鈴仙in福岡
文化祭も終えて11月も下旬に差し掛かった頃……鈴仙はエンデヴァーと共に福岡にいた。
鈴仙は街行く人、そして福岡の景色を2〜3度見回してからゆっくりと息を吸い込み……天を見ながら叫ぶ。
「………………何故⁉︎」
おかしいなぁ……確か昨日はヒーロービルボードチャートJPを皆で観てて……緑谷が熱狂していて……なんでかエンデヴァーから要請がきて有無を言わさずに無理矢理に連れて来られたんだった。
ヒーローにとって指名と要請は明確に意味が異なる。
指名は指名された側にも拒否権があるが要請となるとそれはある種の命令であり拒否権はない。
最も、要請をするにせよ、されるにせよ……それを行うには厳密に定められた細々としたルールが大量にあるのだが一旦それは置いておこう。
コスチュームに身を包んだ鈴仙は昨日、名実共にNo. 1になったトップヒーロー、エンデヴァーの横を歩いてゆっくりと呟く。
「何故私を要請したのかは聞きませんし聞きたくもないですが……憑き物が落ちた様な表情してらっしゃいますね……心境の変化でも?」
そう語るもエンデヴァーからの返答はない。
少し歩くと其処にはホークスが……ホークスとエンデヴァーの波長を読み取った鈴仙は踵を返して反対方向に歩こうとする。
「あー……では……私はお邪魔なようなので何処かで時間を潰しています、時間になったら呼んでください」
そう告げるもホークスの羽根が鈴仙をガッチリ掴んで逃がさない。
「いやぁ、ゴメンゴメン、君にも用があるんだ鈴仙……エンデヴァーさん経由で要請の依頼かけたのは俺だからさ」
引き攣った笑みを浮かべつつ鈴仙は諦めた様な表情を浮かべてトップヒーロー2人の隣を歩いて行く。
街を練り歩きながら鈴仙とホークスはその個性を用いて道路に飛び出した犬や子供の救助、荷物の運び、ファンサなどなど……色々と行っていた。
ホークス、エンデヴァーには当然敵うべくもないが鈴仙も学生の身としてはファンが異常な程いる。
整った顔立ちやルックス、丁寧なファンサ、そして……幸か不幸か……隻眼隻腕になってからというもの鈴仙のファンの数が急激に跳ね上がった。
元々1万人程いたファンが今では増えて25万人と爆増している。
鈴仙自身はファン数には全く興味が無くその数を聞いても全く表情は変えなかったが。
閑話休題。
ホークスと鈴仙のファンサが終わり……焼き鳥屋、ヨリトミに入る3人。
そこでホークスが鈴仙に語る。
「いやぁ悪いねぇ……要請した理由言ってなかった、鈴仙、
鈴仙は目の前に提供された焼き鳥を食べる事もなく、目の前に出された焼き鳥をエンデヴァーの方へと回しながらホークスに対して語る。
「今はお腹減ってないので、エンデヴァーさんどうぞ……ホークスさん……貴方の理由は理解しましたが……先にエンデヴァーさんに言う事があるのでは? 噂の件で……」
ウサミミを無意識的にクルクルさせながら鈴仙は語る。
それを聞いたホークスは愛想笑いに近い笑みを浮かべながら鈴仙から視線を外してエンデヴァーに告げる。
「へぇ……波長から読み取ったの? 面白いねぇ、エンデヴァーさん……改人・脳無……
人差し指と中指を立ててホークスは語る。
・オール・フォー・ワンしか脳無の場所を知らない。
・確保したアレで全部だった。
そのどちらかの見方が強い。
そうして、全国各地に広まった噂の確認の為に文字通り飛び回って確認したというホークス。
適当にダラダラとパトロールして今日も何もなかったと管を巻いて床に着く、これぞ最高の生活。
ヒーローが暇を持て余す世の中にしたい。
そう頬杖をつきながら語るホークス。
紛れもない本心からのソレをジト目でホークスを見ていた鈴仙だが突如として立ち上がり窓際へと近づいてから2人のトップヒーローに冷静な声音で警告する。
「350Km先、移動中の超高速飛翔体が大仰な敵意と悪意を撒き散らしながら此処を目標に急速接近してます、敵性勢力が目標地点である此処に到達までおおよそ20秒……波長から確認するに……脳無です……黒い脳無がメインの個体ですが体内に9体程格納しています、飛翔してくる黒い脳無よりは数段能力が落ちますがそれでも脅威ですね」
鈴仙の身体は波長を感じ取れる。
正確な位置把握と敵性勢力の把握はお手のものだ。
それを聞いてトップヒーロー2人は臨戦態勢を取る。
刹那、鈴仙はホークスの方を見て訝しむ様な表情を浮かべつつ双方向性のテレパシーでホークスに語りかける。
『ホークスさん……何故そんな焦ったような波長を? 予定と違うなんて面妖な事をお考えで……あ、語らなくて結構です、記憶から全てを読み取りました……成程、得心が行きました……そういう理由だったのですね』
それをテレパシーで告げられたホークスはいつものふわふわとした笑みを浮かべたままテレパシーを返してくる。
『便利すぎるでしょ……その個性、なーにその汎用性、ま……記憶の読み取りまでされたら言い訳の余地は無い、だけど察してくれて助かるよ』
そうホークスがテレパシーを返した刹那、脳無が窓ガラスをぶち壊して乱入しようとして来た……。
しかし、見えない壁に阻まれ撃墜される刹那……落下する前に掬い上げられ見えない壁に四方を囲まれて身動きが取れなくされた瞬間、エンデヴァーとホークスが瞬きをした一瞬の内に脳無の四肢が切り落とされる。
「壁による格子と空間断裂による切断……合わせ技程疲れるものは無いですね……精度、確度、維持の難しさ……全てが段違いです」
鈴仙がその個性を扱いながら、再生を続ける脳無を空間断裂で細切れにしつつ語った。