ヒーローネーム決めも終わり放課後。
飯田天哉が帰路に着こうとしていたので一声かけて隣を歩く鈴仙。
「飯田さん、途中まで一緒ですよね? 一緒に歩きませんか?」
そう告げて……了承される。
そうして、今日の授業は大変だったとか職場体験はどこに行くだとかヒーローネームがどうとか他愛のない話しを、取り止めのない話しを展開しつつ公園のベンチに座って少し休まないかと提案して2人してベンチに座り鈴仙は飯田天哉へと告げる。
「飯田さん、お兄さんの容態はどうですか?」
そう告げると飯田さんは憎悪の波長を出しながら語る。
鈴仙は自身の眼を通して感じ取れたそれを踏まえて考える。
別に憎悪の波長を出してるのはどうだっていい……家族が
そもそもとして、普通に肉親を傷つけられてまず犯人を憎まない訳がないし、笑顔で許す方が人としては欠陥だろう、故に今かけるべき言葉は……。
そう思案して鈴仙は飯田天哉の肩に手を置いて笑顔で語りかける。
「飯田さん、保須のヒーロー事務所へ職場体験に行って『ヒーロー殺し』を叩きのめして、それこそもう犯罪を犯すことが出来なくなるくらいボコボコにしてきてくださいね? アレですか? それとも今までの被害者と同じ目に遭わせますか? いっその事殺しちゃいますか?」
サムズアップしながらそう告げる唐突な鈴仙に自販機で購入したオレンジジュースを吹き出す飯田天哉。
酷くむせながら言葉を語る飯田天哉。
「な……突然何を言い出すんだ鈴仙君‼︎ 殺す⁉︎ ヒーローにあるまじき発言だぞ⁉︎」
コクッコクッとジュースを飲みながら鈴仙は言葉を返す。
「いえ……あまりにも『ヒーロー殺し』を語る貴方の眼がですね……とんでもなく……言葉を選ばずに言うなら目的の為ならば法を犯しても問題ない、そう考えている輩と同類の波長をしておりましたので……視野が狭まりすぎですよ? 家族が
一度言葉を切り飯田天哉の顔を見て、告げる。
「貴方が独断専行で飛び出していって、そしてヒーロー殺しを倒したとしましょう……そして警察に引き渡したとしましょう、いくつかの遵守するべき法律と規則を破ってまでヒーロー殺しを捕縛して、貴方はそれをいの一番に、真っ先に報告したい相手に報告してお兄様は喜んでくれるとお思いですか? 喜んでくれますか? 貴方は自身の行いを、兄に対して一切恥じる事なく報告できますか? やましい事は何もせずに正規の活動であったと胸を張って報告出来ますか? 正規の活動であったと……そう言える様にちゃんと正規のヒーロー活動をして下さいという話しです……すいません、話しを纏めるのが苦手なので……纏めるとちゃんと正規のヒーロー活動をしましょうと言う事です」
そう言って飯田天哉へとそう締めくくる鈴仙。
そう告げながら見る飯田天哉は……憑き物が祓われたかの様に、いつもの様に真っ直ぐ相手の顔を見ながら言葉を告げてきた。
「ありがとう……鈴仙君、確かに……視野が狭まっていた、僕が独断専行をしてヒーロー殺しを捕えたとしても兄は絶対に喜ばないだろうな……むしろ怒る……こんな大事な事にも気付かないほど……余程憎しみで一杯だったんだな、ぼくは」
いつもの飯田天哉に戻ったのを確認した鈴仙はベンチから立ち上がり告げる。
「では……私はこの近くなので……飯田さん、何かあったら頼って下さい、私だけではありません……クラスメイトの皆をです、友人達を頼ってこその、仲間を頼ってこそのヒーローだと私は考えます」
では、取り止めのない会話を失礼しました、そう告げて帰路に着く鈴仙。
飯田天哉が見えなくなった所で鈴仙は1人言葉を語る。
「誰かを頼る、誰かを信じる……か、過去の私が聞いたらどの口がっていうだろうな」
暗く表情を落とすが即座に波長操作を自身に行って文字通り切り替える。
そうして、鈴仙は八意永琳宅へと帰宅する。
制服を脱いでハンガーへと掛けて、宿題や予習を終わらせて一佳との通話を楽しみつつ良い時間となったので通話を切り上げて八意永琳が組んだトレーニングメニューをこなすと汗を流す為にお風呂へ入る。
20分後、お風呂から上がりいつもの様に丁寧にウサミミとウサギ尻尾の毛並みを整えつつスマホを確認すると飯田天哉からメッセージが入っており返信を行う.
そして夕食の時間となり、八意永琳と共に夕食の準備をする鈴仙。
本日の夕食は白米、ハンバーグとニンジンのグラッセ、油揚げ入り味噌汁、サラダであった。
食事が終わった後で……八意永琳が話しかけてきた。
「鈴仙、そう言えば貴女……好きな人でも出来た?」
突然そう聞いてきた八意永琳。
それを聞いた鈴仙は手に持ったスマホをスルリと落としたのにも気付かずに顔全体を紅潮させて、ウサミミを無意識的にグルグルと回転させながら上擦った声音で言葉を返す。
「お師匠様⁉︎ 唐突に何を⁉︎ いやいやいや、出来てませんよ……好きな人なんて、それは他の誰よりもお師匠様が1番ご存じの筈です……誰かを信じた分だけ、誰かを頼った分だけ、裏切られた時の重みが段違いになる……あんな思いをするくらいなら……私は別に」
暗い表情を見せながらそう呟く鈴仙。
八意永琳もすぐに言葉を返してきた。
「……そうね、無粋な事を言ってしまったわね、忘れて頂戴」
そう告げると八意永琳は抱えている仕事の為に仕事場としている自室へと篭り鈴仙も明日に備えて入眠した。
あと3日後には職場体験なのだ。
気を引き締めていかねばならない。