記者会見
惨劇から1週間後の13時。
エンデヴァー、ベストジーニスト、ホークス、殉職した公安委員会会長の代理として目良が記者会見に出席していた。
1週間経過して確定した被害だがあまりにも大きい被害であり……数え切れない程の尊い人命が喪われた。
被害総額・24兆6841億9248万2684円。
死者・2604万1893人。
脳無の逃走被害による重軽傷者・802万6801人。
脳無の逃走被害による死者・905万9524人。
死柄木弔の『崩壊』及び脳無による倒壊家屋・4238万5924棟。
倒壊及び崩壊した医療施設・1万9539棟。
そして、タルタロス及び全国の刑務所が襲撃され165箇所の内164箇所から
ヨロイムシャの引退表明に端を発し……ヒーローは世間からの批判に対し引退表明が止まらない。
ヒーロー飽和社会と呼ばれ……平和が大前提であった社会は崩壊した。
この様な情勢の中で奇しくもヒーローがその意味を問われて篩に掛けられている。
人々はその全ての責任を……エンデヴァーに負わせる。
そして……荼毘の告発映像。
エンデヴァーの事、ホークスの事、そして何よりも……ヒーロー公安委員会所属の人間とタルタロス刑務官による冤罪事件。
鈴仙の人権を完全に無視した2ヶ月21日間に及ぶタルタロスへの収監。
ホークスが逃走する
皆……気になっているのだ。
正義の味方であるヒーロー達が、法の番人達がその様な行いをする訳ないと。
告発映像を嘘だと言ってくれる筈だと。
伝染している不安を取り除いてくれる筈だと。
清廉潔白である筈、間違いなど犯していないと、不安だから安心させてくれ……そう思い、願っている者も多かった。
時間になり……会見が始まった。
鈴仙を除いたA組B組の面々は寮の共有スペースにてそれを観ていた。
そうして……厳かな雰囲気の中で記者会見が始まる。
エンデヴァーは滔々と語った、荼毘の告発映像、自身の家庭環境、悍ましい過去……。
「全て真実です……お詫びの申し上げようもございません」
深々と頭を下げて謝罪の言葉を紡ぐエンデヴァー。
その言葉を聞き記者の1人が質問を行う。
「真実と仰いましたが……ホークスとベストジーニストは事実と異なる様ですが⁉︎」
その問いかけに対してホークスが言葉を紡ぐ。
「ジーニストさん殺害は……潜入の為に行った工作であり告発の全てを覆す様なものではありません、父の件も……逃走を計った分倍河原仁……
深々と頭を下げるホークス。
そうして……質問は鈴仙の冤罪について行われる。
「もう一つ……荼毘の告発映像の中に雄英高校1年A組……鈴仙・優曇華院・イナバさんの冤罪について語られていました、世間には一切報じられていない逮捕及びタルタロス収監であり彼女はヒーロー免許が剥奪されたと映像では告げられていました……何故この様な事態に? また鈴仙さん本人に対する賠償などはどうなっているのでしょうか? 彼女がオール・フォー・ワンやオール・フォー・ワンに与する者達から狙われているとの噂も入ってきてありますが⁉︎」
その問いかけに対しては公安委員会会長代理である目良が答える。
「その後に行った調査結果及び本人達の自白により……ヒーロー公安委員会の一部の家族とタルタロス刑務官の家族が誘拐されており……誘拐被害者は鈴仙・優曇華院・イナバさんの冤罪の為の証拠や証言などをする様にと言う、その指示に従って鈴仙・優曇華院・イナバさんの事をタルタロスへと収監したという事でした……法の番人たる者達の不正及び人権侵害につきましては一切申し開きもございません……また、鈴仙・優曇華院・イナバさんが収監されていた罪状につきましては完全なる冤罪であり……謂れのない罪で……無実である筈の鈴仙さんが収監されていた精神的苦痛やその他、およそ3ヶ月に渡り失っていた鈴仙さんの機会的損失や逸失利益を可能な限り賠償していきたいと考えております……また、狙われている事に関しましては此方でも把握しており……一刻も早く保護を目的とした捜索を続けております」
