【完結】ウサミミ少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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僕らのヴィランアカデミア 死柄木弔編

「……気持ち悪い」

 

 死柄木弔の心の奥底には鉛の様なモノがずっとあった。

 拭いきれないソレから……心にずっしりと重くのしかかるソレからは無尽蔵に怒りが湧き上がってきていた。

 そして……脳裏に浮かぶ幼少の頃の記憶の断片。

 欠片でしか見えないソレは更に死柄木弔を苛立たせていた。

 

「見せるなら全部見せろよ……全く」

 

 そう呟いて死柄木弔は眼前の20数人の解放戦士の内、先頭に居た解放戦士の顔面をその手で触るとその解放戦士は崩壊した。

 そして……一瞬で解放戦士達に崩壊が伝播していきチリと化した。

 

 ソレを実感する間も無く死柄木弔は収まらない吐き気を止める事が出来ずに胃の内容物を全て吐き出す。

 

「あぁ……くっそ……見せるなら全部見せろよな……気持ち悪い」

 

 脳裏に浮かぶのは断片的な記憶であり朧げで抽象的な記憶の欠片の集合体であった為に死柄木弔の不快感は更に強まっていた。

 目的のデトラネット本社ビルには既にトゥワイスの分身体が入り込んでいるらしくひしゃげた一室が下からでもはっきりと見え……そして複製された自分と眼が合った。

 

 複製された自分はおそらく本体が何をするか察したのだろう。

 邪悪な笑みを浮かべていた。

 

 ソレを理解して……本物の死柄木弔は迷う事なくデトラネット本社ビルにその五指で触れる。

 

 瞬く間にデトラネット本社ビルが崩壊していくが死柄木弔はため息を吐きながら呟く。

 

「高い所から落っこちたら人として死ねよなぁ……デトラネットのCM出てたよな? お前」

 

 死柄木弔の眼前に立つは目算で4〜5メートル以上の巨躯になっているデトラネット社の社長、四ツ橋力也……リ・デストロ。

 死柄木弔はリ・デストロに向かい呟く。

 

「なぁ? デトラネット社の社長さんよ? 今どんな気持ちなんだ? いやな……聞きたくてさ……11万人だったっけ? たかだか10人ぽっちの俺ら(ヴィラン)連合に対してさ……そんだけの数を用意して、ここまで来るこたぁないって高みの見物決め込んでさ、その挙げ句に落っことされた気分はどうなんだって聞いてるんだよ⁉︎」

 

 そう叫び地面に触れる。

 すると……触れていない筈のものにまで崩壊が伝播していく。

 リ・デストロはソレを跳躍して回避すると怒りが籠った声音で死柄木弔へと語りかける。

 

「怒ってるよ? 私は怒りを溜め込むタチでね……おかげで額もこの通りだ……戦士達を沢山殺してここに来たようだな? 悪いのは……この掌か?」

 

「個性で人となりを判断するのはやめよう……、良い教えだ……私もそう教えられて育った……だが、個性は人格に直結するモノだ『五指で触れて凡ゆるモノを崩壊させる』個性……君はどうだろう? 死柄木弔、君は何を背負い、何を創る? それすらうつろの何も生まない破壊を貪るだけの人間なのか?」

 

 5m程の巨躯となり、ソレに応じて巨大化した手で死柄木弔の手首を摘んだリ・デストロは死柄木弔の装着している『手』の細工品と左手の小指と薬指を圧し折る。

 瞬間、死柄木弔の脳裏には断片的な記憶が浮かび上がってきた。

 アレはいつだったか……『先生』に貰った時に言われたんだった。

 

『華ちゃんの手、お母さん、おばあちゃん、おじいちゃん、お父さん……心というものはよく出来ている怒りや哀しみと言った負の感情は時と共に癒されていく……彼ら(・・)を肌身離さず持ち続けなさい……風化してしまわぬ様に』

 

 それを切っ掛けにして……死柄木弔の脳内に溢れ出す忘却していた記憶。

 

 華ちゃん……俺の姉ちゃん……お母さん……そして、おばあちゃんとおじいちゃんの記憶が濁流となって死柄木弔に頭痛という形で押し寄せる。

 心に沈む鉛の様な重い重い正体不明の感情に……すっぽりと抜け落ちていた思い出がパズルピースの様にピッタリと嵌っていく……。

 感情に経験が伴っていく……。

 

 そして……死柄木弔は自身を押さえつけているリ・デストロの人差し指を……自身の中指で触れると……崩壊が伝播していく。

 

 僅かながらの崩壊であったがそれ以上の崩壊をさせない為にリ・デストロによって弾き飛ばされる死柄木弔。

 死柄木弔の装着していた『手』がどんどん壊れていく。

 その度に溢れ出す記憶の欠片達、それに伴い酷くなる頭痛。

 死柄木弔は片手で額を抑える様に悶えつつ1人叫ぶ。

 

