「鈴仙⁉︎ なんで此処に⁉︎ 本当の鈴仙じゃない……あー……成程ね? 投影された鈴仙、だけど実体を持ってる感じだなコレ」
その問いかけに対して鈴仙は悪戯が成功した子供みたいに笑みを浮かべて語る。
「そう、本体はタルタロスに居ますが……幻影に実体を持たせています……私は何処にでもいるし何処にもいない……そう、言うなれば……シュレディンガーの野兎……なんて冗談はさておき世界一危険な失せ物探しと行きましょうか」
鈴仙は耳郎の手を取りその手に着けたサポートアイテムを介して探査を行う。
探査を終了し鈴仙は耳郎へと告げる、
「耳郎さん……今緑谷さん達がヒューマライズの最奥へ到着しました、解除キーと共にね……時間にしてあと2〜3分足らずですが……ここの爆弾が1番危険です……避難所の目の前にある黒のBMWが見えますね? あの車体はめちゃくちゃに改造されてあり車体そのものが強烈な爆弾です……起爆されれば生存者0、半径50Km内の全員が死ぬ威力です、確実に終わります……だから」
そう紡ぐ鈴仙の言葉を遮って耳郎は語る。
「だからどうにかしてあの爆弾と団員を退かさないといけない……だろ? 鈴仙……ここはギャングオルカさんがいる、私がいる、障子が居る……何よりも他の先生達も居る、緑谷達のサポートに行ってくれ……」
その言葉に鈴仙は笑みを浮かべて語る。
「えぇ……分かりました、ご武運を……」
「っと、鈴仙……コレを持ってってくれ、私よりもアンタの方がずっと使いこなせるだろ?」
そう告げてサポートアイテムを手渡してくる耳郎。
「……良いのですか?」
逡巡している鈴仙に耳郎響香は語る。
「大丈夫、サポートアイテム無しでも私は強い……鈴仙はソレを何よりも知っている筈だろ? 行ってくれ‼︎ 此処は私たちに任せて‼︎」
そう叫ぶ耳郎響香に背を向けて鈴仙は緑谷達がいるヒューマライズの施設最奥へ到着する。
「がっ⁉︎ 強い‼︎ けど……カロライナスマッシュ‼︎ ッ⁉︎ コレも反射される⁉︎」
スマッシュが反射され床に吹き飛ばされた刹那……緑谷を狙撃する様に撃ち込まれるレーザー光線の集中砲火、脚を貫かれ機動力を削がれた緑谷が何とか回避しようとするもフレクト・ターンの個性『反射』により的確に射線を計算され撃ち込まれたソレは緑谷の額を撃ち抜く筈だった。
「全く……反射ですか……中々に厄介な個性ですね、脚を撃ち抜かれてもまだ動けますね? 緑谷さん……」
緑谷の額や心臓を貫く直前にレーザーが全て霧散する。
「……そこの小娘は……突然現れた? そういう個性か? 重病人が増えた……病は完全に消さなければ‼︎ この世界の為に‼︎」
再度施設内のレーザー光線発射口を操作してレーザーを射出したが鈴仙には波長が関連した攻撃が通る事は絶対に無い。
逆にレーザー光線を操作してフレクトに当てるが即座に反射される。
しかし、反射されても更に強く反射し返す鈴仙。
レーザー光線が激しく反射を繰り返すがフレクトが焦燥の表情を浮かべているのに対して鈴仙は涼しい顔である。
そもそも反射とは物理学において、光、音、熱などの波やエネルギーが、ある表面や境界に当たってその進行方向を変え、元の方向に戻る現象を指す。
反射する物が波長に関連している物ならばそれ故に……
レーザー発射口から射出されているレーザーの軌道を容易く操作しながら鈴仙は語る。
「緑谷さん、此処は任せてください……貴方はロディの援護を……ロディが行った最奥にもレーザー発射口が無数にありまして……貴方には其方を潰してもらいたい、そうしたら私も少しは此方に専念できる」
そう語る鈴仙は緑谷の心臓と額をを撃ち抜こうとしていたレーザーを霧散させると逡巡している緑谷を説得して行かせるとソレを追いかけようとしたフレクトターンを不可視の防壁を創り上げて止める。
「何処に行こうとしてるんですか? 貴方の相手はこの私ですよ……貴方の企みなど、もはや水泡に帰したのです……そこまで理解できない訳じゃないでしょう? ほほぅ……レーザー発射口を壊しましたか……しかし、当てが外れましたね……其処にある物のみに頼るのは三流のやる事ですよ……」
そう告げると鈴仙は耳郎から受け取ったサポートアイテムを手に嵌める。
「言い忘れましたが……反射を無限に繰り返したらどうなるのか……気になりますね……ほう、自動的に反射……それも此処までとは……」
そう語ると鈴仙は自身に返ってきた光と音、熱の波長を操作して更に増幅させてフレクトターンにぶつける。
更に全てが反射され鈴仙へと全て返ってくるがソレすら即座に反射しフレクトターンへと返す。
更に増幅し……更に反射され更に増幅……終わりの無い無限の反射が起こっていた。
フレクトターンに撃ち込まれた物が反射してくるが……反射してくる物が光や熱、音である以上、鈴仙が遅れを取る道理は一切ない。
フレクトターンに向けて全てのエネルギーを無限に反射させていく。
「ぬぉぉぉぉ‼︎ ふざ……けるな‼︎ 重病人め‼︎」
そう叫ぶフレクトターンであるが全てが無限回反射される。
そして……遂にその時は訪れた。
個性の限界点。
無限回の反射により耐えきれなくなったのか……フレクトターンが装備している外骨格金属器官アラクネがバキッと鈍い音を立てて破損し爆音による物理的衝撃がフレクトターンの鼓膜を揺さぶり強烈なストレス反応が散見される。
「ふぅ……ようやく個性の限界点まで達しましたか……ようやく貫通出来た……」
そう語ると鈴仙は耳郎響香のサポートアイテムをを手に嵌め更なる追撃を仕掛ける。
即ち……音と光による更なる攻撃。
貫通はしない様にエネルギーを調節しつつ何発か当てて完全に気絶させる。
そして……爆弾の解除キーも無事に完了した様で笑顔の2人が最奥から戻ってきた……。
後日談。
日本のヒーロー、デクの名誉は完全に回復され冤罪は晴れた。
そして……帰国の直前にロディが見送りに……。
そうして、ヒューマライズの事件は幕を閉じた。
オセオンの高層ビルの最上層にて。
黒いスーツに身を包んだ氷叢凍はイヤホンを装着して相手から差し出された音声ファイルを確認する。
「……ん、了解、じゃあコレが支払いね……ソレはそうと、鈴仙の冤罪の証拠は? ふーん……成程ね、じゃあまた追加で払うから宜しく」
そう告げると取引相手は退室していき部下がある物を手渡してくる。
「……凍さん、コレが頼まれていた物です」
……凍は両眼の視力を喪失しているがソレ以外がずば抜けて発達している。
「ん、了解……さてと、これから忙しくなりそうだ……本業の方も繁盛させなければな……さて、諸君……これまで以上に忙しくなるぞ? なんせあのオール・フォー・ワンのパトロンや信奉者、支援者を叩き潰さないといけない……奴等はゴキブリより生命力があるからなぁ……オール・フォー・ワンに与する輩は全員殺せ」