【完結】ウサミミ少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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雨月

 八意永琳は眼前の3人を見据え……宣言を終えた鈴仙の妹弟子の眼をジッと見た後で暫し溜息を吐いて語る。

 

「……あの子は貴女達に救われる事を望んでないわ、なんて言った所で納得はしないでしょう? あの子を思いっ切りぶん殴って目醒めさせて来なさい……逃げてるあの子を引き戻してあげて」

 

 そう告げると八意永琳は相葉愛美にアイコンタクトを行う。

 その意図を汲み取った相葉愛美はコクリッと頷いてPCを立ち上げてカタカタとキーボードを叩く。

 

 相葉愛美は凄腕のハッカーであり、その手腕は最強のセキュリティを誇る雄英のシステムに容易く侵入できる程でサイバー上のいかなるセキュリティも突破して自由自在に情報収集やサイバー攻撃を行うことができる。

 民間人の個人情報やSNSアカウント程度であれば朝飯前で特定することができるほか、AI学習と併用したウィルスを流し込むことによって、ネット上に拡散されたデータをピンポイントで抹消するような芸当もこなしている。

 

 相葉愛美自体には直接的な戦闘力は皆無なモノのインターネットという自身の領域であれば世界の誰も敵う者は居らず、永遠亭に居た際には、永遠亭を防護させる為に自身のマシン類をフル活用してサイバー領域におけるサポートを実施している。

 その具体的な内容としては、ハッキングした監視カメラや自身のドローンを用いた永遠亭周辺の監視や、永遠亭にサイバー攻撃を仕掛けようとしていた(ヴィラン)拠点の電力およびネット回線の遠隔遮断、そして作戦や敵に関する情報をリアルタイムで収集・分析して伝達する情報活動などが挙げられる。

 

 

 それを見ながら八意永琳は語る。

 

「何故……あの子の居場所を(ヴィラン)達が知れるのか……逆に考えれば何故あの子の居場所は(ヴィラン)にバレているのか……最初は分からなかったけど、少し考えればすぐに分かったわ……あの子は自分を釣り針の餌にしている、自分で居場所をバラして(ヴィラン)が来るように仕向けている、その証拠に……」

 

 そう告げた刹那……キーボードをポムポムと叩いている相葉愛美が声を上げる。

 

「スケプティックにハッキングされていた大手IT企業『Feel Good Inc』の人工衛星を更に上からクラッキングしたわ……これでもうアイツらは人工衛星を通じてのクラッキングは封じられた……アイツが性懲りも無くハッキングして来た瞬間に居場所が判明する様にしたわ、そのついでに……スケプティックからは2度とネットにアクセス出来ない様に遮断したわ……それと、この人工衛星はこの3週間で幾度もクラッキングされてるわ……クラッキングしたのは鈴仙ね、……スケプティックのPCに数字が流される様にクラッキングして、ある程度の(ヴィラン)の座標を抜き取ってあるわ、この数字は……座標ね、自分が今何処にいるかを態とバラしてる、該当地域は……いずれも人が居ない沿岸部だったり海岸地域ね……クラッキングの最新は……16分前、北緯35.13470°, 東経139.67362°……鈴仙の義眼をクラッキングしたから場所はいつでも把握できるわ……既に(ヴィラン)を捕縛して警察署に護送して移動したわね……現在位置は……山奥?」

 

 本来ならばコンピュータのハッキングは罪である為に執行猶予中の相葉愛美には許されない行為であるが、八意永琳は彼女にとある資格を取得させた。

 ホワイトハッカーの資格を。

 

 これによりホワイトハッカー資格保持者である相葉愛美は害を齎さないクラッキングに限り罪に問われない。

 

 ともあれ、緑谷の居場所も、鈴仙の居場所もこれで把握できた。

 拳藤一佳は少し考え込んで相葉愛美へと語る。

 

「ねぇ……緑谷含め40人の座標を鈴仙に向けてクラッキング出来ない? 私達を(ヴィラン)だという虚偽の位置座標を鈴仙に送りつければ向こうからやってくる……」

 

 そう告げると相葉愛美は少し考え込んで呟く。

 

「……出来るか出来ないかと問われれば出来るわ、しかし……その程度の欺きは向こうも分かってるでしょ、徹底的に探査されてばれるわよ?」

 

 そう語る相葉愛美に対して拳藤一佳は真剣な眼差しで語り掛ける。

 

「問題ない、波長操作は万能なれど全能じゃない……其処を突くさ」

 

 後は動くのみ。

 


 

 とある山奥で鈴仙は渓流の前にいた。

 

「……さて、手早くやるかな」

 

 鈴仙は澄み渡る様な透明度を誇る水の美しさとせせらぎの音を聞きながらその水を波長操作で作った簡易的な浴槽へと溜めると水の中にいる可能性が捨て切れない寄生虫を完全に殺す為に一度水を完全に凍結させた後、マイクロ波を操作して氷を溶かすと、その水を5回、念入りに煮沸したのちに凍らせて適温に戻す。

 適温になった湯船を手を突っ込んで温度を確認する鈴仙。

 

 ヒーローコスチュームを脱ぎ全裸になって浴槽へと浸かる。

 現状、鈴仙にとってほんの僅かなこの入浴の時間が唯一の癒しであり抑え切れないストレスの重圧を忘却できる時間であった。

 

 身体と頭髪を清めて湯船に浸かり汚れを落としながら呟く。

 そんなに長くは浸かっていられない、精々20〜30秒と言った所か、いつ襲われるとも限らないのだ。

 

「死柄木弔の完全なる肉体の完成まであと2日……結局情報を持ってたのは最初の数人で後はトカゲの尻尾同然の末端……私を捕らえられれば良し、そうでなくても疲弊すれば良いと考えてるのかオール・フォー・ワン……しかし、そうはさせてなるものか、私の全身全霊を賭して止めてやるよ、たとえ相打ちになろうと、たとえこの私が死ぬ事になろうとも……まっ、後の事は心配ないですね、信頼できる友人がいる、私の智慧の全てを叩き込んだ頼もしい司令塔もいる……私は私の役割を果たす」

 

 その言葉を相澤先生や一佳が聞いていたら思いっ切りぶん殴って止められる事は想像に難くない。

 

 しかし、何故だか少しも、これっぽっちも不安はない。

 

 追い詰められているが……チェックメイトに追い込んでいるのは此方も同じ。

 全ての情報網は鈴仙の掌の上。

 情報とは秘匿性に比例して高価になる物である。

 秘匿性が高くなれば金で買えるとは限らず……一つの情報を得るため一生を費やし、そして命まで散らす者もいる。

 そして何よりも情報の命は速さだ、敵より1秒遅ければ味方を見殺しにし1秒先んずれば命を救う。

 

 鈴仙が退学した2〜3日後に……死柄木弔の肉体の完成予想日数に関してはセントラル病院と殻木の自白で割り出したそうだが、あんな物はブラフに過ぎない。

 

 お師匠様に一方的なテレパスで死柄木弔の本当の完成日数を送り付けた故にお師匠様経由でどうにかしたと信じている。

 

 この3週間、地獄を歩んでいる鈴仙……掛かるストレスは計り知れないモノでありその証拠にウサミミは極度にヨレヨレになっている。

 ほんの僅かな安息の時間以外は息つく暇もなく(ヴィラン)や殺し屋に襲われる日々。

 

 頼れる者は誰1人居らず……鈴仙の精神(こころ)に雨はずっとずっと降り続けている。

 

 雨は今日も止まない。




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