鈴仙が拉致されてから3日後。
警察も、プロヒーローも、雄英教師陣も……必死になって情報を掻き集めていた。
そして、1つの、蜘蛛の糸の如き細さの情報が齎される。
それを引き金にして情報の再整理が為される。
そうして……やっと
そして、とある会議室にプロヒーロー達が集結していた。
オールマイト
エンデヴァー
ギャングオルカ
マウントレディ
ベストジーニスト
イレイザーヘッド
虎
マンダレイ
ピクシーボブ
ラグドール
グラントリノ
シンリンカムイ
エッジショット
クレア・ボヤンス
ブラドキング
プレゼントマイク
ミッドナイト
八意永琳
錚々たるメンバーが集結しており塚内が指揮を取る。
「
そう告げて隠れ家の1つであるBARへと突入を開始した。
BARの中で歓談している
次なる襲撃を提案する者、肉の断面、ニクニクゥと呟いている者、次の舞台に思いを馳せる者。
色々な思いが混在しているBARの中。
思いと過程は違っても根っこはの所は皆どこか同じであった。
即ち……この社会をぐちゃぐちゃに壊したい、と。
マスカレイドと名乗っていた性別不明の右半分が笑みを、左半分が涙を浮かべている歪な仮面を装着した者が何かを察知した様で酒が入ったグラスを手で弄びながら一息で飲み干すと仲間に告げる。
「来たぞ、大勢」
その言葉を聞いた刹那、和気藹々としていた空気が一変し皆の纏う空気が変わる。
黒霧はワープゲートを纏い実体部分を可能な限り覆い。
マスキュラーは筋肉の鎧を身に纏い。
マグネはアイテムをその手に構えて。
マジシャン風の男性は手品のタネの用意をして。
スピナーはナイフを構えて。
全身に黒と灰色を基調としたラバースーツを身に纏った者は特殊なメジャーを構えて。
拘束衣に身を包んだ男は歯の刃を展開して。
吸血鬼を模したマスクを装着した女の子は専用の装備とナイフを構えて。
ツギハギの男はその両腕から蒼炎を滾らせて。
マスカレイドと名乗っている者は仮面のズレを装着し直す。
そして、死柄木弔が指示を出す。
「各自、好き勝手に暴れろ……30分後に黒霧がゲートを開き別のアジトに移動する、集合地点を頭に叩き込んでおけ」
そう告げた刹那、BARの壁が破砕されてオールマイトやシンリンカムイ、ミッドナイト、イレイザーヘッドが突入してきた。
個性を使おうとした者達は即座にイレイザーヘッドが『抹消』で封じ込めてシンリンカムイが『先制必縛ウルシ鎖牢』で縛り上げてミッドナイトが『眠り香』で強制的に眠らせる。
拘束と束縛に関しては最高の個性の相性だろう。
10人中9人が昏睡する中、マスカレイドと名乗った
「いやぁまさか……イレイザーヘッドにミッドナイトが来るとは想定外も良い所ですよ? で……どーするんですか? 貴方の大事な大事なお弟子さんがピンチですよ?」
マスカレイドはBARカウンターに置いてあるPCに話しかける。
そのPCからは……グラントリノにとっては亡き盟友の、オールマイトにとっては師匠の仇の声音が響く。
『あぁ、だからこそ外部顧問として君を誘ったんだ……仕事をしてくれよ? マスカレイド』
その声音に対してマスカレイドと呼ばれたソレは何とも軽い声音で答えを返す。
「はいよ……じゃあ、転送はよろしく、足手纏い見てられる程……余裕はなさそうだ」
マスカレイドと名乗った
そして……。
「よぉ、なかなかに良い束縛だったぜ? シンリンカムイ……だが、一歩足りない」
そう告げたマスカレイドはシンリンカムイの眼前に一歩で接近して喉を殴りつけて一瞬意識を奪うと側頭部を蹴り飛ばしてBARの外へと叩き出す。
ミッドナイトが更に強い眠り香を飛ばそうとするもソレをさせずに鳩尾を殴り意識を飛ばす。
イレイザーヘッドが『抹消』している為に個性は使えない、なのにこの速度……素の身体能力という事。
オールマイトが対応するもオールマイトの殴打の速度を見切って避けていた。
しかし流石に反撃する程の余裕は無いのか……髪を弄り回してつまらそうに告げる。
「あーあ……つまんないや、もう良い? 準備の時間稼ぎは十分でしょ? 後の頑張りは死体人形達に任せましょう‼︎ はっはっはっは‼︎」
そう高笑いしながら立ち止まった所を隙と見て気絶する程度の威力で殴り飛ばしたオールマイト。
だが……マスカレイドと名乗った
いつの間にか背後に回っていたマスカレイドと呼ばれた
外にいたプレゼントマイク、エッジショット、エンデヴァーが即座に対応するが霧の様な身体を捕らえられずに逃走を許してしまう。
3人は接敵した
昏睡した
保須で遭遇した
「避難区域広げろォ‼︎ 塚内ィィィィ‼︎」
続々と湧き出てくる脳無に対処するプロヒーロー達。
しかし、ラグドールが『サーチ』で転送された
