「たく……めんどくせぇなぁ」
仲間達とバラバラになった後で……荼毘はゆらりゆらりと歩きながら気怠そうにしつつ時折、自身を殺そうとしてくる者達。
口を開けばリ・デストロ……リ・デストロ……リ・デストロと叫ぶか異能の解放をと叫ぶ解放戦士達を躊躇う事なく焼き殺していく。
時折、その手に持ったナイフで刺し殺しながら。
「はぁ……全く……どーしてこう……狂信っていうか何というか」
そう呟きつつ解放戦士達を焼き殺していく荼毘。
自身の肉体の都合上、蒼炎を用いての戦闘は長く保たない為にその手には解放戦士の1人から奪い取ったナイフが握られており独学で得た技術で残りを処理していく荼毘。
そうしていると……空より氷で形作られた巨大な手を操るダッフルコートにその身を包んだ女性が現れ巨大な氷塊で形作られた手を操りながら叫ぶ。
「蒼炎の使い手荼毘……
氷塊をスレスレの所で避けつつ荼毘は思案する。
脳内で裏のブローカー達が調べ上げた情報を思い返す。
ソレを聞いた荼毘は確か外典とか言ったか? 相手の個性を思い出して舌打ちしつつ優しく、皮肉混じりに答えてあげる。
「おいおい……どうやら知らない様だから教えてやるよ⁉︎ 仕方ねぇ特別だぜ? 氷は溶けちまうから可哀想と思って待っててやったんだよ‼︎」
そう叫び蒼炎を放つ荼毘。
外典が操る氷が全て溶け蒸発する。
ソレは足場と化していた氷も決して例外ではなかった、8m程の高さから落下する外典は荼毘に対して煽り返す様に告げる。
「知らない様だから教えてやるよ? 荼毘……私の異能は氷を操る」
そう告げた外典は泥花市内の全てのコンビニエンスストアやスーパーマーケットに売られている袋に詰まった氷を操作して足場となる氷や巨大な龍を思わせる氷像を作り対応する。
そうして外典は荼毘を睨みつけながら語る。
「私は……リ・デストロの為にずっと異能を鍛えてきた……それこそ人生の全てを捧げてな……リ・デストロという存在が僕を強くしてくれた……リ・デストロこそ私の全て、存在意義だ……思いも異能も中途半端なお前如きの生半可な焔で氷が溶けると思うなよ? 荼毘」
氷で龍の氷像を形作りつつ荼毘を見下す外典、氷像を用いた連撃を時には炎を放射して、時には素の身体能力のみで完璧に避けていき外典が語ったソレに対して荼毘は憐れむ様な声音で大仰な身振りと手振りを加えて煽り返す。
「へぇ? 口を開けばリ・デストロ、リ・デストロ……って解放軍の奴らはほんと素敵な人生を歩んでるな‼︎ 思考停止で生きているなんて可哀想に‼︎ 俺なら悲しくて死にたくなるぜ全く‼︎」
そう叫ぶと外典の逆鱗に触れでもしたのか苛烈な攻撃が更に苛烈なものとなり外典が狂乱の叫びをあげて氷像を用いて攻撃してくる。
氷像を溶かし異能解放軍幹部である外典を殺す為に本気で蒼炎を放つ荼毘、そこには躊躇いなどというものはない。
極度の高熱を保った蒼炎はそのまま外典の操る氷を溶かし尽くし生じた熱波は外典を炙る。
熱いのか無言で残った氷を防御に回すがソレもほぼほぼ溶かされている為に外典は苦い顔をしながら荼毘を睨む……。
しかし、地響きと共に数多の家屋や建物を破砕しながら地面の下から大量の氷が出てきた。
そして外典は語る。
「『氷を操る』と言った筈だが? 僕の異能は氷の温度も自由自在に操れる、水道管に僅かながらの氷を送り込めば凝固した水は氷となり僕の手足になる‼︎ 異能解放軍の目指す先の未来では異能の強さが社会的地位に直結する……つまり、異能を高めるという事こそが生きる事そのもの‼︎ 異能の強さ以外に生の価値はない‼︎」
そう仰々しい程の身振り手振りを重ねて語る外典に対して荼毘は憐れむ様な声音で語る。
「さっきも言ったが……そりゃあ哀しいなぁ、死ね」
「死ぬのはお前だよ蒼炎……さっきからお前の身体焦げ臭いんだよ……相手の異能を見極めるのは基本中の基本……その爛れて剥がれ落ちそうな皮膚……お前長く戦えないんだろう? 己の炎に身を焼かれるから」
そう語る外典だが彼女は見落としていた。
というよりも……氷は本来炎との相性が最悪、それを優勢だからと失念していた。
氷は炎で溶けるという事を。
荼毘がゆらりゆらりと氷像による攻撃を捌きつつ溜め込んだ炎を放出しながら呟く。
「特別に見せてやるよ? とっておきの大技ってやつだ、赫灼熱拳……プロミネンスバーン‼︎」
蒼炎を溜め込んで熱線を放つが如く解放する荼毘、その蒼く煌めく太陽の如き熱を有した焔は……外典の操る氷なんぞ全て融解する程の火力を有しており外典を瞬く間に戦闘不能に陥れる。
そして、外典の異能は氷を操るのであって……氷を生み出す訳ではない。
外部から持ってこないといけない。
だが……リ・デストロの為に役立ちたいという狂信に近いソレは……外典の狂信者に匹敵するその狂気的な思いは……異能を更に一歩踏み出させる。
温度操作が可能ならば……そう、液体から個体へと成す事も可能。
ここにきて……外典の異能は更に一歩進んだ。
しかし、荼毘もソレは同じであった。
荼毘自身……過去のとある出来事から火力の上げ方には一家言ある。
そして……乱発能わぬ筈の赫灼熱拳を更に重ねて撃とうとした刹那……荼毘の身体に起こる変化。
「赫灼熱拳で足りないなら……更に火力を上げてぶちこむだけだ……プルスケイオス‼︎ 赫灼熱拳……プロミネンスバーン‼︎」
熱で融解し崩壊する泥花市の家屋や建物。
外典もソレに巻き込まれて半死半生となっていた。
確実に身体の奥底から湧き出る炎とソレ以外の感覚を掴んだ荼毘。
荼毘は天性のセンスで理解した。
今……2発目の赫灼熱拳を放とうとした刹那……冷気を感じ取った。
眼前の外典によるものでは無い。
自身の肉体の中からである。
それが示す所はただ一つ……。
自身の個性は『蒼炎』だけでなく『氷結』も僅かながらに宿っていた。
末子同様の最高傑作とまではいかないが、自身の蒼炎による火傷を冷やせる程度には。
それを理解した刹那……荼毘は高笑いをして呟く。
自身の個性は蒼炎だけでなく氷結も宿っていた……。
「これはこれでいいネタが出来たな……」