後日談……というか今回の件のオチ。
あの後……鈴仙の暴走のそもそもの発端と責任の全てがオッドアイにあると調査で判明。
オッドアイは警察と公安委員会からの厳重注意と減俸40%8ヶ月の処分が降った。
そうして、鈴仙と心操、物間は帰路に着く。
寮に着いてから、鈴仙は2人に対して謝罪を行う。
「……私のせいで迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした」
既に何度も何度も謝罪を繰り返している鈴仙。
その顔は暗く……憔悴しきっていた。
今回の件、鈴仙にはなんのお咎めも無い。
鈴仙の過去を掻い摘んで聞いており、それを聞いていてもなお……その上で個性により鈴仙の過去を暴こうとしたオッドアイに100%非があると判断されたが故だ。
本来ならば即刻ヒーロー免許剥奪の上で2年間の社会奉仕活動が妥当な所であったが鈴仙と心操、物間が止めたのだ。
被害に遭ったのはオッドアイ事務所の設備のみで人的被害は出ていないのが不幸中の幸いであった。
九死に一生を得たというか、ギリギリの所で許されたというか。
兎にも角にも……色々ありすぎた。
寮に戻る3人。
その日はゆっくりと休んで、翌日の放課後。
許可を得て借りた仮眠室で……A組B組の委員長と副委員長による話し合いが行われる。
話し合う議題は鈴仙の事について。
皆、完全に頼りすぎている事についての情報共有とこれからについての話し合いであった。
鈴仙のスケジュールを確認するとやっぱりといった感じで睡眠と入浴以外の時間はA組B組の誰かに何かを教えている時間であった。
プライベートや自由時間なんてものは一切存在しておらずギチギチに詰め込まれており……これをどうするかA組委員長、副委員長である飯田天哉と八百万百、そしてB組委員長、副委員長である拳藤一佳、物間寧人が話し合う。
鈴仙のスケジュールの中で特に多いのは全体の6割を占めている筆記試験対策及び実技試験対策の勉強会ついてだ。
筆記試験対策は各教科の分からない範囲を手広く、実技試験対策は救助や救護、
確かにA組もB組も……鈴仙に教えられて全体の底上げという形で結果を出している。
赤点を取る者が誰もいなくなり両クラス共に個性の扱いも学力も、皆……格段に向上した。
個性の精度や火力、その他凡ゆる基礎的な部分も底上げが為された。
鈴仙に教えを受けてからの各教科で行われる抜き打ちテストや小テストのA組クラス内最低点数が84点、B組クラス内最低点数が86点である事が何よりの証左である。
しかし、それに依存する形で、皆ずぶずぶと鈴仙に頼りすぎて行った。
瑣末なお願い事から、放課後に行うトレーニングの訓練相手、生活における悩みの相談、拗れた友人関係の相談。
果ては個人的な相談事まで……もはや頼るなんて軽い言葉の範疇を大きく超えて逸脱してどんどん依存して行った。
そして、4人が同時に思い出すのはある出来事。
確実に、1番……最も鈴仙に負担を掛けたであろう事案である。
それは一時期、A組内で爆発的に流行った風邪のクラスターである。
当時の事を振り返りつつ話す八百万百と飯田天哉。
鈴仙以外のA組全員、20名がほぼ同時期に罹患しクラスは2週間という期間であるがクラスとしての機能が壊滅。
鈴仙以外は個人差はあれど40℃に限りなく近い高熱か40℃超えの高熱を出して全員バタバタと倒れ込み体力の消耗が著しい為にリカバリーガールの個性には頼れないとの判断を降された為にアセトアミノフェンを適宜内服して対応をするも芳しくない状態だった。
そして、これ以上の感染拡大を防ぐためにA組寮は完全隔離、食事や内服薬を届ける救護ロボ以外は誰であろうと一切の出入りを禁じられており、教師陣も誰1人として例外は無い状況下であった。
