【完結】ウサミミ少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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ワールドヒーローズミッション⑤

「1発当てた程度で……なっ⁉︎」

 

 再度瞬間移動をした男はさぞ驚いたであろう……移動した刹那……今度は左フックを喰らったのだから。

 

 全体重を乗せたソレは的確に団員の頬を打ち抜く。

 1度目だけならばマグレ当たりと言い切れる。

 

 しかしながら、2度目3度目と続くならばそれはマグレではない……確実に瞬間移動先が分かって拳を打ち込んできている。

 眼前の少女を……少し甘く見過ぎたかと、そう悟る。

 構えとしてはボクシング……いや、ボクシングをベースに軍隊式格闘術をアレンジしたものか。

 

 しかもこの女と距離を取ろうとした瞬間に音波による攻撃を喰らう為に実質的に近距離戦闘を余儀無くされる。

 

 拳の打ち込みも素人のそれではなく……プロ顔負けの速度と威力を保ったソレは……鋭く打ち込まれる。

 

 そして、最も最悪なのは瞬間移動しても移動先が読まれているかの如く、尽く後の先を取られ続ける。

 団員は再度顎に1発喰らって、よろめいたのを契機に、鳩尾、肝臓、頬、喉、こめかみ、腎臓や肩口へと集中的に拳打が放たれる。

 こちらが放った拳は空を切りクロスカウンターでカウンターされて続け様に拳打を喰らいよろめく。

 

「なんで瞬間移動先が分かってる? って顔してるね、俺の個性も何故当たらない? って顔してるね……基本に立ち返ればすごい簡単な事だった……親友曰く、人間は音の塊、音をどんなに消そうとも、瞬間移動をしようとも……消せない音は幾らでもあるって言われててね……あぁ私の武術(コレ)はただ単純に地獄みたいな訓練と修行にぶち込まれた結果さ」

 

 耳郎響香はそう語りながら額の傷口からボタボタと流れる血を振り払うと意識を集中してリラックスし腕を伸ばしてファイティングポーズを取りゆっくりとリズミカルにタンッタンッと脚を動かす耳郎は鈴仙によって構築された地獄の様な訓練と修行を思い返す。

 


 

 数ある雄英の訓練場には市街地をモチーフにした物もあり、その中には搭載ビルや家屋といった建造物があった、ソレを使用した訓練であり……近接格闘集中強化訓練兼CQC及びCQB訓練と銘打たれたソレに参加した参加者達は……のちに口を揃えてこう語った。

 

『地獄を見た』と。

 


 

 リズミカルに足を動かしつつ相手との間合いを詰めながら耳郎響香は語る。

 

「親友曰く……どれだけ音を殺そうとも心拍の昇降や呼吸の乱れ、流れる血液の音、思考した瞬間に生じる筋肉の伸縮音、衣服の衣擦れ……その他にも色々と聴くべき音があるってね……そして」

 

 耳郎響香は瞬間移動で無理矢理に距離をとった団員が放ってきた大小様々な数十の不可視の刃をほんの僅かの、最小限の動きのみで回避していく。

 そして鈴仙から学んだ距離の詰め方を実践して相手の懐へと潜り込んで鳩尾への重い一撃(ストマックブロー)を入れる。

 

「アンタの個性も段々とわかってきたよ、自分の周囲の音を自在に操作してるんだろ? 完全なる無音には出来ないようだけど……音に硬度や鋭さのような物理的性質を持たせたりって感じかな? 見えない刃……そりゃあ見えない筈さ、音は眼に見えない……」

 

「ぐが……ハッ、ハァッ……ハッ……この拳の重さ……誰かから指導されたな? 格闘技……いやこれは、軍隊式格闘術……だが‼︎ 足りない、圧倒的に足りない‼︎ 練度が‼︎ 重さが‼︎ 威力が‼︎ 何もかもが足りんわぁ‼︎」

 

 人体の急所へと連続で打撃を喰らいあまりの激痛に悶え苦しんで団員だが、再度瞬間移動にて距離を取ってそう叫び……団員は音を固めて鋭利な日本刀の様に形作るとソレを持ち突進を仕掛けてきた。

 

「触れたモノ全てを切り落とす不可視の音の刃よ‼︎ 如何に近距離に持ち込もうとも間合いを測れない獲物相手に‼︎ どうやって立ち回るか見せてみろ‼︎」

 

 突っ込んでくる団員を見ながら……耳郎響香は考える。

 構えを取って極限までリラックスしながら考える。

 

(持ち手である柄から予想される刀身の幅と刀身そのものの長さを考慮……鈴仙から習ったCQCの対ナイフ術を応用する‼︎ そして‼︎)

 

 自身のイヤホンジャックを……自身の両手甲に装着された鈴仙と一緒に開発し改良した音響増幅装置……兎とヘッドフォンの刻印が為されたソレへと繋ぐ。

 鈴仙を除いた今の人類の技術力では作る事が出来ないオーパーツたるソレに接続する。

 兎制式魂響音源(ラビットイヤホンジャックソウルズ)波動増幅(アンプリファー)専用機器(サラウンドビートズ)、耳郎響香が両手に装着している音響増幅機器であり……増幅機器とはとても思えない薄いグローブ型であり両手を保護する様な形状となっている。

 

 兎制式魂響音源(ラビットイヤホンジャックソウルズ)波動増幅(アンプリファー)専用機器(サラウンドビートズ)へと接続して自身の鼓動音(ハートビート)を両手に纏う。

 

「ハッ‼︎ 虚仮威しか? 今更そんなモノ‼︎ この刀の前では無いも同然よ‼︎ このまま切り捨ててくれる‼︎」

 

 ……首元に迫る不可視の刀を拳で受け止めて無傷でいる耳郎響香を……信じられないモノを見てくる眼前の団員に対して耳郎響香は語る。

 

「コレは私と親友の合作さ……そして‼︎」

 

 団員からの不可視の刃を躊躇う事なく拳で受け止めた耳郎は兎制式魂響音源(ラビットイヤホンジャックソウルズ)波動増幅(アンプリファー)専用機器(サラウンドビートズ)の本質を起動させる。

 

 即ち……音に対してのみ極限まで特化させた波長操作……耳郎響香専用サポートアイテムであり耳郎響香のイヤホンジャックを認証させる事でのみ起動されるソレは……耳郎の個性を飛躍的に高める。

 

「打撃に音の振動を乗っける‼︎」

 

 そう叫び……自身の鼓動音を纏った拳で団員へ鳩尾への重い一撃(ストマックブロー)を決めて完全に気絶させる。

 

 時間にして3分程の極めて短い時間であったが……濃密な技術と技術の勝負であった……耳郎響香は気絶した団員を拘束するとチラリとギャングオルカさんと障子目蔵を見遣ると……2人ともちょうど団員を拘束していた所であった。

 

 しかしながら時間がない……ヒューマライズの団員は全員制圧したが隠された爆弾を探す時間が無い。

 索敵を行っていたギャングオルカの部下も未だに見つけられてはいない。

 

 急いで探さなければ……焦る耳郎響香の耳元に懐かしい親友の声が響いた。

 

「落ち着きなさい……焦りは禁物です」

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