【完結】ウサミミ少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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精神世界②

「ようやく……ガラスのケースは何とか出来たけど……全然起きる気配がないのはなんでだ?」

 

 そう頭をガシガシと掻いて考え込みつつぼやく物間寧人。

 鈴仙の頬にその手でぷにぷにと触れるも起きる気配は一切無い。

 

「おーい……鈴仙さーん……おーい」

 

 人間の耳の代わりに付いているウサミミへと声をかけるも起きず。

 ウサミミを揉むも起きる気配は無い。

 思案していると……眠り姫と言うワードが物間寧人の脳内をよぎる。

 

「たくっ……僕もヤキが回ったのかな? あんな幻影の言う事を真に受けるなんて……」

 

 そう呟いて上を見ると……真っ暗闇のドス黒い感情の塊が底の底に落ちてくるのが認識できた、やばい……貫かれるだけなら一瞬だけで済んだが包まれるとどうなるか……想像している以上の痛みに襲われて……恐らく物間寧人と言う精神は崩壊する。

 それを見て物間寧人は絶句し隣で眠り続けている鈴仙の精神体を起こそうと必死になる。

 

「鈴仙さん‼︎ 鈴仙さん‼︎ 起きてくれ‼︎ ……お願いだから起きてくれ‼︎」

 

 そう叫んでガクガクと肩を激しく揺らすも起きる気配は無い。

 アレに呑まれれば今度こそ物間寧人はその意識を保っては居られないだろう。

 まだ余裕がありそうに見えるが持って30数秒であろう。

 

 いまだに目醒める事がない鈴仙の精神体を支えながら物間寧人は決断を迫られる。

 

「どうするっ⁉︎ どうすんだこれ……眠り姫の起こし方? キスでもしろって言うのか……」

 

 パニックになりかけるが一呼吸して何とか落ち着くと、意を決した様に鈴仙の手の甲へとキスを行う物間寧人。

 刹那……鈴仙が目を醒ます。

 

 そして、鈴仙の精神体は状況を把握したのかドス黒い感情を即座に打ち消して語る。

 

「……ありがとうございます、物間さん……私の心の奥底まで来たと言う事は……現実の私は数日間眠りっぱなしですね……現実世界でまた話しましょう……ちなみに起こし方はアレが正解でした、お礼です」

 

 そう告げると鈴仙の精神体は物間寧人の頬にキスをする。

 

 そうして、鈴仙がパチンっと指を打ち鳴らすと物間寧人の意識は瞬く間に遠のいて現実へと帰ってくる。

 

 自分の身体を見て汗に塗れているのが確認できた為にタオルで拭う物間寧人、その隣でぼんやりとした表情でこちらを見てくる鈴仙。

 物間寧人はいつもの様にキザなセリフで鈴仙に語る。

 

「ふっ、ようやく目覚めたかい? 眠り姫さん……さて、と……僕はそろそろ雄英の寮に戻るよ……君は多分検査やら何やらあるんだろうからA組の皆には僕……いや、拳藤の方から説明してもらうよ」

 

 そう言って立ちあがろうとした物間寧人の手を掴んだ鈴仙。

 頭上にクエスチョンマークを浮かべつつ物間寧人は鈴仙に告げる。

 

「……どうしたんだい? 鈴仙さん?」

 

 鈴仙は眼に大粒の涙を浮かべて物間寧人へと語る。

 

「物間寧人さん……何故……私の心の奥底へ潜ったのですか? 貴方が精神的に崩壊してしまう可能性もあったのに……なぜ……そんな危険を冒してまで私を助けてくれたのですか?」

 

 そう物間寧人への問いかける鈴仙。

 物間寧人は一呼吸置いてゆっくりと語る。

 

「君には言葉では言い表せない程に世話になってるからね……この程度の事は何でもないさ……それに、困っている誰かを助けるのは人として当然の行いさ」

 

 そう告げる物間寧人、それを聞いて鈴仙は泣き笑いの表情を浮かべて物間寧人に告げる。

 

「……ありがとうございます、物間さん……検査自体は10分程で終わると思いますので申し訳ありませんがしばし待っててもらえますか?」

 

 そう告げられる物間寧人、10分程度ならと病院の前で待っていると柑橘系のフレグランスを纏わせてノースリーブにゆったりとしたズボンというラフな格好で戻ってきた鈴仙。

 

 八意永琳は自宅へと戻った様で相澤先生が車を回してくるのを待ってる状態である。

 鈴仙は物間寧人に声をかけると物間寧人が鈴仙の方を振り向いた瞬間にその頬にキスをする。

 唐突な事に理解が追いつかない物間寧人、時間にして僅か3〜5秒程のキスであったが物間寧人は顔を赤くして鈴仙に対して告げる。

 

「れ……れれ……れれれ……鈴仙さん⁉︎ 女の子が無闇に異性にキスをするのはいかがなものかと思うけれどなぁ⁉︎」

 

 そう告げられた鈴仙は顎に手を当ててしばし考えたかの様に、魅惑的な笑みを浮かべて告げる。

 

「今回のお礼と思っていただければ幸いです……物間さんには本当……お世話になりましたし、私の心の奥底まで来たと言う事は相当……ドス黒い感情に突き刺された筈です……その治癒も兼ねてと思っていただければ」

 

 そう告げられ物間寧人は理解する。

 先程まで重くのしかかっていた心の痛みが消え去ったと……。

 

 それにしたっていきなり異性にキスをするのはいかがなものかと……そう告げる物間寧人。

 

 それに対して鈴仙は語る。

 

「貴方がいなければ……私はもう目醒めなかったかもしれません……貴方は私にとっての……最高のヒーローです……助けてくれてありがとうございます、ファントムシーフ……私は貴方に救われました……ありがとうございます物間寧人……コレは今できる私からのお礼です」

 

 そう頭を下げて物間寧人へと告げる鈴仙。

 そして……鈴仙はおもむろに物間寧人の頬に手を添えて固定すると自身の唇を物間寧人の唇へと重ね合わせた。

 唐突な事に理解が追いつかない物間寧人。

 そんな物間寧人に対して再度魅惑的な笑みを浮かべる鈴仙、鈴仙はゆっくりと言葉を語る。

 

「今回の件、助かりました……先程のキスは治癒の為……今のは感謝の気持ちとして……」

 

 悪戯っぽくそう笑みを浮かべる鈴仙。

 それに対して物間寧人は顔を赤くしながら俯いていた。

 その後……車を回してきた相澤先生、車に乗り込んで雄英の寮に戻る間……他愛無い会話や鈴仙が昏睡状態の間にあった出来事などを聞く。

 

 そうして……ハイツアライアンスへと戻った鈴仙はA組の皆に出迎えられた。

 

 女性陣はもとより皆心配していたのだろう、特に八百万百や芦戸三奈はその眼に涙を浮かべており抱きついて咽び泣いてきた。

 八百万百と芦戸三奈の頭を優しく撫でながら鈴仙はゆっくりと語る。

 

「ご心配おかけしました……みなさん……」

 

 そう告げて……復帰を果たした鈴仙であった。




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