【完結】ウサミミ少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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喪失の始まり
失われた眼


「遅い‼︎」

 

 そう叫び炎熱を放射してきた轟焦凍の攻撃を余裕で回避しつつ鳩尾を殴打して仰け反らせると返す刀で背後に迫っていた飯田天哉の蹴りを避けてその脚を掴み爆豪勝己へ避けれないタイミングで投げ飛ばす鈴仙。

 突然投げ飛ばされた飯田天哉は空中で立体機動をしていた爆豪勝己に激突し2人は地面に墜落する。

 

 ここはトレーニング施設である体育館γ。

 

 其処に集まっていたのはブートキャンプに参加しているA組B組のクラスメイト達。

 40人全員が目隠しをした鈴仙1人を相手取っていた。

 

 鈴仙は目隠しをした状態でルナティックガン及び個性使用禁止のハンディキャップつきで、対してA組とB組の40人は個性をフル活用して鈴仙が(ヴィラン)という設定で模擬戦を行っている。

 

「私がまた囚われて‼︎ 万が一敵対する事になっても良い様に貴方達が止めるのです‼︎ 焦凍‼︎ 私に対して炎熱を放つのを躊躇わない‼︎ 飯田さんは蹴りのタイミングが遅い‼︎ 爆豪さんは爆破による立体機動が遅い‼︎ 貴方の爆破ならもっと速度を出せます‼︎ 一気に放つのではなく溜めて放つ事を意識しなさい‼︎ 焦凍もです‼︎ 炎や氷を一気に噴出するのではなく溜めて放つ事を意識しなさい‼︎」

 

 40人全員の攻撃を躱したり相手を盾にしたりしつつ適宜アドバイスを行う。

 

 広域範囲攻撃の個性持ちや一度放ったら修正が効かない個性を持ってる者達には特に細かくアドバイスを行う。

 

 そして、鈴仙の背後より鉄哲徹鐡と切島鋭児郎の2人が、真正面からは緑谷と飯田が、左側面からは心操人使が操縛布を用いて、右側面からは耳郎響香がイヤホンジャックを使って、息を合わせ攻撃をして来た。

 

 心操人使の操縛布により片腕が束縛される鈴仙。

 しかし、心操人使には圧倒的にフィジカルが足りない。

 

 逆に思い切り引っ張ると束縛から即座に脱出して心操人使を後方から殴打をしようと迫り来る2人に向けて蹴り飛ばし切島鋭児郎と鉄哲徹鐡の2人の動きを一瞬止める。

 動きが止まった2人を尻目に眼前に迫る脅威である飯田の蹴りと緑谷のスマッシュを対応しようとした刹那、耳郎響香によるハートビートで一瞬反応が遅れる。

 

 致命的な隙ではあるもののまだ対応が可能であった。

 

 緑谷のテレフォンパンチを避ける事もせずに掴み捻り上げて腕をガッチリと抑えて緑谷を即席の盾にしつつ飯田天哉の蹴りを躊躇わせる。

 

 そうして緑谷の首に手刀を当てて気絶させると文字通り荷物となった緑谷を心操人使や鉄哲徹鐡の方に投げ飛ばす。

 

 その直後……定刻となったのかブラドキング先生と相澤先生が来られてもうお終いだと告げられる。

 

 そうして、振り返りとして2分だけ感想戦をすると各自寮へと戻っていった。

 

 そうして翌日、日曜日、休みであったが鈴仙はギャングオルカとクレア・ボヤンスと共にパトロールに出向いていた。

 

「指名なんてインターンシップ以来ですね……」

 

 ヒーローコスチュームを身に纏いルナティックガンを装備しつつそう語る鈴仙。

 ギャングオルカは申し訳なさそうに語る。

 

「済まないな、休日を潰してしまって……」

 

 鈴仙は笑みを浮かべて言葉を紡ぐ。

 

「いえいえ、ギャングオルカさんのお話はとても参考になりますので……ッ⁉︎ これはっ‼︎ ギャングオルカさん‼︎ クレアさん‼︎」

 

 そうしてパトロールの最中……鈴仙は黒霧のワープゲートに包み込まれ強制的に転移させられる。

 

 ほんの一瞬故に言葉を交わす事は不可能であったが波長操作が出来る鈴仙は波長でギャングオルカに叫び消えていく。

 そして、鈴仙の代わりに出て来たのは脳無が3体。

 ギャングオルカは憤怒に表情を染めて呟く。

 

「……言葉を解さない人形か……クレア聞いてたな? お前も透視で波長が見えたろう? ……雄英に緊急連絡、(ヴィラン)連合にまたも攫われたと……」

 

 クレア・ボヤンスは頷きながらインカムを使って緊急連絡を回す。

 

 そうして、雄英にこの事が知れ渡った。

 

 

 黒霧のワープゲートを抜けた直後、鈴仙の左眼に目掛けて空間断裂の個性が見舞われる。

 空間そのものを断裂させる事で波長操作をさせずに対象の硬度・物理特性を無視した絶対的切断攻撃を行ってくる為に如何に鈴仙と言えども防御不可の一撃であった。

 

 視認不可能の見えない斬撃は鈴仙の左眼を深く斬りつけた。

 激痛と共に血飛沫が舞い、多量の血液が傷口より噴出しコスチュームの白ワイシャツと床を紅く染め上げる。

 

 鈴仙の短い悲鳴が響き渡りそれを合図として軍用装備に身を包んだ者達が鈴仙を取り囲む。

 ベネリM4にSIG SAUER M17……そして、防弾ヘルメットとアーマープレート……極め付けは肉体に埋め込まれた電波妨害装置。

 

 間違いなく……鈴仙が一度捕まった時の傭兵部隊。

 

 鈴仙は状況を冷静に分析しながら斬撃によりもはや確実に見えなくなった片眼に波長を通して普通の視界とは異なる視界を得る。

 波長操作に特化させて網膜ではなく波長操作で明瞭な映像を得ると激痛を齎している痛覚神経を一時的に遮断し意識を集中させる。

 

 今回と前回では異なる点が2つある。

 

 まず1つ、生まれたままの姿ではなく完全装備という事。

 そして、2つ目、緊急時限定個性自由行使許可証、即ちヒーロー免許の仮免を取得しているという事。

 

 此処が何処か既に判明している。

 

 前回の山荘である。

 

 鈴仙は自身に波長操作を適用させて好戦的な性格に変化させるとギラリっと犬歯を見せて笑みを浮かべ自身を取り囲んでいる傭兵どもへ向けて、戦意を滾らせながら呟いた。

 

「情報という情報を根刮ぎ抜き取ります、前回とは違い、(ヴィラン)に対抗できる装備もある、資格もある……片眼を削いだだけで満足? もう2度と当たらない、先の一撃で四肢を削ぎ落とすべきだった……だから君達は負けるんだ」

 

 そう呟いて腰に装着したルナティックガンを抜いて撃ち放つ。

 刹那、見えない斬撃が飛来してくる。

 

 しかしながら……鈴仙の個性は此処に来て一歩先へと進む。

 見えない斬撃だとしても発生しているほんの一瞬は波長が揺らぐ。

 

 そこを決して見逃さず、見えない眼で感じ取る。

 見えない物を見る、片眼を失った事により鈴仙の波長操作は更に深く、研ぎ澄まされていた。

 

 この感覚を刻み込め、一生忘れない様に……。

 

 鈴仙は深く息を吸い込んで……行動を開始した。




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