なおも襲いかかる歯を砕き割るがいかんせん手数は相手の方に分がある。
全てをいなす事は不可能だったのか左足の付け根にも『歯の刃』が深く刺さってそのまま貫通し歩行能力が激減する鈴仙。
襲いくる『歯の刃』を対処しつつ八百万百に包帯を作ってもらい簡易的ではあるが自身の右脇腹と両脚の付け根に深く刺さった刃の形状に変化している歯を抜けない様に固定する鈴仙。
鈴仙は痛みに耐えながら八百万百へと叫ぶ。
「八百万さん、空に向けて照明弾を撃ってください、3発連続で……ッ⁉︎」
そう告げた刹那、肥大化した筋繊維を鎧の様に身に纏った
咄嗟に障壁を作って盾にしたが急場凌ぎで作った『壁』である為に強度が足りず純粋な『力』に耐えうる程の硬度が足りない。
耐久力を大幅に超える殴打で壊れた『壁』を視認しつつ受け身を取ってボディーブローの威力を可能な限り殺して吹き飛ばされる鈴仙。
木々に叩きつけられるがさしたる痛みでもない『虎』さん主催の『我ーずブートキャンプ』で散々木々に叩きつけられた為に……。
鈴仙は荒い呼吸を整えてネックレスの様に下げていた電波妨害装置を引きちぎり握り潰す。
その瞬間、鈴仙の視界は慣れきったいつもの視界へと戻る、波長操作の感覚が身体を包む。
そして、眼前に居る筋繊維を鎧の如く纏った
しかしながら……襲撃の際に音が殆ど立たなかった、考えられる可能性は2つ……極限まで音を立てずに戦闘しているか、それとも、そういう『個性』持ちがいるのか、である。
鈴仙は波長を操作して今起こっている現状をプロヒーローである教師陣とプッシーキャッツ、それにA組B組達へと急いで波長を用いて一方的なテレパスを立ち上げて告げる。
『鈴仙より通達‼︎
一歩歩く事に『歯の刃』が刺さっている両脚から血が流れて地面を赤く染める。
身体中に激痛が走るが波長操作を行い痛覚を遮断すると殴り飛ばしたが故にこちらを見失った『血狂いマスキュラー』が血の跡を頼りに探してきた。
波長操作を行い自身を『透明化』させると両脚と脇腹の止血を行い、脚に力を込めて歩き八百万百の位置を探知してそちらへと向かう。
八百万百は眼前で起きた事が信じられなかった。
突如として鈴仙に無数の刃が突き刺さったと思ったらその直後に筋繊維を鎧の如く纏った
そして何より信じられなかったのは……テーザー銃を創造し構えた八百万百とその
お前などいつでも相手が出来るとでも言いたげな表情で八百万百を見下すと、あの
照明弾を打ち上げた事と鈴仙さんのテレパシーにより教師やプッシーキャッツ達は何が起きたかを既に把握したであろう。
一刻も早く鈴仙を助けて戦線を離脱しなければならない。
あの脚で500mは離れている宿泊施設まで戻れるとは到底思えないのだから。
そう思案していると木々の擦れる音と共にナニカが背後から近づくのを感じ取りテーザー銃を構える八百万百。
しかし、即座にその手に構えたテーザー銃を下ろして大粒の涙を浮かべて倒れそうになる鈴仙を支える。
「鈴仙さん‼︎ 大丈夫ですの⁉︎ いえ、答えなくて良いですわ‼︎ 今すぐにスケッドストレッチャーやカラピナを創造します、数秒待ってください‼︎ 一緒に施設に退避しましょう」
そう叫んで血だらけになっている鈴仙を地面に少しの間寝かせるとロール式担架を創造しその他の必要物品も創り出す八百万百。
鈴仙にハーネスを着せてカラピナを装着して引き摺り担架へと移すと手際良く搬送の準備を行う八百万百。
鈴仙の身体を担架へと固定して急いで、しかし焦らずに行動する。
鈴仙から学んだ事を必死に思い出しながら。
ブートキャンプでの講習会で鈴仙が語った事を思い出す。
「
手本としてロール式担架の搭載方法を実際にやって見せる鈴仙。
そして、ロール式担架がその場にない場合、ツタンカーメン法という方法を用いて搬送する事を教える鈴仙。
ソレを今、八百万百は反芻しながら対処に当たる。
そう教えられたあの日の訓練は決して無駄なものでは無かった。
現に今、その知識がなければ八百万は両脚を負傷してマトモに歩けない鈴仙に肩を貸して歩いて行くしか方法が無かったのだから……。
30秒で準備を完了させて自身にエスケープベルトとアンカーストラップを通してカラピナを担架に装着すると鈴仙を搬送する為に自身のベルトにアンカーストラップを結んで両腕をフリーにして担架を引き摺る。
担架で引き摺られながら鈴仙は口を開く。
八百万百と鈴仙自身を透明化させていると告げられるが留意して欲しい点があると告げられる。
「透明化はあくまでも周囲から見えなくなるから『其処に何かが存在している居る』という視覚的、聴覚的な情報を消すだけです……そこに居るという『絶対に変えようのない事実』までは消せません……私の負傷した脚から流れ出る点々と続く血の跡を目印にして追って来ていますが……今は私も八百万さんもこの担架も透明化させていますので……しかしそれもいつまで持つか」
声の波長も操作している為にどれだけ大声で叫ぼうと八百万百と鈴仙以外には聞こえはしない。
鈴仙を乗せた担架を引き摺りながらソレを聞く八百万百。
