職場体験の2日目となった。
1日目は鈴仙とギャングオルカ達の顔合わせ、どう言った事をやるか、そしてヒーローという名の重み、そして明日からやる事をギャングオルカとサイドキックから学ぶ座学が中心であった。
そして、2日目深夜1時30分、真っ暗闇の中で鈴仙は沖縄の海の中に居た。
自身の波長を操作しつつ水中ゴーグルと小型のアクアラングを装着し水中を音を利用して海中環境に影響が出ない範囲で凄まじい速度で進む。
目的は30秒後に近くを通る密漁船の乗組員の捕縛。
ギャングオルカ曰く、違法改造を施した船舶らしく銃火器も搭載されているとの事。
そして何より、違法改造を施された魚群探知機が搭載されており今まで逃げられたのは魚群探知機の精度による所が大きい。
何せ魚ではなく人間を探知するセンサーと言っても過言では無い位に強化・改造が施されているらしくいつも惜しい所で逃げられてしまうとの事であった。
密漁船から降りて実際に密漁を行うのは所謂『闇バイト』で集められた者達らしくトカゲの尻尾切りで末端である。
これではいつまで経っても密漁の被害は無くならない。
しかも密漁に遭っているのは珊瑚などの希少性の高い物やアワビやワカメ、シラスウナギや伊勢海老といった被害額の大きいものであった。
当該水域に潜水し水中ゴーグルと小型のアクアラングを装備している鈴仙は別の水域で潜水中のギャングオルカへと交信専用の傍受されない様に調節した超高周波で会話を取り行う。
『こちらムーンラビット……当該水域に潜水中、対象は未だに現れず……このまま潜水を続ける……
『了解、ムーンラビットはそのまま当該水域を潜水を続けろ、こちらでも何かあれば即座に連絡を行う……
『
交信を終了して鈴仙は本来であるならば真っ暗闇で何も見えないであろう水中を見る。
しかし鈴仙は波長を自在に操作できる故に光を操作して自身の視界を真っ昼間同様の明るさにして視界を確保していた。
故にどんな暗闇でも視界が奪われることは無い。
鈴仙が潜水しておよそ1時間が経過。
鈴仙が水中で波長を飛ばして適宜確認をしていると左前方300メートルに漁船ではない謎の船が探知できた。
鈴仙は波長から銃火器などがあるのを確認。
該当船舶であるのはほぼ確実だが念には念を入れて照合をして貰う為にギャングオルカのサイドキック達に波長操作を応用してそのまま脳内に叩き込む。
数秒後、ギャングオルカのサイドキック達から当該船舶であるとの指示を受けて鈴仙はギャングオルカへと交信を行う。
『こちらムーンラビット、当該潜水海域にて密漁船が停泊し密漁を開始、指示を求む……
『こちらギャングオルカ、奴らの密漁は毎回3分で終わる、こちらが当該水域に向かうまでどれだけ速度を出しても4分はかかる為に逃走される恐れがある、その為……ギャングオルカの権限の下、ムーンラビットの個性使用及び
『
鈴仙は違法改造された魚群探知機のレーダーを波長操作で回避しつつ自身の波長を操作して一切の『音』を出さない様にし『光』を屈折させて葉隠透の『透明』を模倣しサーモグラフィーの要領で
そして海面へと浮上してから船舶へと忍び込みアサルトライフルを装備した見回りの1人を背後から裸締めで気絶させる。
気絶した
『こちらギャングオルカ、後1分で現着するムーンラビット、
『こちらムーンラビット、
『こちらギャングオルカ、ムーンラビット、後3秒で現着する、
『
そう交信を切断するとギャングオルカの命令通り待機している鈴仙。
交信が終了した数秒後、操舵室から轟音と共にギャングオルカの怒声が響く。
「ヒーローだ‼︎ 動くな‼︎ 大人しくしろ‼︎」
操舵室や船室から逃走しようとしていた密漁船の船員達は部屋から出た直後に見えない壁にぶつかりデッキに出る事も部屋へと戻る事も叶わずに別動隊として海上で待機しているサイドキック達も一斉に雪崩れ込んできて全員無事に捕縛された。
密漁の実行犯も戻るべき船がヒーローへと拿捕されて海面に浮上していた所を捕縛される。
その後はギャングオルカが海上保安庁へと連絡し直ぐに海保が現着し航海日誌やら何やら、その他の密漁品も全て押収していく。
そうして、仕事は終了した。
ギャングオルカとサイドキック達に労いの言葉をかけられる。
気付けば太陽が顔を出しており……ムーンラビットはギャングオルカとサイドキック達と共に朝日を浴びつつその他業務を終えてギャングオルカ事務所へと帰る。
そして、鈴仙は事務所に戻った現在シャワーを浴びている。
海水で髪が痛むのを緩和する為にケアを怠らずに念入りに洗っている。
シャワーを浴び終わり脱衣所で着替えを済ませると時間を確認し現在時刻10.30分、ギャングオルカの待つ一室へと入る。
扉をノックして入室の許可を得て入室するとギャングオルカから告げられる。
「悪いな、ムーンラビット、一夜明けて疲れてる所に」
事務作業を行いつつ椅子に座る様に語るギャングオルカ。
脳内の波長を操作して眠気を無理矢理吹き飛ばした鈴仙は椅子に座り話を聞く。
「いえ……どうかしましたでしょうか? ギャングオルカさん」
「2日後に神奈川県の水族館でイルカショーを行うんだ、ショーのスペシャルゲストを依頼されてな、それで……ムーンラビットにもゲストの依頼が来てる」
ピシリッと凍りつく鈴仙。
渇いた笑みを浮かべて言葉を紡ぐ鈴仙。
「な……なぜ?」
「おそらくは……集客を見込んでだと思うな、君は雄英体育祭で顔と名前が売れているし、この興行依頼は1日だけの限定だ、特別ゲスト依頼は珍しく無いが……鈴仙も指名してきたという事は水族館側としてはここで金を稼いでおきたいんだろう」
そう告げられる鈴仙であった。