唯一の非罹患者である鈴仙も皆の看護やその他業務に追われて授業どころでは無く一佳からビデオ通話やトークアプリでのトークでB組が行った授業の要点を把握するに留まっていた。
鈴仙は皆が罹患している中でも進む授業に皆が置いてかれない為に、20名それぞれにノートを作成して一佳から聞いた要点や、そこからテストで出るであろう箇所を予想し丁寧に纏め上げており睡眠時間などまともに取れていないのは完治後にノートの細かな内容を確認した全員が感じ取っていた。
そして、完全隔離の為に鈴仙が1人で20人全員分の食事や飲み物の注文とリカバリーガールと八意永琳の指示を受けて解熱剤の投与や点滴を行い……氷嚢の取り替えも行っていた。
当然、熱発している者達は風呂になど入れない為に着替えや清拭、洗濯や食事摂取の補助などの看護業務で忙殺されていた。
寮内では常時、感染防止の為にN95マスクと飛沫感染防止ゴーグル、医療用ガウンと医療用ゴム手袋を着用しており1時間に1回、定期的な確認の為に波長で全員の状態を纏めて把握してそれぞれに見合った看護を施してから各自の洗濯を行ったり20人全員分の看護記録を付けるなどの業務を行う。
日が経てば経つ程に状況が悪化していき特に酷かったのは轟焦凍と耳郎響香である。
2人とも41℃という高熱を記録していた為に鈴仙は即座に八意永琳へとコールを行い助言を求め八意永琳がビデオ通話で状態を把握して薬を投与させて何とか解熱し状態が落ち着いたものの嘔吐を頻発しており嘔吐による脱水症状も顕著だった。
点滴を投与して何とか快方に向かっていったがその後も轟焦凍、耳郎響香に引き続いて残る18人から同様の症状を引き起こされる。
それらの対応に忙殺された鈴仙。
当時の鈴仙の1日は全リソースを看護に割り振っていた。
まず1時間に1回20人全員のバイタルを波長操作で纏めてチェック。
そこから各自の部屋を回り清拭や汗ばんだ洋服の更衣介助、朝7時丁度に食事を運んで来る搬送ロボットと共に食事の介助を行い……スポドリや発熱時に少しでも飲める物や食べやすいゼリーなどをストックし……7時から11時まで20人の着替えや食事の補助、様々な業務で忙殺される。
11時から18時で20人分の洋服を洗濯や夕食の支度、各部屋を訪室して氷枕を変えたりバイタルチェックを行って八意永琳へ指示を貰ったり、一佳から聞いた授業内容を20人分のノートに取り纏め……そして昼食の時間と夕食の時間も朝と同様に少しでも飲みやすいもの、少しでも食べやすい物を各自に渡して、18時から23時は20人全員の経過観察を行い記録を残す。
そうして、深夜23時から4時まで嘔吐物で汚れた衣類や布団類の洗浄、溜まった洗濯物の仕分けを行っていた。
そして、ようやく、ほんの少しだけ業務が落ち着いた朝の5時頃に共有スペースのソファで10分程横になると言った具合であり……10分程の休憩も熱痙攣や嘔吐などの事態に備えていた為に碌に寝ていないし碌に食事も取っていない状態であった。
その後、鈴仙が看護業務で忙殺されてから10日目に状況を把握した現職の医師であり最高峰の医療医学の知識を有した『月の頭脳』と評される八意永琳が寮内に出張という形を行って泊まり込みで鈴仙と共に看護を行い幾分か鈴仙のワンオペは軽減されたがそれでも負担は大きかった。
看護師資格を取れる程に医療知識を叩き込まれた鈴仙が八意永琳の指示の下で日夜連日動き続けていた。
そうして……。
2週間後にようやく皆が快癒して鈴仙の看護業務は終了した。
というのが1番鈴仙に負担をかけたであろう事案であった。