ポイント制の騎馬戦であり1位には1000万ポイントが割り振られる。
それ故に15分間のチーム決めで真っ先に鈴仙に勧誘が集中する。
鈴仙の個性ならばハチマキの誤認から透明な壁を周囲に設置しての妨害、光と音の波長を操作してのスタングレネードの生成などといった他者の妨害から何から何まで何でもござれと言った感じである。
汎用性という面では八百万百と同様に鈴仙の個性は極端に突出しており汎用性が高いという事は如何なる場面でも一定以上の活躍が見込めるという事。
そして、今そんな彼女はというと殆どの相手から揉みくちゃにされてプレゼンをされていた。
なんか、中には自身のプレゼンそっちのけで鈴仙のウサミミとウサギ尻尾を心ゆくまで堪能している人が数人いたが……。
何せ鈴仙と組めば
普通はチームアップなどしないだろうが1000万ポイントの持ち主が鈴仙であるとなると話しが変わってくる。
競技としての前提そのものが180°一気に変わるのだ。
1000万ポイントを奪うのではなく、如何にして1000万ポイント以外を奪う競技へと。
他の競技者は1000万ポイントを奪いとれる可能性がほぼ絶無となり、逆に死ぬ気で鈴仙から自分のポイントを守り切らねばならない。
ならば鈴仙以外の他者からポイントを奪い取ればいいと考えるが鈴仙の個性を考えるとそれも難しい。
分身やスタングレネードはともかく、透明な壁を形成されるとその時点で即詰みとなる。
何せ先程の障害物競争で設置された壁を力づくで破壊出来た者は誰1人として居なかったのだ。
純粋な火力のみで鑑みたらトップに位置する爆豪勝己、轟焦凍、飯田天哉、緑谷出久の4人が個性による攻撃を行ったにも関わらずだ。
そう言った理由で我先にと鈴仙とチームアップをしようと考える者達が居た。
問題はそれに思い至ったのがとても多い人数ということだけで。
鈴仙はウサミミをクシャァッとさせながら左右を別々にせわしなく動かしており表情こそ笑顔ではあるがよくよく見れば笑顔はぎこちない。
鈴仙は渇いた笑みを浮かべつつ言の葉を紡ぐ。
「ぇ……えっと、一旦落ち着いて聞いて欲しいのです、別に私としては誰でもいいのです、チームアップするのは……しかし、みなさん思い返して欲しいのですが……雄英体育祭はプロヒーローがスカウト目的で観戦しに来るという事を忘れてはいませんか? 各々の個性にも相性があります、そしてその相性には良し悪しもあります、何も出来ないまま、騎馬戦で特に何も寄与せずに、ただそこに居ただけで、たまたま現状1位の者とペアになれただけで勝ち上がれたと判断されても宜しいのならばそれはその人の判断です、尊重しますし私も個人の判断にそこまで口出しする程ではありませんので積極的に止めはしません……しかしながら兎にも角にもまだ時間は10分もあるのです一旦冷静になってゆっくりと考える事をオススメ致します」
鈴仙が言葉を語り、又そのウサミミを慌ただしく無意識で動かしながら……ウサミミは千切れんばかりに動いておりまるで『もおおおお皆一旦落ち着いてよォォォォ』と叫んでいるかの様であった。
その言葉を聞いて、皆一旦冷静さを取り戻したのか鈴仙以外ともチームアップを提案していた。
かくいう鈴仙は41人の中で唯一の普通科生徒、心操人使に声をかける。
「心操人使さん、貴方さえ良ければ私はチームアップをしたいのです……騎馬役、お願いできますか?」
そう告げる鈴仙、対する心操人使は驚きが半分混ざった様な声音で言葉を返してきた。
「なんで俺なんだ? 仲が良さそうなクラスメイト達だって居たろ?」
理由を問いかけられた鈴仙は人差し指を顎に当てつつ無意識的にウサミミをクシャァッとさせながら理由を語る。
「なんというんでしょうね……貴方を一目見た時から、私と似た感じ……だと失礼……誤解なき様に、ハッキリ言いますと心操人使さん、貴方の個性が私の個性と大分似通っていたので……」
