そうして、軽い基礎トレから始まり、徐々に負荷の強いトレーニングへと移行する一同。
それらが終わり夕食となる。
食堂でワイワイと皆で2つある長机に座り食事となる。
旬の野菜や魚が並び肉類も唐揚げやチキン南蛮や竜田揚げなどがぎっしりと盛られている。
そんな中、鈴仙も舌鼓を打っておりウサミミを無意識でぴょこんぴょこんと動かして『美味しいよ、美味しいよ、このご飯……最高‼︎』と歓喜に打ち震えていた。
食事中は表情こそあまり動かない鈴仙だがウサミミは違う。
歓喜に打ち震えてそう告げておりクラスメイト達は最早見慣れたものであった。
そうして食事の時間も終わり入浴の時間となる。
脱衣所で服を脱ぎ籠に入れる鈴仙。
裸になりタオルで身体を隠しつつ大浴場へと入る鈴仙。
既に入浴していた女子陣一同羨望の眼差しと声音を上げる。
特に芦戸三奈や耳郎響香は羨ましいと言った表情を浮かべていた。
そのプロポーションは神が与えたのではないかと錯覚する程の美しさであった。
鈴仙を表すと言っても最早過言ではない、足元に届きそうなほど長い薄紫色のストレートロングヘアと、ワインの様に鮮やかな紅い瞳にスキンケアを欠かしてないのがよく分かる純白の肌。
そして頭頂から伸びるどこか作り物然としたクシャクシャでヨレヨレの純白のウサミミがあり、仙骨部の少し上の方にぴょこんと生えている兎特有の丸いモフモフとした純白の尻尾。
Iカップという並外れたカップ数を有する双丘、耳郎響香さんからの嫉妬の籠った視線を浴びる。
日々のトレーニングにより無駄な肉の一切が削ぎ落とされているお腹周りはこの浴場にいる鈴仙を除いた全ての女性からの羨望の眼差しを浴びていた。
スラリと伸びた脚すらも一目で鍛え込まれているのが分かる。
そして美麗なプロポーションと相待って何よりも仕草の一つ一つが同性異性問わず惹きつけていた。
入念に身体を洗い、頭を洗うと湯船に浸かる鈴仙。
髪は湯船に浸からない様に一纏めにされタオルで留めている。
そうして女子ならではの会話が開始される。
日々のスキンケアの方法や使用している化粧品だったり、制汗剤や保湿クリームの話題で盛り上がる。
そうして楽しく会話を弾ませていると男子風呂の方が騒がしい。
薄い仕切りなので声は筒抜けとなっている。
「やめるんだ峰田君‼︎」
鈴仙は大体何が起きたか察した……。
そして他の皆も察した様で引き攣った表情を浮かべている。
しかし、学級委員長たる飯田天哉の声が響きそれに反応した峰田……数秒経とうと、何も起きない、男子風呂の会話を感じ取るに『洗脳』にかかったらしい。
成程……そう女子陣一同は納得する。
先ほどの『やめるんだ峰田君‼︎』という声は飯田天哉のものではなく
鈴仙ですら波長のほんの僅かな違いでようやく気付いた程の精度であり驚愕した。
いつの間に声帯模写ができる様になったんだか。
ともあれ女子達はワイワイと話しに戻る。
「そういやさ、少し気になったんだけど、鈴仙ってさ、今もそうだけどいつも男子更衣室がある方から背を向けて着替えてるよね? 何で?」
イヤホンジャックをクルクルと弄りつつそう問いかけてきた耳郎響香さん。
鈴仙は汗を拭いながら男子風呂の方には聴こえない様に波長を弄りつつ告げる。
「ちゃ……から」
そう告げる鈴仙、心なしか顔が赤くなっているのを感じる。
しかし、耳郎響香さん含め女子陣は聴こえなかった様で、ごめん、もう一回お願い、そう告げられる。
「見えちゃうから……男子が着替えてる所」
頬がカァァァッと赤く染まるのを実感する鈴仙。
鈴仙の場合……感覚器としてのその両方の眼は普通の見え方をしていない。
波長を操り支配する個性の副次的な能力なのか、鈴仙の視界は『個性』が発現した瞬間から常に波長が見えている。
そしてその波長の中にはX線などと言った透過率の非常に高い波長も当然含まれている為に更衣室の壁や今入浴している風呂場の仕切り板など何の役にもたたない。
しかも嬉しくない事に波長が見えるというこの仕様、オンオフのスイッチが存在しない。
限界まで抑えて範囲を縮小する事は可能だが……あまりに抑えすぎると制御が外れて普通の範囲に戻る事がある為に不慮の事故を防ぐ為に常に鈴仙は異性の裸を見てしまう可能性がある場所では常に背を向けている。
まぁ、鈴仙の場合『眼』だけでなく身体全身で波長を感じ取れるのだが……それは置いておこう。
「あー……個性の副作用みたいなやつか……私にも思い当たる節があるからな……気持ちはよく分かる」
そう納得する耳郎響香や芦戸三奈。
ウンウンと頷く蛙吹梅雨や葉隠透。
そうして、話しはコロコロと移り変わり恋バナになりかけた所で隣に居る八百万さんの波長が一瞬途切れるのを肌で感じた鈴仙はすぐさま行動に移す。
