雄英体育祭も終わった。
その日の夜、鈴仙は湯船に浸かりながら表彰式の事を思い返していた。
「それではこれより‼︎ 表彰式に移ります‼︎」
1位 鈴仙・優曇華院・イナバ。
2位 轟焦凍。
3位 爆豪勝己と心操人使。
鈴仙は表彰台に立ちながら観客席の人達へと見惚れる様な笑みを振り撒いてピースサインを送っていた。
そして、メダル授与となりミッドナイト先生がマイクを持って叫ぶ。
「さぁさ、メダル授与よ‼︎ 今年メダルを授与するのは当然この人‼︎」
そう告げて、一呼吸ミッドナイト先生が置くと同時にオールマイトが現れて叫ぶ。
「私が‼︎ メダルを持って『我らがヒーロー‼︎ オールマイト‼︎』きた‼︎」
オールマイトとミッドナイト先生の言葉が駄々被りして何とも言えない空気が一瞬流れる。
打ち合わせはちゃんとしましょう……先生方。
オールマイトは3位の爆豪勝己へと語りかけながらメダルを授与する。
「おめでとう爆豪少年‼︎ 惜しくも相性差で敗北してしまったが勝負は一瞬の分かれ目さ、実際、どちらが勝っても全くおかしくない試合内容だった、君はまだまだ成長途中なんだ‼︎ これから先もっともっと強くなれる‼︎ 今日の苦い敗北を胸に刻んで次に繋げていこう‼︎ おめでとう‼︎」
爆豪勝己はオールマイトの言葉を聞いて、終始俯きながら無言で頷いていた。
そして『普通科』生徒である心操人使にもメダルを授与する。
「おめでとう心操少年‼︎ 君がここまで来れたのも弛まぬ努力の結果だ‼︎ 君の試合内容‼︎ どれも『個性』をブラフにしたり徹底的に近接格闘を仕掛けたり、素晴らしい試合運びだったよ‼︎ 誇っていい‼︎ 胸を張って前を向きなさい‼︎ 君のこれからに期待してるよ‼︎ おめでとう‼︎」
心操人使もコクリッと頷いて返事を返す。
そうして、オールマイトは2位の轟焦凍へとメダル授与する。
「おめでとう轟少年‼︎ 決勝戦、見事な戦いを見せてもらった‼︎ 氷と炎、相反する2つの個性を使いこなせば君はもっともっと強くなれる‼︎ 今回は惜しくも一歩届かずに2位になってしまったがまだ機会がある‼︎ もっと地力や個性の扱い方を習熟させれば君は更に上を目指せる‼︎ ‼︎ おめでとう」
そう告げて轟焦凍にメダルを授与するオールマイト。
轟焦凍も会釈で返事を返す。
そして……オールマイトは1位である鈴仙の方へとメダル授与を行う。
「おめでとう鈴仙少女‼︎ 各試合通して見事な近接格闘センスと個性の扱い方だった‼︎ 卓越した技量は絶え間ない修練の賜物だな‼︎ 鈴仙少女は今でも十二分に強いが個性を鍛え続ければ確実に『今』よりも更に強くなる‼︎ 1位獲得おめでとう‼︎」
そう言って鈴仙にメダルを授与して手を差し出してくるオールマイト。
鈴仙も手を差し出して握手をする。
「そう言えば……他の皆はハグだったのに私だけ握手なんですね」
握手を交わしながらオールマイトへと語る鈴仙。
鈴仙のウサミミもクルクルと回転しながらクシャッとなっており『気になるよおおお』と叫んでいた。
「他学年でもそうだが、女子生徒の場合は握手と決まっていてね……」
そう告げるオールマイトの言葉に納得しつつメダルを受け取る。
そして、オールマイトがマイクを持って叫ぶ。
「さぁ‼︎ 今回は彼らだった‼︎ しかし皆さん‼︎ この場の誰にもここに立つ可能性はあった‼︎ ご覧いただいた通り‼︎ 競い‼︎ 高めあい‼︎ 更にその先へと登っていくその姿‼︎ 次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている‼︎ てな感じで最後に一言‼︎ ご唱和ください‼︎ せーの‼︎」
「プルス「お疲れ様でしたぁぁぁ‼︎」ウルトラ」
