【完結】ウサミミ少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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帰寮

「……んっ……と、あぁそう言えば……右腕と左眼はもうないんでした……左利きでなかったら術後のリハビリが一苦労でしたが……そこだけは不幸中の幸いと言ったとこですかね」

 

 そう呟いてゆっくりとベッドから起き上がる鈴仙。

 手術着を纏っている自身を見て朧げな記憶を手鏡で自身の顔を見ながら思い返す。

 空間断裂の傷痕が生々しく残る左眼が鏡に映る。

 傷痕を見ながら整形で消せるかなぁ、などと現実逃避気味にボンヤリ考える。

 

 改めて、鈴仙は怪我の度合いを確認する。

 波長操作を行わないと何も映さない左半分の視界と……肩から先に空間断裂の個性を喰らった為に肩甲骨,鎖骨を含めて肩甲胸郭間切断手術にて右上肢を切断したのだろう。

 存在しない右腕を確認し枕元のスマホを見るとまだ日曜日であるが18時過ぎ。

 

 現在地は……雄英高校近くの病院か。

 

 手術後に転院でもしたのか、それとも元々此処に搬送したのかは不明だが近くでよかった。

 

 ナースコールを押すといつもの赤と青のツートンカラーの服の上に白衣を纏ったお師匠様が……。

 電子カルテで鈴仙の情報を引き出しつつ看護師に投薬指示を出していた。

 それが終わると鈴仙のベッドのすぐ側に置いてあった椅子に腰掛けて語る。

 

「鈴仙、分かってると思うけど……左眼は眼球が真っ二つにされて再生不可能な状況になっていたから摘出手術で摘出、右腕の傷は手術で縫合したわ……」

 

 その言葉は他者が見れば冷たい声、しかし鈴仙から見ればいつものお師匠様の優しい声……。

 

「お師匠様……ありがとうございました、それと伝えなきゃいけないことが……」

 

 何か喋ろうにも鈴仙の口は上手く動かずに言い淀む。

 思考が纏まらず表情も安定しない。

 

 そんな鈴仙を見て八意永琳はギュゥゥッと鈴仙を抱きしめながら語る。

 

「そんな事は今どうでもいいのよ鈴仙……今は、今だけは……」

 

 そう言われて鈴仙の双眸からはツゥッと一筋の涙が頬を伝い零れ落ちる。

 それを皮切りに……大粒の涙と嗚咽混じりの声が流れる。

 

 30分間、一頻り泣き叫んで……とりあえず主治医であるお師匠様に退院許可を貰い雄英寮へと帰寮する為にお師匠様が運転している車に乗っている鈴仙、先程話せなかった(ヴィラン)連合の今の状態を告げる。

 

「異能解放軍は死柄木弔達、(ヴィラン)連合との争いの末に(ヴィラン)連合に取り込まれて……総勢約11万人を越える超巨大テロ組織、超常解放戦線という集団に再臨しました……記憶の読み取りの結果をそのままお伝えします、最高指導者は死柄木弔。次点の幹部に9名の行動隊長がいます……9名の行動隊長にはそれぞれの傾向に合った部隊を持っており、隊長一人に対し解放軍の実力者上位3名が補佐役に就いている状態です、ほぼ全てのメンバーがヒーロー制度に対して恨みを抱いており、制度崩壊のためにヒーローと遜色無い程の戦闘能力と確固たる信念を培ってきた為に……超常解放戦線の主な目的は日本を超常黎明期に戻して空位の王となる事……それが朧げながら読み取った死柄木弔の記憶です」

 

 そう語る。

 

 それを聞いた八意永琳はハンドルを強く握りしめながら鈴仙に呟く。

 

「完璧な情報をありがとう……雄英に着いたらイレイザーや他の教師達と話し合うから、貴女はそのまま寮に戻りなさい」

 

 そう告げられる。

 

「退学……ですか?」

 

