマエに当てがった‼︎ 念願のNo.1はさぞや気分が重かったろ⁉︎ 世間からの賞賛に心が洗われただろう⁉︎ 子供達に向き合う時間は『家族の絆』を感じさせただろう⁉︎ 未来に目を向けていれば正しくあれると思っただろう⁉︎ 知らねぇようだから教えてやるよ‼︎ 過去は消えない……ザ‼︎ 自業自得だぜ‼︎ サァ一緒に堕ちよう轟炎司‼︎