展開後にボールとターゲットを配布される。
鈴仙はターゲットを左右の胸部に2個、残りは腹部に着けると、気を引き締めてかかる。
左右の胸と腹部に着けたのは単純に見やすいのと、ターゲットを装着した箇所、ここを実戦で撃ち抜かれればそのまま即死または瀕死の重傷を負う事になる。
試験でも同じだと思い込め、鈴仙。
そう強く思い込んで試験が開始される。
緑谷が一塊になろうと叫んだが広範囲攻撃を得意とする轟焦凍と爆豪勝己は集団では強みが無くなる為に個人行動に、上鳴電気と切島鋭児郎は爆豪勝己を追いかけていく。
「あらららら……まぁそうですよね、広範囲攻撃組は集団での強みは無くなりますもの……おっとそれはいただけない。成程? 雄英潰しって理由が分かりましたよ……『個性』不明っていうアドバンテージを投げ捨ててる私達が真っ先に狙われるからなんですね」
試験が始まる前に波長を通して感じ取った言葉を理解して『疑問が解けてスッキリしたよ』とでもいう様にウサミミがフリフリと動く。
その直後、Ms.ジョーク受け持ちの先輩方達が明らかにこちらに狙いを定めて個性を行使してきた。
1人がボールを硬質化させて、また1人が硬質化したボールを投擲して地中を掘り進む様に調整しつつ狙い撃ってきた。
だが……1-Aにはどんなモノでも波長として捉える事が出来る少女と音を聴く事に特化した少女がいる。
2人が息を合わせて叫ぶ。
「鈴仙‼︎ 行くよ‼︎ こういう時の為に練習してきた合わせ技‼︎」
「えぇ耳郎さん、行きますよ合体技‼︎」
耳郎響香と鈴仙は互いに背中合わせになり互いの個性を行使する。
「「
音で地面を砕き割り更に奥にいる何十人かを音による振動波で感覚を狂わせていく。
耳郎さんのイヤホンジャックから発せられる心拍音を鈴仙が調律して更に強烈な音として増幅、感覚を狂わせる音としても調律、指向性を更に調整して一点特化で『音』を放出していく。
音によるストレスが限界に達し気絶する者達もチラホラといる。
まぁしかし、傑物学園の人達は何かしらの対応をした様で全員回避していた。
そして、真堂と名乗った人がその手を地面に置いて個性を使い地面を砕き割りA組の分断を図ろうとしたが……。
「ッ⁉︎ 個性が発動……しない⁉︎」
自身の個性が発動しない事に動揺する真堂。
音を利用した移動法で文字通り音の速さで懐に飛び込んだ鈴仙がその答えを語りつつボールでターゲットを殴ろうとする。
「いえいえ、個性は発動してましたよ? ただ、貴方とは逆の波長で完全に打ち消しただけです……『揺れる』って事は極論、突き詰めて言えば『振幅』の操作でしょう? なら私とは相性が悪かったですね……おっと」
確実に死角となる位置から攻撃した傑物学園の1人の攻撃を見えているかの如く回避すると音を利用した移動法を行って真堂さん達がいる場所よりも更に後方で音により倒れ伏した何処か別の学校の者達のターゲットを2人分取ると通過する。
「ま……倒れている人を狙わない訳がないですよね……さて、通過だー……皆頑張って‼︎ 通過者控え室で待ってるよ‼︎ 今までのブートキャンプの地獄の訓練を思い出して‼︎」
そう告げて鈴仙は通過者として控え室へと歩いていく。
控え室に用意されているふわふわの椅子に座ってモニター若しくは備え付けられているタブレットから任意のモニター映像を視聴出来る為に流れる試験映像を観ながら用意されている出来立ての軽食を摘まむ。
「あっ、このフライドポテト美味しい、黒胡椒かかってる……こっちのは……辛い……何これ……超激辛チリペッパー味? からいのきらいなのに……からい……水……水」
口に含んだ瞬間にとんでもない辛さが舌を焼き……ウサミミがピンッと直立し毛が逆立つ。
口と喉を焼くのではないかと錯覚する程の灼熱の辛さ。
それに耐えながら『超激辛チリペッパー味』と書かれたポップを見て絶望する鈴仙。
あまりの辛さに涙を流しながら半泣きになり烏龍茶や水を飲みつつ辛さを中和しようとしているが全く持って中和されない。
「か……からい、まだ舌が焼けてる……舌と喉がぴりぴりしてるのが分かる‼︎」
5分経っても消えないあまりの辛さにその眼が涙を、ウサミミが毛を逆立てて直立し15秒程の間隔で力無く萎むのと直立を交互に繰り返す。
そうして8分後、ようやく辛いのが消えて……落ち着く鈴仙。
変わらずその眼には涙が……ウサミミは変わらず鈴仙の今の感情を表している、即ち……『泣くほど辛いよ……ふぇぇぇん』と悲しみの気持ちを表すかの様な動きを繰り返していた。
そうして超激辛チリペッパー味のフライドポテト以外をつまみモニターを観ながら二次試験への対策を考える。
いまだに2人目の合格者が来ない……10分してようやく2人目の合格者が控え室へと入ってきたが……円陣の時に乱入してきた……確か士傑高校の1年、夜嵐イナサ……だったか、こちらに対して並々ならぬ苛立ちを抱えてるのが、露骨にこちらに嫌悪を抱いているのがその表情と波長を通して文字通り目に見える。
この人とは……円陣が最初で、それ以前の面識がない筈なんだけどなぁ。
……自身の性格をそれなりに優しい性格だと認識している鈴仙ではあるが流石に最初から嫌悪を示している相手と仲良くする趣味は無い。
無言でモニターを観ていると何故か横の椅子に座り鈴仙に聞こえる様に告げてきた。
「先に言っておきます……俺はアンタの事が気に入らないッス……アンタが捕まんなければ……アンタが‼︎ ……終わらせたんだ‼︎ 正義の象徴を‼︎」」
あぁ成程……そう言う事か……鈴仙が
全体で見れば極々少数派であるが……。
それに対して鈴仙も言葉を語る。
「……それを1番理解しているのが他の誰でも無い私自身です……えぇ、そりゃあそうでしょう、私がむざむざ捕まらなければ……『たられば』を考えない時はないですよ、恨み言を言いたいだけで近づいて来たのですか? 流石に不愉快です……」
視線で語る、どっか行けと。
無言で睨みつけてくる夜嵐イナサを見ながらA組の面々をモニターで観る鈴仙であった。