新年も拙作を宜しくお願いします
時は少し巻き戻り鈴仙が月に向かう前。
その日、オールマイトはエルクレスを携えて鈴仙に呼ばれて開発室へと赴いていた。
拡張ユニットであるスーパーカーの方のエルクレスも開発室の中に先んじて運び込まれている。
開発室へと入ると出迎えたのはエルクレス開発主任であるメリッサ、八意永琳、発目明、そして機械油塗れで酷く汚れているツナギ服姿の鈴仙であった。
鈴仙から波長を操作し鈴仙とオールマイト、メリッサ、八意永琳のみに聴こえる音で語られる。
「よく来てくださいましたオールマイト、エルクレス……パワードスーツと拡張ユニットのチューンアップを行います……以降サポートAIの名であるエルクレスと呼びますね……エルクレスにA組全員の個性を盛り込んだ設計とお聞きしましたので……ほほう、手にお待ちのアタッシュケース状のそれと、先ほど私が見ていたスーパーカー型拡張ユニット……これが対オール・フォー・ワンとの決戦用に全財産を投じてオールマイトが作ったエルクレスですか、至高の逸品ですね、さて……オールマイト、ご相談があります」
涼しい言葉と同時に笑顔を浮かべ鈴仙は語る。
「このエルクレスをチューンアップするのはどうでしょうか? 先程構造を確認して確信しました……この状態のエルクレスではエネルギー消費に対して供給が追いつかないです……特に顕著なのはCAN'T STOP TWINKLINGとチャージズマ、それにムーンラビットですね……この3つはエネルギー消費量が莫大過ぎて今の状態だとどの機構も5秒と持続出来ません、しかし……1つ、それを確実に解消する手段があります……このチューンアップを行えばエネルギー問題から解放されてどの様なエネルギー消費を要求するスペックの機構だろうと無限に使えます……開発者のメリッサ嬢、そして保全検証担当のお師匠様には話は通してあります……あとはオールマイトの許可を得るだけです」
割と矢継ぎ早にそう告げられる。
オールマイトはゆっくりと考え込み……決断を下す。
「宜しくお願いするよ」
そう告げてチューンアップをお願いするオールマイトであった。
そして、改造及びチューンアップが開始される。
開発主任のメリッサ嬢曰くエルクレスの形態は大まかにオールマイト自身が身に纏う強化服とその上から更に装着する拡張ユニットの二つに分けられる。
強化服は待機状態ではアタッシュケースとなっており、起動時に一度無数のパーツへ分解しオールマイトの全身を覆うことで装着される。
この強化服は肉体を負荷から保護する他に、オールマイトが自らの身体機能を強化する一種のパワードスーツであり、これによって戦闘行動を十全に行うことができる。
流石に全盛期と比べると大きく見劣りするが、鈴仙が手を加える前のこの段階で身体強化の個性持ちに匹敵するスピードで走る事が可能である。
理論上ではあるがオール・フォー・ワンからの攻撃を受けてもほぼ損壊しない設計にしており並大抵のパワードスーツの性能を遥かに凌駕する力を発揮するとの事。
一方で拡張ユニットは、通常時は普段使用する専用のスポーツカーとなっており、オールマイトの要請時にパーツを分離・射出し様々な兵装として機能する。
ちなみにシステムの管理は付属のサポートAI「エルクレス」が行う。
本装備の最大の特徴として1年A組の生徒達の個性を機械的に再現したものが内蔵されており、それらを状況に合わせて随時発動できる。
この再現された機能はオリジナルと比べ能力は劣るものの、負荷や制限等は特にないため複数の個性を同時に発動することができる。
台車へ仰向けに乗り車体の下へと潜り込んで改修作業をしながら鈴仙は語る。
「オールマイト……私が今から語る戯言は釈迦に説法、孔子に悟道である事は重々承知しております……しかしながら言わせて下さい……道具は所詮道具です……人間や個性と違って限界は超えない」
ドライバーやレンチで車体を弄り作業を継続しながらそう語る鈴仙。
確かにこのエルクレスというボディアーマーと拡張ユニットによる戦闘形態によってオールマイトはどうにか戦う術を得たが、実はこの形態には致命的な欠点が存在する。
それはこの形態が長時間の戦闘に向いていない事。
この形態は戦闘能力のその全てを大量のサポートアイテムと機械類が請け負っている。
そして機械なので当然ながら耐久限界などが存在し、それを超えれば機械は破損してしまう。
そして装備を徐々に失うとそれに比例して戦闘力も低下していく。
今現在のオールマイトの肉体は既にボロボロでありとても戦えるものではなく、下手に攻撃を受けようものならそれが致命傷になりかねない。
メリッサを開発主任を担当とし保全管理者として八意永琳その智慧を持ってして担当した為に安全動作テストや性能はおろか安全性は完璧に保証されているがそれでも所詮は機械であり道具の域は出ない。
それを告げてくる鈴仙。
30〜45分程しばらくして車体の下から台車を滑らせて出てくる鈴仙。
チューンアップが完了したのかメリッサ嬢と八意永琳に告げて性能動作確認を行う。
性能動作を確認すると確かに莫大であったエネルギー消費量が解消されて増幅率や循環効率が5倍に達していた。
「私が考案し……完成まで漕ぎ着けたシステム……サテライトシステムを搭載しました……エルクレスの認証登録も済ませました……後1つはサテライトシステムを月に埋め込まないといけない……なので私はこのチューンアップが完了次第……月面に行ってきます」
サテライトシステム。
それは鈴仙曰く……永琳様の手を借りずに鈴仙自身の手で開発及び完成させたエネルギー変換及び供給機関の総称。
その実態は鈴仙が有する波長を操る能力を活かし、月面を照らす太陽光を利用した発電システム及び地球全域への無制限送電システムである。
鈴仙か鈴仙が持っているサポートアイテム、ルナティックガン……又は子機であるミニ八卦炉を中継衛星として挟む事で送電のタイムラグや送電場所の制限を解消する物。
鈴仙のサポートアイテム、ルナティックガンの最大火力技である『ツインサテライトキャノン』を使用する際に必要とする莫大なエネルギーを0.1秒でチャージをするのが主な役割である。
しかし初回起動時はフラッシュシステムという特殊な波長を用いた月面施設への登録認証を必要とする。
月面施設からのスーパーマイクロウェーブを受信する為にルナティックガンにはウサミミ型リフレクターユニットや、銃の各部に配置されたエネルギーコンダクターが仕込まれておりチャージ中に青く発光するパーツを用いてチャージを行う事で、強力なビームに変換して発射する事が可能となる。
また、チャージしたエネルギーをサテライトキャノンとして発射せず、銃に蓄積された状態にする事も可能。
エネルギーを蓄積した状態で動ける為にエネルギー無補給のまま作戦行動を可能としたり、ルナティックガンから放たれる弾幕を銃口部分で固定しサーベルの様な弾幕に固定する為のエネルギーに回して通常の兵器とはケタ違いに大出力の兵器として使用することも可能。
「ま……
この戦いが終わり次第ノーベル賞すら取れるかもしれない世紀の発明を躊躇いなく破壊すると宣う鈴仙であった。
そうして……チューンアップと改修作業は終わった。
「……とりあえず、チューンアップは完了しましたね、各機能も5〜10倍程度に性能が上昇しているので……やれる事は全てやって……絶対に勝ちましょう」
そう語る鈴仙であった。