「あ……頭が割れる‼︎」

 

 

 リ・デストロは眼前の死柄木弔を見つつ思案する。

 

 ふとした事を切っ掛けにして異能が飛躍する事はある。

 現に外典がそうであった……。

 リ・デストロが火傷を負ってしまった時に氷の温度に干渉出来るようになり、そして荼毘との戦いでまたも異能が飛躍したと聞いた。

 

 死柄木弔もまた……覚醒の最中に……。

 しかも……速い‼︎ 予備動作も最小限で0からトップスピードまで持っていくソレはまるでチーターの如き俊敏さ……。

 

 毎日命のやり取りでもしてないとこうはならない。

 しかしながら、だからこそ解せない……これ程の身体能力であるならば神野でヒーローの1人や2人はその手で触れた筈なのだ……。

 異能の件といいこの身体能力といい……鍛えたとでもいうのか? しかし毎日過酷な命のやり取りでもしない限り身に付かない様な動き……。

 

 ソレを理解してリ・デストロは叫ぶ。

 

「私もこの『ストレス』を鍛え上げてきたからこそ分かるんだ……君を格下と判断するのは尚早だったよ……そのダメージでも消えない所を見ると君は『本物』だろう?」

 

 己が異能の80%を解放してリ・デストロは叫ぶ。

 己が必殺の技を。

 

「祭りはここまでだ……負荷塊‼︎」

 

 自身のストレスを高圧縮のエネルギー体としつつ相手にぶつける。

 ソレをモロに喰らって死柄木弔は身体につけていた『手』の細工品と共に吹き飛ばされる。

 

 ……死柄木弔の脳内に溢れ出した記憶は全て繋がった……あぁ、そうだ。

 

「俺は……ただ、壊すだけだ……未来なんかいらないんだ」

 

 死柄木弔は蓋をしていた記憶の全てを思い出した。

 父に明確な殺意を持ってこの手で触れた事、華ちゃんやモンちゃん……おじいちゃんとおばあちゃん……全てを思い出した。

 その後『先生』に拾われた後の事も、その前も……全部思い出した。

 そして、理解した。

 

 俺はあの時……父に明確な殺意を持ってこの手で触れた、お母さん達が崩れていくのを見て心が軽くなった。

 アレは悲劇なんかじゃあない。

 

「未来なんか要らないんだよ……その先は連合の仲間達が好き勝手すればいい……こんなモノももう要らない」

 

 そうつぶやと死柄木弔は……最後の一つとなっていた『手』の細工品をその手でボロボロと崩壊させていった。

 そして砕き割る。

 

 

 己が個性の『本来のありかた』を理解した死柄木弔……。

 五指で触れるのは自身の心がセーブしていただけ。

 

 そうして取り戻した記憶と……本来の個性の能力。

 

 150%で振り抜かれたリ・デストロの負荷塊……ソレを死柄木弔は文字通り指一本触れただけで……跡形もなく消し去った。

 そして呟く。

 

「振り切る前に壊せばそうでもないな……分かるよ……でかいだけだな? あんた……目障りなモン思いっきり壊すと……愉しいよな」

 

 死柄木弔の胸中に渦巻くこの高鳴りは……あぁそうだ。

 脳裏に浮かぶのはオール・フォー・ワンの言葉。

 

『恐れるな……こう考えてみよう……「人の生命も努力も進歩も一切が自分の手中にある」と……握って壊すか転がして弄ぶかは君が決めていい……憎悪と愉悦を重ねられたのなら……君は自由だ』

 

 

 死柄木弔は胸の高鳴りのまま……思いの丈を叫ぶ。

 

 

「ぶっ壊れろ‼︎」

 

 そうして……泥花市の3分の1が崩壊により壊滅し……リ・デストロは無傷ではあったが……ストレスが鎮静されて普通の人間サイズに戻っていた。

 それを見下しながら死柄木弔は呟く。

 

「なぁ……なんで戦ってたんだっけ? あぁ、お前が裏社会の全てに喧嘩を売ってきたからだよなぁ」

 

 そこに選挙カーに乗った花畑と生き残った解放戦士達が到着し花畑が扇動して高揚させる。

 しかし……死柄木弔の一睨みで『扇動』は掻き消されていった。

 

 ソレを見て……リ・デストロは……決断を下す。

 

「トランペット……これ以上は無駄な死だ……彼らは皆、私の……いや、デストロの遺志に賛同して殉ずる覚悟を培ってきた者達……君の言う通りだ……喧嘩を売って盛大に負けた、殺すなら殺せ……異能解放軍はお前の後についていく」

 

 ソレを聞いた死柄木弔は……手駒としては使えるなと……そう判断しつつリ・デストロの今のセリフを全ての異能解放軍に浸透させた。

 

 

 そして全てを思い出した死柄木弔はドクターへと連絡を取って……ある事を告げた。

 

 




次からは鈴仙達の話しに戻ります。

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