 入寮する時にお師匠様は言っていた。

 

『この子をしっかりと見てて……』と、そう言っていたのにも関わらずこのザマである。

 鈴仙は左眼を完全に失明し、右上肢を丸ごと失う重傷を負ったのだ。

 

 失明は言わずもがなであるが更に腕まで失うとなると欠損の度合いが……。

 退学という可能性に打ちひしがれてシュンッと萎れるウサミミ。

 しかし八意永琳の言葉は異なるものだった。

 

「違うわ、そういう話じゃないから安心しなさい……貴女が死ぬ思いをして入手した情報の話をね……」

 

 それを聞いて安堵する鈴仙。

 ウサミミを分かりやすく反応を示している。

 

 そうして雄英高校の校門前に到着した鈴仙と八意永琳。

 

 相澤先生、プレゼントマイク、根津校長が出迎えて来て鈴仙を見る。

 鈴仙の受けた傷を見る3人。

 

 プロヒーローの仮免を取得していようとも鈴仙はまだ学生の身分である。

 そしてまだ15〜16の子供だ……そんな子供が、この様な重傷を負った。

 

 右上肢の全てを失って、そして左眼も失った。

 

 鈴仙の顔、特に左眼の周辺には痛々しい傷痕が刻み込まれており……上着を着用しているものの……右腕が通るべき箇所には何もなく、ただ風に揺られていた。

 

 それが一層……何よりも色濃く映し出していた。

 

 鈴仙が腕を失い、片眼を失ったという純然たる事実を。

 根津校長が詫びる。

 

「済まなかった……これは雄英としての、いや、我々大人、そして教師としての……最大の失態だ……」

 

 そう告げられるが鈴仙は首を振って呟く。

 

「先生達のせいなんてそんな……私が未熟なばっかりに起きた事です、全て私の責任です……私がもっと強ければ、私がもっと……」

 

 そう告げる鈴仙。

 平行線になりかけた話しを八意永琳が柏手を一つ打ち鳴らして黙らせる。

 

「責任の有無は確かに大事だけど……今回はそれよりも重大な話しがあるの、イレイザー、マイク……教員を全員会議室に……鈴仙、寮に戻ってなさい……」

 

 そう告げられてお辞儀をしてその場を後にする鈴仙。

 寮の扉を開けて明るい声音を意識して呟く。

 

「ただいま〜、遅くなっちゃったよー……ははは」

 

 鈴仙が扉を閉めると芦戸三奈がいつもの様に勉強で分からない所があるの〜と叫びながら抱きついてきた。

 右腕が無い分体勢が崩れやすくなっていたのか鈴仙は芦戸に抱きつかれたまま仰向けに倒れ込む。

 

「ムキュゥッ」

 

 抱きつかれたまま倒れ込んだ衝撃で変な声が出てそれに反応して共有スペースに居た皆がザワザワと集まってくる。

 口々に大丈夫? や芦戸三奈に対して注意を促す者が……当の芦戸三奈は軽い口調で鈴仙に謝罪しつつ両の手を合わせて祈るような仕草で鈴仙に叫ぶ。

 

 

「寂しかったよー、鈴仙〜ねぇねぇ、数学の勉強教えて〜……今回の数学で分からない所があ……ってさ」

 

 馬乗りのまま拝まれても……苦笑いしつつ芦戸三奈のお願いを聞こうとした鈴仙であるが芦戸三奈の表情は酷く動揺を浮かべておりその視線は鈴仙の左眼と右腕に向けられていた。

 

「れ……れーせん? どうしたの……その傷」




感想・ブクマ・特に評価。飢えております。  低評価をもらったら少し傷つきますが、傷も創作のプラスになることはある(私の場合です)。でも無評価=虚無は創作のマイナスにしかならないッス(私の場合です)!  なので、無言で投げれるので、ぽちぽちっと☆を頂けると嬉しいです。多い分には困りませんよ‼︎


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