その直後、八百万百と鈴仙を巻き込む様に蒼炎が放たれる。
反射的にドーム状の透明な壁でバリアを貼るが位置がバレてしまった事を察知し舌打ちをする鈴仙。
他の箇所が蒼炎で焼けているのに蒼炎で焼き払った場所でごく一部の場所だけは焼けていないのならばそこには『見えないナニカ』が居るという何よりの証左である為に……。
そして、鈴仙の波長操作は痛覚という伝達信号を遮断する事により痛みを消せる。
だが、ソレはあくまでも痛みを消せるだけであり流れ出て失った血液が戻る訳でも、傷が治る訳でも無い。
状況は考えられる限り最悪、それを思案して……鈴仙は取れる選択肢がどんどん失われている事に歯噛みする。
先程の『歯の刃』を操る
波長を用いてソレらを纏めて感知する鈴仙。
そして理解する。
此処にいる
そして、何よりも今此処に留まっているだけで先程放たれた炎で逃げ道がどんどん失われている。
施設の方にも3人の
故に……鈴仙は合理的な判断を下す。
「……ッ‼︎ 八百万さん……私を置いて此処から振り返らずに今すぐ走って下さい、後方に480m直進すれば飯田天哉や尾白さん達が居ます……」
そう絞り出すかの様に呟く鈴仙。
ソレを聞いて八百万百は反射的に叫ぶ。
「鈴仙さん⁉︎ 何を仰ってるんですの⁉︎」
鈴仙は光の波長を操作してレーザーを放ち自身を縛っている担架や姿勢安定用のベルトを灼き切ると血の滲む脚を無理矢理動かし立ち上がって告げる。
「
その合理的な判断に基づいて鈴仙は行動に移す。
血で濡れた両手で八百万百の頬へと触れて八百万を安心させるかの様に笑みを見せる鈴仙。
ソレに対して涙を見せつつ叫ぶ八百万百。
「合理的な判断を下すのは結構です‼︎ しかし……しかし‼︎ 私の気持ちはどうでもいいんですの⁉︎ クラスメイトを見捨てて逃げろと⁉︎ そう言うのですか⁉︎ 鈴仙‼︎」
そう問答をする八百万百、しかし再度蒼炎が放たれて更に逃げ場が無くなる。
鈴仙は……置いていく事など出来ないと叫ぶ八百万百に対して、合理的に判断を下す。
「大丈夫です、私も必ず後から追いつきます……だから行ってください、ほら……立って下さい、此処が炎で包まれて逃げ場が失われる前に、八百万さんのやる事はただ一つ、施設の方へと脇目も振らず、振り返らずにただただ只管に走る事です」
しかし……八百万百は頑としてその場を動こうはしない。
八百万百は察しているのだ、此処で鈴仙を置いていけば確実に後から追いついてなど来ないだろうという事を。
しかし、刻一刻と蒼炎により木々が燃え炎が広がり退路が無くなっていく。そうして、鈴仙は苦渋の決断をする。
笑顔を浮かべて……八百万百に自身の赤い眼を覗き込ませた。
「
短くそう告げる鈴仙。
そうして、八百万百の意識を調律し精神操作を行う。
即ち、今この瞬間における逃げる事への抵抗感を無くした。
そうして、ギュッとハグをして、八百万へと言葉を重ねがけする。
「行ってください、八百万さん……私も後から必ず追いつきます」
そう告げると八百万百は逡巡をしながら立ち上がり……必ずですわよ、そう告げて走り去って行く。
そうしてその姿が見えなくなったのを確認して鈴仙は八百万百に聞こえない声音で呟く。
「……ごめんなさい、八百万さん……」
そう呟いた。
逃げた八百万百を追いかけて殺そうとする何人かの
壁を形成して
「何処に行こうというんですか? 私の後ろには絶対に行かせない」
刹那、マンダレイよりテレパシーが伝わる。
『A組B組総員‼︎ プロヒーローイレイザーヘッドの名に置いて……戦闘を許可する‼︎ 繰り返す‼︎ A組B組総員‼︎ プロヒーローイレイザーヘッドの名に置いて……戦闘を許可する‼︎』
そのテレパシーを聞いて鈴仙は理解する。
八百万百がこの現状を伝えたのだと。
だが……もはや限界を遥かに通り越した限界。
血を失いすぎて意識が飛びかける。
だが、まだやるべき事がある。
この3人を施設の方へと行かせる訳には行かない、最低限の足止めをしなければならない。
血を失いすぎて飛びかける意識を繋ぎ止めて眼前の3人の
「
一時的なものではあるが3人の
鈴仙はソレを波長で確認し意識を失った。
そうして、後方にいた4人の
『
ソレを合図に……黒霧がワープゲートを展開して
そうして……雄英高校ヒーロー科1年の林間合宿は最悪の形で幕を閉じた。
重軽傷者0名。
行方不明者……1名。
原作との相違点
また、原作であったガスを使ったヴィランであるマスタードは連合に加入出来ていません。
原作での八百万百と泡瀬洋雪が脳無に付けた発信機はそもそも脳無に出会えて無いので生徒側、雄英教師側には殆ど情報がありません。
感想・ブクマ・特に評価。飢えております。 低評価をもらったら少し傷つきますが、傷も創作のプラスになることはある(私の場合です)。でも無評価=虚無は創作のマイナスにしかならないッス(私の場合です)! なので、無言で投げれるので、ぽちぽちっと☆を頂けると嬉しいです。多い分には困りませんよ‼︎
評価付与 お気に入り登録 感想