【完結】ウサミミ少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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職場体験③

 そうして……依頼されたショーの当日となった。

 朝8時丁度、神奈川県の水族館で行われるイルカショーのスペシャルゲストとして依頼されたギャングオルカと鈴仙がいた。

 

 ウェットスーツに身を包んだ鈴仙はギャングオルカや水族館職員との綿密な打ち合わせを行い鈴仙がイルカの背中に乗ったりハイジャンプ、ハードルジャンプ、バックスピン、スピンジャンプ、テールキック、ランディング、と言ったショーを行う運びとなった。

 

 鈴仙が波長操作でイルカとの明確な意思疎通が可能であるという事が判明し水族館の職員全員から羨望の眼で見られた。

 

 打ち合わせを終えてもう少しでショーの開幕時間となる。

 ウェットスーツに身を包んだ鈴仙はガチガチに緊張しておりウサミミはペショリッと力無く萎んでいる。

 だが、しばらくして緊張がほぐれたのかいつもの様に耳の力を抜いて横に下げており『楽しい気持ち』を発露させていた。

 そうして所要時間1時間のイルカショーが開幕される。

 

「さて……ご来場の皆様、当水族館の目玉イベントの1つ、イルカショーの時間となりました‼︎ ぜひお時間の許す限りお楽しみくださいませ‼︎ 本日はスペシャルゲストとしてお2人のスペシャルゲストにお越しいただきました‼︎ ギャングオルカさん‼︎ そしてもう1人‼︎ 鈴仙・優曇華院・イナバさん‼︎ このお2人にお越し頂いております‼︎ 皆様‼︎ どうか大きな拍手でお出迎えをお願いします‼︎」

 

 イルカショーのナレーション担当のスタッフがマイクを持ちながらそう叫ぶとギチギチに詰まった観客席からひび割れんばかりの大歓声と拍手が沸き起こる。

 鈴仙は笑顔を振り撒いて打ち合わせ通りに行動する。

 

 1時間後、第一幕を終えたイルカショーは凄まじい大歓声とひび割れんばかりの拍手により大盛況のまま閉幕した。

 

 そうして、控え室に戻った鈴仙はギャングオルカより差し入れられたスポーツ飲料を飲み干すとペットボトルをゴミ箱に捨てる。

 

「これをあと……6回もやるんですね、ギャングオルカさん」

 

 9.45分に第一幕がスタートして休憩時間を挟みつつ6回繰り返す。

 意外とかなりの疲労が溜まると実感する鈴仙。

 (ヴィラン)との戦闘やご教授いただいた事務作業とはまた違った緊張と疲労がドッと押し寄せるがギャングオルカはもう慣れた物なのか椅子に座りゆっくりとしている。

 

「まぁ俺は何十回とこういうイベントに呼ばれてるからな……もう慣れたもんさ、大概幼い子供に泣かれてしまうが……」

 

 確かに……『(ヴィラン)っぽい見た目ヒーローランキング』第3位にランクインする堅物な性格と顔の怖さから、小さな子供によく泣かれるらしく、その事に悩んでいる、とは本人とサイドキックの談である。

 

 波長を見るに緊張を解きほぐす為の自虐の様だがどう反応していいか分からずに渇いた笑みを浮かべて次なる第二幕の準備をする鈴仙。

 そうして時間が経つのは速いものでイルカショーも気付けば最終幕を終えて夕方となりスタッフ達からお礼の言葉を告げられる。

 

「こちらこそありがとうございました、また機会があればよろしくお願いします」

 

 そう返すギャングオルカと鈴仙。

 特に鈴仙からしてみれば凄まじい収穫があった。

 超音波の使い方をイルカやシャチと直に触れ合い学べたのは有意義なものであった。

 そして、イルカショーでは有事の際でも緊張しない心構えを学んだ。

 人は緊張すると筋肉が強張り完全なパフォーマンスを発揮出来ない。

 だからこそ始まる前に緊張を解きほぐしたりするのだ。

 

 ギャングオルカが運転する車の助手席に座っている鈴仙に対してギャングオルカは言葉を投げる。

 

「さて、ご苦労だった……この後は飛行機でまた沖縄の事務所まで戻る事になってる、機内では疲れが取れないかも知れないが休んでくれ」

 

 了解です、そうギャングオルカへと告げる鈴仙。

 しばらくの間沈黙が続いて会話が止まる。

 それを先に破ったのはギャングオルカであった。

 

「なぁ鈴仙、1つ聞いていいか?」

 

 ハンドルを握りながら適切な速度を維持しつつ車を走らせるギャングオルカは職場体験前から気になっていた事を問いかける。

 

「何で俺の所に来た? お前にはもっと上からの事務所からの指名も来てたと聞いた……名前と顔を売るならそちらの方が圧倒的に有利だ」

 

 そう、問いかけられる。

 それに対して鈴仙はそれはですね、と前置きして答える。

 

「私の個性、ご存知ですよね?」

 

 ハンドル操作を行いながら相槌を打つギャングオルカ。

 

「確か『波長を操り支配する個性』だと記憶している」

 

「そうです……『波長を操り支配する個性』ですが、いかんせん職場体験でこの個性を扱う上で参考になりそうなプロヒーローが指名一覧で見てもギャングオルカさんしか居なかったので……シャチの個性で超音波が操作できるギャングオルカさんにしか聞けない事が沢山ありますし、沢山学ぶものがあります、それが……私がギャングオルカさんの事務所を選んだ理由です……こんな所で納得していただけましたか? すみません、昔から結論を纏め上げるのが不得意なもので」

 

 それを聞いたギャングオルカさんからはそうかと短い言葉を頂戴する。

 しかしながら、波長は『嬉しい』と言った感情が見えている。

 その後はギャングオルカさんの運転する車に揺られる事10数分。

 空港近くの事務所に車を止めるギャングオルカ。

 

 聞けば活動拠点の1つであるらしく都市部での依頼も舞い込む事がある為にギャングオルカ事務所が借りている事務所の1つだとか。

 

「さて……後は飛行機に乗って沖縄に戻るだけ……の筈だったんだが……ムーンラビット、出番だ」

 

 ギャングオルカは何かを感じ取ったのか鈴仙をヒーロー名で呼ぶ。

 ヒーロー名で呼ばれるという事は有事であるという事。

 鈴仙は文字通り意識を切り替えて腰に下げたルナティックガンを空港ターミナルビルへと向けルナティックガンの引き金を引いて2秒後、鈴仙はギャングオルカへと告げる。

 

「……アサルトライフルとショットガン、それに防弾ベストに巻かれている自爆用のプラスチック爆弾で武装している外国人10名、恐らく人質と考えられる女性と子供が合計で30人。あの銃はオモチャじゃないですね……何処かの国の軍隊の横流し品です」




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