そして夜、峰田実が爆豪勝己が何もしてねぇと囃し立ててそれに対して爆豪勝己がキレながら『事務所空にしてどうすんだ』と返しつつ切島や瀬呂から宿直をよろしくと頼まれていた。
何でだよ‼︎ と叫ぶ爆豪勝己に対して瀬呂範太が揶揄う様に『だってお前今日何もしてねぇじゃん』と告げると爆豪勝己も流石にそれ以上は言い返せないのか渋々ながらではあるが宿直をしていた。
かくいう鈴仙も宿直をしている。
爆豪勝己のみではどうしても緊急時の対応に遅れが出る可能性も否めない。
事務所内でコール対応の待機をしつつ1時間に1度、椅子に座りながら島全域に波長を飛ばして異常の有無を検知する鈴仙。
爆豪勝己との会話を行いつつ互いに仮眠時間とシャワーの時間を決める。
そうして時刻は23.43分。
綺麗な星々を眺めていると事務所内にコール音が響く。
受話器を取ったのは爆豪勝己であった。
「
場所を聞いたのち、即座に受話器を元に戻した爆豪勝己。
溜まったストレスを発散出来る為かやや上擦った声音で爆豪勝己はそう叫ぶが……確認の為に島全域に波長を飛ばした鈴仙を横目で見てきた。
「コール相手の位置を特定しました……波長から読み取った心拍音や筋肉の収縮音、声音や神経の伝達……諸々の情報から総合的に考えて……子供の虚偽通報ですね……悪戯にしては悪質ですね……爆豪さん、ちょっとお灸を据えてきて下さい、怪我させずに、貴方が普通に怒るだけで幼い子供なら泣き叫びますから……いいお灸になります」
「それは一体全体どういう意味だ‼︎ ウサギ女ァ‼︎ チッ‼︎ ここに連れてくる‼︎ テメェもしっかり叱ってやれやコラァ‼︎」
流石に
しっかりとお灸を据えなければ。
5分後……爆豪勝己の爆速ターボでジェットコースター並みの移動法を用いて戻ってきた爆豪勝己。
両脇には昼間、鈴仙が対応した姉弟が抱き抱えられていた。
姉弟のその眼には大粒の涙が浮かんでおりとてもではないが話しが出来そうな状況ではない。
それを見て鈴仙は爆豪勝己へと問いかける。
「お灸を据えてきてとは言いましたが……どうやったらここまで泣かせるんですか……はぁ……」
鈴仙はため息を吐きながら精神操作で感情を安定させる。
恐怖の感情を取り除いて話せる様にすると鈴仙は優しい口調で告げる。
「さてさて……先ずは座りましょうか」
10分後……。
優しく諭し終えた鈴仙。
爆豪勝己も怒鳴りながらではあるが注意を行いもうやらないと指切りで約束させる。
そうして……0時を過ぎていた為に手を引いて家へと送り届ける鈴仙と爆豪勝己。
なんだかんだと言いながら爆豪勝己は常識を弁えている。
家へと送り届けてから鈴仙は真幌ちゃんと活真君に優しく告げる。
「もしも、次に何か緊急事態で電話が繋がらなかったら……私の名前を思い切り叫んでね……『助けて鈴仙』って『助けてイナバ』って……何があっても絶対に助けに来るからね」
真幌ちゃんと活真君の頭を優しく撫でておやすみと告げる。
そうして……事務所へと帰路に着く2人。
その最中……鈴仙は爆豪勝己へと告げる。
「爆豪さんも優しい所あるんですね、送り届けるなんて」
びっくりした様な声音と表情でそう告げると爆豪勝己は般若の様な表情に変化させつつ鈴仙へと怒鳴る。
「アァ⁉︎ テメ……ウサギ女……前々から思ってたけどよぉ……俺を何だと思ってんだテメェは‼︎」
鈴仙はその眼を通して感じる波長を見ながら爆豪勝己へと語る。
「え……性格的には残念な人……ですけど? でも……貴方は誰よりも強い人です、決して折れない心の強さがありますし、私が絶対持ってないものを……そしてこれからも待つ事が出来ない物を持ってます……私は貴方が……皆が羨ましいですよ」
事務所へと到着した2人……そう呟いて鈴仙は爆豪勝己の手を取り脚に力を込めて跳躍する。
宙に浮かびながら鈴仙は爆豪勝己へと嬉しそうに語る。
「さて、爆豪勝己さん……空中戦の練習です……ドッグファイトのお時間です、条件はいつもと同じ、私を地上に堕とせれば勝ち、敗北は貴方が地上に堕とされる事、波長操作で音と光を操作してますので私達以外には聴こえる事はありません」
バーリトゥードでの戦闘訓練。
爆豪勝己は空中を爆破で器用に跳ね回りつつ鈴仙に爆破を撃ち込むがさしたる脅威になってない。
スタングレネードの主要な効果である局所的な閃光による視覚へのダメージも音による聴覚へのダメージも期待出来ない。
というより逆にこちらがいつ視覚と聴覚に影響を及ぼされてもおかしくない。
APショットオートカノンを撃ち続けるが『壁』が割れない。
お返しとばかりにレーザーによる弾幕が撃ち込まれそちらへの対処をしていると顔面への回し蹴りが飛んでくる。
ギリギリの所で回避しようとしたが見えない壁に阻まれて回避行動が取れずレーザーの弾雨をその身に喰らう。
地面に激突する寸前で何とか体勢を立て直して鈴仙へと一撃を与えようとするが追従していた見えないレーザーの弾雨を回避する事が出来ずに撃ち落とされる爆豪勝己。
「ガッ⁉︎ テメ……このクソウサギ女ァ‼︎」
地面に這い蹲る爆豪勝己だが負けは負け。
というより空中戦の勝負においては鈴仙は負け知らずでありその個性の扱い方も相まって強みを存分に活かしていた。
「さて……そろそろ爆豪さんの仮眠時間ですね……3時間交代で……時間になったら起こしますのでゆっくり休んでください」
そう告げて1人書類仕事に取り掛かる鈴仙。
仮眠室に向かう爆豪勝己からは素っ気なく、しかしこちらを慮った様な表情と声音で語りかけてきた。
「……なんか非常事態があったら直ぐに叩き起こせ、3時間後に起きてくる」
鈴仙は手を振って仮眠室へと入る爆豪勝己を見送ると報告書の不備が無いかのチェックや案件ごとの分類、診療所の医療従事者への引き継ぎなど、多岐に渡る業務を終わらせていった。
書類関連は飯田天哉と八百万百がある程度は終わらせてはいたもののいかんせん大小様々な依頼を受けている為に未分類が多く残っていた。
「さて……ある程度は終わらせますか……」
そう呟いてPCとの睨めっこを開始する鈴仙であった。