その直後、グラリと傾く八百万百の身体……そのまま湯船にうつ伏せで倒れかけた所で鈴仙が八百万百の脇から手を入れて支える。
八百万百をお姫様抱っこの形で抱き上げて湯船から引き上げると鈴仙は呟く。
「あらら……長風呂が過ぎましたね……のぼせちゃいましたか……」
そう呟いて脱衣所へと向かいタオルで八百万百の身体を隠しつつ波長操作で透明な壁を形成し長椅子の様に形状を整える。
そこに横にさせると濡れタオルや冷えたペットボトルを足先や脇の下などに当てて応急処置を行う。
波長を操り『眼』をサーモグラフィーにして八百万百を見ると体温が少し高くなっていた為に濡れタオルを首に巻いて安楽な姿勢を取らせる。
少しすると落ち着いたのか意識を取り戻した八百万百。
立ちあがろうとする八百万百を鈴仙が止める
「動かない動かない、のぼせたばかりなんです、5分でいいので安静にしていましょう」
そう制止した鈴仙に八百万百の声が届く。
「申し訳ありません、鈴仙さん……とんだご迷惑を……」
それを聞いた鈴仙はプクゥ〜っと小さく頬を膨らませてウサミミを無意識的に軽く絞りながら八百万百の唇に自身の人差し指を当ててプンスカとした表情を浮かべて語る。
「も〜……浴場から出る時も謝ってたけど、謝る必要はないのっ‼︎ そんな事を気にしなくて大丈夫‼︎ あと2分は安静にしてて下さいね? 冷たい飲み物貰ってきますので……」
ノースリーブにゆったりしたズボンというラフな服装に身を包んだ鈴仙はプッシーキャッツの元へと向かい麦茶を貰ってくるとストローを通したタンブラーを持ってゆっくりと長椅子の形状にしている透明な壁を形状を操作して八百万百の上体を起こす様な形にする。
そしてゆっくりと飲ませると落ち着いたのかゆっくりと立ち上がって頭を下げてきた八百万さん。
「ありがとうございました、鈴仙さん……それと申しわ……ムキュゥッ」
それに対してウサミミをピョコピョコと動かしながらまたもや謝ろうとしてきた八百万百の唇を人差し指で塞いで笑みを浮かべながら告げる鈴仙。
「また謝ろうとしましたね? ありがとう、その言葉だけで良いのです、これ以上湯冷めしちゃう前に服を着ましょう」
そうして、濃密な1日目は終わりを告げた。
明日から個性を鍛えて鍛えて鍛えまくる訓練の開始である。
鈴仙は明日の訓練に思いを馳せながら眠りに落ちた。
それと同時刻、死柄木弔は繁華街のとあるBARの椅子に腰掛けてステインの思想に当てられて集まった者達、10名に2枚の写真を見せながら告げる。
そこには今年度の雄英体育祭一年生の優勝者、鈴仙と3位との表彰台に居る爆豪勝己が映った写真があった。
その2枚の写真をヒラヒラと弄びながら空いている片方の手で人差し指を立てつつ死柄木弔はゆっくりと語る。
「『先生』のお陰で雄英高校が合宿を行なってる場所は把握した……お前らにやって欲しい事は3つだ、1つは雄英の合宿地でヒーローや生徒達をズタボロにして欲しいって事、ただこっちは努力目標だ、襲撃されない様に徹底した策を講じてなお『
集まった面々にそう告げながら死柄木弔は黒霧から渡されたカクテルを飲み干して人差し指に続いて中指を立てながら言葉を続ける。
「2つ目、こっちも努力目標で構わない、爆豪勝己の拉致、彼は良いね
ツマミとして提供された柿ピーを食べながら2杯目のカクテルを飲み干す死柄木弔。
そして、3番目の目的が最も重要で最も肝要だ、先程の2つはそれに比べたら未達でも構わない、そう前置きして人差し指、中指に続いて薬指を立てながら告げる。
鈴仙の写真を見せながら死柄木弔は真剣な表情と面持ちで語る。
「鈴仙の拉致、これだけは確実に果たして貰う……前二つの努力目標とは違いこちらは未達が許されない、必達だ……その為の戦力は揃えたし必要ならこちらから『脳無』を何体か貸してやる……良いか? 各自、復唱して頭に叩き込め、鈴仙の拉致は絶対に達成しなければならない目標だ」
そう告げる死柄木弔、それに対して10人が10人共に、異なる反応を見せる。
そして、死柄木弔はそういえばと、思い出したかの様に語る。
「お前らを合宿地点に送るのは3日目の夜だ……鈴仙の個性、ソナーの役割も果たしてるらしくてな、今行ったのなら間違いなく警戒されて最悪合宿地から秘密裏に撤収する、という可能性もある。だから決行するのは……3日目の夜、レクリエーションとして肝試しが開催されるその時だ……各自、それまでに裏のデザイナーや設計者からサポートアイテムを買うなり装備の調整するなりして万全の状態を整えておくんだ、金が必要なら言え、その分の金は出す……必要経費だ」
そう告げながら……死柄木弔は3杯目のカクテルを飲み干して1人、呟く。
「さぁ……ゲームスタートだ」