【完結】ウサミミ少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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A組B組VS鈴仙

「邪魔……しないでよ‼︎ 皆‼︎」

 

 自身を射抜く40人の眼差しを浴びつつ……そう短く叫び鈴仙は音の波長を操作して全方位に衝撃波を形成し叩きつけようとした刹那……同等の威力を持った逆位相の波長により打ち消される。

 

 黒影(ダークシャドウ)に抱えられてふわりと空を舞うそれは耳郎響香のイヤホンジャックであり、今では鈴仙と遜色無い程に鍛え上げられたその音質と速度、威力はまさに脅威だ。

 自身に迫るほんの一瞬の刹那で波長を操作して打ち消すと耳郎響香が叫ぶ。

 

「鈴仙‼︎ 私は那歩島でアンタに励まされた‼︎ なぁ……アンタは今自分を信じられるのか⁉︎ そんな表情で‼︎ そんな哀しい目つきで‼︎」

 

 その言葉を聞き波長を用いて4ヶ月ぶりに自分の表情を確かめる鈴仙。

 

 波長操作により鏡像の様に映し出された自分は……酷く怯えた表情をして……酷く涙を流した跡がくっきりと残っており……酷く焦燥し、疲れ果てた表情であった。

 

 それを確認して……眉をほんの僅か顰め呟く。

 

「ならば切って捨てて仮面を作り替えるだけです……弱い心なんて要らない……私はずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとそうやって来た‼︎ 今更仮面が1つ増えた所で変わりはしない‼︎」

 

 そう短く呟くと耳郎響香は心の底から悲しい表情と気持ちを全面に出しており叫ぶ。

 

「ざっけんな‼︎ 鈴仙‼︎ アンタの辛い状況はここに居る皆が分かってる‼︎ 何の為の仲間だ‼︎ 何の為の友人だ‼︎ 私達を‼︎ 少しは頼れよ‼︎ このバカァ‼︎」

 

 大粒の涙を零しながらそう叫ぶ耳郎響香を無視して粒子変換を行い光の速さで離脱しようとした瞬間、違和感に気づく。

 

 いつまで経っても粒子変換が完了しない。

 

 ある物が波長を乱しているのに、はたと気付いた鈴仙はビル群の1つに目を向ける。

 

 其処にはオモイカネデバイスとオモイカネブレインを装着した八百万の姿が見えた。

 ……しかしながら、アレにはお師匠様の刻印がない故に八百万自身で創造した物と判別できる。

 

「八百万さん……っ⁉︎」

 

『鈴仙さん‼︎ 貴女は私に立ち振る舞いを叩き込んで下さりました‼︎ その恩を今返させて頂きます‼︎ だから……帰って来てください‼︎』

 

 テレパシーで自分の心の内を鈴仙へと叩きつけつつ波長操作を妨害してくる八百万。

 

 それを聞いて八百万の成長をとても嬉しく思い……ながらも、波長操作に関しては鈴仙の方に一日の長がある為に重力波を操作し超高速で浮遊し飛行しようとしたが2人に自身の背後を取られたと察知した鈴仙は振り向く事なく即座に蹴りを放つが当然、アッサリと、余裕を持って回避される。

 

「遅えぞ? なぁ……鈴仙、俺が見切れるくらいの速度だぜ? テメェが一番理解してんだろ?」

 

「鈴仙さん……」

 

 そう語るのは爆豪勝己と緑谷……。

 片や爆破で空中に浮遊し、片や8代目の個性で浮遊し……そう語ってくる2人であった。

 

「……2人とも、ありがとうございます……その気持ちだけで充分です」

 

 そう告げて……熱音響冷凍を使う。

 即ち温度を極限まで低下させてから急激に温度を跳ね上げる、そして其処から発生した衝撃波で全員を気絶させようとした。

 

 しかしながらソレは失敗に終わる。

 

 鈴仙よりも圧倒的に速く、並外れた経験により……適切で的確なそれを実行した者がいた故に。

 

「膨冷熱波‼︎」

 

 鈴仙が下げ切った温度を逆に利用されて鈴仙に向けて放たれる猛烈な爆風。

 凄まじい爆風と衝撃波で眼を開けている事が出来ずに一瞬視界が封じられる。

 

 爆風が晴れると鈴仙の全身は所々凍てついているが熱音響冷凍の極致は温度の任意的な操作にある。

 即座に温度を上昇させて凍てついた箇所を溶かした鈴仙であるが、どうしてもほんの僅かに反応が遅れる。

 

