天空の棺内にて……文字通り天を舞う者が2人。
爆破を器用に扱いマニューバを思わせる様な機動で迫り来る巨大な手を振り切って……収束したタイミングで、ここぞと言うタイミングで全力の爆破で貫き通す爆豪勝己。
そして……資材等を黒鞭の起点にし同じくマニューバを思わせる立体機動で迫り来る手を回避し切ってからワン・フォー・オールを叩き込む緑谷。
両者共に……持てる最大火力を叩き込んでいるが……ソレでもなお足りない、届かない……巨大な肉塊と化した手が肉の盾となり
舌打ちする爆豪と苦い顔をする緑谷。
2人は思案する。
システムにハッキングをされて降下し始めていた天空の棺の主導権も先程鈴仙とラブラバが逆ハッキングにより完全に掌握した故に心配はない。
……ソレは良い、だが……根本的な問題。
火力が足りない、ソレも圧倒的に。
ない、ないない、ない。
何が無いって……手数が足りない、そして火力が足りない、時間も足りない、決定打が足りない。
4つの無いを視線を交わして理解し合う幼馴染2人。
広範囲かつ高火力を叩き込める轟焦凍や鈴仙、八百万百が居ればかなり楽になったのだが無い者ねだりしても始まらない。
其処へ……マンダレイからのテレパスが入る。
『3秒間、電磁シールドを解除する‼︎』
唐突に紡がれたそのテレパスに返事をする事なく、紡がれる爆破音と光すら置き去りにする神速の移動による打撃が
そうして……尤も短く尤も長い3秒間が終わり……天空の棺内部へと踏み入ったのは……アーマーを着込んだオールマイト、ソレに……エンデヴァー、轟焦凍、A組の面々。
そして、氷叢凍と、八意永琳。
氷叢凍は見えない眼で
「向こうのオマエとの激戦で限界かと思ったか? 舐めるなよ? オール・フォー・ワン……」
膨大な年月を掛けて深く深く個性が円熟され、それに伴い醸造された氷叢の個性を扱い……氷叢凍が仕掛ける。
空中に舞う氷の嵐と共に吹き荒れるその透き通る程に冷たい刃がオール・フォー・ワンの肉を切り刻む。
そして……更に全身全霊の更に向こう側、Plus Ultraを胸に全力を擲つのは何も氷叢凍だけじゃない。
エンデヴァーと轟焦凍の赫灼熱拳が叩き込まれる、膨大な熱と、全てを凍らせる極寒で無数に膨れ上がった手が粉微塵となっていく。
八百万百が創造で創った電磁投射砲に必要な電力を溜めて、放たれる眩い程の砲撃。
凄まじいエネルギー消費だが上鳴の鍛え上げた個性はまだまだ持つ、故に2秒でチャージを終えて再度砲撃を放つ。
アーマーを着込んだオールマイトも……オール・フォー・ワンと対峙しておりA組メンバーの個性を模倣したサポートアイテムで援護及び直接の攻撃を行う。
そうして……無数の者が積み上げてきた執念で……緑谷と爆豪の攻撃が本体たる
爆破と神速にすら届き得る打撃が
その時……眼に見えて、
それを見て……幼馴染2人が更に乱撃を叩き込む。
その瞬間……器に注がれた水が限界に達して溢れ出る様に、
それを見て……拳を打ち込んだ緑谷が何かを悟った様な表情でソレを見送る。
ドス黒い触手の様な化け物をレーザーで焼き払いながら深淵を進む鈴仙と物間。
精神世界において……精神が砕かれる事はそのまま死を意味する。
物間はそれを鈴仙の精神世界に飛び込んだ際に思い知っている。
それに、まだ此処は浅い。
深淵に到達しオール・フォー・ワンの精神自身を打ち倒すにはまだまだ深い所へと潜らなければならない。
深層へと続く扉を潜るたびにオール・フォー・ワンの精神世界に於ける防衛機構でもある黒い触腕による襲撃は苛烈なものとなる。
そもそも、無理無茶無謀な話である……人の精神世界に飛び込みそれを叩くなど。
しかし、他でも無い鈴仙自身がその無理無茶無謀を前提にした作戦を立案、遂行している、物間寧人が居てくれたから此処まで進めたと言っても過言ではない。
精神世界に入りこんでから何分経過したかは不明だが……深淵の更に向こう側、深層の最奥部に潜り込んで……核へと辿り着いた鈴仙と物間。
精神世界でのオール・フォー・ワンは膨れ上がった悪意そのもの、意志が意思をもって……意識を向けて鈴仙と物間を排除に掛かる。
この精神世界に於いても、オール・フォー・ワンが奪い取った個性は扱えるらしい……。
万を超えるであろう膨大な、多種多様な個性が2人を包むが、鈴仙と物間は互いに言葉の一つも交わさずに繋いだ手、その指の微かな動きのみで語り合う。
指の微かな動きで互いに意思疎通を行い、繋いだ手の僅かな感触や力加減で、ただそれだけで次の動き、次の次の動き、更に次の動きすらも互いに理解し互いに寸分の違いも無く意図を読み取る。
そして……周囲の触腕が何らかの要因で抑え込まれた刹那よりも短い隙を突いて……鈴仙は物間と共に全身全霊の一撃を、虹色に煌めく砲撃を放つオール・フォー・ワンの核へと向けて放つ。
みんな、誰かの思いを紡いで繋いで、継いで、此処まできた。
全てを乗せて……眩い程の虹色の砲撃に貫き穿たれた
しかしながら、まだ完全崩壊には至らない。
2撃目を放とうとした刹那……オール・フォー・ワンに呑まれた筈の微かな魂、しかし、その微かに明滅する魂が、オール・フォー・ワンへの叛逆の意思が動く。
微塵も残っていなかった筈の死柄木弔の残火……微かな火、吹けば飛ぶ様な小さな焔が……その意志が紛れもなく意思を持って叛逆を行う。
魂とでもいうべきか……はたまた執念か、人によりその言葉や表現は千差万別だが……オール・フォー・ワンの敗因はたった一つ。
人を、人の思いを踏み躙りすぎた。
魔王に憧れた男の……終焉であった。
『さっさと脱出しましょうか、余裕は無さそうです』
そう語る鈴仙。
砕けていく精神世界に長居は無用。
浮上しなければ自分達も巻き込まれる。
沈没した潜水艦よりも酷く潰れるのは眼に見えている。
そうして……物間寧人も鈴仙も自身の肉体へと辿り着いた。
脳を直接掴まれて揺さぶられたような、そんな酷く痛む感覚を叩きつけてくる頭を左右に振って鈴仙と物間は起き上がる。
管制塔から、天空の棺を視認すると……無事に終えた様で……それを見届けてから酷く痛む頭痛に耐え切れずに物間寧人も鈴仙も意識を手放した。