【完結】ウサミミ少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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本作では塚内直正をキャリア組として扱っています


最終決戦
引き換えるものの価値


 青山がクラスメイト達に励まされた翌日。

 警察署内部会議室にて対策会議が行われていた。

 出席者はオールマイト、八意永琳、鈴仙、ホークス、ラグドール、塚内警視、アメリカ空軍戦闘爆撃機の乗組員(パイロット)……そして警察官100名。

 オールマイトが口を開く。

 

「青山少年はセントラル拘置所にてDr.の検査を受けて検査結果待ちです、Dr.曰く……99.9%の確率でナガンのような仕掛けは無いとの事です……」

 

 一呼吸置いたオールマイト、その続きをホークスが引き継ぐ。

 

「青山一家の件で我々は一気に動きが制限されることになった……此処に集まってもらった貴方達は……ヒーロー公安委員で働き人事を司ってきたこの私が知る限り最も誠実で優秀と思えるヒーローです……万全の身辺調査は叶いませんでしたがこの中には内通者は居ないと信じたいと思っています……此処に居る者達は状況証拠や様々な観点から見た結果……限りなくシロに近いと判断して話を進めます」

 

 そうして……話が纏まる。

 (ヴィラン)連合及びダツゴク達の各個撃破及び最低でも10kmの距離を取る。

 

 敵の全戦力を全て分断、各個撃破。

 言うは易し行うは難し……敵の全戦力を一定の箇所へと誘導するなんてとてもでは無いが成立する未来が見えない。

 警察官達からも戸惑いと猜疑の声音が響く。

 能天気すぎる、そんなのが出来たら苦労はしないと。

 

 それに対してオールマイトは答える。

 

「えぇ……ですからこの条件(・・)を成立させるために作戦が必須事項なのです……」

 

 そう語り……塚内さんが語る。

 

「青山と……鈴仙か……」

 

「……私はまだ動揺しているよ、塚内君……“無個性”に生まれて……悪魔に人生を使い潰されている少年……」

 

 疲労が色濃く残った顔で塚内警視は語る。

 

「同情はするが……社会(われわれ)と自分達を天秤にかけて社会(われわれ)を捨てた現実は変わらないし揺るがない……立場上、俺は慎重にならざるを得ないな、更に付け加えるならば……一時的であろうとも鈴仙の死を前提にした作戦などこちらとしては絶対に願い下げたい所だよ……」

 

 そう苦虫を噛み潰したような表情で語るのは……自分よりも10以上、年下の子供を巻き込まざるを得ない作戦が必須故にだろうか……。

 それを踏まえて……鈴仙は極めて冷静を保つように自分自身に波長操作を行い務めて冷静を保ちつつ口を開く。

 

「しかし、どの道私が一度死ななければこの誘導が成立しない……青山さんからの連絡を受けようともオール・フォー・ワン達からしてみれば私という存在が生きているだけで……ヒーローの陣営に私という埒外の存在があるだけで凡ゆる方策が破綻しかねないので例え青山一家からの通信が来ても警戒をしているでしょう……だったら一度私は盤面を降りましょう、確実に死にましょう……そしてオール・フォー・ワン達にはこのまま圧倒的な優勢を保ってもらいましょう……その方が読みやすい事この上ない……私と言うちっぽけで矮小な存在の死で相手戦力の全ての誘導という極めて難しい作戦の成就と引き換えられるのならば……喜んで一度死にましょう」

 

 圧倒的な優勢。

 自分達の狙いや作戦は悉くピタリと当たり、敵の読みや作戦は呪われた様に悉くが外れる。

 勝負の世界で誰もが一度は夢見るこの状況が生まれる原因は主に3つ。

 両者の間に絶対的な実力差があるから。

 自分又は自分達に最高のツキが回ってきているから。

 そして……その状況を作る事それ自体が敵の狙いであるから。

 

 鈴仙は不遜な笑顔を浮かべて思案する。

 

(……さぁて、1番厄介な相手が盤面を降りた……とすれば相手はさぞかしご満悦でしょ?)