「
そう叫んだクレアの頭上に脳無が襲いかかった。
避けれないッ‼︎ そう目を瞑った刹那、八意永琳が放った矢が脳無を刺し貫いて動きを封じこめる。
「脳無は私に任せて皆さんは行ってください‼︎ 早く‼︎」
ほぼ引退したプロヒーローである八意永琳が現場に出てきた理由はただ一つ。
亡き親友に託された遺児である鈴仙の奪還。
八意永琳の放った矢に貫かれた脳無は2度と動く事が無かった。
脳無は死体を利用して造られた死体人形。
だがしかし……素体がヒトである以上脳からの指令を通して動くのは脊椎動物ならば逃れる事が出来ない絶対の摂理である。
故に、それを封じる薬毒を作ればいい。
材料や調合用の素材は非常に高価かつ希少故にそういくつも造れる薬ではないが素材さえあれば作れる。
神経伝達を阻害する薬。
そして。脳無を死体人形から死体に戻す薬。
それを鏃の部分に塗りこんで射る。
数分で全ての脳無が死体へと戻り警察に後を任せた八意永琳は先んじて向かった皆の場所へと向かう。
オールマイトは……仇を見据えていた。
既に
しかし、オールマイトは驚きを隠せない。
「その工業地域のようなマスクは何だ? オール・フォー・ワン‼︎ 5年前と同じ過ちは犯さない‼︎ 鈴仙少女を取り返し‼︎ そして今度こそ貴様を刑務所にぶち込む‼︎」
オールマイトが殴打を繰り出そうとするがオール・フォー・ワンは表情の読めない声音で告げる。
「それはそれは……やる事が多くて大変だな、お互いに」
腕をオールマイトの方へと伸ばして空気砲を放つオール・フォー・ワン。
「僕はただ弔を助けに来ただけなんだが……戦うというなら受けて立つよ? 何せ僕はお前が憎い……かつてその拳で僕の仲間達を次々と潰してお前は『平和の象徴』と謳われた……僕ら犠牲の上に立つその景色……さぞや眺めが良い事だろう?」
そう告げながらオール・フォー・ワンは『空気を押し出す』個性と『筋骨発条化』の個性と『瞬発力』×10と『膂力増強』×12の個性を組み合わせてわざとオールマイトを狙わずにその背後や周囲で倒壊したビルの瓦礫で潰されても軽傷ですみ生きている被害者を狙って……空気を強烈に押し出した……。
やっている事は非常に単純である、玩具や工作で作る空気砲と大差ない……大差ないがその威力は空気砲なんて軽いものとは比にならない、このまま直撃すれば数キロ先のビル群まで粉々に破砕する程の威力である、直線上には繁華街や住宅密集地、高層マンション群の方面にも空気砲が届く為に最小で見積もっても900人以上の死者が一瞬で生まれ街にも当然ながら甚大な被害が出る……ただでさえ、今この時でさえ周囲のビルが倒壊した為に一般市民に甚大な被害が出ている、これ以上の被害が拡大するのはどうあっても防がなければならない。
「と、そう考えるよなぁ……ヒーローは守るものが多いもんなぁ?」
オール・フォー・ワンの狙いを即座に察知したオールマイトはその空気砲を強引に打ち消す為に同様の威力の殴打を利用した空気砲を撃たざるを得ない。
ただでさえ毎日の活動により日に日に活動限界が少なくなっている中……余りにも大きすぎる一撃であった……。
オールマイトは一撃で余力が全て持っていかれ……マッスルフォームの維持が困難になる。
その状態を確認したオール・フォー・ワンは泥の様に纏わり付く様な声音で語りかけてきた。
「考えてしまうよ、弔がせっせと崩してきたヒーローへの信頼……その決定打を僕が打ってしまって良いものか? でもねオールマイト、君が僕を憎む様に……僕も君が憎いんだぜ? 僕は君の師を殺したが、君も僕の築き上げてきたものを奪っただろう? だから……君には可能な限り醜く惨たらしい死を迎えてほしいんだ、だから……君が守ってきたモノを奪う、怪我を押して隠し通し続けたその矜持、惨めな姿を世間に晒せ、オールマイト……平和の象徴」
そう告げながら先程の攻撃を、『空気を押し出す』個性と『筋骨発条化』の個性と『瞬発力』×10と『膂力増強』×12の個性を用いた空気の圧縮による砲撃を再度繰り出そうとしてきた。
それを見たグラントリノが回避を叫ぶが避けれるわけがない……オールマイトの背後には倒壊したビルに生き埋めとなっている大量の人が居る……。
避けたらその人達は間違いなく確実に死ぬ。
故にオールマイトにはたった一つの行動しか許されなかった。
すなわち、同等の威力を有した攻撃にて颶風を生み出しての相殺……相殺し無理矢理に微風にまで威力を消失させる。
しかしながら、その代償は余りにも大きかった。
空を飛ぶTV中継のヘリコプターよりオールマイトが隠し通していた本来の姿が曝け出されてしまう。