 そして……その反応を見逃す程に鈴仙が鍛え上げた者達は甘くない。

 僅かの隙も見逃さずに叩き込めと教え込んだのは他ならぬ自身なのだ。

 

 刹那の一瞬を突いてビル群を飛び移って跳躍し鈴仙の眼前に迫り来るはA組委員長、飯田天哉。

 

「鈴仙君‼︎ 君は覚えてるか⁉︎ あの日、僕に放った言葉を‼︎ あの日‼︎ 僕は君に諭された‼︎ なのにそんな君があの日の僕になろうとしている‼︎ そんな事良い訳ないだろう‼︎」

 

 即座に逃走を計る鈴仙を追いかけてそう叫ぶ飯田天哉。

 

 過去に飯田天哉へと告げた言葉を思い返す鈴仙……。

 

『いえ……あまりにも『ヒーロー殺し』を語る貴方の眼がですね……とんでもなく……言葉を選ばずに言うなら目的の為ならば法を犯しても問題ない、そう考えている輩と同類の波長をしておりましたので……視野が狭まりすぎですよ? 家族が敵ヴィランに襲われた、ならそいつを……て気持ちは痛い程分かります、だったら正規の活動で牢屋に叩き込んできてください……決して独断専行しないで、パトロールして、市民の避難誘導をして、ヒーローに救援を求めて、今までの授業で学んだ事を活かして、そして制圧して警察に引き渡しましょう……26人ものヒーローを再起不能にし17人の人を殺した者には……まぁ100%死刑判決が降りますので後は司法に任せればいいんです、飯田さんがステインに恨みを抱くのは理解出来ますなんせ家族を害されたんです、憎まない訳がない、けれど……飯田さん、私は貴方に問います……貴方が独断専行で飛び出していって、そしてヒーロー殺しを倒したとしましょう……そして警察に引き渡したとしましょう、いくつかの遵守するべき法律と規則を破ってまでヒーロー殺しを捕縛して、貴方はそれをいの一番に、真っ先に報告したい相手に報告してお兄様は喜んでくれるとお思いですか? 喜んでくれますか? 貴方は自身の行いを、兄に対して一切恥じる事なく報告できますか? やましい事は何もせずに正規の活動であったと胸を張って報告出来ますか? 正規の活動であったと……そう言える様にちゃんと正規のヒーロー活動をして下さいという話しです……すいません、話しを纏めるのが苦手なので……纏めるとちゃんと正規のヒーロー活動をしましょうと言う事です』

 

 それを思い返して……自身の視野狭窄を改めて認識するが既にそんな道程はとうに過ぎ去った。

 しかし、飯田天哉は逃げようとする鈴仙へ向けて躊躇わずに叫ぶ。

 

「僕は……僕達は‼︎ 八意さんだって、今の状況の君から‼︎ そんな報告受けて喜んでくれると思うのか⁉︎ 鈴仙君‼︎ あの日君が言った言葉をそのまま返すぞ‼︎ 鈴仙君‼︎ 君は誰に対しても一切恥じる事がない、疾しい事を何もせずに正規の活動を行ったと‼︎ 君は君自身に胸を張って言えるのか⁉︎」

 

 そう叫ぶ飯田天哉。

 その言葉は……鈴仙の胸を穿つ。

 

 ギリギリと締め付けてくる。

 ……そして、それに対して苛立った様な、半狂乱になりつつも鈴仙は叫び答えを返す。

 

「言える訳ないでしょうが‼︎ そんなの、この世の誰よりも‼︎ 私が1番理解しています‼︎ ですが今戻る訳には行かないんだ‼︎ だからもう‼︎ 私の事なんて放っておいてよ‼︎ 皆‼︎」

 

 そう叫び……更に逃走しようと空中を翔けつつ波長操作の応用でプラズマを操作して雷を降り注がせる鈴仙……だが無差別な落雷として生み出したソレは即座にある一点へと、とあるクラスメイトの下へと一つに集約されていく。

 ソレを為したのは上鳴電気、帯電により電撃を自身を避雷針にする事により全ての落雷を防ぎ切った。

 まさかそんな、と驚愕に染まった鈴仙に上鳴電気の叫びが届く。

 

