【完結】ウサミミ少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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襲撃の終わり

 (ヴィラン)連合の首魁と思われる死柄木弔と黒霧には逃亡されたがそれ以外は全員捕縛された。

 

 鈴仙以外は皆さしたる怪我も見受けられないが鈴仙のみが重傷であった。

 右腕骨折、肋骨4本骨折、折れた肋骨が肺に突き刺さっている。

 当の本人は何を見たのかは不明だが極度のストレスに曝された為にウサミミが限界までペショォッと萎びており尚且つウサミミを極限まで後ろに絞られている。

 鈴仙曰く自身のウサミミは口よりモノを言うとの事であるが此処まで分かりやすく表現されるのはそうそう無い。

 と言うより馬の耳と似たような仕草をしていた。

 

 鈴仙曰く、他者が自身のウサミミを見れば鈴仙の大体の調子を推し量ることが出来るとの事であった。

 

 左右の耳を同じ方向に向けているときには『見慣れないもの、聞き慣れないもの、聞き逃すことができないモノに注意を向けている』状態。

 

 左右を別々にせわしなく動かしているときは『ストレスや不安や焦りを感じている』状態。

 

 耳の力を抜いて横に下げていれば『ゆったりとリラックスしている状態』だったり『楽しい気持ち』や『褒められて嬉しい気持ち』を表している状態。

 

 そして……、耳を後ろの方に絞っている状態はどういう事かというと……『恐怖を感じている』時か『警戒している』時か『怒っている』状態である。

 この状態の時には無闇に近づくとストレスによる反射的な反応が先に来る為に『ウサギ』の脚力で思い切り蹴られる恐れがあるので絶対無暗に近づいてはいけない。

 

 

 とは鈴仙自身の談である。

 

 少しすると落ち着いたのかはたまた落ち着かせたのか鈴仙のウサミミは後ろに絞られるのではなく耳の力が抜かれて横に下げている状態となった。

 そして、リカバリーガールによる治癒が施された鈴仙は人払いをしてもらった後で刑事や雄英の教師達に自身が見たモノを声音を震わせながらに事細かに語る。

 黒霧と脳無がどう言ったモノなのかを。

 

「死体が喋り、死体が動き、死体が個性を扱う……アレは理法を外れた存在です、どの様な個性を用いれば、成功までにどれ程の失敗を重ねれば、何人の死者の尊厳を踏み躙れば、一体どれだけの数の死者を冒涜しその尊厳を嘲笑う外道の所業を重ねれば……死体をあそこまで精巧な人形に変える事が出来るのかは私にはわかりませんが……黒霧と名乗っていた(ヴィラン)も、私やオールマイト先生と対峙した脳無と呼ばれていた(ヴィラン)も、医学的な見解から見れば既に生きてはいません、言葉を選ばずに言うのなら……アレは人間ではありません、数多の死体を繋ぎ合わせて造られた、命令を忠実にこなす様に調整された人形です」

 

 鈴仙の個性は『波長を操る個性』である、いや、これは正確ではない……もっと正確にしっかりと、誤解のなきように表現するならば『波長を操り支配する個性』である。

 音、光、電磁波、物質の波動、精神の波動などあらゆる波について、その波長、位相、振幅、方向を操り支配できる。

 そしてそれを任意で操作できる、

 これを知性を持った存在に感情操作目的で使うと、意識を狂気に振り切らせる事も逆に落ち着かせる事も、波長の強弱を弄って怒りっぽくさせる事も悲しませる事も自由自在。

 相手の知覚を操作し、本来見える筈の物を見えなくしたり、聞こえる筈のものを聞こえなくしたり、触れる筈の物を触れなくしたり逆に本来見えない筈の姿や感じない筈の痛みを認識させる「幻覚」や「幻聴」や「幻の痛み」を見せる事も可能。

 光や音の波長を操り幻覚や幻聴を引き起すのみならず、光を収束して自由自在にレーザーを打ち出したり、精神破壊効果のある弾丸を放ったり、完全に見えなくなったり、逆に分身したり、バリアを張ったり、波長で他者を感知したり、位相をずらすことで現時点では2秒程度ではあるが相手と全く干渉しなくなる事も可能である、位相操作に関してはいまだに『慣れ』ていないのか連続使用は叶わないが。

 そして、その他、レーダーや嘘発見器の如く相手の位置・感情を感知する事もできるなど、恐ろしく応用の効く便利能力である。

 鈴仙の赤い眼を相手の眼と合わせればより強力に支配できるが別に必須条件ではなく、操っているのは「波長」そのものなので距離も全く関係ない。

 

 故にその眼を通して見えるモノは他者よりも数段先を見てしまう事が多々ある、見なくてもいいモノが見えすぎてしまう事がある。

 そして、如何に鈴仙が戦闘面ではプロヒーローである八意永琳の教えを受けて大人びていると言ってもまだ精神的には未熟な15歳の子供である、如何に『波長操作』で精神面を補強できるといえどソレは万能である筈がない。

 

 だから鈴仙は事あるごとに自身のメンタルケアを欠かさない……文字通り意識せずとも、否が応でも、鈴仙の意思に関わらず、見たくなくても他人の悪意や、本来なら見なくてもいいモノまで見えてしまうのだから。

 事情聴取を終えて鈴仙は帰路に着く。

 

 そうして……お師匠である八意永琳の居る家へと着く。

 

「お師匠様〜」

 

 ぐでぇっとだらしなくテーブルに突っ伏す鈴仙……年頃の女の子がはしたないと注意されつつ八意永琳へと愚痴る。

 襲撃を受けた事自体は既に知っていたのか軽く流されたが脳無の事を口走ると八意永琳の表情が変わる。

 医師として、ではなく……プロヒーローとして、である。

 

「そう……この件については暫くこちらでも探ってみるから……鈴仙、貴女はメンタルケア受けておきなさい」

 

 そう告げられて、鈴仙はいつものように自室へと入りメンタルケアを行う。

 他者は必要ない、鈴仙の場合メンタルケアに必要なのは自身を映す鏡だけである。

 

 鏡に映る自身を見ながら波長操作を応用して自身をケアする。

 

 そうして……メンタルケアを行い、いつも通りの鈴仙に戻っていく。

 

 そうして……湯船に身体を浸かりながら思い返す。

 今日の出来事を、確かに恐怖はあった、だがしかし。

 ウサミミをぴょこぴょこと無意識で動かしながら鈴仙は呟く。

 

「知らない世界を知る、これはこれで有益でした」




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