試験が始まる15分前。
鈴仙と八百万百は作戦を立てていた。
「鈴仙さん、どの銃が扱えますか? ハンドガン、アサルトライフル、PDW、グレネードなど色々作れますが」
その問いかけに対して鈴仙は顎に手を当てて考える。
「ではP320を1丁とSIG XM5を一丁貰いますね、後はそれぞれの弾丸は低致死性のゴム弾で……それにスタングレネードとスモークグレネードを2個ずつ作れますか? 互いに装備する形にしましょう……八百万さんも自分の扱える銃で武装しましょう」
そう告げられた八百万百は即座に指定された銃器と装備を創造して鈴仙に手渡す。
鈴仙は即座に受け取った銃を胸の前で銃を待機させる「High」少し前に銃を突き出した「Combat High」肘を90度曲げた状態でサイトを覗いて構える「Extended」完全に手を突き出して構える「Apogee」と4種類の構えをして使用感を確かめる。
「うん、問題ないですね……ありがとうございます」
グレネード2種類を左右のベルトに引っ掛ける鈴仙。
八百万百は好んで使っているのかメインウェポンとしてベネリM4を、サブウェポンとしてグロック19を作り装備すると演習試験が開始される。
鈴仙は波長をソナーの様に使いイレイザー・ヘッドの位置と脱出ゲートの位置を割り出すと
しかし、波長操作が行えない。理由は明白であった。
即座に銃を構えて八百万百に叫ぶ。
「八百万さん‼︎ スモークとスタン‼︎」
鈴仙はそう叫びハンドガンを構えて撃とうとするが操縛布で拾いに行けない範囲にへと弾き飛ばされる。
操縛布で縛り上げられそうになった鈴仙であるが八百万百が投擲したスタングレネードを見て即座に退避したイレイザー・ヘッド。
スタングレネードの爆音と閃光が鈴仙の視力と聴力を一時的に奪うが既に『抹消』による妨害は解けているので問題はない。
見えない視界と聴こえない聴力が戻るまで波長操作で補いつつ八百万百へと告げる。
「鈴仙さん‼︎ 大丈夫ですか⁉︎」
そう告げてきた八百万百の波長を久しぶりに眼ではなくウサミミや全身で拾いそのまま波長を介して八百万百にテレパシーの要領で脳内に告げる。
『大丈夫です、ここからは常にスモークを焚いて見られない様にして相澤先生にカフスを掛けましょう、私は今スタングレネードの影響で10分程は視覚と聴覚が機能しませんが波長操作さえ出来ていれば何一つ問題ありません、一緒に力を合わせてクリアしましょう、あ……八百万さんは普通に喋って大丈夫です』
唐突に脳内に響いた私の声にビビったのかビクゥッと肩を震わせた八百万百だがスモークグレネードを次々と創造して投擲しつつ進む。
ゲートは先程ソナーを行った際に位置が判明している為に迷う事なく走るが、やはり居る。
まぁこんだけスモーク焚いて見られない工夫をしてるのだからゲート前待機が基本だよな……脱出前に仕留めるのが一番合理的と言うものだ。
スモークの中に身を隠しているが今日は無風であり2人の動きで気流が発生。
そうして……鈴仙と八百万百を視認して個性を封じて片方を操縛布で、片方を体術で関節技を極めて動けない様にして抑える。
「残念だったな‼︎ これで終わりだ‼︎」
鈴仙を締め落とそうとするがこの状況下で鈴仙がこの様な状況下ですら不敵に笑っていた、そしてその赤い眼を覗き見た瞬間……突如、割れる様に頭痛が起こり、視界が歪む、そして
イレイザーヘッドは目覚めると地面に捩じ伏せられておりその手には条件の1つであるカフスが掛けられていた。
「……これは?」
端的に、状況説明を求めてきたイレイザーヘッドに対して鈴仙が説明を行う。
「今回立てた作戦……『夢』の世界での私達が見せた様な正面突破じゃないんですよ……試験が始まってすぐに位置を割り出した所までは真実です、ですが私と八百万さんは普通に戦っても個性を消されて相澤先生の得意な戦術に持ち込まれて消耗戦を強いられると判断したので、その後は八百万さんの判断の下、搦め手で行かせてもらいました」
こう言った作戦を立案するのは彼女本当に有能ですね、そう語りつつ鈴仙は事の顛末を相澤先生へと語る。
「今回の本当の作戦、最も重要な事は相澤先生の位置を把握したその瞬間に幻覚を見せ一瞬でいいので動きを封じる事でした、私の個性は存じ上げてますよね?」
「当然だろ……『波長操作』だろう?」
鈴仙は語る、少しだけ違いますと。
「正確に言うならば『波長を操り支配する個性』です、波長というものは何も光や音だけではありません、脳波や電気信号や神経の伝達だって波長です……相澤先生の位置を把握した瞬間に波長を操作して相澤先生の脳に間違った指令を送りつけたんです、つまり、私たちの個性を封じている、という間違った情報伝達を……これが幻覚や幻影ならここまで面倒な手順を踏まずに済むんですけれど……どうしてもそれらは齟齬が生じてしまう事があります、だから脳からの指令そのものを誤認させました、八百万さんの一助もあり、当然個性を『抹消』していると思い込んでいる相澤先生は私の眼をしっかりと見てくれました……」
そうして一度言葉を切る鈴仙。
再度ゆっくりと語る。
「私の個性、私と眼を合わせた対象をより強力に支配できるんです、夢を現実だと思い込ませたり、逆に現実を夢の様に見せたり他にも色々と……まぁ必須条件ではないし私が操っているのは『波長』そのものなので距離も、なんなら遮蔽物も全く関係ないのです……」
そう告げられて……妙に納得したイレイザーヘッドであった。
つまり、完全に掌の上に居たということ。
相澤先生はため息をついて2人に告げる。
「見事な連携だった……八百万が指揮を担当して全体像を描いて、鈴仙が実行する……そして2人で対応にあたる……か、見事だよ俺から言う事は何もない」
そう告げられて鈴仙と八百万百はハイタッチを決めて喜びを分かち合っていた。