インターンシップ①
そうして、インターンシップがスタートした。
「よろしくお願いします」
そう言ってギャングオルカへとお辞儀をする鈴仙。
本日の仕事は17時より水族館でのショーの依頼、それまではパトロールを行うとの事であった。
そうしてパトロールをしつつ轢き逃げや窃盗、強盗犯を逮捕して警察へと引き渡していくギャングオルカと鈴仙。
しばらく通りを歩いていると鈴仙はギャングオルカに告げる。
「喉渇いてません? そこの自販機で何か買ってきましょうか?」
そういう波長が見えた為にギャングオルカへと問いかける鈴仙。
ギャングオルカからブラックコーヒーを頼むと告げられ了解しましたと告げて一旦その場を離れる鈴仙。
そうして、ギャングオルカが通りで待っていると裏路地の方から少女が1人酷く焦った様な、とてつもない恐怖で身体を震わせてその眼に大粒の涙を浮かべながら飛び出して来た。
しかも裸足の状態でガラスの破片や3cm程の釘を踏んだのか足裏からは大量の血が流れていた、しかし、その少女は血塗れの足を、痛むであろうその足で……ここまで駆けてきた。
ギャングオルカはその少女を抱き抱えると長年の直感とも言うべきか……奥から出て来たペストマスクを装着した男の下にはこの少女は決して帰してはいけないと警鐘を鳴らしていた。
そこに鈴仙も合流する。
「ギャングオルカさん、頼まれていたブラックコーヒーです……て、どうしたんですか? 女の子抱えて……泣いてるじゃないですか……ギャングオルカさんこの前も子供に泣かれてませんでした? ……と、そんな冗談叩ける状況じゃないですね、ギャングオルカさん、子供をこちらに」
鈴仙はギャングオルカの眼を見て状況を察したのか子供を預かる鈴仙。
その少女から確認できる波長は恐怖と絶望、それに……ようやく逃げ出せたと言う安堵……痛い思いはしたくないと言う……感情。
鈴仙は透視を用いて少女の四肢に巻かれた包帯の傷を確認すると夥しい程の切開創……しかもこれは……この所々ブレたかの様な切開創は麻酔など使わずに切開した時に出来る典型的な切開創……正直言ってこれだけでも虐待として立件できる程の……。
ギャングオルカは鈴仙に対して短く問いかける。
「どうだ?」
鈴仙もその意図を汲み取って端的に告げる。
決して抱き抱えた少女を眼前の男の下には帰してはならない、帰したらどうなるかなどこの包帯の下に隠された傷を見た鈴仙にはよく分かっていた。
「……虐待案件、私達の権利行使可能な案件ですが……」
ヒーローには虐待児童の保護に関して与えられている権限*1がある。
ソレは即時の保護を可能にする為に与えられた権利でありそもそもヒーローでなくとも虐待や虐待が行われている可能性がある事態に関しては法律*2の規定に基づき誰であろうと通報の義務がある。
しかしまだ不明点が多すぎる。
故に鈴仙はペストマスクの男に問いかける。
「失礼ですが……ご職業は? お医者様でしょうか?」
そう問いかけるとペストマスクの男は頬を掻いて質問の意図が分からないとでも言うように聞き返して来た。
「……はい? 医者に見えますか? この風体で、ヒーローにはあまり言えないですが昔ながらの極道ですよ……申し遅れました、死穢八斎會の治崎廻と申します……そちらはギャングオルカさんと雄英体育祭で優勝していた一年生の鈴仙さんでしたね」
明らかな嫌悪の表情、波長を見なくても分かる程の……。
続けて鈴仙はペストマスクの男へと問いかける。
「娘さんですか? 夥しい程の包帯ですね? 怪我ですか? この包帯の傷を医者に見せた方が宜しいのでは?」
そう畳み掛ける鈴仙に対してペストマスクの男は静かに笑みを浮かべて語る。
「えぇ、
よく転ぶ、その言葉を語った瞬間に鈴仙の眼は治崎廻の波長がブレた事を確認した、波長がブレる時は何らかの虚偽を感じている時であり、心拍や呼吸音、血圧の変化なども感じ取れる為に治崎廻の告げた『娘です、よく転ぶんですよ』というのは完全に嘘であると判別される。
それを見て鈴仙は更に口を開く、ギャングオルカへとテレパシーを飛ばしながら。
「遊びたい盛りの子供が転ぶのは分かりますよ……しかしここまで包帯を巻かれているとなると……」
そう治崎廻へと告げながらギャングオルカへとテレパスを飛ばす鈴仙。
『ギャングオルカさん、娘と言うのも転んだと言うのも虚偽です……』
そう告げると鈴仙は抱き抱えている少女の脳内の電気信号を読み取り記憶を見ると……少女の受けた悍ましい虐待の記憶を追体験する事となった。
「ッ‼︎
咄嗟に鈴仙は自分自身の精神を調律して何とか立ち直るが……見たところ6歳程度の少女に行う所業とは信じられないし、信じたくもなかった。
鈴仙は荒い息を整えながら抱き抱えている壊理と呼ばれた少女を決して離さない様にギュッと抱きしめ笑顔を見せて安堵させる。
そして、少女には決して自身とギャングオルカ、治崎廻の会話が聞こえない様に波長操作を行うと鈴仙は語る。
「……この子の……壊理ちゃんの記憶を読み取って追体験させていただきました……相当、酷い事をなさってましたね、麻酔無しで身体を切り刻むなんて人のやる所業じゃないです」
そう語る鈴仙。
ソレを聞いてピクリと眉を動かす治崎廻、その眼には憎悪の色が濃く映っていた。
ギャングオルカも治崎廻に語る。
「虐待案件故に……ヒーロー以前に一市民として通報義務がある、ご理解いただけますように……この子供はこちらで預からせて頂きます」
それを聞いた治崎廻は苛立った様な眼でギャングオルカと鈴仙を睨みながら告げる。
「虐待案件? 確たる証拠もなくソレを行うのは人権侵害では?」
あからさまに周囲に聞こえるような声でそう叫び威圧する治崎廻であるが鈴仙は壊理と呼ばれた少女の包帯を解くと静かに語る。
「そもそも……何故これ程の傷を医者に連れて行かないのですか? 四肢の夥しい程の切開創、治りかけているとは言え何故この様な切開創が出来たのですか? 詳しく説明して頂けます? 何故? 包丁で切ってしまったと言う感じでは無さそうですし、これは医療用メスで切開された痕ですよね? 先程ご職業は医者ではないと仰られてましたが……医師でもないのに他人の身体を切開するのは完全に違法ですが?」
鈴仙がそう告げると……治崎廻は何一つ言い返せない様子であった。
その後……子供を預かるが相手のやり方から見て……そこらの児童保護施設の場合襲われる可能性が非常に高い為に雄英寮で一時預かる事となった。
鈴仙から離れようとしない為に鈴仙のお部屋で預かる事となった。