それを聞き心操人使はガシガシと髪を掻きながら呟く。
「……アンタに俺の『個性』の話しはした憶えはないんだけれどな……」
そう呟く心操人使に対して鈴仙は言葉を返す。
「私の個性、ざっくり言うと波長を操作するんですが……それで見えてしまったという感じですね……それはさて置き話しを戻しましょう、騎馬戦、組みませんか?」
心操人使はしばし悩んだのちに言葉を紡ぐ。
「1つ質問がある……」
そう告げられた鈴仙はウサミミをぴょこぴょことさせながら言葉を返す。
「何です?」
「何でこんなに俺に良くしてくれるんだ? お前にメリットが1つもないだろこんなの」
心操人使はジッと鈴仙を見ながら語る。
確かにここまでで鈴仙には何の旨味もない、心操人使からしてみれば鈴仙の提案には多大なる恩恵が、凄まじい程のメリットがある。
しかし鈴仙には? 何の旨味が、何の恩恵が、何のメリットがあると言うのか、最初のブートキャンプだってそうだ……わざわざ敵情視察に赴いて喧嘩をふっかけてきた相手を鈴仙は説教じみた事を口にするでもなく、傲岸不遜に見下すでもなく、お前には無理だろと小馬鹿にするでもなく……なんとブートキャンプと称したトレーニングへと強制連行し近接格闘術を叩き込まれた。
そのお陰で近接格闘術を収める事が出来た心操人使。
それ故に気になる、何で自分がこの様な恩恵に与れるのか、と。
「最初に言いましたが……私は強くなりたいと切望し、そしてどんな行いでアレ、それを行動に移す者の行いを見下したり小馬鹿にするなんてしませんよ、あの時の宣戦布告、アレを語っていた貴方の波長、紛れもなく本心からの言葉でした、そんな貴方だからこそ私はブートキャンプへと連行したのです、まさか2週間丸々全部食いついてくるなんてその時は思いもしませんでしたが……メリットですか? メリットならありますよ、プロヒーローを志しているんでしょう? 今からでも縁を結んでいれば何かの助けが必要な時に頼れるじゃないですか、お互いに」
遠い未来で借りを返してくれれば良いです、そう屈託のない、眩しい程綺麗な笑顔を浮かべながら告げる鈴仙。
「それで、話しを戻しましょうから答えを聞きましょう、YES or NO」
「YESだ、組ませてくれ、いや……騎馬戦、宜しくお願いします」
そうして1人、騎馬役に引き抜いた鈴仙。
思案していると拳藤一佳が視界に入ったので誘いをかける。
「一佳、久しぶり‼︎ 騎馬役探してるんだけどさ、私と組まない?」
トークアプリでは通話やトークを日々行っている鈴仙と拳藤一佳ではあるがいかんせんクラスからして異なる為に雄英内では中々会う時間が作れずにいた。
昼休みも拳藤一佳は食堂で、鈴仙は教室で食べる事が多い為に、たまに鈴仙も食堂に行く時はあるがそういう時に限って運悪く拳藤一佳の方が教室で弁当を食べていたりして本当に会う機会が作れずにいた為に鈴仙はここぞとばかりに誘いをかける。
基本的に名字かフルネームで相手を呼ぶ事が多い鈴仙であるが拳藤一佳より名前で呼んでくれると嬉しいと告げられた為に、一佳と呼んでいるがいまだに慣れない。
そんな拳藤一佳も久々に鈴仙に会えて嬉しいのか表情が綻び会話が弾む。
しかしながら肝心の騎馬については申し訳なさそうに断られた。
「あぁ〜ごめんな鈴仙……今B組は団結してA組に勝とうぜって雰囲気を物間が作っててさ……そんな中でB組の委員長である私がA組と組むのは流石にさ……ごめんなっ、鈴仙がせっかく誘ってくれたのに」
本当に残念そうな表情で手を合わせて断ってきた一佳を見送り後3人を探す鈴仙。
八百万百に声を掛けて了承されると、残り2人。
鈴仙はしばし考えつつ耳郎響香へと声をかける。
「耳郎響香さん、私と組みませんか? 貴女の個性、とても良い、それに……コスチューム無しでは音を増幅させる事が不可能でしょう? 私ならば貴女の音を自在に増幅できます」
そうして、チームアップが完了した。
