そうして、いつもの切磋琢磨する日常に戻った。
21人となった1-A組。
相澤先生より告げられる。
「昨日話した通り、先ずは『仮免』取得が当面の目標だ……ヒーロー免許ってのは人命に直接関わる責任重大な資格だ、当然、資格取得はとても厳しい、仮免といえど合格率は例年4割を切る……そこで君らには1人最低でも2つ、必殺技を作ってもらう」
ドアが開いて入ってくるのは、セメントス、ミッドナイト、エクトプラズム。
「必殺‼︎ コレ即チ必勝の型・技のコトナリ‼︎」
そう語るエクトプラズム。
セメントスが人差し指を立てて告げる。
「その身に染み付かせた技・型は他の追随を許さない、戦闘とは如何に自分の得意を押し付ける事が出来るか」
ミッドナイトが髪をクルクルと弄りながら告げる。
「技は己を象徴する‼︎ 今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ‼︎」
とりあえず、そう前置きして相澤先生より告げられる。
「あとの詳しい説明は実演を交えて合理的に行う為にコスチュームに着替えて体育館γへと集合だ」
体育館γ-通称トレーニングの台所、セメントス先生考案の施設であり生徒1人1人に合わせた地形や物を用意できる所らしい。
相澤先生より説明が為される。
ミッドナイトより告げられた、凡ゆる能力と多くの適性を毎年違う試験で試されるがその中でも必ずあるのが戦闘能力。
セメントスより告げられる、状況に左右されずに安定した行動を取れる様になればそれは高い戦闘能力を有していると。
エクトプラズムからは必ずしも技が攻撃である必要でないとの事。
例えば飯田天哉のレシプロバースト、一時的な超速移動そのものが脅威である為に必殺技と呼ぶに値する、例えば鈴仙の精神干渉、行動不能に陥らせる事が可能な為にこれもまた必殺技と呼ぶに値する。
相澤先生が口を開く。
「中断されてしまったが……合宿での『個性伸ばし』はこの必殺技を作り上げる為のプロセスだった、つまりこれから後期始業までの残り2週間あまりの夏休みは『個性』を伸ばしつつ必殺技を編み出す『圧縮訓練』となる、尚……各自『個性』の伸びや技の性質に合わせてコスチュームの改良やサポートアイテムの考案も並行して考えていく様に、プルスウルトラの精神で乗り越えろ‼︎」
そう告げられて鈴仙も気持ちを引き締める。
と言われても……。
鈴仙は指を立てて考える。
現状8個、技と言う技は既にあるが、その全てが精神干渉系。
精神干渉が効かない場合でも対処が出来るようにしなければならない。
他には……そう思案して今出来る事を脳内で並べていく。
主に銃弾の形状にしたレーザーを使い弾幕を形成する。
弾幕展開時には指を銃の形にして打ち出すような仕草をとる。
このレーザーの弾丸に波長を操る個性を組み合わせて翻弄していくのが鈴仙の弾幕。
光の波長を操作してのレーザー操作。
斥力を持った波動の発生を利用したバリアによるガード……。
幻視で自身や弾幕への視認を撹乱する。
波長操作で『壁』を任意の形状に操作。
音によるストレス攻撃。
ざっと挙げるだけでこれだけある。
やれる事の幅が広い故に悩ましい。
「むむむむ……」
1人で何でも出来る万能型といえば聞こえはいいがそれは裏を返せば器用貧乏でもある。
鈴仙は凡ゆる事が出来る故にその全てを実戦で扱える様にしなければならない。
とりあえず今は
弾幕の密度と威力の底上げ。
レーザーの威力、範囲の底上げ。
この2点を重点的に底上げしていく。
エクトプラズムを相手にしつつ自身の改善点を見据えていく。
そして、B組との交代時間となる。
B組の面々に調子はどうかと問いかけ軽く話し別れる。
そうして……トレーニング後。
心操人使から告げられる。
「鈴仙ちょっといいか? 放課後トレーニング付き合ってくれないか?」
「えぇ、良いですよ……お望みは個人トレーニング? それとも集団トレーニング?」
「個人トレーニング……かな」
軽快にそう返す鈴仙。
心操人使とは個性の都合上放課後に一緒にトレーニングを行う事が多い、それは彼がヒーロー科に来る前からである。
あの体育祭以降も拳藤一佳と心操人使は八意永琳の手解きを受けており近接格闘はかなりのモノとなっている。
拳藤一佳は個性の都合上、元々武術を収めていたが更に高度なモノとなっていた。
心操人使もアレからかなり鍛えていたらしく個性を使う際、体術を組み合わせて相手が呻いた所に『洗脳』を掛けたりしていると。
衝撃により即座に『洗脳』は解けるが状況の把握をするのに数秒程度の隙は必ず出来る。
そして、戦闘という局面に置いてその僅か『数秒』の隙がどれだけ大きいかは
そうして……許可を得て放課後に体育館γを使用する。
そうして放課後……鈴仙は心操人使とのトレーニングを行っていた。
心操人使の個性は初見殺しとしては最強の位置にあるがタネが割れれば一気に最弱になる。
本人もそれを理解しているのか夏休み前から体術と並行して相澤先生の操縛布も教えてもらっていると。
しかし、相澤先生の操縛布は見た目以上に複雑怪奇な扱いらしく未だに実戦レベルには至ってはいないとの事であった。
「心操人使さん、貴方の最大の長所と短所は喉です……サポートアイテムを使わずに一瞬で完璧な声帯模写を行えるのは驚嘆に値します、しかし喉を殴られたり、声がそもそも届かない様な爆音や轟音響き渡る中での戦闘、催涙ガスなどで一時的にせよ『声』が出せなくなったりした瞬間に貴方の強みは消え去ります……そこを重点的に考えましょうか」
心操人使は自己鍛錬やプレゼントマイクに師事を仰ぎ声帯模写を鍛えた結果……一瞬で声帯模写を行う事が可能になっていた。
セメントス先生の言葉を引用するが『戦闘とは如何に自分の得意を押し付けるか』である。
それらも含めて鈴仙は心操人使へと語る。
「サポートアイテムの併用も視野に入れましょうか……口元を隠すだけで相手からしたら貴方が喋ったのかが判別しづらくなります、見えないというだけで相手に与えるプレッシャー……本来なら必要のない思考、それは必ずとは言えませんがかなりの疲弊を生みます、本当に仲間が喋ったのかが不明な状況下ではコミュニケーションなどまともに機能しません、後は体術と組み合わせた時のタイミングをもうちょい仕上げましょうか」
組み手の構えを取り鈴仙は心操人使へと告げる。
「遠慮なく地面に叩きつけて『洗脳』を掛けてください……」
そう告げられた心操人使は鈴仙を背負い投げで地面に叩きつけると鈴仙が呻いたタイミングで『洗脳』をかける。
上手く『洗脳』にかけれるのは10回中6〜7回と言った所である。
呻く直前に声をかけないといけない都合上タイミングが難しい。
何度も何度も繰り返していきタイミングを掴む心操人使。
そうして、2時間に及ぶ個人レッスンは気づいたら2時間経過しており相澤先生からの『とっとと帰れ』とのお言葉を頂戴して放課後トレーニングは終了した。