鈴仙は何も無い筈の虚空の先を見る。
虚空の先へ虹色に煌めく
其処にはマスカレイドが居た。
マスカレイドは不敵な笑みを浮かべて語る。
「君は父母の仇だ。鈴仙……君のせいで私の父母は死んだ……だから君を殺す、必ず殺す……私の以てる全てを投じて絶対に君を殺す……最大限この世で考え尽くせるありとあらゆる恥辱と絶望を与えてから殺す」
マスカレイドは片腕を掲げて波長操作を行おうとしたが何も起きない。
無言で首を傾げて再度波長操作を行おうとするもやはり何も起きない。
鈴仙はこの前襲撃された際にマスカレイドから読み取った記憶を思い返して呟く。
「11年前のあの時の血縁ですか……過去は消えないとはよく言った物ですね……巡り巡ってこうなるとは……それはさて置き、貴女は波長操作出来ない事を何故? とでも思っているのでしょうね……誰かの個性を真似る、そんなのは私と毎日訓練している人がいるのでね、この身を持って飽きる程学んでいるので対処法も分かりきっています……何よりも、古今東西よく言うでしょう? 贋作が真作に敵う道理はない……話しは取調室で聞きます……眠り堕ちるがいい、
マスカレイド本人にしか聴こえない波長……しかしたかだか雑音と切って捨てたのか、はたまた耐性系の個性をコピーして有しているのか……完全に無視して突っ込んでくる。
マスカレイドはふわりふわりと自身の周囲にフィールドを展開し浮遊して、鈴仙は音の噴出と波長操作による壁面の設置により空中戦を継続する。
「それはキャプテン・セレブリティの個性……見るのは記録映像でもいいって記憶の中でありましたね……」
記憶から引っ張り出したマスカレイドの個性の詳細を思い返す鈴仙。
マスカレイドの個性はその名が示す通り『仮面』である。
見たモノの個性を自身に複写し扱う事ができる、個性を奪い与えるオール・フォー・ワンや物間寧人のコピーと類似した個性であるが……類似しているだけでありその個性の中身は天と地ほど異なる、
1つ・見ただけで任意の対象の個性の複写が可能、また見る者は実物でなくとも構わない。
2つ・複写した個性は時間制限無しで自由自在にストック出来る。
3つ・複写した個性はそれがどのような個性であれ必ず複写される、また複写した個性は同時使用できる。
4つ・個性を複写した際、その個性がどう言った個性なのかは本能的に理解できるがその個性の扱い方までは複写されない。
他にも多少細々としたルールはあるが大まかにこの4つがマスカレイドをマスカレイドたらしめる。
鈴仙は自由自在に他者の個性を扱うマスカレイドを見ながら呟く。
「私の個性に続いてザ・クロウラーとキャプテンセレブリティの個性まで……しかしながら本物のザ・クロウラーにも、本物のキャプテン・セレブリティにも、ましてや私にも遠く及ばない紛い物……何処まで行っても贋作です、斥力の操作なら私にだって出来る……そして何より……」
そう告げて……鈴仙はルナティックガンを掴んでいる手とは逆の……今は無い腕をマスカレイドに翳す様に意識しながら呟く。
「私に対して波長操作で打ち勝てたのは『あの時の』私が未熟者だったからであり、尚且つマスカレイドとトガヒミコが分担して行っていたからこそ……一対一の状況下に於いては負ける道理はない」
鈴仙はそう語り……マスカレイドに波長操作を介してマスカレイドの脳に連続して幻影と幻覚、幻惑と幻聴、幻の痛みを叩き込む。
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いくつもの技をマスカレイドにぶち込む鈴仙。
ザ・クロウラーの個性とキャプテン・セレブリティの個性、そして私の個性を複合させて全てに耐え切るマスカレイド。
しかし……その眼は虚ろであり滴り落ちる涎を拭おうともしない。
数秒後、意識を無理矢理取り戻したのかマスカレイドは語る。
「テメェの技如き……効かねぇってつってんだ……この怨みは……」
そう呟いて動こうとするマスカレイドだが……視界が歪む。
ぐにゃりと歪む、そして、地面を見る……。
それを踏まえてマスカレイドは不思議な事をされた、いや……まさかよもやと、だがそうなのかと鈴仙の波長操作を理解して……地面を見た刹那……違和感を感じ、鈴仙の最初の挙動を、1番最初の出会い頭に鈴仙の挙動を思い返し叫ぶ。
「ま……まさか‼︎ お前‼︎ 鈴仙‼︎ まさかお前‼︎」
わなわなと……身体を震わせながら鈴仙に対して敵意を剥き出しにして怒鳴る。
対して、鈴仙はようやく理解したの? とでも言わんばかりにニヤリっと獰猛な笑みを浮かべて語る。
「ようやく理解したようね? 貴女は私に挑んだりはしていないのよ? 最初から最後までね……
夢幻の世界の鈴仙はそのまま踊る様に動き、そしてゆっくりと優美な所作をしながらマスカレイドへと語る。
「無限に続く夢幻の迷宮に迷い込んだ哀れなミノタウルスよ、貴様の身柄は拘束した……さて、そろそろ目覚めの時間だ……おやすみ、起きたら絶望の現実が待っている」
鈴仙はそう告げて……刹那、意識を失うマスカレイドであった。