【完結】ウサミミ少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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鈴仙・優曇華院・イナバ The beginning
壁の破却


 鈴仙が脳無を討滅してから……2日後、ようやく雄英へと戻って来た鈴仙。

 

 事後処理などで忙殺されていたらしくウサミミには疲労の色が濃く見える……。

 

 そんな折、鈴仙、物間、心操の3人にチームアップの指名が来た。

 

 中二ヒーロー・オッドアイ……寮に戻った後で緑谷に聞くも緑谷もそんなヒーローは知らないと……グラントリノさんみたいに知名度に頓着していないタイプのヒーローなのかもと付け加えられる。

 

 そうして……チームアップ当日。

 

 指定された場所に向かう3人。

 階段を降りて扉に近づこうとした瞬間、鈴仙の脚が止まる。

 

 階段のとある位置から進もうとしない。

 それを不思議に思った2人は鈴仙に問いかける。

 

「どうした? 鈴仙」

 

「鈴仙さん、どうしたのかな?」

 

 2人の言葉が届いてないのか鈴仙はしばし考え込むように、確認するかの様に階段を降りて上がってを繰り返す鈴仙。

 2〜3回確認したのち……鈴仙は自身が居る位置の階段と一歩前の階段を指さして眼前の2人に向けて呟く。

 

「この階段とここの階段を境目にして波長操作が途切れ途切れになります……立地の都合上か、はたまた何かの仕掛け故か……警戒していきましょう2人とも、物間さん、ちょっといいですか?」

 

 鈴仙の言葉に表情が変わる2人。

 物間寧人は先んじて鈴仙の手を取り個性をコピーしつつ左眼を喪失している為に左半分の視界を失っている鈴仙を気遣う様に手を繋ぎ階段を降りる。

 波長操作で明瞭な視界を補っている鈴仙だが波長操作が出来なければ視界の半分は見えない故に平衡感覚の欠落が起こる。

 心操人使はそんな2人の先導をしつつ操縛布をいつでも操作できるように握りしめて、サポートアイテムである可変式マスクを装着する。

 物間寧人は手招きで鈴仙に呼ばれた為に近づくと鈴仙より思いもよらぬ事を告げられる。

 

「ルナティックガンです、これを貴方に渡しておきます……万が一、いいえ……億が一ですが私がもしも不測の事態に陥って、個性の暴走を私自身で止められなくなった場合……これで私を撃ってください……そんな顔しないで下さい、私は貴方だからこそコレを預けられるんです……お師匠様と物間さん以外にはこんな事頼みませんよ、私の個性を扱える物間さんだから出来る頼みです」

 

 そうして、仰々しい六芒星や五芒星、アニメや漫画でよく見るオカルト的な魔術刻印が為された扉を開ける心操人使。

 

 刹那……強烈な光量を有した撮影用のライトが焚かれて心操人使がその眩しさに眼を眩ます。

 

 心操人使の後を追うようにして中へと入る鈴仙と物間寧人。

 中へと入り鈴仙は波長操作が途切れた理由を察する。

 

 立地の都合上……ここは電波暗室に近い構造になっているのだと。

 完璧な電波暗室にはなっていない為に物間寧人に渡したルナティックガンをアンプ代わりに経由していれば波長操作を保てるのが救いか。

 

 中に居たのは……椅子に座り脚を組んでいるスーツというか燕尾服というか……スーツと燕尾服を足して2で割ったようなコスチューム。

 

 そして眼帯を装着しているが……どうやら鈴仙の様に片眼を喪失した訳ではなくコスチュームの一環らしい。

 

 まぁ……サイドキックさん達の衣装などを見れば……オッドアイがどういうヒーローなのかは大体わかった。

 

 まぁヒーロー1人1人、それぞれの思いが込められたコスチュームだ、他人がどうこう文句を言ったりするのはお門違いという奴だろう。

 サイドキックさん達がどう思うかは全くの別問題だが。

 

 鈴仙自身も自分の考案した必殺技には妙なルビを振っているので人の事は言えたものではないのだが……。

 

 赤眼催眠(マインドシェイカー)

 赤眼催眠(マインドブローイング)

 幻視調律 (ビジョナリチューニング)

 狂視調律(イリュージョンシーカー)

 生神停止(アイドリングウェーブ)

 生神停止(マインドストッパー)

 喪心喪意(ディモチヴィエイション)

 喪心創痍(ディスカーダー)

 

 自身の技名を思い返す鈴仙。

 なんでかこう言った技名が好みなのだ……。

 

 そう思案しているとオッドアイが自己紹介を兼ねた挨拶をして来た。

 

「待っていた……選ばれし者達よ、物間寧人、心操人使、鈴仙・優曇華院・イナバ、我が名はオッドアイ、この世界ではそう呼ばれている」

 