それを見たオール・フォー・ワンは笑みを浮かべ告げる。
「恥じるなよ? オールマイト……それがトゥルーフォーム、本当の君だろう?」
そう告げるがオールマイトはいつもの様に笑みを浮かべながら言の葉を紡ぎ出す。
「身体が朽ち果てようとも……その姿を世間に晒されようとも……依然として私の心は平和の象徴、一欠片とて奪えるモノじゃない」
それを聞いたオール・フォー・ワンは仰々しい身振りと手振りを交えながら言葉を語る。
「素晴らしい‼︎ 素晴らしいなオールマイト‼︎ 参ったよ、君が強情で聞かん坊な事をすっかり忘れていた……じゃあ
その言葉を聞いてオールマイトの動きが止まる……表情も浮かべていた笑顔から一転、真顔になり呟く。
「嘘だ……」
そう呟いたオールマイトを見てオール・フォー・ワンが言の葉を紡ぐ。
「事実さ……分かってるだろう? 僕のやりそうな事だ、あれ? オールマイト……どうした? 笑顔はどうした? 笑顔は?」
オールマイトが後悔と悔恨に苛まれる最中……オールマイトの背後、倒壊したビルの隙間から這い出た女性が小さくか細い声音で叫ぶ。
「助け……助けて……オールマイト……」
それを聞いてオールマイトは再度笑顔をその顔に浮かべ右腕のみマッスルフォームを展開しながら叫ぶ。
「もちろんさ、お嬢さん……あぁ、多いよ……ヒーローは守るものが多いんだよオール・フォー・ワン‼︎ だから負けないんだよ」
そう叫ぶオールマイトであるがオールマイト自身既に察している。
何度も大規模攻撃を相殺した……とうに活動限界を超えていると。
しかし……それらは戦う事を諦める理由にはならない、目の前の敵に負けて良い理由にはならない。
オールマイトの背後の被害者達はシンリンカムイやエッジショット、八意永琳、クレアやラグドールなどが救護に当たっている。
そして……オールマイトには聞こえていた、この惨状をTV中継を通して見ている雄英の生徒達が、この映像を見ている者達が……強い思いで自身の勝利を願っている声が聞こえていた。
それを見たオール・フォー・ワンは溜息を吐いて言の葉を呟く。
「煩わしい……精神の話しはやめて現実の話しをしよう、先程の一撃を相殺するだけで精一杯だった様だね? ならば……もう一撃はどうあっても相殺できないだろう?」
空中に浮かぶオール・フォー・ワンが繰り出そうとしてるのは人外の膂力を用いて空気を押し出し空気砲とする一撃。
オール・フォー・ワンは考える。
別に1発でオールマイトに当てる必要はないと、数発はわざと外して一般市民の被害を拡大させオールマイトが守りたかったモノを全部奪い去って途轍もない絶望と無力感を与えてから殺そう。
一瞬だけ、ほんの1〜2秒だけそう考えた、絶望に呻くオールマイトを、絶望に打ちひしがれるオールマイトの姿を幻視して微笑む。
しかし、圧縮空気砲と化したその腕は突如としてあらぬ方向に……遥か彼方の空へとオール・フォー・ワンの意思と関係なく動き、何も無い所に放たれる。
「……なに?」
オール・フォー・ワンは自分の意識とは関係なく動いた腕を見て呟いた。
周囲のヒーロー達は人命救助に忙しなく動いておりとてもでは無いがオール・フォー・ワンを討つ余力はない。
そう思案した刹那……オール・フォー・ワンの耳元に小さく大きい声が響き渡る。
「知らない様だから教えます、月の兎はいつどんな闇夜でも相手を見ている」
オール・フォー・ワンの背後から聞こえたその声音は……拉致監禁していた筈の鈴仙の声であった。
炎でも放射されたのかズタズタに傷んだ髪とボロボロに傷んだ毛並みのウサミミと、ボロボロに傷んだウサギ尻尾を揺らしながら月明かりを浴びて全裸の鈴仙が空中を跳躍してオール・フォー・ワンの頭部に蹴りを叩き込んで地面に墜落させた。
「がっ!?」
地上に激突したオール・フォー・ワン。
その隙を見てオールマイトが最後の、最後の残り火を灯して……全力の一撃を振るってこようとしたが当然喰らってやる訳にはいかない。
個性を総動員しつつ退避行動を取ろうとした刹那。
月明かりを浴びて空中に形成した『壁』を足場にしている鈴仙の個性による精神干渉による妨害が連続して叩き込まれる。
「
「
「
「
「
「
「
「
オール・フォー・ワンは精神干渉を連続で叩き込まれて動きが止まる。
その刹那、オールマイトの最後の一撃がオール・フォー・ワンの頭部を打ち砕いた。
「ユナイテッド・ステイツオブ・スマァァァァァァッシュ‼︎」
その一撃で悪の帝王は敗北しオールマイトが勝利した。
そうして、それを見届けてから……鈴仙はゆっくりと『壁』を伝って地面に着地すると69時間以上不眠不休で動かし続けていた肉体から……気絶する様に意識を手放していった。