【完結】ウサミミ少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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一佳VS鈴仙

 互いに構えを取り物間寧人の合図でスタートする。

 組み手……というかもはや模擬戦に近いソレを見て物間寧人も心操人使も互いに組み手を中断して顔を見合わせて呟く。

 

「……心操くん……だっけ? 君もアレが出来るのかい?」

 

「出来ると思うか? 何年修行してもとても辿り着ける境地には見えないんだが……」

 

 眼前の光景を見ながら物間寧人は心操人使へと語る。

 鉄山靠(てつざんこう)で一佳がよろめいた隙を突いた鈴仙を一佳は自身の個性である『大拳』で蹴りを繰り出した鈴仙の脚を掴み拘束するが拘束された脚を起点に密着して寸勁を打ち込んで一佳の拘束から逃れると流れるように懐へと潜り込んで鳩尾と喉に掌底を打とうとするも一佳はバク転で回避行動を取りつつ鈴仙の顎へと蹴りを見舞う。

 

 それを見た物間寧人と心操人使は互いに頷く。

 勝てるビジョンが浮かばない、と。

 

 顎を蹴られて脳が揺れ数秒無防備な状態を晒した鈴仙、一佳はそれを好機と見てそのまま頸動脈洞を締め落としにかかるがそんなに甘くない。

 よろめき倒れかけた鈴仙の背後を取ろうと一佳は直感の囁くままに真横に跳躍した……。

 

 刹那、先程まで自身がいた場所にレーザーの弾幕が走る。

 脳が揺れて上手く狙いを定める事が出来なかったのか若干ズレていたがそれでも回避行動を取らざるを得ない程の密度の濃い弾幕。

 

 そうしてる間に鈴仙はタンッタンッと自身の手で頭を叩いてボーッとしている思考を呼び戻していた。

 

「ふにゃ……? あー? ……ッ顎に蹴り喰らって意識飛びかけたんですね……流石は一佳です」

 

 揺れる視界を叩き戻して対面の相手に敬意を払いそう告げる鈴仙。

 対する一佳も構えを取りつつ言の葉を語る。

 

「それはこっちの台詞だっての……あの一撃で確実に落としたと思ったのに……耐えられた挙句追撃は見事に対処された」

 

 そう軽口を叩き合いながらも互いに追撃は行っていた。

 一佳はその格闘技術と個性の合わせ技で。

 鈴仙は中遠距離からレーザーの弾幕を撃ち続けて牽制しつつ一佳が隙を見せた瞬間に波長操作で創り出した壁を足場にした3次元立体機動と近接格闘術を交えて。

 

 そうして互いに犬歯をチラリっとみせ肉食獣かと見紛う程の笑みを浮かべつつ語る。

 

「く……ふはははは‼︎ 良いな‼︎ 良いよ鈴仙‼︎ 楽しいな‼︎」

 

 不敵な笑みを浮かべつつ突如として笑い始める一佳、その眼は自身よりも遥かに強い者と戦えるという楽しみが色濃く映っていた。

 

「……えぇ、本当に……楽しい、こんなに楽しいのは本当……ふふふ、ありがとうございます、一佳」

 

 意味深な笑みを浮かべつつ礼を告げる鈴仙。

 

 そうして、互いに構えを取り……その刹那、互いに一気に肉薄して拳打と個性の応酬が始まった。

 鈴仙が一佳に密着した姿勢からレーザー弾幕を展開した瞬間に一佳は鈴仙の腹部を蹴り仰け反らせると『大拳』で鈴仙を掴みぶん投げて自身と鈴仙の位置を入れ替えレーザーの弾幕を回避しそのまま一歩踏み込んで空中で動きの取れない鈴仙の背後へと跳躍して頸動脈洞を締める一佳。

 そして凄まじい勢いでぶん投げられて受け身を取りつつ警戒行動をとるが背後に回った一佳に頸動脈洞をキッチリ締められる鈴仙。

 