そう目良が答えるが肝心の鈴仙の居場所は未だに掴めておらずまるで雲を掴むかの様な作業であった。
そうして……会見は続いていき
「よろしいでしょうか? 私の母は脳無の逃走により重傷を負い昏睡状態となり……医者からは2度と目醒めないかも知れないと告げられました……『全て事実でしたすみません』じゃ取り返しのつかない事態なんですよ? この1週間弱でどれだけの人が住む家や家族を失ったのかご存知ですよね⁉︎ 何故その様に澄ました顔をなさっていられるのか私には到底理解が出来ませんが⁉︎」
その問いかけに対してエンデヴァーは語る。
「……憔悴した顔で泣いていれば取り返しはつきますか?」
それを聞いて憤る記者。
「はぁ⁉︎ つく訳ねーだろうが‼︎ 社会の不安を取り除け‼︎ 脱獄した
激昂していた記者も叫んでいる内に自身で気がついた。
「仰る通りです……それが今、エンデヴァーに出来る償いです」
そう語るエンデヴァー、そしてベストジーニストが語る。
「とは言え……70%近いヒーローが辞職した為に全ての人々を守るのは到底困難だと言わざるを得ません……つきましては守るべき範囲を削減いたします、本日より政府との相談の上……雄英高校を始めとした広大な敷地と十分なセキリュティを持つヒーロー科の学校を指定避難所として開放していただく運びになりました……既に学生の家族には避難を進めてもらっています」
避難所生活とは実質的に……生活基盤を底からひっくり返す様な行いである。
故に記者達は叫ぶ。
「
その問いかけに対してエンデヴァーは語る。
「
そう叫び締め括られた記者会見。
ヒーローは篩に掛けられた。
あの日を境にしてヒーローと言う職業は消え去った。
それでも……逆境に負ける事なく立ち上がる人をヒーローと、人々から求められる者をヒーローと言うのならば……まだ立ち上がる人はいる。
最後に……エンデヴァーは死柄木弔の語ったワン・フォー・オールについては分からないと答えて……そして、記者会見は終了した。
記者会見を見終わったA組B組の40人。
真っ先に一佳が叫んだ。
「誰よりも、オール・フォー・ワンの手下よりも……誰よりも速く鈴仙を見つけないといけない‼︎」
その言葉に対して否定的な意見が出る。
保護の為の捜索を続けているのだから安心して待っていたほうがいいと。
しかし、一佳だけは……一佳のみが鈴仙の真意を全て理解していた。
「あぁ確かにそうさ‼︎ だけどな‼︎ 恐らく鈴仙だってこの記者会見をどっかで観てんだよ‼︎ そうして自分の置かれている状況を知るだろうさ‼︎いや、自分の置かれている状況に関してはもう知ってるかも知れない‼︎ 雄英やその他のヒーロー科がある学校が避難所として開かれたのも知ったろうさ‼︎ だからこそ‼︎ 鈴仙は絶対に戻って来ないし戻ろうとしないんだよ‼︎ オール・フォー・ワンに狙われているのが噂としての段階でも……一般市民に余計な不安を与えない為に鈴仙は絶対に戻って来ない‼︎ だからこの状況下に追い込まれた鈴仙がやる事って言ったら……もう一つしかないだろ⁉︎」
そこで皆……ハッとした表情になり呟く。
それを見て、一佳はゆっくりと語る。
「元凶の掃討……捨て身上等のね……それしかない」
そうして、翌日。
A組とB組のメンバーは緑谷からの手紙を受け取った。
扉に挟んでおり内容は鈴仙とオール・フォー・ワン及び脱獄した
オールマイトから個性を授かった事。
そして、感謝の言葉で締め括られていた。
麗日お茶子は考える。
……辛い道を歩む事を厭わない者達をヒーローと呼ぶのならば彼らが辛い時には誰が……。
4月。
緑谷がヒーローアカデミアを去った。