決戦から2ヶ月が経過して、街並みは少しずつであるが元の姿を取り戻しつつある。
そんな中……永遠亭の病室でベッドに横たわり点滴を打たれている鈴仙。
微睡む意識を覚醒へと運んで……ゆっくりと起き上がる。
この2ヶ月色々あった。
先ずは……自身の死を前提に立案した作戦行動。
これに関してはA組メンバー、B組、担任である相澤先生からとても怒られた。
怒られた時軽く表現するのは些かよろしく無い……滔々と諭されてどれだけ悲しかったかを分からされた。
残った問題はと言えば……蓬莱の薬、そして国士無双の薬の完全除去。
その為に今現在、その薬の効能を完全に除去する薬を点滴で投与されている。
「あとやるべき事と言えば……右腕……というよりは身体全体のリハビリですね、根気が要りそうだ……」
大戦後、鈴仙の右腕は再生治療により復元された。
鈴仙の右腕を再生させる為に研究していた技術を基礎とした論文を永琳が発表。
時間がかかるが……四肢の欠損を解消できる様になった、とは言え未だに承認されていない治療法であり、リハビリの予後まで含めた全てが鈴仙自身を素体にした最終実験に近い。
オマケにあの時失った左半身の感覚を取り戻すには未だ至っておらず……お師匠様からは2年以上のリハビリが必要だと説明を受けた。
心臓の方もかなりの無茶と無理が祟ったのか心肺機能が極端に低下しており絶対安静、ヒーロー活動どころかヒーロー基礎学の通常カリキュラムですら鈴仙はドクターストップを受けている。
日々のリハビリにより僅かずつではあるが歩ける様にはなってきておりこのまま進めば日常生活に支障が無さそうなのが唯一の救いである。
留め置かれていた3年生達の卒業式も終えて。
そうして、進級となった。
一時的な退院を許可された爆豪と鈴仙。
2-Aと書かれた扉を見つつ中へと入る。
担任が誰かという話をしていると入ってきたのは相澤先生。
「例年なら担任は持ち上がりじゃないんだが……まぁ今年は事情が事情だ、もう1年宜しく……」
そう語る相澤先生。
そして……青山さんが自分の意思で退学を決意したと。
鈴仙もA組の皆も気持ちは同じ、残ってくれと……そう語るが決意は揺るがない様だ。
もう一度、ヒーローを志すと。
そうして……送別会の話題となり、それが落ち着くと新三年生の不和真綿さんからの連絡事項となる。
復旧活動がメインで行われると。
教科書に載るレベルの戦いの後には、必ず教科書に載らないレベルの混迷がある。
それらを可能な限りどうにかしていくのも含めて復旧だと。
そう語られる。
そうして……世界は変わらない様で少しずつ変わっていく。
数日後、ようやく退院を許可された鈴仙。
休日ではある。
だが、鈴仙は一佳と一緒に校舎内にいた。
雑務を終えて、未だに上手くは動かす事が出来ない左半身を動かしながら階段をゆっくりと昇るが僅か数段の階段ですら息が切れる。
たかだか20段もない階段を昇り終えるのに5分以上を掛けてようやく昇り終える。
荒い息を落ち着かせて……鍛え上げた体力も筋力も、何もかもが凄まじく低下しているのを改めて実感して隣に居る一佳へと語る。
「先に帰ってていいよ? 一佳……確かこの後予定があるって言ってたでしょ?」
10m歩くのすら20分以上掛かっている。
それを踏まえて語る鈴仙、隣に居る親友にもこの後の用事というものがある。
待たせるのは忍びないと、そう考えて告げるも一佳は無言で首を横へ振り鈴仙の頬へ優しく手を添えながら語る。
「ゆっくりでいいんだ、私は鈴仙の隣を一緒に歩いて行きたいんだよ……それに鈴仙が居なきゃ始まらないしな」
そう語られる。
含みのある言い方にやや疑問を覚えつつもゆっくりと……緩慢な足取りで寮へと辿り着く。
普通に歩けば10分程度の距離を1時間掛けて歩き、ようやくA組の寮へと辿り着く。
扉を開けて一佳が鈴仙を誘導する。
誘導されるまま鈴仙が中に入るとその眼に飛び込んできたのは退院祝いと書かれた垂れ幕。
主賓たる鈴仙、そして爆豪は皆の誘導で真ん中の席へと誘導される。
そうして退院祝いと称されたパーティーは深夜まで続いた。
永遠亭にて。
永琳は資料を読み漁りつつ吉田竜ドクターとの対談を行っていた。
爆豪勝己の両腕の再建手術。
永琳も少しはフォローをしたが大半は吉田ドクターの手腕が為せる技であった。
対して、鈴仙の右腕再建手術の卓越した技術を学びたいと、吉田ドクターも永琳との対談を行いたいという事で今回、永遠亭にて対談が組まれていた。
「それにしても……永遠亭で後輩だった君がアレだけの技術と腕を持った立派な医師になっていて嬉しい限りだよ、一時の間……一緒に働いた身としてはとても嬉しい」
永琳の言葉に吉田ドクターは首を横に振って語る。
「何をおっしゃいますか、月の賢者様ともあろうお方が……何より私が驚いたのはあの論文ですよ……画期的な手法でありながら、少し見方を変えればどんな外科手術にも応用が効く、1人の医師として……尊敬しています」
そう語り合い、話の内容は互いの医師としての考えや手術の手法。
そして技術の向上、知識の交換などに渡っていく。
そうして……1週間が経過した。
鈴仙の日々のリハビリも成果が出ており今では軽作業なら許可が出るほどに動かせる様になった。
心肺機能も安定してきており、衰えた筋力も少しずつではあるが戻ってきている。
歩行も少しずつ安定しており25m連続で歩いても息が切れなくなったのを確認した際は一佳や物間と共に涙を流して喜びあったものだ。
そうして夜。
一佳の部屋で、一佳が淹れてくれた珈琲を片手に思い出を語り合う。
様々な事があった。
色々な経験をした。
辛いことも、楽しい事も、悲しい事も…………だが、この思いがある限り折れることはない……。
何があっても……大丈夫だと信じ切れる。
そう語り合う鈴仙と一佳であった。
いつまでも続くこの思いを決して忘れない様にと願いながら、これからも続いていく日常に思いを馳せていくのであった。
2年間、長い様で短かったです。
これを持ちまして『ウサミミ少女のヒーローアカデミア』は完結となります
筆者の鈴仙が好きという気持ちで書き始めた物語ですが最終的には981人の読者様に読んでいただけて作者として、とても感無量でございます
最後になりますが、本作品を読んでいただきありがとうございました。