「あら……残念」
マグネはまるでお茶にでも誘うかの如き軽さで眼前の解放戦士の命を奪う。
サポートアイテムを用いてガウス加速器と同様の磁力を発生させて解放戦士達を次々と弾き飛ばしていくマグネ。
そして、隣にいるムーンフィッシュもその歯刃で解放戦士達を貫いていく。
時折、死体の断面に心奪われているが……。
弾丸にも劣らない速度で弾き飛ばされた解放戦士の身体は当然、その速度に耐えきれずにコンクリート壁に叩きつけられてぐちゃぐちゃになる。
「何て言うのかしらね……貴方達の思想や主義主張に対してどうこう言うつもりはないのだけれど……あからさまに格下って見下してるその眼がムカつくわね」
そう呟いて解放戦士を数人、ガウス加速器と化したサポートアイテムで弾き飛ばしているとビリっとした感覚がマグネを包む。
そして、電磁力でコンクリート壁に射出されかけるが磁力を増幅、反発中和させて何とか逃れると電磁力にて攻撃をしてきた異能解放軍幹部を見てサポートアイテムを担ぎつつ言の葉を呟くマグネ。
「……あら、貴方達がここに居るって事は……そういう事なのね? ムーンフィッシュ……貴方の昔馴染みよ? まぁ私にとっても……だけどね、大分久しぶりね?」
サポートアイテムを展開して眼前にフワフワと浮遊している異能解放軍の幹部は奇しくもムーンフィッシュとマグネの昔馴染みであり……色々と手を組んで凡ゆる犯罪をやったものだが。
マグネが気さくに話しかける。
ムーンフィッシュは相変わらず断面に見惚れている……。
「まさか異能解放軍の幹部になってたとはね……昔馴染みであり今でも仲間だと思ってるから一度しか言わないわ……何もせずに立ち去ってちょうだい? 互いに相性の悪さを理解しているでしょう?」
そう語るも古くからの友人からの返事はない。
マグネはソレを無言の対立と受け取って……個性と体術を組み合わせた戦法を取る。
そして……激烈な磁力と磁力のぶつかり合いが始まる。
ムーンフィッシュの方も……膨大な量の刃を展開しぶつかり合いが始まった。
相当鍛えてきたのか……電磁力とサポートアイテムで
しかし、マグネもムーンフィッシュもかなり個性を鍛えてきた。
マグネはその磁力を増幅、更に効率良く磁力を発生させられる様にしてきた。
そして……ムーンフィッシュは林間合宿の際に鈴仙・優曇華院・イナバを襲撃した際に得た学びを教訓としてしっかりと活かしていた。
すなわち、壊れるよりも、壊されるよりも速く歯刃を展開、歯刃の強度も速度も、林間合宿当時とは比べ物にならない程に強くなっている。
個性は使えば使う程に強くなっていくとはよく言ったモノである。
連続殺人鬼達は……個性を常日頃から使い続けている。
結果、歯刃は本物の日本刀とそれ以上の耐久力と切れ味を獲得しており……歯刃の大きさも展開速度も伸縮の速度も林間合宿襲撃時よりも変幻自在ときた。
そして、マグネの方もしっかりと個性が伸びていた。
磁力の増幅に始まり……出力の維持や磁力を発生させる迄のタイムラグ、これら短所を消して……長所のみを伸ばしていった。
ガウス加速器として使用しているサポートアイテムで
カウンターに対して更に重ねてカウンターを放ったマグネ、そしてムーンフィッシュもマグネに当たらない様に調整した歯刃を用いて追撃を行う。
「やるじゃない‼︎ 今更何でどうしてなんて聞かないし互いに主義主張、思想も袂を分かった‼︎」
マグネの言葉に対して昔馴染みの女性幹部は無言を貫き通していた。
やれやれとでも言うように、マグネとムーンフィッシュは個性を用いて苛烈な攻撃を加えるが全てを軽々と捌かれる。
ソレを見たマグネは頬を掻き近接戦闘へとシフトしつつ言葉を投げかける。
「異能解放軍の幹部になってても貴方と近接戦闘をしていると昔を思い出すわ……ねぇ貴方もそうでしょう? ムーンフィッシュ‼︎」
声を発する事なく拘束着のまま器用に頷くムーンフィッシュ。
電磁力を操る異能解放軍の幹部も流石に2対1のこの状況は芳しくないのか一時撤退をしようとする解放軍幹部。
しかし、相手を磁力で自身に接着するマグネ。
マグネは昔馴染みの顔を見ながら叫ぶ。
「どこに行こうってのよ? せっかく昔馴染みにあったんだから昔の話でもしましょうか‼︎ 思いますわね、初めての仕事の時を……こうして取っ組み合いになってたわ‼︎」
マグネの脳裏に思い返されるは、未だ
自分は自分だ……生きやすい世界を望んで何が悪い? 容姿や見た目の事で色々言われてきた。
そんな中で、マグネは何回目かの
強盗に入った家でらしくないミスをしてしまい顔を見られて通報までされた。
通報した相手はすぐさま殺したものの運の悪い事にすぐ近くに数人のヒーローがおり捕まると覚悟を決めた瞬間……そのヒーロー達は残らず電磁力の応用で身体が弾け飛んで皆死んだ。
そして、その後数年は一緒に組んで色々な犯罪をしてきたのだが……
ソレが今……何の偶然かマグネとムーンフィッシュの眼前にいる……まさに偶然であった。
ムーンフィッシュも彼女の事は覚えていた。
なにせ自身の護送中に『面白いから』と言う理由のみで護送車を襲撃して自身を解き放ったのだから。
そしてムーンフィッシュも彼女と仕事をしていた時期があった。
その後趣味や嗜好、思考や価値観の行き違いから離別したが、その後もムーンフィッシュは『彼女』の事は色々噂は聞いていたが……。
何の因果か眼前に居る。
ムーンフィッシュの歯刃を捌きつつその少女は撤退を視野に入れた行動を行おうとするがソレを許すマグネとムーンフィッシュではない。
過去に仲間であっても敵対するならば容赦しないのが裏の世界の掟であり……暗黙の了解故に。
「しかしまぁ……あの頃よりも腕が落ちたわね? 貴女の腕は錆び付いたのよ……私やムーンフィッシュと出会った時の貴女なら最初の1発で決めていた筈だもの」
そう呟いてガウス加速器と化したサポートアイテムで昔馴染みの少女の肩を穿つとムーンフィッシュがギリギリ致命傷にならない箇所を歯刃で刺し貫いて……気絶させる。
それと時を同じくして……ランドマークであるデトラネット本社ビルが崩壊するのを見たマグネとムーンフィッシュであった。
「あらら……弔ちゃんかなーりやってるわね?」
そう呟いて気絶した昔馴染みを背負いながら足早にボスの元へと向かうマグネとムーンフィッシュであった。