「なぁ鈴仙‼︎ 俺は色んな所で鈴仙に助けられてばかりだったよ‼︎ 期末テストの勉強にしたって、林間合宿にしたって‼︎ だから……今度は俺達が鈴仙を助ける‼︎」

 

 プラズマ操作は鈴仙にも電気熱傷という多大な被害を齎す故に無闇に乱発出来る技じゃない、焼け焦げた自身の皮膚をチラリと見て連発は不可能と悟る、焼け焦げた皮膚は再生しているがそれでも完全に封じられている攻撃を繰り返すのは愚の骨頂である。

 

 幸いな事に皆との距離を取れている。

 空中に障壁を形成して踏み込んで空を翔ける様に跳躍すると物間寧人の声が響く。

 

「鈴仙さん‼︎」

 

 恋人関係となった相手の悲痛な叫び……その言葉を聞いて鈴仙は呻く様にくぐもった言葉を紡いだ刹那……心操人使の洗脳に掛けられた感覚に包み込まれるが即座に心操人使の脳波を操作して解除の指令を出す。

 しかし、2〜3秒の隙が生まれる……その隙に操縛布により雁字搦めにされて地上に引き戻される鈴仙。

 刹那……心操人使は、サポートアイテムであるマスクを外して口を此方へと見せながら声帯模写をせずに自身の声で高らかに叫ぶ。

 

「なぁ鈴仙‼︎ 俺達はそんなに頼りないか⁉︎」

 

 その問いかけに対して鈴仙は躊躇う事なく答えを返す。

 

「……頼る頼らないの問題じゃないんですよ‼︎ 私がいるだけで雄英は安全とは言えなくなる‼︎ 今の雄英には避難民が大勢いる‼︎ 私という名の爆発寸前の爆弾を抱え込ませる訳には行かないんだ‼︎」

 

 雁字搦めに捕縛された状態で……即座にそう叫ぶ鈴仙。

 波長操作は八百万が創造した超大型妨害装置により完全に封じられている為にもはや波長操作を行うのは困難である。

 不可能では無いのは鈴仙自身の波長操作も飛躍的に向上した故に。

 機材自体に波長操作を叩き込めば解放される故に鈴仙はソレを目論む。

 

 しかし物間寧人が鈴仙の手を取って呟く。

 

「鈴仙さん、今の君の孤独が分かる……とはとてもじゃないが言えないけど……君の負担を軽くする事は出来るつもりだよ……君の精神(こころ)の奥底に潜った時の様にね」

 

 愛しい恋人の紡いだ言葉を受け入れそうになった鈴仙。

 

「物間さん……とても嬉しい申し出感謝しています……ですが私は大丈夫です」

 

 その答えを聞いた物間寧人は鈴仙にハグをして語る。

 

「今、君から波長を感じ取っているからこそ分かるよ……泣きたい時は泣いても良いんだよ鈴仙さん……思い詰めた波長が眼に見える」

 

 荒い息を整えつつ鈴仙は思案する。

 

 ……まだ逃走の目はある。

 

 鈴仙の個性は波長操作であるがそれと同時にウサギの個性をも併せ持つ。

 それ故に鈴仙の肉体にはウサギの身体能力が色濃く反映されている。

 脚力や聴力などが最たる例である。

 

 跳躍力は入学当初で立った状態からで68m。

 今では1歩で300mは跳べる。

 

 脚に力を込めて跳躍しようとした刹那。

 

 真正面から抱きついて来た一佳。

 ギュッと抱きしめて、鈴仙に対して思いの丈を叫ぶ。

 

「なぁ鈴仙……入試試験……覚えてるか?」

 

 忘れるわけが無い、あの日……鈴仙と一佳が初めて出会った日であり……負傷した一佳を助けて一緒に試験に臨んだ。

 

「あの時言われた言葉……今でも思い出せるよ『安心して、私が貴女を守るから』……あの時……とても嬉しかったし安心できた……だから今度は……今度はさ」

 

 其処で一度言葉を区切り一佳は鈴仙をギュッと抱きしめてゆっくりと言葉を紡いだ。

 

「安心して、私達がアンタを守るから……」

 

 その言葉を聞いた瞬間……今まで鈴仙が心の内に抱え込んできたモノが一気に決壊し大粒の涙が頬を伝う。

 鈴仙は嗚咽混じりに泣きじゃくり……一佳の胸に顔を埋めて啜り泣く鈴仙の声が木霊した。

 

 鈴仙の精神(こころ)に降り続けていた雨は……止んでいた。




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