相澤は……A組の寮に皆を集めて語った。
何人かは今から相澤が話す内容を察している様で……聴きたくない、信じたくないと言った表情をし耳を塞いでる者すらいる。
無論、まだ情報の伝達が行われていない為に相澤が何を話すかを理解していない者もいるが。
相澤が沈痛な面持ちで口を開く。
「……何が起きたか既に察している者も居ると思う……鈴仙の事だ」
そう口を開くと……顔を伏せていた者達の肩がビクッと揺れ……嗚咽が漏れる。
相澤も言いたくない事だが……伏せておく訳には行かない。
「鈴仙は20分前に死亡が確認された……遺体は今……医務室の別棟に安置されている、最期に顔を出してやってくれ……そして……心残りがない様に別れの挨拶をしてやってくれ」
A組B組のクラスメイト達は……聞きたくもなかった、信じたくもなかったその訃報を聞き……ある者は号泣して、ある者は天井を見上げて……ある者はこの怒りと悲しみの行き先をどうすれば良いのか分からず机を強く殴って……19人はそれぞれがそれぞれ……深い悲しみに暮れていた。
エンゼルケアの全行程が終了した遺体と対面したクラスメイト達は生きている様にしか見えない鈴仙に触れて思い出を語り合う。
その中でも物間寧人と拳藤一佳の落ち込みようは群を抜いていた。
一佳を慰めてはいるものの物間の表情も哀しみに染まっている。
「鈴仙……鈴仙‼︎」
遺体に縋りついて泣き喚く一佳。
深い悲しみが39人を包み込んでいた。
そうして……遺体は鈴仙の家であった永遠亭にて安置される為に八意永琳によって運ばれていった。
永遠亭、鈴仙の自室にて。
畳の上に敷かれた布団で死装束を纏いながら臥せる鈴仙。
「ゲホッ‼︎ ゴホッ‼︎ 本当に死ぬかと思った‼︎」
永遠亭の自室で息を吹き返した鈴仙。
予定よりも大分自己蘇生に時間が掛かった。
本来想定していた時間よりも14時間は遅れている。
通常……心臓を停止させれば脳に酸素が廻らなくなり脳死になるのだが……。
鈴仙が独自に開発した機械でコールドスリープ状態に陥らせて一時的な仮死状態を極めて長時間継続させる。
元々は食材保存用の機械を作る様に頼まれて片手間で作った物なのだが応用すればこう言う事にも使用可能。
だが本来の使用用途では無いのに加えて根本的な問題、稼働実験すら終えていないサンプル品、上手くいく確率は4割以下であったが賭けには勝ったようだ。
遺品として自身の隣に安置されていたヒーローコスチュームを着込むとルナティックガンを装着して動きを確かめる。
「……問題無し」
そう呟いて立ちあがろうとしたがぐらりと倒れ込む。
流石に仮死状態、長時間の擬似的な脳死による脳へのダメージと肉体へのダメージは避けれなかったらしく左半身の感覚が一切ない。
不可逆的なダメージではない事だけが救いである。
しかしながら利き腕や利き脚が使えないのは痛いが……波長操作を応用すればどうとでもなる。
神経系を掌握し壊れた配線を繋ぎ直す様に操作して動かす鈴仙。
そうして……行動を開始した。
鈴仙の死から3週間後。
戦線に向かう者達はその拠点を雄英の寮から仮設防衛施設『トロイア』に移しており決戦を翌日に控えていた。
拳藤一佳は……自室で物間寧人と一緒にコーヒーを飲みながら語らう。
「なぁ物間……私は……私は……怖いよ、鈴仙だけじゃなくお前まで喪うと考えたらとても怖い……」
鈴仙の死後、B組を牽引して気丈に振る舞ってきたアネゴ気質の一佳であるが……逆に言えば弱音を吐露出来ない立場にある。
日々、
それにいち早く気づいたのは物間寧人であった。
そうして……物間は一佳のメンタルケアを取り行っている。
泣き叫ぶ一佳の頭を優しく撫で続ける物間寧人であった。
そうして……ヒーローも
計画の殆どは上手く行った。
デクが離島から戻ってくる間、時間を稼げば良い。
イレイザーと物間が抹消をし続けており死柄木弔は個性が封じられている状態。
だが……ハプニングという物は戦場ならばどうあっても起きる物である。
突如、ワープゲートが開いたと思ったら雪崩れ込むはトゥワイスの血で変身したトガヒミコ。
抹消が途切れれば死柄木弔の個性は一気に天の棺を崩壊に至らしめる。
だが、視線を切る訳には行かない。
しかし目前に迫る死の大群。
大量の膨れ上がった万を越すトゥワイス、その内の1人のその手が……物間寧人とイレイザーの両眼を抉ろうとした瞬間……遥か上空より降り注いだ虹色のレーザーが全ての複製トゥワイスを貫き、薙ぎ払いダメージ上限を遥かに超過させて消滅させる。
イレイザーも物間も……眼前で起きた事を信じられなかった。
いや、見間違える筈もない。
その虹色の弾幕は……特徴的な銃器を扱う者は……2人の知る限りこの世に1人だけだった。
その人物はもうこの世にはいない存在、その筈だった。
目深に羽織ったフードを脱ぎ捨てて……脚先まで伸びた髪と特徴的なウサミミをたなびかせてその少女は叫ぶ。
「鈴仙・優曇華院・イナバ……これより本作戦に復帰する‼︎」
そう叫ぶのは……もう一度会いたいと願って止まない存在であった。
場面は変わりオール・フォー・ワンの居る群訝山荘。
其処に配置されたのはエンデヴァー、そして八意永琳であった。
オール・フォー・ワンはエンデヴァーの超火力を凌ぎつつ決定打を打ち込もうとするが永琳がそれを赦さない。
避けられない軌道、回避できない軌道で的確に矢を撃ち込んでくる永琳。
「煩わしいねぇ……なぁ月の賢者? だが君の娘は既に死んだ、護るものなど何も無いと言うのに……一体何をそこまで護る?」
口撃によるメンタル低下を狙いその口を開くオール・フォー・ワン。
だが……永琳は二の矢三の矢を番え放ちながら語る。
「あら? 素晴らしい情報の提供ね? しかし……私の娘が1度死んだだけで死ぬと思ったら大間違いよ? あの子が打った薬はね……特別なのよ? 蓬莱の薬はね……」
そう語り、矢筒が空になった瞬間にオモイカネディバイスとオモイカネブレインを起動してレーザー光線を束ねて1本の矢としオール・フォー・ワンへと撃ち込む。
千変万化の軌道に沿って動く光の矢に貫かれながらオール・フォー・ワンは超再生などの個性を総動員して再生する。
そして先ほどの言葉の意味を理解し……その顔を歪ませる。
永琳は……それを見て語る。
「気づいたようね? でももう遅いわ……貴方が此処にワープした時に言ったでしょう? チェックメイトだと……チェックメイトって言うのは討ち取ったと言う報告よ? だから、もう終わり」