【完結】ウサミミ少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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友情 努力 勝利

「これより本作戦に復帰する‼︎」

 

 そう叫ぶその姿……見間違える筈もない。

 抹消で死柄木弔を見続けながら……嗚咽混じりの震えた声音で相澤も物間も叫んだ。

 

「鈴仙‼︎」

 

「鈴仙さん‼︎」

 

 その言葉に対して鈴仙はいつもしていた様に片手を振ってウインクで返す。

 そうして……己が個性で電磁シールドを停止させる事なくシールド内部へと潜り込むと心臓を損壊し瀕死となった爆豪と蘇生及び治療に当たっているジーニストとエッジショットをチラリと見て……マグマの様に噴出しそうな怒りを抑え込みつつ死柄木弔へと接近する。

 死柄木弔は死んだ筈の人間を見て……叫ぶ。

 

「死んだ筈‼︎ 貴様は‼︎ お前は‼︎ 何故……何故⁉︎ だが……既にこの天空の棺は堕ちる……万策尽きたろう? 終わりだヒーロー‼︎」

 

 その言葉に、鈴仙は黒く鈍色に煌めく戦闘用義腕の人差し指を銃の形にして自身でもびっくりする程冷静に、澄み切った思考と冷え切った声音で言葉を返す。

 まるで50年来の友人とでも話すかの様に、とても軽快に語る。

 

「死んで、地獄から帰ってきたって所だよ……地獄の閻魔様から地獄を追い出されたとでも言えば満足か? 堕ちる? 波長……それも電子制御なら凡ゆる全てが私の十八番だ、舐めるなよ……たかだかシステムの乗っ取りをした程度でこの私から制御権を奪えると思ったか⁉︎ 考えが甘えよ‼︎」

 

 そも、人間の組成構造上……常に波長によるやり取りが行われている、人間とは鈴仙からしてみれば波長による膨大な電子制御のやり取りの塊。

 15年間染み付いているその感覚は、初めて見る構造すらよく知らぬ機械を直感だけで動かし、何よりも効率よく簡単に全てを理解させる。

 故に……電子制御された機械の塊など鈴仙からしてみれば玩具に等しい。

 

「ッ‼︎ 世迷言を‼︎ 死人は素直に死んでいればッ‼︎ 目障りだ‼︎」

 

 数百にも及ぶであろう虹色の弾丸を自身の周囲に構築しその全弾を撃ち込み、更にシステムの再構築と再制御を同時並行で行いながらそう語る鈴仙。

 死柄木は……その言葉に苛立ちながらも埒外の、理外の力を以って鈴仙を殴り殺そうとする。

 触れれば崩壊が為されるその手で、鈴仙の顔面を掴もうとするが……スルリと透過していきそのまま体勢が崩れた所をクロスカウンター気味に顎を殴られる。

 抹消が効いている以上、死柄木弔の個性は封じられている、故に半分の力と言っても過言ではない。

 しかしながら、鈴仙の個性の50%はシステム制動とクラッキングへの対処へと割かれており同じくフルパワーとは言えない。

 故に死柄木弔と鈴仙は互いに同じ事を考えていた。

 大将を討ち取るのにわざわざ一騎討ちをする必要は無い。

 徒党を組んで袋叩きにすれば良い、友情努力勝利、それは綺麗事ではない……戦いに関わる者全員が紛れもなく主役。

 だから……。

 互いに瞳を見据え……鈴仙も死柄木弔も、どちらともなく語り出す。

 

「私たちが勝つ」

 

「俺たちが勝つ」

 


 

 オール・フォー・ワンは思案する。

 彼方の掌握も行わなければ新たな身体を得る事が出来ない、そろそろ羽虫を踏み潰し向こうの僕を完全に屈服させて次のフェイズへと段階を進まなければならない。

 エンデヴァーは片手片足をもぎ取られて虫の息……残るは、ともすればオールマイト以上にこちらの悉く全てを邪魔し続けてきた月の賢者……八意永琳。

 

「……僕はこれ程までに思い知った事はない……執念てのは恐ろしいものだ、だが護るべき者はもうないだろう? 最愛の友人を喪ったのは僕のせいか? なぁ八意永琳……もう居ない人間の事で執着するなんて馬鹿らしい……くだらない女だったな、つまらない女だったな、死に様を見たが……グズで愚かな売女にとても似合う美しい死に様だったよ」

 

 八意永琳の最愛の友人。

 鈴仙の母を、自身の最高の友人の死を愚弄されて怒りに頭が染まる永琳。

 冷静さを欠き怒りのまま突進しようとした瞬間……別人の、第三者の氷の様に冷たい声音が響き渡る。

 

「凍れ、ゴミの様に死ね」

 

 その言葉と同時にオール・フォー・ワンの身体を覆う凍氷。

 即座に破られるが破った瞬間、オール・フォー・ワンの身体を極寒の吹雪が襲いかかる。

 真っ黒なスーツを着込み氷を足場として空中に浮遊しているその存在を……八意永琳は知っている。

 顔を見ずとも、その姿を見ずとも知っている。

 同じ学舎を卒業し、同じ夢を見た親友なのだから。

 永琳は物理的にも冷え切った頭で思考して……白い息を吐きながら自身の背後に佇む存在に語りかける。

 

「遅いぞ、凍……」

 

「あら? 猪みたいに突っ走って死にに行こうとしたのは何処の馬鹿かしら? 助けたのに感謝の言葉もないなんて……その頭に入ってるのは脳味噌ではなく無駄に育っているその胸の脂肪の塊かな?」

 

 物理的に冷え切った事により冷静さを取り戻した永琳。

 オモイカネディバイスとオモイカネブレインで虹色に煌めく弾幕を、絶え間ない弾雨の流星をオール・フォー・ワンへと叩き込みつつ皮肉混じりに語ってきた凍へと言葉を投げかける。

 

「実際、遅すぎだ……お前、作戦行動から1時間経過しての遅刻はどう言い訳するつもりか知らんが給料分は働け、アイツの仇を取るぞ……此処で」

 

 氷叢凍はその言葉に対して鈴仙の母との思い出を思い浮かべ……そうだなと短く語り……眼前の魔王を塵芥にする為自身の個性を解放する。

 炎熱最強と名高いエンデヴァーと双璧を成す氷叢家長女……。

 その力が余す事なくオール・フォー・ワンへと叩き込まれる。

 凍は冷ややかな声音で語りかける。

 

「間接的にせよ何にせよ……私達の友を殺したのはお前だ、お前の穢れた口でアイツを語るな、アイツを穢すな……因果応報、巡り巡って貴様の罪を贖う時が来たぞ? 痛いと思う暇もなく氷漬けにして殺してやる」

 

 氷の刃を生成してオール・フォー・ワンへ向ける凍。

 そして虹色の弾丸を展開してオール・フォー・ワンへと叩き込む。

 対してオール・フォー・ワンは複数個性で対処するもそれを許す2人ではない。

 オール・フォー・ワンの刹那の隙を突いて凍がその刃を脳幹に、永琳がその虹色の弾丸をオール・フォー・ワンの心臓へと深く深く突き刺した。

 中空で……数秒ののちに全身が弛緩し死を迎えるオール・フォー・ワン……。

 それを見て……ようやく仇を取ったと……そう天を見上げる2人であった。




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