 

 そうして……会議の内容を煮詰めていき大筋を描き上げて会議は終了した。

 鈴仙は会議室を退室する間際に……塚内警視から依頼されていたとある情報を掴んだと……塚内警視の脳内に叩き込む。

 情報を叩き込まれた塚内警視は鈴仙へ会釈を兼ねた礼を告げる。

 


 

 ヒーローと警察の合同会議が終了し警察官のみが残った会議室で塚内直正は語る。

 

「ホークスと似た様な言葉になってしまうが……此処に集まってもらった君達は……人事を司ってきたこの私が知る限り最も誠実で優秀と思える警察官達だ……万全の身辺調査は叶わなかったがこの中には内通者は居ないと信じたいと思っている……」

 

 そこで一旦言葉を区切り……自身が招集した警察官達を見て語る。

 

「単刀直入に言おう……君たちの命を私に預けて欲しい、2つ……やって欲しい仕事がある、だがそれは常識的な仕事では無い……体力的にも、そして法的にも限界を遥かに超える仕事となる……そこまでしなければ……『奴等』を倒す事は出来ないのだ……私が死ねと言えば死んで欲しい‼︎ 10日でも20日でも不眠不休で働いて欲しい‼︎ 力を貸してくれ‼︎ これ以上市民が死ぬのに耐えられるか⁉︎ これ以上‼︎ 同僚が無駄死にするのを我慢できるか⁉︎」

 

 そう叫ぶ塚内……。

 召集された100人の警察官達の眼を見て語る。

 

「諸君の眼を見れば分かる……ついて来てくれるようだな……やるぞ‼︎」

 


 

 青山優雅は拘置所の面会室で相澤と面会していた。

 強化ガラスで仕切られた壁の向こうで暗い表情で俯く青山優雅に対して相澤はゆっくりと語る。

 

「あそこまで言ってくれる友人なんてこの先何人も出来ないぞ? 特に鈴仙に至っては腕と眼を喪失して……しかも服毒して死ぬかも知れない状態だったのに君は悪くないなんてな……」

 

 相澤消太はDr.から告げられた検査結果を確認してからそう語った。

 ……考えてみれば裏切りに対して強制爆破なんて能力を植え付けているのならば“見せしめの殺人”や“拷問して殺す”などの念入りに余白を潰す様な脅しは必要ない。

 だから……オール・フォー・ワンは青山一家に……この子に植え付けていた……恐怖という名の植物の種子を。

 相澤は……生徒であった青山をガラス越しに見ながら……呟く。

 

「恐いか?」

 

 その言葉に青山は肩を震わせて反応した……。

 表情には出ないが……纏わり付いた恐怖がその眼に見える。

 

「さっきも言ったが……あぁも言ってくれる友人達はこの先何人も出来ないぞ? 何が恐い? オール・フォー・ワンが恐いか?」

 

 その言葉に……青山は暗い表情のまま、俯いたまま答える。

 

「はい……そして、僕は彼らの様にはキラめけない……それが恐い……彼らが僕を信じてくれればくれる程、僕自身が僕を信じられなくなってます……彼らの手を取れたとしても、オール・フォー・ワンを前にしたら又……僕は同じ事を繰り返してしまうかもしれない……それが、堪らなく恐い……だからもう……降りたい……何処か日の当たらない真っ暗な場所で死ぬのをただ待つだけがいい……」

 

 振り絞る様に語られたそれを聞いて……相澤は語る。

 

「情状酌量はあるかも知れん……しかし犯した罪は消えない、青山……この戦いが終わってもお前は雄英に残れないかも知れない……鈴仙やクラスメイト達は友達だから優しく言ってくれていたが俺は違う、ハッキリ言ってやる……戦え……戦うしかないんだ、お前は」

 

 植え付けられた恐怖を無理矢理にでも取り除き引っ剥がす……。

 相澤消太に与えられた役割はそれだ。

 しかし恐怖という……眼に見えない鎖に雁字搦めの人生で、絶望という水に浸され続けた者の苦悩は……果たして如何程のものなのだろうか……。

 相澤の言葉に対して青山は震えながら語る。

 

「分かってます……勝たなきゃ……勝たなきゃいけないから……わかってる、勝つ為のコマにならないと……対等に……」

 

 ……対等に……か。

 緑谷にもそう言っていたと、そう聞いた。

 それを踏まえて……相澤は語る。

 

「この状況下だ……俺たちとオール・フォー・ワンに大した違いはない、お前を利用した作戦を立てるんだから、そりゃそうだ……だが、このまま降りて罪に苛まれたまま薄らと死んでいくなんて事を俺は許さない……俺がヒーロー科担任でお前が生徒である限り……まだ除籍するつもりはない、この先一生負い目を抱える生き方など、教師(おれ)は生徒に教えない……惨めで情けなくても手を差し出してくれた友と歩め……俺達が守る、断言する……アイツらといれば大丈夫だ」

 

 それを聞いて……青山の表情が僅かながら明るさを取り戻す。

 しかし、すぐに俯いて語る。

 

「ただ……僕の様な罪人1人に……何が出来るのか……」

 

 相澤は……諭す様に語る。

 

「お前1人で歩ませる訳がないだろう? その道は皆が歩む道だ」

 

 そう告げる相澤……。

 それを聞いた青山の表情は憑き物が落ちたように、覚悟を決めた表情であった。




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