【完結】ウサミミ少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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残酷な真実

 お風呂の後……鈴仙は甚平の様な格好のまま自分の部屋ではなく轟焦凍の部屋を訪れていた。

 2〜3回のノックをすると中から焦凍が出てくる。

 焦凍は鈴仙を見つつ呟いた。

 

「……何だ? 左右を間違えたんじゃないのか? 鈴仙、女子棟は逆だぞ?」

 

 そう呟いてくる焦凍に対して鈴仙は首を横に振って呟く。

 

「共有スペースでは出来ない話しがありまして……まだ起きていてくれて助かりました……時に焦凍、エンデヴァーはこの時間まだ起きていらっしゃると思いますか?」

 

 唐突な質問に対して焦凍はクエスチョンマークを浮かべながら肯定の意を示す。

 

「あぁ、この時間ならまだ仕事してるか家で何かやってるかのどっちかだ……なんでだ?」

 

 そう問われた鈴仙は(ヴィラン)連合、特に荼毘の記憶をスキャニングした時の記憶を思い返す。

 そして焦凍に語る。

 

「焦凍の……いえ、轟さんの家のセンシティブな問題について……ちょっと、(ヴィラン)連合の荼毘についてです……中に入っても宜しいですか?」

 

 そう語ると焦凍は首を縦に振って鈴仙を招き入れる。

 会釈をしつつ焦凍の部屋の中へと入る鈴仙。

 

 畳の上に座ると焦凍に対して告げる。

 

「私が今回(ヴィラン)連合に襲われた際に……(ヴィラン)連合メンバー全員の記憶をスキャニングしましてね……それでちょっと焦凍に、というよりは轟家に伝えるべき事が、荼毘を覚えてますか? 蒼炎の個性の青年です」

 

 和室の机に対面になる様に座ると鈴仙は言の葉を紡ぐ。

 神野の悲劇の際に一瞬テレビカメラが捉えた継ぎ接ぎの青年。

 そう付け加えると焦凍も思い出したのか頷いて来た。

 

「あぁ、思い出した……あの(ヴィラン)がどうしたって? 鈴仙」

 

 鈴仙は焦凍の眼を見据えて……ゆっくりと息を吐いてから告げる。

 荼毘の記憶を見て知り得た真実を。

 

「轟燈矢さん……轟家長男、既に故人との事でしたが……生きておられます、(ヴィラン)名、荼毘として……」

 

 鈴仙は重い口を開きそう告げる。

 焦凍から見える波長は信じられないと言った否定の波長が極度に現れていた。

 そんな焦凍に近づいて鈴仙は人差し指で焦凍の額に触れながら告げる。

 

「私が読み取った荼毘の記憶です……荼毘……いえ、轟燈矢が昏睡状態にあった期間はブラックアウトしてますが、全てを焦凍の脳内に流します」

 

 そう告げて……鈴仙は自身が読み取った轟燈矢の記憶を焦凍に流し込む。

 数秒後……全てを理解したのか焦凍の双眸からは一筋の涙が零れる。

 そして……焦凍はスマホを手に取り父親へとコールを掛ける。

 数回のコール音の後に通話に出るエンデヴァー、父親が電話に出たのを確認して焦凍は涙混じりに語る。

 

『……親父……燈矢兄は生きてる……、荼毘が燈矢兄だ……』

 

 短くそう告げた末子の言葉が理解できずに聞き返すエンデヴァーであるが焦凍も記憶の奔流に呑まれており言葉を話せる状況下ではない。

 鈴仙はスマホを奪い取るとエンデヴァーへと告げる。

 

『もしもし、大変失礼なのは存じておりますが焦凍君は今ちょっと記憶の波に呑まれててこれ以上の会話が不可能なので電話を代わらせていただきました、鈴仙です……しばらくすれば話せると思いますが今は無理です、要点だけお伝えします……私が(ヴィラン)連合に襲われたのは既にご存知ですね? その際に(ヴィラン)連合の全員の記憶をスキャニングしまして……荼毘は轟家長男、轟燈矢と判明しました』

 

 電話口でエンデヴァーが絶句していた。

 そりゃあそうだろう……10数年前に亡くなったと思った長男が生きており……荼毘として生きていた。

 鈴仙は目を瞑って読み取った記憶をそのままエンデヴァーに語る。

 

 荼毘、いや……轟燈矢から読み取った記憶の全てを。

 

『あの日、瀬古杜岳での個性の訓練の最中、山火事になったと……身体を自身の炎で焼かれた燈矢さん自身もその時は気づいてませんでしたが弟の焦凍と同様、氷の“個性”を宿していたのです、焦凍が炎と氷を操る『半冷半燃』に対し、燈矢は『死に瀕するという重たすぎる発動条件があるとはいえ内側を冷やし、自身を燃焼させる』というエンデヴァー、貴方が本当の理想としていた形でした……現に燈矢さんが焼死したと思われていた瀬古杜岳での山火事、その際に身体を焼かれて死に直面することで無意識下で氷の“個性”が発動した。個性の暴走により燈矢さん自身の骨肉や臓器が焼失しなかったのはこの為でしょう……氷に対する耐性に重きが置かれ炎に弱いという体質の為に長時間の炎の使用で火傷を負ってしまうという致命的な欠点よりも先に氷の“個性”の発現にもっと早く気づいていたら……恐らく燈矢さんは(ヴィラン)になる事は無かったと……思います』

 

 電話口でエンデヴァーの、轟燈矢に対しての強い強い後悔の波長が感じ取れた……。

 そして……エンデヴァーが冷静を取り戻したのか電話口に戻ってきた。

 

『鈴仙……情報提供感謝する……明日……詳しい話しを伺う為に其方に出向いてもいいだろうか……』

 

 そう言って……エンデヴァーは通話を切った。

 焦凍を見ると、ようやく記憶の奔流から戻って来た様で真実と理解して涙を流していた。

 

「焦凍、私が言えた事ではないですが……というよりもお前のせいだろと、どの口がと思われるかと思いますが……泣きたい時は泣いていいと、お師匠様の受け売りですが……」

 

 鈴仙は焦凍を優しく抱きしめて片手で頭を撫でながらそう呟いた。

 そうして、翌日……授業が始まるかと思いきや……全学年、寮内での待機を命じられていた。

 

 しかし、一年A組のクラスメイト、青山優雅のみが教師寮にいるのは早朝、相澤先生より伝えられた。

 相澤先生より伝えられた際に波長が見える鈴仙のみがその理由をも含めて事情の全てを察する。

 

「…………成程、そういう訳ですか、相澤先生」

 

 そう呟いた鈴仙に対して相澤先生が呟く。

 

「波長が見えるとそういうのも感じ取れるのか……鈴仙、しかし今回の件は正式な捜査が終わるまでは他言無用だ……ベラベラと喋った瞬間に除籍するからな? 絶対に喋るなよ?」

 

 それを聞いた鈴仙は了解ですと告げ、そういえばと前置きして呟く。

 

「今日、エンデヴァーが私と話しをする為に訪問してくると思いますので……」

 

 それを聞いた相澤先生は髪を掻きながら呟く。

 

「了解した……、時間になったらエンデヴァーをここに案内する」




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