 3人は顔を見合わせて何とも言えない表情を浮かべる。

 それをみたオッドアイは不遜な笑みを浮かべながら呟く。

 

「そう警戒してくれるな、この者たちは私と契約した使い魔」

 

 オッドアイがそう紹介した瞬間にオッドアイのサイドキックが横から口を挟む。

 

「サイドキックです」

 

「雇われてます」

 

 そんなサイドキック達の言葉をスルーしながら椅子から立ち上がりゆっくりと此方へと歩を進めてくるオッドアイ。

 視える波長からは敵対の意思も攻撃の意思も感じ取れない為に3人は警戒心を引き下げて肩の力を抜いてオッドアイに接する。

 こちらへと歩きながら大仰な身振りと手振りを交えつつ鈴仙の眼前に立ち口を開くオッドアイ。

 

「汝らが目指すもの、それはこの世界の言語で形容するならば英雄(ヒーロー)……だが英雄(ヒーロー)とは常に己が身を深淵に置くことに等しい……人々は時に彼らを讃嘆し、時に畏怖の念すら覚える、神とも悪魔とも形容し難い存在として……人間は皆己が内に黒き真実を秘めている、その真実に支配されかけた時……打ち勝つか否か、汝らが英雄(ヒーロー)の器足りうるのか其の身を以って我へと示せ‼︎ 私の個性は触れた者の深層に眠りし闇を呼び醒まし抉る『無意識解放(アウト・オブ・リミッター)』‼︎」

 

 そう叫んだオッドアイ。

 鈴仙の頭部にオッドアイがその掌で触れた瞬間……鈴仙の脳内に構築していた『幼い頃の忌まわしい記憶』を全て隔離していた100を超える『隔壁』が全て破却されて……極度の人間不信に陥って、世界全てに、この世の全てに絶望していた幼い頃の記憶が荒れ狂う濁流の如く、鈴仙の脳を埋め尽くす。

 

 刹那……鈴仙の個性が完全に暴走を始める。

 

「ァ……ァァァァァァ‼︎」

 

 

 ペタンッと座り込んだ鈴仙。

 刹那……暴走した鈴仙の個性は鈴仙の意思に依らず外敵を排除する為に部屋の3分の2を埋め尽くす様に鈴仙を中心としてドーム状の、半円形の電磁フィールドを構築しながら物理的な衝撃を伴いオッドアイと心操人使、物間寧人の3人を壁際まで凄まじい勢いで弾き飛ばす。

 オッドアイも腐ってもプロヒーロー、身のこなしは流石な物で空中で体勢を立て直して着地すると鈴仙を見て感嘆の声音を漏らす。

 

「おぉ‼︎ それが鈴仙の抱える闇か‼︎」

 

 そう叫んだ瞬間、オッドアイのサイドキックは、1人がオッドアイに対して拳を振り抜き頭頂部を殴打し、もう1人は腹部に飛び蹴りを喰らわせ怒鳴りつける。

 

「何やってんだアンタはぁぁぁぁ‼︎ 馬鹿か‼︎ バカなのか⁉︎ 馬鹿なんだよな⁉︎ どー見ても鈴仙さんの心的外傷を呼び起こしてるだろうが‼︎ 警察の協力依頼の時だけ個性使えばいいんだよお前は‼︎ 何でよりによってトラウマ抉るかなぁ‼︎」

 

 そう叫ぶサイドキック達。

 実はこのサイドキック達……八意永琳と過去に懇意にしていた事があり鈴仙の大体の事情を聞き及んでいた。

 

 オッドアイには鈴仙の過去を差し障りがない所だけ掻い摘んでトラウマがある事を事前に説明していたのだが……まさかやるとは思いもせず……。

 

 兎も角この状況はやばい。

 唯一の出入り口は鈴仙の背後であり鈴仙を中心とした5mの半円形の電磁フィールドで塞がれており波長操作の暴走故に近づくだけで波長が乱される。

 

 今は地下のみであるが時間が経てばすぐにでも外部の波長も乱されかねない。

 そして、鈴仙の個性が暴走しているという事は見境なく波長が乱されるという事。

 

 サイドキックとオッドアイ、それに物間寧人と心操人使でこの場を収める以外にない。

 

 電磁フィールドはミサイルすら通さない強固な物理的な障壁にもなっておりその物理的な障壁を超えても電磁フィールドの中に入ろうものなら波長操作で生命維持に必要な波長を軒並み狂わされる。

 

 そもそも電磁フィールドのせいで通信機器が全てダウンしている為に救援を呼ぶことが不可能な状態。

 

 オッドアイ、サイドキック、心操人使、物間寧人はこの場を収める為のあらゆる手を模索していた。




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