 突如として締められた頸動脈洞……反射的に悶えなんとか抜け出ようともがき続ける鈴仙。

 しかし、鈴仙に対して締め技をずっと極め続ける一佳だが気絶するまでにほんの僅か、ほんの少しだけ、2〜3秒程の猶予がある。

 それを見逃さずに高周波の振動を纏わせた拳打を自身の肉体ごと一佳へと叩き込んで内臓を揺らし一瞬拘束が緩んだのを見逃さずに驚異の柔軟性を活かして締められていた首を抜く。

 

 そうして、逆に締め技をかけようとするが一佳の個性で密着していた身体が弾き飛ばされる。

 腹部に重い衝撃が走り肺の中の酸素が一気に吐き出されほんの一瞬だけ酸欠と呼吸不全に陥る鈴仙。

 

 その後も互いに一歩も譲る事なく格闘戦を繰り広げる……時に一佳が馬乗りになりながら、時に鈴仙が馬乗りになりながら……。

 

 それを見学しつつ心操人使も物間寧人も苦笑いの表情を浮かべて語る。

 

「心操人使くん、あの2人……既に3時間近く模擬戦やってるが……それを指摘する勇気は君にあるかい?」

 

 そう物間寧人から問いかけられた心操人使。

 心操人使は天を仰ぎながら渇いた笑みを浮かべて物間寧人に言の葉を返す。

 

「俺達の言葉聞こえてないよ……あの2人……自分達の世界にどっぷり入り込んじゃってる……あの戦闘に割って入り込むのは勇気じゃなくて力量が判断出来ない奴か……若しくは余程の自信家じゃないか?」

 

 2人とも、もはや模擬戦とは思えない程の個性の使い方である。

 一佳は一瞬だけとはいえ暴風すら生み出す程の威力の『大拳』を振り回して鈴仙を吹き飛ばしているし、鈴仙は鈴仙で……極大光線砲撃(マスター・スパーク)すら放っている、威力もレーザーの太さもかなり抑えた物になっているが極大光線砲撃(マスター・スパーク)は別に鈴仙の掌からでなくとも撃てる。

 それこそ一佳の眼前だったり背後だったり、一佳のありとあらゆる死角から撃つ事が可能である。

 

 しかし天性のカンで見えない位置からの砲撃を避けて鈴仙へと再度肉薄する一佳。

 それを見て物間寧人は渇いた笑いを浮かべて言葉を紡ぐ。

 

「……やっぱり拳藤は相当バトルジャンキーの気がないか? いや……それは相手と同じか」

 

 その言葉を聞いて心操人使はウンウンと頷く。

 

「鈴仙も拳藤一佳さんも……教えに入る時は結構あんな感じだから……」

 

 無意識のうちに一番最初に行われたブートキャンプを思い返したのか青褪める心操人使。

 気のせいか身体も少し震えている。

 

 そうして、何度目かの取っ組み合いからの蹴りや拳の応酬が続き……互いに個性を使い距離を取ると構えを取りつつ視線で語る。

 

 これで決める……。

 

 もう観戦に回っている2人にですらそう読み取れる程の白熱した空気、武闘家2人による模擬戦。

 

 どちらが勝つのか分からない状況の中……2人が肉薄して乱打を行う。

 拳が互いの拳に直撃し、蹴りを放てば互いの脚に直撃する。

 投げ技も受け身をしっかりと取り地面に着いた瞬間に、次の瞬間には寝技へと派生されて投げ技をかけた方が寝技をかけられているというもはや心操人使と物間寧人の実力では『何がどうしてそうなった』とでも言う感じの……模擬戦であった。

 

 結局、決着が付かずに……また次回に持ち越す羽目になり……熱くなりすぎて今日の本題を完全に忘れていた2人は顔を見合わせて今日の本題を思い出すとすごい勢いで物間寧人と心操人使に謝罪をしてきた。

 

 なんとも締まらない結果になったなぁと……。

 

 顔を見合わせて笑い合う心操人使と物間寧人であった。

 

 

 それを見た鈴仙と拳藤一佳は申し訳なさそうにしていたが物間寧人も心操人使も観戦しつつも学ぶ所が非常に多かった為に参考になったとの言葉をかけて……その日のトレーニングは終了となった。




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