鈴仙チーム。
鈴仙・優曇華院・イナバ。
心操人使。
八百万百。
耳郎響香。
この4人で騎馬戦を戦い抜く。
そうして試合がスタートし1000万ポイントをぶん取ろうと早速仕掛けてきたのが轟焦凍と爆豪勝己、そして緑谷出久。
3人がほぼ同時に叫ぶ。
鈴仙に挑戦するのだと。
それを踏まえて鈴仙が取る手はただ一つ。
圧倒的な力で上から捩じ伏せて叩き潰すのみ。
鈴仙は各自に指示を出す。
「耳郎響香さん、私にイヤホンジャック突き刺して下さい、八百万さんはスタングレネードを6個作って30秒後に各2個ずつをそれぞれアルファ、ガンマ、ベータ地点に投擲、心操人使さんは最終盤で使い潰しますので心の準備を」
その指示に対して2人は従うが心操人使からは突っ込まれる。
「使い潰すのかよ‼︎ 怖えよ考えが‼︎」
そう突っ込まれるが鈴仙は告げる。
「大丈夫です、私が保証します」
心操人使は怖くて問いかける事はしなかった、一体何を保証するのか、とは……聞かなくて良いことも、聞かない方が良い事もこの世にはある。
そう告げると鈴仙は自身の太ももに突き刺された耳郎響香のイヤホンジャックから伝わる耳郎響香の心拍音を大爆音へと波動の方向と振幅を操り騎馬役のみを狙い撃つ。
突如として自分以外には聞こえない大爆音が響いた為に凄まじい耳鳴りが起きて10数秒足が止まる他のチーム。
その隙に目に付いたチームからハチマキを掠め取る鈴仙。
だが何人かは即座に復帰して追いかけてきたが八百万百が既に投擲していたスタングレネードで更なる追い討ちを掛けられる。
凄まじい閃光と爆音が鈴仙チーム以外に襲いかかり再度行動不能になるチームが続出する。
そうして、時間を稼いでいる鈴仙チームであるが終盤残り2分30秒。
5位から12位に転落している騎馬チームから執拗に狙われる。
だが……ここで心操人使の役目が発揮される。
対象を見定め意思を込めて言葉を放つ。
「ハッ、これがヒーロー科か? 聞いてたよりもずっとずっと対処しやすいな‼︎ なぁ轟、そう思わないか?」
それに無理矢理
「アァっ⁉︎ 何だ急に……」
刹那、沈黙し動かなくなる轟焦凍。
急に沈黙した騎手を見て動きが止まる轟チーム。
それを見て鈴仙は心操人使にハンドサインでの指示出しを行い次の標的を定める。
心操人使の個性を事前に聞いていた鈴仙チームは真っ先に利用法を考えついた。
心操人使の個性『洗脳』は洗脳するという意思を込めた心操人使の声に反応するのが
1人にしか適用できない。
それを聞いて鈴仙は思いつく、衝撃を与えれば解けるというのをデメリットではなくメリットとしてみれば最高に強い個性であると。
衝撃を与えれば洗脳が解けるという事は逆に言えばこちらで衝撃を与えれば自在に洗脳解除のタイミングを作り出せる。
そして、声による反応も警戒されるが鈴仙が無理矢理口を開かせて応答させれば問題ない。
何なら心操人使が喋るタイミングで鈴仙が『心操人使の声』の波長を操作して他人の声と全く同じ波長にすればもうまともなコミニュケーションなど成立しない。
そうして、1000万ポイントを保持したままの鈴仙チームは最後までにげきった。
終了のブザーが鳴り響きドヤァっとピースサインを観客に送る鈴仙。
そのウサミミも『やったやったぁ』と狂喜に満ち溢れた動きをしている。
そうして、心操人使を酷使して洗脳を適宜掛け続けて危なげなく騎馬戦を勝利した鈴仙チームであった。
上位4チーム。
鈴仙チーム
物間チーム。
轟チーム。
爆豪チーム。
次なる種目に駒を進めた16人。
鈴仙チーム。
鈴仙・優曇華院・イナバ。
八百万百。
心操人使。
耳郎響香。
物間チーム。
物間寧人。
拳藤一佳。
円場硬成。
鉄哲徹鐡。
轟チーム。
轟焦凍。
飯田天哉。
緑谷出久。
麗日お茶子。
爆豪チーム。
爆豪勝己。
芦戸三奈。
瀬呂範太。
切島鋭児郎。
以上、4チーム、16人が次なる種目に参加する権利を得た。