観客達や生徒達のプルスウルトラと言う掛け声がオールマイトのお疲れ様でかき消されてブーイングが起こる。
何とも締まらない最後の言葉に苦笑いを浮かべる鈴仙であった。
そうして、長い様で短かった体育祭も終わった。
一度クラスへと戻り相澤先生からこれからについて告げられる。
「お疲れ様っつう事で、明日と明後日は休校だ、プロからの指名などをこっちで纏めて休み明けに発表する、ドキドキしながらしっかり休んでおけ」
そう思い返す。
思い返して……ゆっくりと湯船から上がるといつもよりも長く浸かっていた為に少し逆上せたのかふらふらっとした鈴仙であるがすぐに収まりいつもの様に丁寧にウサミミとウサギ尻尾の水分を取って櫛で毛並みを整える。
そうしているとスマホにラインの着信が入り何事かと確認すると拳藤一佳と心操人使からであった。
奇しくも2人とも同じ内容であった。
近接格闘術の鍛錬をしないか? という内容であった為に鈴仙は拳藤一佳と心操人使に了承を取ってから返信を行う。
そうして、休日1日目。
道着を着込んだ八意永琳の前に道着姿で座り込むのは
鈴仙
拳藤一佳
心操人使
の3人であった。
八意永琳は一先ず基礎訓練を行わせて様子を見る。
そして、3人それぞれに適した基礎トレーニングメニューを書き記して渡すと3人に告げる。
「それが終わったら順次組み手を行うわ、個性あり、なんでもありのバーリトゥード……存分にかかってきなさい」
そう告げる八意永琳。
各自、個別に組まれた専用のトレーニングメニューを見た3人はそれを聞いて全員別々の反応を見せる。
やる気に満ち溢れる者。
スタートラインに立つと意気込んでいる者。
1人だけ濃密さが別次元のトレーニングメニューに対してウサミミをヘニョォッと垂らして顔を引き攣らせている者。
拳藤一佳と心操人使が鈴仙のトレーニングメニューを横から覗くと格闘術を学び始めた2人だからこそ理解できるかなりキツイ内容となっていた。
そうして2時間後。
各自に定められたトレーニングが終わり八意永琳との試合が開始される。
先ず最初に挑んだのは拳藤一佳であった。
40数分に渡る試合の結果は拳藤一佳の敗北であった。
途中までは互いに良い所まて行っていたのだが肩の骨を外されてペースを崩され終盤に動きが鈍った所を顎に1発重いのを喰らいKO。
続く心操人使は個性のタネが割れている為に純粋な近接格闘戦に持ち込むが練度が足りない。
良い線行ってるのだが、こればっかりは練度の差だろう。
30分粘り続けたが喉に打撃を喰らい仰け反った所を顎に掌底を1発喰らいKO。
最後に鈴仙。
異次元の密度を誇るトレーニングメニューをこなしてウサミミをクシャァッと萎ませる鈴仙。
波長操作を行い位置の誤認から始まり今扱える全てを使って打ち勝とうとするが悉くを上から捩じ伏せられても、30分粘り続けたが最終的には頸動脈洞を締められて綺麗に落とされてKOされる。
バーリトゥードが終わり八意永琳からの講評を受ける3人。
全員、真剣な面持ちで一言一句聞き逃すまいとしており講評を聞く。
そうして、八意永琳から告げられる。
「貴方達がもっと強くなりたいと望むなら、取り敢えず1週間分の比較的軽いトレーニングメニューを組んでおいたわ、これを終わらせてまだ学びたいという意欲が湧いてくるのであれば、その時は歓迎するわ」
そう言って個別に作成したトレーニングメニューを手渡す八意永琳。
そうして……休日の近接格闘術のトレーニングは終了した。
あとの時間は自由との事で汗まみれの身体を癒す為に順番でシャワーを浴びた3人。
昼となり昼食をご馳走になった拳藤一佳と心操人使。
鈴仙と八意永琳が作ったミートソースパスタを食べつつ午後はゆっくり雑談に興じつつキリのいい時間で解散となった。
そうして、1日目の休日が終わり2日目を迎える。