トゥワイスが血塗れで倒れ伏しているトガヒミコを発見したのは……スピナーを除いた他のメンバーがそれぞれの幹部を撃退した時であった。
トゥワイスは血塗れのトガヒミコを見ながら叫ぶ。
「嘘だろ⁉︎ 事実さ‼︎ どこに行っちまったんだって心配したんだ……へっちゃらだよ‼︎ あぁぁ‼︎ 畜生‼︎」
トゥワイスは血塗れのトガヒミコを抱き抱えるが血を失いすぎたトガヒミコの体温は急激に低下していた。
ソレを感じ取ってトゥワイスは叫ぶ。
「トガちゃん‼︎ 嘘だろ⁉︎ 嘘だよな‼︎ ほんとうさ‼︎ 人肌がこんなに冷たくなるなんて‼︎ 畜生なんでこんな熱いんだ‼︎ 黙ってろよ‼︎ 黙ってられないだろ⁉︎ 血だらけなんだ‼︎ 息は⁉︎ まだある‼︎ ダメだ生きてくれ……君は……連合の皆は俺の居場所なんだ……あぶれちまった人間を必要としてくれた唯一の……クソッぶっ殺してやる宗教‼︎」
そう叫ぶトゥワイスをデトラネット本社ビルのソファに腰掛けながら監視カメラを操作しているPCの画面越しに見ている近属友保……PCを操作しながらスケプティックはブツブツネチネチと1人語り続ける。
「お前の異能があればリ・デストロに万が一の事があっても復活させられる‼︎ デストロの悲劇は繰り返してなるものか‼︎ トゥワイス……分倍河原仁‼︎ 異能の使い道を何故理解していない‼︎ 己の価値をもっと理解しろ……お前は……解放軍に引き入れる‼︎」
そう叫びスケプティックは最後の締めに取り掛かった。
トゥワイスはトガヒミコから譲り受けたハンカチでトガヒミコの額の裂傷を包もうとした刹那……背後からナニカがトゥワイスに襲いかかる。
背後からナニカに突き飛ばされて組み伏せられるトゥワイス。
「がっ⁉︎ っ痛え……なん……だ?」
トゥワイスは見た。
自身と全く同じ顔をした無表情の白スーツに身を包んだ自分が11体。
5体が自身を痛めつけ……残る6体がトガヒミコを殺そうとトガヒミコを持ち上げてその首を折ろうと力を込めていた。
ソレを見て……トゥワイスは発狂しそうな
「やめろ冷てえ‼︎ ああなんて冷たい手だ……誰だ畜生……誰なんだお前は、お前は俺か? 俺はお前なのか? ァァァァァァ‼︎ つつまえねえとやべぇ裂ける、裂けちまう……あ! ァァァァァァ‼︎ おれが‼︎ 俺が……殺そうとしている‼︎ トガちゃんを‼︎ ハンカチで包んでくれたあの子を‼︎ 俺が⁉︎ 俺か? 俺なのか? じゃあ俺は何だ!? じゃあ本当の俺は⁉︎ 違うのか?」
トゥワイスは……錯乱しそうなこの状況下で自身が義爛に出逢った時を思い出していた。
中学を卒業してから……就職して……しばらくしてバイクでの事故を起こして……そこからつまずいて……落ちに落ち切ってから……気づくんだ。
それが過ちであったと。
全く同じ姿形の自分が2週間と9日殺し合う惨状を目撃して……最後には泥の様に消えていった。
そうして……俺は俺すら信頼できなくなっちまって……。
色んな犯罪に手を染めて、そんな折に義爛と出会った。
BARの一角で中立のブローカーと謳う義爛にとある紹介があると告げられて。
「なるほどねぇ……自分と自分が殺し合う姿を見て気が触れちまったと……で? その頭に被ってる袋は何だ?」
そう問いかけてきた義爛に対してトゥワイスは叫んだ。
「包んでねぇと裂けるんだよ‼︎ 裂けやしねぇよ‼︎」
そのトゥワイス自身のやり取りを一度見て義爛は察した様で懐からトレジャラー・ブラックを一本取り出して火をつけて味わいながら紫煙を燻らせて呟く。
「あぁなるほど……」
トゥワイスは義爛に対して説明した。
「俺の出した分身はある程度のダメージを受けると消える……そうだな成人男性だと大体骨折程度のダメージを受けたら消えちまう……俺は不安なんだ、俺が俺なのかと……もしかしたら偽物で消えちまうんじゃねぇかって」
それを聞いた義爛は残念そうに呟く。
「自分を増やして自分達で強盗や窃盗や殺人を重ねて無事に全国指名手配……使い方によっちゃ『国』をも陥せる個性だ、そんな奴が転落人生とは……終わった人間は先ず仲間に信頼される事だ……近頃元気な集団があってな、お前なら必ず必要とされる……大丈夫、似た様な人間は案外近くに沢山いるもんだ」
そう、ソレを思い返して……トゥワイスは、分倍河原は……今にも首を折られそうなトガヒミコを見て叫ぶ。
「トガちゃん‼︎ 俺は……俺は‼︎」
そう叫んで……拘束を抜け出るが即座に取り押さえられて……右腕を掴まれて
そう、ベキッと小枝でも圧し折るかのように腕の骨を折られた。
身体に走る激痛、反射的に溢れ出る涙……しかし、トゥワイスは……痛みに悶えつつ叫ぶ。
「痛え……いてぇよちくしょう……いてえ、いてえ、いてえ……いてえ‼︎ ……痛いのに消えねえよ‼︎ 俺‼︎」
今ここに存在しているトゥワイス自身が仮に偽物であった場合、骨折程度のダメージを受けたら消える。
しかし、今……腕の骨を圧し折られたにも関わらず……自分は消えることなく存在している。
ソレはすなわち……自身が本物であるという何よりの証拠であった。
トゥワイスはこれまでを思い返して自分に対して毒を吐く。
なるべく大怪我しねぇ様に立ち回ってきた……雄英の襲撃時も出来るだけ後方支援に留めて……消えちまうのが恐ろしかったから……。
いっつもそうだ、いつも誤った選択を取り続ける‼︎ あぁ愚か者‼︎ テメェでテメェの腹を掻っ捌けば直ぐに分かった事だろう!? 俺は逃げて逃げて逃げて……逃げ続けて転げ落ちた。
落っこちた先で見つけたのはこの場所だ……皆の居るあったかい場所だ……トガちゃんや死柄木弔、スピナー、マグネ……ムーンフィッシュ、コンプレス、マスキュラー……黒霧、マスカレイドのいる
トガちゃんを……みんなを助けるんだ……俺が‼︎ この個性で‼︎
「どけよ偽物……俺は仲間を殺さない‼︎ 個性『2倍』……その恐ろしさを思い知れや‼︎ 解放軍‼︎」
俺を受け入れてくれた
そうして……トゥワイスは自身を次々に増やしていく。
複製されたトゥワイスがトゥワイスを増やしていき、そのトゥワイスが更にトゥワイスを増やしていく。
そうして……増殖していくトゥワイスは泥花市を飲み込むほどの大軍勢となった。